出会ってしまった時のこと②
"お前も騎馬戦出んの!?"
"お前も、ってもしかしてアンタも?"
"そうなんだよ・・・どうしよう?絶対近づくことになるよな。"
"どうしよう、って私に言われても。"
"俺は騎馬の上に乗るからどうしようもないけど、お前、騎馬の下だろ?方向のコントロールとか出来ない?"
"私の独断で動くわけじゃないから無理だよ。むしろ、アンタ上なんだから攻め先、指示出せばいいじゃない。"
-まぁ、それはアリか。
"ってか、何とか出場辞退出来ない?俺も先生に言ってみるから。"
"分かった。言うだけ言ってみる。"
"頼むわ。"
"[敬礼してるクマのスタンプ]"
とりあえず、柊木へ連絡はした。
次に先生へのお願いか。
「ん?どした、柊木。」
「あの・・・ちょっとお願いがあって。」
「私、騎馬戦に選ばれたんですけど、変更することって出来ないですか?」
「どうした急に。さっき聞いた時は言わなかったじゃないか。」
「いや、ちょっと、何ていうか・・・皆の前で言うの、恥ずかしくって。」
「何か理由あるのか?」
「実はあんまり足の調子が良くなくって・・・。」
「そうなのか。でも、柊木は騎馬の上だからそこまで気にしなくても大丈夫じゃないか?」
しまったぁぁ。何でか、騎馬の下(優稀)の前提で話してしまったぁぁ。
「そ、そうですよね・・・。」
「どうする?出るの、やめるか?」
「が、頑張ります・・・。」
先生の満面の笑みに押されて、これ以上の反論は出来なかった。
こうなったら、頼みは柊木の方。
職員室を出て、スマホを見ると、柊木から連絡が来ていた。
"ゴメン、ダメだった・・・。"
さて・・・詰んだな。
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着替えを済ませてグラウンドへ出ると、全学年の生徒が集まっていた。
グラウンドの右寄りに[1-E]のクラスメイト数人を発見し、そこへ駆け寄ると、菜月の声が聞こえてきた。
「あずさ、遅ーい。」
「ごめん、ちょっと先生と話してて。」
「何の話?」
「ちょっとね。」
成功した交渉ならまだしも、失敗した交渉について話したところで、余計な疑問を沸かせてしまうだけなので、内容についてはごまかした。
「何気に全校生徒集まってるの見るの、初めてじゃない?」
「そうだね。集まるとしたら、こういう行事か、始業式終業式ぐらいだもんね。」
「500人行かないぐらいだよね。目立てそー。」
やっぱ双子の兄弟だけあって、俺と同じように菜月もまぁまぁの目立ちたがり屋だった。
目立てそう、ってことについては共感するんだけど・・・このままだと今日は悪目立ちしかねない。
「あずさは午前、何か種目ある?」
「私は午前中は『背中渡り』だけかな。『大縄跳び』と『騎馬戦』が午後。」
「私も午前中は『綱引き』だけだー。ちょっと暇かもね。そういえばさ、体育祭の応援合戦って自由参加、って知ってる?」
「あ、うん。知ってるよ。」
・・・まさか。
「私たちも出ようよ、応援合戦!」
「えっ?」
「振りとかセリフとかはちゃんと教えてくれるらしいから、心配しなくても大丈夫だよ!」
「あっ、うん・・・でも。」
「嫌・・・?」
・・・くそっ。
普段は妹感とか微塵も見せないくせに、こういう時にはいじらしく相手に訴えかけてこれるのは最早才能だな。
それでも、普段の俺なら断るだろうけど・・・。
「・・・分かったよ。」
これは柊木に対しての言葉で、きっと柊木は受けちゃうんだろうなって思うと、その意思を無視するようなことは出来なかった。
「やった!」
はぁ。何か最近は体だけじゃなくて、意識まで柊木化してる気がするな。
柊木もおんなじ感じなんだろうか?
アイツは俺に対してそこまで気を遣う感じもしないけど、自分の体に戻った時に、周りとの違和感無いの考えると、アイツはアイツで気を使ってくれてるのかもな。
現実逃避のつもりか、そんなことを考えていると選手宣誓も終わり、体育祭は幕を開けた。
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「あずさ、お疲れ様。」
「ありがと。意外と疲れた。」
「惜しかったねー、もう少しで1位だったのに。」
「最後の方で新田がつっかえなかったらなぁ。」
「・・・」
「どうしたの?」
「いや、あずさ、新田君は呼び捨てにするんだ、と思って。」
-ヤバっ。サッカー部で仲良いから、いつものノリで喋っちゃったよ。
「えっ?あれっ、私、今呼び捨てにしてた?」
「してたよ。フツーに。」
「えっと・・・アレじゃない?競技終わって興奮してた、みたいな?」
「ふ~ん。」
ごまかせた・・・のか?
やっぱ、テンション上ってる時とかは素が出やすくて、怖いな。
「ねっ、次、佐々木さんの出る『かけっこ玉入れ』だよ!ほらっ、応援しよ!せーの、」
「佐々木さん、頑張れー!」
佐々木さんは声援に気付いて軽く手を振ってくれた。ただ、その表情はかなり強張っていた。
「あっ、優稀が居る。そっか、優稀も出るんだっけか。」
-そんな、ついでみたいな言い方。応援してくれとは言わんが、もう少し気にしてくれ。
「優稀ー!佐々木さんに当てたら許さないからねー!」
-いや、そしたら競技にならんだろ・・・柊木、遠慮するなよ。
そして、競技が始まると、、、
全っ然玉入れる気無ぇな、俺・・・いや、柊木。もっと頑張れよ!
「いいよー、佐々木さん。逃げろ逃げろー!」
下を向いて、ひたすら逃げる佐々木さん。
[1-A]の皆はゴール役が女の子ということもあり、かなりゆるゆるな攻めを続けていた。
そうか、そういう戦略だったのか。やるな、竹中先生。
ただ、俺ってか、柊木からしたら女の子同士なんだし、変に気に掛ける必要も無いんじゃないのか?
しかし、最後の最後まで俺は絶妙な距離を保ちながら、佐々木さんに当たらないように緩めのボールを投げ続けた。
「はい、そこまでー!」
終了の合図とともに、佐々木さんはその場にへたり込んだ。
そして、その佐々木さんに俺は何かを話し掛けているようだった。
「・・・25、26、27![1-A]はこれでお終いのようです。ということでこの勝負、[1-E]の勝利ー。」
勝利の立役者の佐々木さんと一緒に競技を終えたクラスメートが戻ってきた。
「佐々木さん、お疲れ様ー。頑張ったね!」
「うん。勝てて良かったよー。」
ようやく佐々木さんは笑顔を取り戻したようだった。そんなに不安だったのか。
「いや、始まるまではホント怖かったけど、[1-A]の皆、手加減してくれたみたいで良かったー。」
「見て、向こう。めっちゃブーイングされてる。」
-まぁ、ふざけてのブーイングだろうけどな。
「でも、菜月のお兄ちゃん、めっちゃ優しかったよー。終わった後に『大丈夫?』って心配してくれたし。超良いお兄ちゃんじゃん。」
「優稀が?ま、まぁ、性格は悪くないけど・・・そんなに女の子に気使える方だったかな?」
-ん、それは俺も菜月に同意だ。俺はそこまではしないぞ、柊木。
「えー、真面目に興味出てきたかも。もしそうなった時はゴメンね、菜月。」
「うー、それは微妙かも。ってか、あずさもそうだもんね。」
「えっ?」
急なフリに言葉が続かなかったが、さすがにそれは無いから。
「焦ってるし。そんなに優稀良いかなぁ。」
-いや、自分で良いよとも言いにくいけど、そんな否定的な感じになるのも何か哀しいぞ。
「そっか。柊木さんもそうなんだー。」
「らしいよ?」
「いや、違うから。」
「必死に否定するとこがまた怪しい。」
「確かにー。」
そんな女子トークを続けていたら、いつの間にか午前の部は終わっていた。
あれっ?何か忘れてること、あるような。




