番外編其の三 ???にて
今回は番外編です
――とある城の部屋。
大きな部屋の中央に男が二人いる、ハゲ上がった頭の男と小太りな男だ。
ハゲ上がった男の服装は豪華な装飾がされており、身分の高さを伺うことができる。小太りな男は派手さは無いが立派な生地で作られた実用性の高い服を着ている。
二人の男は豪華なソファに向かい合って座っていた。
そして小太りの男は隣に座る獣人の女の腰に手を回しつつ、目の前にいる男に声をかけた。
「国王陛下は今どうしている?」
ハゲた男がその問いに答える。
「陛下は盛ったサルのように女遊びに夢中だよ」
「ふははは、世継ぎは必要だからな」
酒を飲みながら、小太りの男は愉快そうにしている。
「もはや陛下は放っておいても問題ないだろう、我々に反発する貴族はほぼ粛清済みだ、この国でもはや我々を止める事ができるものはおるまい」
「国王陛下は正直どうでもいいが。サルジーンの方はどうなってる?」
「あの国もそろそろ終わりだろう、クーデターのためのお膳立ては済んでいる。そろそろあのバカどもが自国の王に牙を剥くころだろうな」
ハゲた男も酒を飲みながら、事が上手く進んでるようで愉快そうな顔をしている。
「我が国が造園で兵を三〇〇〇にソンジンを将として貸し出すと言ったら、あっさりと革命軍を結成しクーデターを決意しようたわ」
「サルジーンの国王は無能だからな、不満を持つ国民や貴族は多い。こうなる事は簡単に予測できるさ、我々はきっかけを作ってやればいい」
「自分の国が滅ぶとは思ってもいないだろうな」
二人が物騒な話をしていると兵士が一人やってきた。
二人が兵士の方を見ると兵士は敬礼し喋り出す。
「報告します、今サルジーンでクーデターが開始されました」
「噂をすればなんとやらだぞ、大臣よ」
小太りの男が楽しそうに、ハゲ男を大臣と呼び話しかける。
そして大臣は兵士に質問をする
「ソンジン将軍はどうした?」
「クーデターの知らせを受け、兵三〇〇〇を持って出陣しました、おそらく予定通りサルジーンの国境付近で待機するものと思われます」
「そうか」
大臣も報告を受け満足そうにしている。
「ふははは、サルジーンの革命軍ども三〇〇〇の兵が味方だと思ってるんだろうなぁ。まあ、ソンジンがいるなら万が一も無いな」
小太りの男は本当に愉快そうに笑っている。
大臣の方も声に出して笑ってはいないが表情は笑っていた。
「サルジーン方面は間もなく終わるな。そうなると王国の方のセンネルはどうしてる?」
小太りの男がまたも大臣に尋ねると、大臣の方も資料を取り出し確認してから答えた。
「今の所はおおむね順調なようだな、ギルドをほぼ掌握している。コルリスや他の街から有力な冒険者を本部に集めている所も順調のようだな」
「センネルの方は監視を強化した方が良いな、コイツはどうも胡散臭い。計画通りにしていればいいが暴走して計画に狂いが生じても困る」
「……そうだな、センネルが暴走した場合、最悪暗殺も視野にいれるか」
「闇市なんて玩具もやったんだ、懐を温めるのに精を出しててくれりゃ楽なんだがな」
センネルの話題の時だけは両名とも、楽しいそうな雰囲気は無かった。
「しかし、王国を落とすとなるとヤツの利用価値はあるが……不安要素でもある」
「全く、がめつい無能は扱いにくくて困る」
二人はため息をついた……
「ファーレの娘も何やら国の立て直しで動いてるようだな」
「お前と同じ世界から召喚したようだぞ、調べによると星4の人物らしい」
「星4? はは、俺は5だぞ、しかもブレイブスター付きのな。だがガクザンと同じレアリティか、ソンジンは3だから少し荷が重いかな」
「どうする?」
大臣が男にどうするか尋ねると男は考えを巡らせる。
「国を建て直してるのは放っておこう、サルジーンの件が片付いたら、建て直した国ごと頂けばいい、そこまでいったらエルハリス王国も落とせるだろう」
「確かにな、エルハリスにも星5がいるが、ブレイブスターは持ってないからお前の方が上だろう、ファーレ魔王領とサルジーンを吸収した戦力にソンジン、ガクザン、お前がいるならエルハリスは取れるだろうな」
「王国さえ押さえてしまえば東の帝国も余裕なんじゃないか?」
「油断はできんが分の悪い話でもないな」
「ははは、数年前に魔王領にちょっかいを出してから、時間がかかってしまったが楽しくなってきたな」
「ふふふ、まさかこの小国が世界を取る事になるとはだれが思うかな?」
男二人は愉快そうに笑っている。
そして小太りの男が。
「よし、サルジーンが落ちたらすぐにファーレ魔王領を潰す。センネルが手筈通りやっているならファーレ魔王領北のコルリスには冒険者がほぼいないはずだ、そうなると簡単に落とせる街があるにすぎない。王城付近に集めた冒険者を先導し一気に王都を落とすこととしよう」
「今のところは順調だ、センネルだけは警戒しておこう」
そう言い大臣は部屋から出て行った。
小太りの男は酒をもう一口飲むと。
「せっかく異世界での第二の人生だ好きにやらしてもらうぞ。しかし俺が勇者の素質を持つってんだから笑えるな。ギフトなる力も『絶対的防御全身鎧』にブレイブスター特有の能力である聖剣『栄光の剣』この二つに適正5の光の魔法、ふふふ正直負ける気がしないな」
男は不敵な笑みを浮かべつつ、隣にいた猫が二足歩行してるような獣人、ケットシー族の女性を引き寄せた。
「ふふふ、この世界に感謝しなくてはな。こんな面白い舞台を用意してくれたことと、俺が実はケモナーだったことを教えてくれたこの世界に乾杯だ」
男は誰に言うでもなく呟いた後、グラスに入った酒を飲みほした。
次回は10/19予定です
次回から新章です