プロローグ①
「白か・・・ということは、今日はこっちね。」
朝7時の目覚めとともに目に入ってくる天井の色を確認するのが、一日の最初の日課だ。
白か茶色か、それ次第で今日一日の気持ちの入れ様が変わってくるからだ。
そして、、、白の日は少し憂鬱でもある。
「あずさー!起きてる?起きる時間過ぎてるよー!」
「大丈夫、起きてるよー!すぐ支度するー。」
そんな憂鬱に身を任せていたら、少しボーっとしてたようだ。
お母さんの掛け声に気付いて慌てて登校の支度を始める。
「えーっと。鞄の中身は整理してあるよね。じゃあ、さっさと着替えちゃおう。」
丁寧に掛けてある制服を手に取って、パジャマから着替える。
そしていつものように、リボンが上手く決まらない。
「あぁ、もう。ホント面倒!」
いいや、朝食食べた後にしよう。
とりあえず、一通り着替えたところで、一階へと向かう。
「お母さん、おはよ。」
「おはよう。昨日朝ご飯少なめでいい、って言ってたから、トースト半分だけ焼いといたわよ。」
「・・・あぁ、うん。ありがと!」
テーブルに着き、置いてあるトーストを手に取る。
「いや、、、少な。」
「ん?何か言った?」
「何でもないよ。」
いくらなんでも、これは少なすぎる。絶対昼まで持たない。
とはいえ、自分で少なめでいいって言っといて、やっぱりもっと欲しい、とも言いにくい。
残念ながら、今日はこれで昼まで我慢するしか無さそうだ。せめてもと、紅茶を飲んでお腹を膨らますことにした。
「今日は帰り遅いのー?」
「えっと、、、多分部活で遅くなると思う。」
「そう。もうすぐ大会近いもんね。あずさは試合出れそうなの?」
「んー。さすがに一年は出れないと思うよ。別に私も取り立てて上手いわけじゃないし。」
「菜月ちゃんは?あの子、かなり上手いんじゃなかったっけ?」
「菜月はどうだろうなー。もしかしたらメンバー入りはするかも。」
「アンタも負けないように頑張んなきゃね。」
「・・・そうだね。」
お母さんの励ましにあまり言葉を繋げることは出来なかった。
部活を頑張りたいのか、それとも勉強を頑張りたいのか。まだ自分の中でちゃんと分かっていなかったから。
幸いそれ以上会話が続くこともなかったので、残ってる紅茶を飲みほして、部屋へと戻った。
家を出るまであと20分。さっさとメイクして、出かける準備をしなければ。
「えーっと、ファンデは、と。」
机の上のメイクボックスに手を伸ばして、下地とファンデーションを塗っていく。
ある程度仕上がったところで、アイシャドウを入れて、さっとリップも塗って化粧を終わらせた。
「毎朝これはしんどいなぁ。」
化粧をするようになってから、女の子ってホント大変だなぁと思うようになった。
それこそ、この時間がなければもう少し寝れているのに。
ただ、高校生にもなってメイクもしないで学校へ行くのはありえないみたいで、ノーメイクで行った日の皆の食いつき方を一度経験してしまうと、もうメイク無しに学校へ行くなんて考えられなかった。
「さて、あとはリボンを付けて。」
支度を済ませて、家を出た。
いつも通りの時間に出れたから、特に急ぐこともなく行けそうだ。
最寄駅から電車に乗って、高校のある駅に着いた。
当然だけど、通学時間帯なので同じ学校の生徒が集まっている。
そろそろ見知った顔も出てくるかな、と思っていたその時、
「あずさ、おはよ!」
後ろから声を掛けてきたのは菜月だった。
「おはよー。」
「あれ?あずさ、今日メイク薄くない?」
「そう?あっ、チーク入れてないからかな。」
「ちょっとナチュメ過ぎない?昨日の方が良かったよー。」
「今日朝、時間無くって。」
実際は時間あったんだけど。
チークは上手くのる時とのらない時があって、のらない時の方が多いから、出来ればやりたくなかった。
チークを入れすぎた時のほっぺたがリンゴっぽくなるのがどうにも無理なのだ。
そうなるぐらいなら、最初からチークを入れない方がよっぽどいい。
「そういえば、メンバー発表っていつだっけ?」
化粧の話題から逃れるように、部活の話を持ち出した。
「確か今週の金曜日だった気がするから、明後日かな?」
「菜月は入るかもね。」
「いやー、さすがに無理じゃない?言っても1年だし。」
そう言いながら、菜月の顔は少し自信を覗かせていた。
実力があることも、練習を頑張っていることも知っているから、入ったら自分も嬉しい。
「それより、今日の日本史の小テストの方が気になるよー。」
「あれ?今日だっけ?」
「・・・あずさはいいよね、テストあること覚えてなくてもどうせ良い点取るんだろうから。」
少し皮肉が入った返しに、そんなことないよ、と冷静に返事しながら、内心は相当焦っていた。
しまったぁぁぁ。小テスト、今日だったかぁ。
ヤバいと思いつつ、とはいえ1限の授業までに今から出来ることなんてほぼ無い。
申し訳無いけど、もう潔く諦めることにした。いや、最大限の努力はするけど。
そんな話をしているうちに、学校に着いた。
「柊木さん、おはよー。」
下駄箱で他の友達数人とも合流し、皆で自分のクラスの[1-E]へと向かった。
クラスに着くと、8割ぐらいはもう登校しているようだった。登校済のクラスメイトにも挨拶をして、自分の席に着席した。
間もなくして、担任が現れ、出欠確認が始まった。
同時に、少し「憂鬱な」一日もスタートを切った。




