第五十二話 醤油=資金!
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ムーロ再び!
ワタクシ達は再びムーロさんの経営するお店の方にやって参りましたわ。
店の扉を開けて中に入ると先日対応してくれた店員がやってきました。
「おはようございます、マナカさんですね」
「ええ、ごきげんよう。 ムーロさんはおります?」
「はい、おりますよ、マナカさん達の事を伝えたら是非会いたいとの事でしたよ」
「そうですか、ありがとうございます」
ムーロさんが是非と言っておりますか、案外醤油の事をどこかで嗅ぎつけたのかもしれませんわね。
さて、ワタクシ達は店員に案内されて店の奥へと向かいますわ
「おお、皆さんよく来てくださいました、お久しぶりですな」
ムーロさんが出迎えてくださいましたのでワタクシ達も挨拶を返しますわ。
ムーロさんが椅子を進めてくださったのでワタクシ達は椅子に座ります、少ししたら従業員の方だと思われる方がお茶を持ってきてくれましたわ。
「さて、本日皆さんが来たのは以前にマナカさんが言っていた話の事ですかな?」
「ええ、交易の間に入っていただきたいのですわ」
「交易は良いのですが品は何でしょうか?」
まあ、品が何かも分からなければどうしようもないですものね。
では、まず品を見てもらいましょうかね。
ワタクシは道具袋……忘れられてそうですがこれ重量を半分にしてくれる魔王城にあった便利な袋なんですのよ。
話がそれましたわね、ということでワタクシは道具袋から醤油の瓶を取り出しますわ、そしてその瓶をテーブルの上に置きます。
「これは? この液体が商品ですかな?」
「ええ、ワタクシがオススメする商品ですわよ」
「飲み物ですかな?」
ムーロさんはマジマジと瓶の中の液体を眺めた後そういいました。惜しいですわね、醤油なんて飲んだらえらいことになりますわね。
「残念ですが飲むにはキツイですわね、これは醤油という調味料ですわ」
「ショーユですか? まさかこれが今噂になってる熊の干物亭で使われている調味料ですか?」
どうやらムーロさんも熊の干物亭の醤油メニューを知っておりますのね?
既に食べていてくださると話は楽なんですがね。
「うふふ、流石はムーロさんですわね。すでに知っておりましたか」
「ええ、巷で結構な噂になってますぞ」
「もう、召し上がりました? 召し上がりになられたのなら説明が簡単なのですが」
味を知っていただくのが一番ですからね。
「ええ、頂かせてもらいましたよ。やはりマナカさん達が関わっていましたか」
ふむふむ、流行には敏感ですのね、流石は商会のリーダーになるだけの人物ですわね、味を知っているのならばそこら辺の説明は省けますわね、また今回も醤油料理を作るのかとなると材料とか今回は用意しておりませんしね。
さて、ワタクシがそう考えておりますと、マウナさんがムーロさんに話しかけました。
「このショーユを売って資金にしたいと思っています」
「確かにこのショーユは売れますよ、私の商人としての勘もそう言っています」
「ええ、ですのでこのショーユを売るために協力してほしいのです」
「ふむ……」
ムーロさんが考え出します。
さて、ワタクシの出番ですわね、今ここにいるメンバーで戦力になりそうなのは結局ワタクシくらいですものね。
「単刀直入に参りましょう、ムーロさんの所にこの醤油を売りたいと思いますわ、どうでしょう?」
ワタクシがそう切り出すと、ムーロさんはワタクシの方を向きます
「ほうほう、売り込みですか、それは分かり易くていいですな」
「ええ、ワタクシ達は急ぎで資金が必要なのですが、安く売るつもりはありませんわ」
妥協はしませんわよ、それだけの価値があると思っておりますからね。
「こちらがすぐに用意できる数は千本ですわ」
ワタクシの言葉に合わせてマウナさんが現在作ってもらっている瓶のサンプルを取り出しテーブルに置きマウナさんが補足説明を付け加えます。
「サイズはこのサイズですね、これが千です」
「ふむ、一リットルサイズですか、悪い話ではありませんな。今なら値段設定も我々で行えますからね」
そうなんですのよね、最初の強みはそこですわ。独占禁止法? しったこっちゃねぇですわ!
「そう言えば気になったのですが、資金とはどれくらい必要なのですかな?」
これにはワタクシでなくマウナさんが答えます。
「国を再建するためなのでかなり多く必要です、幾らでも欲しいと言ったところです」
「国ですか!? それはまた凄い話ですな、しかしそうなるとショーユだけでは稼げませんぞ?」
「はい、人も資源も足りませんし、それらを買うお金も人を雇うお金もありません。ですが一気には無理ですからショーユから始めたいと思ったのです」
やはりムーロさんも国の再建となると驚きますわよね。
「うふふ、問題ありませんわ、醤油の次も考えておりますわよ」
「え? 初耳なんですけど」
「――おお! ショーユの次のチョーミリョーを考えてるのか」
ナルリアちゃん目を輝かせておりますが調味料じゃありませんのよね
「醤油の次でありますか? お酢でありますかな?」
「お酢ではありませんわよ、そもそも調味料ではありませんわ」
「あらー、じゃあ何なのかしら?」
丁度良いですわねムーロさんにも聞いていただきましょう。
「それはですね、石鹸ですわ。この世界に来てワタクシ気になっていたのですが衛生面が少し弱いのですわ、これでは怪我や病気になった時によろしくありません、お風呂はあるにはありますが数が少なくそのお風呂もそこまで衛生的ではありません」
「あ、あぁ、た、確かにそれはワタシも思っていました」
衛生問題に同意するのは癒してのアルティアさんですわね。
「なるほど、面白い着眼点ですな。確かに今ある石鹸は何かプルプルしていますからな、アレの材料ってなんでしたかな?」
「ラ、ラレヴァの実をすり潰して抽出したエキスを固めたものです、ラ、ラレヴァの実から抽出したエキスは簡単な汚れを落としますから」
「ラレヴァでしたか、しかしあのプルプルはすぐに無くなってしまうし割と高価な品なので貴族階級が主に使っていますな」
「あの、プルいのそんな高価なんですのね……」
「は、はい。あれ一つ二五〇リシェもします」
え? あんなんで二五〇? 特殊プレイ用にしか見えないアレがですのよ?
「たっか! ちょー高いですわ!」
「石鹸ねぇ、いいじゃないのよ乙女的にはその辺りは問題でもあったのよねぇ、香水を付けすぎるとなんか嫌味だからねぇ」
「まあ、そこもワタクシに考えがありますので任せておいてくださいな……とはいえ、これをやるにも資金が必要なんですのよね」
ムーロさんが凄い表情で何かを考えておりますわ、ブツブツ何か言ってて少し怖いですわね。
ワタクシ達は全員でムーロさんに注目しておりますと、羊皮紙に何かをドンドンメモっていきますわ、数字が勢いよく並んでいきますわ。今まで自然過ぎて気になっていなかったのですがこの世界もアラビア数字なんですのね、やはりこの世界の色々な部分は異世界から来た者たちが作っておりますわね。
「マナカさん、ショーユ、石鹸以外の考えもありますか?」
「そ、そうですわね。これはかなり先になると思っておりましたが、国をあげての国民の教育ですわね、文字の読み書きそして簡単な計算は出来た方がよろしいですものね、ここで人材を育成すれば後の国力に繋がりますわよ」
「なるほど、直接的な売買でなくその人材の育成ですか、流石異世界から来た方は考えが突飛ですな、我々の世界では読み書きの出来ぬものも未だに多く、教育と言えば上流階級やそこそこ大きな商人の子供たちくらいですからな」
ワタクシの言葉に頷くムーロさん。
「して、マウナさんの国とはどこなのでしょうか? そこ次第では私の考えは改めることになりますが」
ムーロさんの言葉につばを飲み込むマウナさん、確かに魔王領となれば場合によっては断られるかもしれませんが……
「私の国はファーレ魔王領です、魔王領ですがこれからは人間との共存も本格的に考えないといけないと思っております。なのでこうして話をしに来ました」
「ま、まさか。魔王様でしたか」
ムーロさんも目を見開きマウナさんを見ております、やはりその反応になりますよね。
マウナさんが魔王領だと言った後、また少し考えるとムーロさんは顔を上げてこういいました。
「よろしい、プラム商会はマウナさんとマナカさんに投資いたしましょう、そしてそのショーユの販売一手を任せてはくれませんか?」
思いがけない大きな進展! 投資ですって? ムーロさんの言葉にマウナさんもベティさん達も明るい顔をしております。
「い、いいのですか?」
マウナさんが少し涙ぐみながらムーロさんの言葉に返します。
「いやー、ショーユだけでもいいのですが、私の商人の勘がですねここで貴女方と繋がっておくほうが儲けになりそうだと言っていましてな」
「ええ、ムーロさんの判断は正しいですわよ、ワタクシも元の世界ではクナギグループという大きな会社の娘でしたからね、損はさせませんわよ」
「そうでしたか、では改めてよろしくお願いしますぞ」
そう言ってムーロさんが手を差し出します、ワタクシもマウナさんもムーロさんと握手をすると割とあっさり話がまとまりましたわ。
そして日を改め醤油や投資について話を纏める事となりましたわ。
今日はとても大きな前進だと言えますわ。
次回は8/9更新予定
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