プロローグ②
「茶色・・・今日はこっちなんだ。」
朝7時の目覚めとともに目に入ってくる天井の色を確認するのが、一日の最初の日課。
白か茶色か、それ次第で今日一日の気持ちの入れ様が変わってくるから。
そして、、、茶色の日はかなり憂鬱。
「ここ1週間ぐらいは大丈夫だったんだけどなぁ。」
嘆いてみたところでどうしようもないことは分かってる。
それでも嘆かないとやってられない。
もういっそズル休みしてしまいたい。いや、気分は本当に滅入っているので、あながちズルじゃない休みを取りたいと思うぐらいには憂鬱だ。
「優稀ー!もう起きないと遅刻するわよー!」
お母さんの声が聞こえてきた。
憂鬱に浸ってるうちに時間が経ってしまったみたいだ。
返事をすることもなく、着替えを始めた。
「あぁもう!シャツはどこ!?」
何で昨日のうちに用意しとかなかったんだか。こういうところがホント嫌いだ。
結局、Yシャツはタンスの中に入ったままだった。一番上にあるものと手に取り、シャツに腕を通した。
「ネクタイ、ネクタイは・・・」
机の上にネクタイが3つ丸まっているいるのを見つけた。
どれも同じストライプが入った柄とはいえ、色が違うので、どれをしていこうか。
こういう時間も勿体無いから、昨日のうちに決めておけばいいのに。
意味を成さない後悔をするのもアレなので、ブルーのネクタイを取って、首に回した。
と、ネクタイを締めながらふと目に入った薄めのカバンを見て、こう思った。
“これはこれで、合理的だよね”
「おはよう。」
「あら、おはよう。起きてたの?返事無かったから昨日と同じで起きてないと思ったわ。」
「ごめん。それより、菜月は?」
「もう学校行ったわよ。アンタも急いで出ないと間に合わないわよ。早く朝ご飯食べてしまいなさい。」
そう言って、お母さんがテーブルに持ってきたのは、おにぎりが3つ乗ったお皿だった。
「あー、今日は1つでいいよ。」
「あら、そう?アンタ先週は2つじゃ昼まで持たないって言ってたじゃない。」
-いや、十分でしょ。
「そ、そうなんだけど、今日は時間無いし、1つで良いよ。」
「そう。じゃあ、どれか1つ取りなさい。左から、サケ、タラコ、海苔ね。」
「海苔!?海苔って、ご飯のみってこと?」
「何言ってんの、海苔の佃煮入れてるわよ。アンタが入れてって言ったんじゃない。」
-知らないし。
「あ、あぁ。ごめん。まだちょっと寝ぼけてるみたい。じゃあ海苔貰うね。」
そう言って、海苔の佃煮入りのおにぎりを取って、ほおばった。
正直この大きさなら、1つで全然十分に思える。
出来る限りの早さでおにぎりを口に入れて、お茶で流し込んだ。朝から作業が重い。
「ごちそうさまー。」
早々に朝ご飯を済ませて、部屋に戻るとワックスを手にとって髪に付けていった。
鏡の前に行き、セット具合を確かめる。
「こんな感じよね。」
なんでこうも髪をツンツンに立てるのか。別におろしてたっていいじゃない。
ただ、急に髪型を変えるとまた色々言われてしまうので、仕方なくセットを続けた。
「もう出ないと遅刻するよー。」
「はーい!もう出る!」
リミット時間が来てしまったようなので、髪のセットを終えて、カバンを手に取って部屋を出た。
「行ってらっしゃい。」
ここからは最寄り駅まで全力ダッシュの時間。何で朝からこんなにバタつかなきゃならないのか。
これまた不要な後悔をしてる時間も惜しいので、とりあえず一心不乱に駅まで走った。
電車を乗り継ぎ、高校のある駅に着いた。
もう朝礼まであと少しの時間なので、ウチの生徒はほとんど見当たらなかった。
というか、そんなの気にしている時間も無い。
また、ここから学校まで全力ダッシュをしなければならないのだ。
「とはいえ、ダッシュしてもあんまり疲れないのは楽よね。」
良いところを探すことで、焦らなきゃいけないこの状況に対するイライラを何とか抑えていった。
自分のクラスの[1-A]まで辿り着いた時は朝礼ギリギリの時間だったが、それでも間に合ったことに
少し感動しつつ、自分の席に着くと横から声を掛けられた。
「優稀、"今日は"ギリギリセーフだな。」
声を掛けてきたのは、右隣に座っている椿だった。
どうやら昨日は遅刻したらしい。遅刻すると、何かペナルティがあるのだろうか。
「いや、ホント間に合って良かったよ。」
そう言って一息つくと、担任が入ってきて、出欠をとり始めた。
「間に合ったのは良かったんだけど・・・。」
かなり「憂鬱な」一日がスタートを切ってしまった。
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-柊木、変に目立たなきゃいいんだけど。
-高梨の奴、お願いだからボロ出さないでね。
(今日も無事終わりますように。)
「柊木あずさ」と「高梨優稀」、
二人の心と体が入れ替わった一日が今日も始まった。




