第七十話 街は燃えているか?
終章開始です
ワタクシ達は転送陣でコルリスまで戻ってきます。
「あら? 宿の中随分と静かですわね」
「人の気配がしないわねぇ……」
たしかに建物の中は人の気配がしませんわね……
「――ん? 外が騒がしいぞ」
ナルリアちゃんは耳をピクつかせて、外の音を聞いておりますわ。
するとズドン! という大きな音が聞こえましたわ。
「な、何がおきてるのでしょうか?」
「皆さん行ってみましょう」
「そうですわね」
ワタクシ達は急いで外へと出ますと……
そこら辺から火の手が上がり、叫び逃げ惑う人々、町中が大変な事になっておりましたわ。
「派手な歓迎ですわねぇ……」
「一体何があったのよぉ」
「あ、あれを、み、見てください!」
アルティアさんが指をさしております。
指の先を見ますと大きな赤い孔雀が暴れておりますわね、三メートルくらいありますわね?
「大きな孔雀ですわねぇ」
「――大きい!」
「インドクジャクというヤツに似ておりますな」
ワタクシとナルリアちゃん、中尉は何気なく孔雀を見ておりますがベティさんとマウナさんは驚いた表情ですわね。
「な、何でここにアレがいるのぉ!」
「紅蓮孔雀ですか……あそこに一匹いるという事は仲間が数匹はいますね、これは危険ですよ」
この二人の反応からして、暢気に見てる場合のモンスターでは無さそうですわね。
「この魔物、ヤバイ魔物なんですの?」
「そうよ、討伐依頼なら三等級が受けるような依頼に出てくるモンスターよ」
「一匹で小さな村なら簡単に壊滅できます、しかも厄介な事にこの魔物は群れで行動するんですよ」
成る程、単体でも厄介な魔物のようですわねぇ。
「そうなると、緊急で討伐依頼が出ておりますわね」
私がそう呟くと。
「で、ですが。いま、この町には上位の冒険者が、ほ、ほぼ出払ってるんですよね?」
アルティアさんの言葉に全員が顔を見合わせます。
「そうでしたわ!」
「とりあえず紅蓮孔雀を倒すわよー」
「紅蓮孔雀はきっと卵を探しているはずです」
「――たまごー?」
ワタクシ達は器用に全力疾走しながら会話をしております、これやはり舌噛みそうですわね。
逃げ惑う人たちで進みにくくなってきましたわね、警備の兵士たちが相手をしておりますが旗色は悪いようですわね。
「アルティアさんはワタクシ達に強化魔法を使用後、中尉と一緒に人々の避難を手伝ってくださいまし」
「わ、わかりました」
アルティアさんはすぐに詠唱を開始いたしましたわ。
「ワタクシ達は紅蓮孔雀を制圧しますわよ」
「マナカさん、紅蓮孔雀の卵がこの街に持ち込まれてるはずです! それを探して返してあげれば紅蓮孔雀たちはこの街を去るはずです」
「どういうことですの?」
「紅蓮孔雀は群れで行動し家族の結束が強い種なんです、卵が持ち去られると群れで探し出し取り返し報復をする厄介な習性を持つ魔物です」
イタリアンマフィアみたいな連中って事ですわね。
「卵を見つけるまでは報復を続けます、この群れがどれだけの規模か分かりませんが少なくとも五匹以上はいるはずです」
「紅蓮孔雀の卵は闇市で高くうれるのよ、御禁制アイテムなのよねぇ。これがあるから禁止してるのにどこのバカかしら」
マウナさんとベティさんの話から、どうやら金目当てのバカが禁を犯したということですわね。
ワタクシ達の姿を見て誰かが近づいてきましたわ、ガリアスさんとアーシアさんですわね。
「よお、嬢ちゃん達がいてくれて本当に助かるぜ」
「あら? お二人ともごきげんよう。ですがお話は少しまっててください」
「わ、わかった」
ワタクシは紅蓮孔雀に近付きますわ。
するとガリアスさんが兵士に向かって叫びます。
「お前等! 下がれ! お嬢ちゃん達の邪魔にならないようにしろ!」
すると兵士たちが下がり、避難誘導に回りました。
優秀ですわね、切り替えが早いですわ。
「マナカさん! 殺さないようにお願いします! 紅蓮孔雀は結束が強いと言いました、殺してしまうと卵を返しても彼等は全滅するまで暴れますので」
「了解ですわ!」
アルティアさんの魔法がかかり、マウナさんの言葉を聞いてワタクシは走って紅蓮孔雀に近付きます。
紅蓮孔雀もワタクシに気付き羽を広げ威嚇します……威嚇?
「マナカさん避けて!」
マウナさんが叫んだのでワタクシは、サイドステップで移動します、ワタクシが元いた所に羽が何本か飛んできて地面に刺さりますわ。
「羽手裏剣ですわね……」
そして紅蓮孔雀が口を開けて待ち構えておりましたわ。
「なるほど、たしかに紅蓮孔雀ですわね!」
紅蓮孔雀の口から炎が吐き出されます、ワタクシは全力で前に走り炎を潜り抜け懐に潜り込みましたわ。
ワタクシのすぐ後ろにナルリアちゃんが付いてきており、ワタクシの後ろからジャンプして紅蓮孔雀の頭に狙いを定め仕込みクロスボウを構えますわ。
それを見た紅蓮孔雀は急いで頭を守るように羽でブロックしようと致しました。
ワタクシから注意が外れたのを見逃すワタクシではありませんわよ!
「ナイスですわナルリアちゃん!」
「――んふー! 狙い通り!」
ナルリアちゃんが矢を放つと同時に、ワタクシは紅蓮孔雀の足に水面蹴りを叩きこみます。
矢は羽に防がれましたが、バランスを崩した紅蓮孔雀のボディに強烈なボディブローを叩きこみます。
紅蓮孔雀が悶えたところ、ナルリアちゃんが再度ジャンプし紅蓮孔雀の頭に強烈な蹴りを決めます。
「まずは一匹ですわね」
紅蓮孔雀が気絶し倒れこみます。
「す、すごい。これで五等級の冒険者なんですか? 二人で紅蓮孔雀を単騎とは言えこうもあっさり倒すなんて」
アーシアさんが驚きの声をあげていますわね。
ワタクシ達が戻ると、アーシアさんが話しかけてきます。
「マナカさん、すいませんが緊急事態なので手伝ってください」
「当然ですわ!」
「よかった、今この街にいる冒険者でランクが一番高いのがあなた達なんです」
ぇー、話には聞いていましたが五が一番上って……
「どうやら、センネルのバカが動いたらしい。闇市での商品に紅蓮孔雀の卵を回収させてたようだ」
ガリアスさんが苦虫を噛み潰したような顔をしました。
「灰色の虎のメンバーがどうやら卵を持ち込んだようです、目撃情報が何件かきてますから。可能性は高いでしょう」
「あのバカどもですの? やはりあの時再起不能にしておくべきでしたわね」
「すでに、数名の犠牲者が出ている、すまないがお嬢ちゃん達は灰色の虎を探し出して卵を回収してくれ」
「了解ですわ、報酬は高くつきますわよ」
「わーったよ!」
あのバカどもをボコって卵を回収が今回の依頼ですわね。
二手に分かれるのが得策ですわね。
「ワタクシとナルリアちゃんでザルバ達を探しつつ、紅蓮孔雀を止めますわ」
「わかりました」
「我々はどうしますか?」
紅蓮孔雀制圧の方に人数を割く方が賢いと思うので、この布陣で行きますわよ。
「ベティさんとマウナさん、アルティアさんと中尉で孔雀たちを制圧していってくださいまし」
「了解よん」
「わ、わかりました」
色々な場所で煙も上がっておりますわね、急いだほうがよろしいようですわね。
「さあ、復帰最初の依頼ですわよ! 気合入れていきましょう!」
ワタクシ達は街中をかけだしましたわ。
次回は10/25の予定です