第六十四話 ガラス工房の息子さん
64話デス
も少しマウナ視点です
次の日、私達はガラス工房にやってきました。
本日は以前ガラス工房の親父さんに言われていた話をしにきました。
「おはようございます」
私達は挨拶をしつつ工房に入っていきます。
「おう、おはよう。待ってたぜ」
「お、おはようございます」
親父さんの横に背の高い、人の良さそうな顔のヒョロっとした若い男性が一緒におり挨拶をしてくれました。
「そ、その方が息子さん、で、ですか?」
アルティアさんが親父さんに尋ねております。
するとどうやらそのようでした、親父さんは息子さんを紹介します。
「おおそうだ、息子のチェイニーだ」
「よろしくお願いします」
チェイニーと呼ばれた青年が私達にお辞儀をしました。
「ではこの方が魔王領に来てくれるのでしょうか?」
「ああ、そうなる。こんななよっちいナリだが腕は確かだ」
「父さん、ナヨっちいは関係ないだろ」
親子仲は良さそうですね、それで息子さんは納得しているのか聞いてみましょう。
「それで、チェイニーさんは魔王領で働くということで宜しいのですか? 工房はまだ出来ていませんのでチェイニーさんの意見を聞きつつ造りたいと思っています」
私がそう言いますと、チェイニーさんは頷きます。
「ええ、昨日も父と話しましたが。僕も挑戦してみたいと思うので、そちらの国造りの手伝いをしたいと思います」
「ありがとうございます」
「マウナさま順調ですね、喜ばしい事です」
コリーが私に近付き、そう呟きます。
「な……なんて綺麗な人だ」
「え?」
チェイニーさんが突然トンチキな事を言い出しました。
「やだー、シェンナの事そんなに褒めちゃって」
「いや、シェンナ嬢ちゃん、彼はコニー嬢ちゃんに言ってるんじゃないかな?」
「なん……だと……」
後ろで初めてバウスとシェンナが漫才をしています。
チェイニーさんは私の横にいるコニーをずっと見ております、コニーも見られているのに気付いてか微笑んでおりました。
「コニーさんと言うのですか! 今度からあなたの国でお世話になりますチェイニーと申します!」
「ええ、よろしくお願いします。誠心誠意マウナさまのお役に立ってください」
「はい! よろこんで!」
何故かチェイニーさんが凄く気合を入れています、コニーの事を気に入ったようですね。
「親父さんこれでいいのでしょうか?」
「本人が気合入れてるなら良いんじゃねぇかな?」
「そうですか」
そして、細かい事を決めるべく話し合いを進めることになりました。
――
――――
「では、三日後にこちらに迎えの馬車を寄こします。それで宜しいですか?」
「はい、それで構いません」
やはりここはスムーズに進みましたね。
「魔王様、息子をよろしくお願いします。いっぱしの男にしてやってください」
「ええ、親父さんからのこの話が出たとき、こちらもその申し出は有難かったのでお互い様です」
「では、さっそく準備に取り掛かりますね」
私達も二人に挨拶をして工房を出ることにします。
「それでは、私達はまたコルリスに戻ることにしましょう」
私がそう言うとバウス達が準備を開始してくれます、とても有能な者たちです。
テキパキと準備が進みバウスが馬車に乗りやってきました。
「では、マウナ様いつでも出発できますぞ」
「はい、それでは行きましょう」
帰りも何事もなく時間通りにコルリスに着くことが出来ました。
私達は馬車を預けると熊の干物亭に行き宿を取ります。
アルティアさんは自分の孤児院に戻ります。
「マウナ様! 食事に行きましょう! ここのショーユ料理はまだまだ学ぶべきことが多いですよ」
「ええ、シェンナの言う通りです。とても興味深い味の品をよく考えています」
メイド二名は干物亭の料理に興味が尽きないようです、確かにここのショーユを使ったメニューは日に日に種類を増やし味もレベルアップしています、厨房担当の二人にはとても有意義なものとなってるようです。
私達は早速食事をすることにしました。
「な、なるほど。ここの親父は本当に侮れませんね、この魚は味が染みやすくするために細かい切れ目を入れていますねぇ」
「シェンナの言う通りですね、その切れ目からショーユがしみこみなんとも言えない旨味を出しています、ただの焼き魚では無いですね」
「ふーむ、二人とも勉強熱心じゃな。ワシは食べれるだけで幸せだというのに」
バウスがしみじみそう言うと、シェンナは目を輝かせ話し出します。
「シェンナも昔はそうでしたけどね、この人間の料理という考えはとても興味が湧きました。食べるという生きることに必要な行動を昇華し、楽しみに変えてしまうという事にですね」
「私もシェンナと同じですね、食という一つの文化を築いた方々を私は尊敬します」
この二人は食の事を話すのがとても好きなようです。
昔の私はこのように配下の者と会話をあまりしなかったためか新鮮な気分でいます。
こんなふうに考えて料理をしていた二人を私は今更ながらに知る事が出来ました。
皆のためにも良い国を造らないといけません。
「おや? マウナ様、なんだか嬉しそうですな?」
「そう見えますか? いや、二人を見ていると私は全然自国の事や自国の人々の事を知らなかったんだなと思いましてね」
「そうですか、それを知れたのは良い事ですな」
「ええ、そう思います」
食事を終え、私は三人に明日の事を話します。
「明日ですが、三名は馬車で魔王領に戻り迎えなどの準備をしてください」
「マウナ様はどうされます?」
「私はアルティアさんと冒険者ギルドに行ってみたいと思います。この大切な時期にセンネルなる人物の野望に巻き込まれたくは無いので、打てる手があるなら打っておきたいのです」
「分かりました」
コリーの質問に私は答えます。
「戻る時は熊の干物亭に設置してある転送陣で戻ります」
「了解しました」
「明後日には戻ります」
「お任せくださいー」
私達は各々部屋に戻り休むことにしました
明日は、アルティアさんと孤児院の事と冒険者ギルドの事を確認することにします。
次回は9/27更新予定です