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少し残念なお嬢様の異世界英雄譚  作者: 雛山
第三章 昇格試験と国の特産物
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第三十九話 マナカ覚醒!!そしてナルリアの決断

第39話にしてついに主人公マナカのギフト覚醒!見逃せない話ですぞ。

そしてナルリアはどうなるのか?



 熊の干物亭にやってまいりますと、今日も沢山のお客がおりますわね。


「マナカちゃん、どの席が空くかわかるかしらん?」

「そうですわね」


 ワタクシは店内を見回します、するとやはりふと頭の中に次に空く席がどこかが浮かんできます。


「カウンター付近の壁際の席が次に空きますわね」

「分かりました、その付近に行きましょう」


 そして五分しないうちにワタクシのしめした席が空きました。

 あれ? 頭が更にクリアになる感じがしますわ。


「ちょっと! マナカちゃん貴女何光ってるのよ」

「え?」


 ベティさんがワタクシが光ってるとかおっしゃておりますわ、ワタクシは自分の手を見ますと……光ってますわ……そして光が収まると……



食卓を(der Tisch.)去る(verlassen)(das)



 謎の単語が頭に浮かんできましたわ……ちょっと、まさかこれがワタクシのギフト(チートスキル)ですの?


「うわああああ! マジですの? これがですの?」

「どうしたのよマナカちゃん!」


 ベティさんに肩を揺さぶられて我に返りますわ。


「マウナさん……ギフトってどうやって自覚するか聞いたことあります?」

「モルテの話だとギフト名が突然頭の中に浮かび上がりそのギフトの効果と用途を自動的に理解する。モルテはそう言ってましたね」

「て、ことは……」


 ワタクシ、とても泣きたい気分ですわよ……

 マウナさんが凄く嬉しそうな表情でワタクシを見ます。


「まさか!マナカさんがギフトに覚醒したんですか!!」

「あらあら、凄いじゃないのよぉ。ギフトって異世界から来た人か選ばれた人だけが持つ特別な力よねぇ、マナカちゃんもギフト持ちなのねぇ」


 止めてくださいましその期待に満ちた眼差し……痛い、痛すぎますわ……

 ええ、やっとあの変な現象の事を理解しましたわよ、ワタクシ完全にハズレ星4ですわよ


「ど、どんな、ち、力なんですか?」

「――マナカ凄い」


 ぎゃー!アルティアさんとナルリアちゃんまで、見ないでくださいまし。

 ワタクシ生まれて初めてこんな惨めな気分になりましたわ


「マナカさんの事だから凄い力にきまっていますよ、伝説によると天候を操った人もいるという話ですからね」


 天候どころか皿の一枚も動かせませんわよ……期待値がどんどん高くなっていますわね。


「あら? マナカちゃん何で泣いてるのよ」

「きっとギフトに目覚めて感動してるんですよ!」


 逆の意味で泣いてますわよ。


「――マナカのギフトどんな能力?」


 純粋な目が死ぬほど痛い……


「もう、使ってみせましたわよ……」

「え? 何時ですか?」

「この席に来る少し前に」

「何か特殊な事……まさか……」


 マウナさんが嬉しそうな顔から一転不安そうな顔になりました。


「ええ、ワタクシのギフト名は『食卓を去る者』ですわ……」

「今まで、次にどこの席が空くのが分かっていたのはギフトの力だったと……」

「ええ、そうですわ。ワタクシ、自分がこれほど情けなく感じたことは生まれて初めてですわよ、まさか一回死んでからこのような感情を感じることがあるとは夢にも思いませんでしたわ」



 ワタクシが色々と読んだ小説でも異世界に行った話はよくありますわ、そしてその方々はとても強力なスキルを手に入れておりますわよね? 『ハズレスキルが〇〇』『残念スキルが〇〇』のようなタイトルの小説でもここまでの()()()()()なんて無いのじゃないかしら?『効果は食堂や飲食店で次にどこの席が空くのかわかる』それだけの能力ですわよ!



「しかもこの能力、食堂や飲食店限定の能力なんですのよ……」


 ワタクシ、マウナさんに何と言えばよいのでしょう?


「マウナさん……」

「なんですか」


 ワタクシ、マウナさんに頭を下げますわよ! ええ、不甲斐ない自分が情けないですわよ。


「マウナさん、ハズレ星4で申し訳ありませんわ」


 ワタクシの行動に、マウナさんはわたわたとしております。


「ちょっと! マナカさんやめてください! マナカさんはハズレなんかじゃないですよ! それは確かにギフトはあんなですけど」


 マウナさんはすぐに否定してくださいました。

 マウナさんの言葉は有難いですが最後の言葉だけはキツイですわぁ、確かに()()()ですけど、あんな言うなよ……


「マ、マナカさんはギフトなんて、な、無くても十分凄いですよ」

「――マナカ凄い!」

「マナカちゃん、今日はお姉さんがお昼をおごってあげるわね」

「皆さま、ありがとうございますわ」


 皆さんの心遣いが嬉しいやら悲しいやら、しかしワタクシもこんなことでくよくよしてても仕方ありませんわね。

 ナルリアちゃんの事も考えねばなりませんわね。


「さあ、ワタクシはギフトなんて持っていなかったという事にしまして食事を頼みましょう!」

「そうですね、ギフトなんて無くてもマナカさんはマナカさんです」


 ワタクシは情けない気持ちを振り払い、食事をするためにシェリーさんを呼びます。

 少ししてシェリーさんがやってきました


「いらっしゃい! って一人増えてるわね」


 シェリーさんがナルリアちゃんに気付いたようですわね。


「訳ありでして」

「まあ、冒険者なんてやってるとそんなこともあるわよね、ところで注文は何にします?」


 マウナさんの答えにシェリーさんもナルリアちゃんの恰好から察したのか気を使ってくれたようですわね。

 そしてワタクシ達は注文をしていきます。


「そうですわね……ワタクシはビーフシチューがいいですわ」

「お姉さんはハチミツとバターのパンケーキね」

「わ、わたしは。リゾットで、お、お願いします」

「私もアルティアさんと同じで」


 ナルリアちゃんはどうしていいのか困ったような顔をしておりますわね。


「ナルリアちゃんは何を頼みますの?」

「――読めない。ワタシ文字読めない」


 アウチ! そういう事でしたのね。チヨルカンも暗殺術とかどうでも良いもん教えてないで文字教えておきなさいな!


「ナルリアちゃんって言うのね、それじゃあ甘いジャムのトーストでいいかな?」

「――それでいい」


 ナイスフォローですわシェリーさん! 今度デートに誘ってあげますわ。


「さて、ワタクシのギフトは取り合えず無かったことにしまして、ナルリアちゃんをどうするか考えないといけませんわね」

「ダークエルフの子供ねぇ、孤児院に預けるのが妥当かしらぁ?」

「う、うちの孤児院で、あ、預かりましょうか? お金は無い孤児院ですが」

「そうですわねぇ……ただ奴隷印をどうにかせねばなりませんわよね」


 ワタクシ達がナルリアちゃんの事を話していると、ナルリアちゃんが不安そうな顔になっていきますわ。


「――ワタシを捨てないで! マナカの奴隷でいいから連れて行って!!」


 ナルリアちゃんはワタクシ達に訴えてきます。


「ナルリアちゃん、私やマナカさん達は冒険者という危険を伴うお仕事をしてるんです、私達についていくという事はとても危険なんですよ」

「――嫌だ! まだ会って少しだけど、ワタシを人として扱ってくれたマナカやオカマ達と離れたくない」

「オカマって私の事?」

「そ、それ以外、い、いないかと」

「こんな小さい子にまでオカマって呼ばれるなんて世知辛いわねぇ」

「ちょっと黙っていてくれませんこと?」


 ナルリアちゃんの主張はちゃんと聞くべきですわ、それも彼女の自由ですからね


「しかし、死んでしまう事があるかもしれませんのよ? ナルリアちゃんは幸せになる権利がありますのよ?」

「――かまわない、どうせ今までは死んでいたのと変わらないから! ワタシはマナカの奴隷でいい、だから連れて行って、戦えと言われれば戦う。戦いになってもチヨルカンで教えられたことが役に立つ!」


 ナルリアちゃんは泣きそうな顔で必死に訴えてきますわね。


「ナルリアちゃん、本当に危険なんですよ」

「――魔王さまの言葉でもそれは聞けない」

「お姉さんは本人の意思を尊重したいわね」


 ワタクシ達が話している所にシェリーさんとアニタちゃんが料理を運んできましたわ。


「おまちどうさま」


 アニタちゃんがナルリアちゃんの前にトーストを置きます、シェリーさんもワタクシ達の前に料理を並べていきますと


「話は途中から聞いちゃったけど、その子はマナカさんが好きなんでしょ? ならば連れて行ってあげたらどう? マナカさんといる事がその子にとっての幸せだって言うならね」

「わたしもおねえちゃんといるとたのしいよ」


 二人の援護射撃にコクコクと頷くナルリアちゃん。


「――マナカ、ワタシ頑張る!」

「はぁ、わかりましたわ。ナルリアちゃんをワタクシのパーティーメンバーとして認めますわ、ただし危なくなったら逃げるのですよ」

「――マナカ! ありがとう!」


 こうしてナルリアちゃんが正式に参入しましたわ、ワタクシって本当に甘いですわよね……


「ナルリアちゃん改めてよろしくねー」

「よ、よろしくお願いします」

「ナルリアちゃん、マナカさんの言うことは良く聞いてください」

「――分かってる!」


 満面の笑みを見せられてはもう何も言えませんわね、さて食事と行きますか。


「それでは食事を頂きましょう」


 ――

 ――――


 食事が終わりお茶を飲みながらこれからの事を話します。


「マナカさん、私は明日から二、三日ほど魔王領に戻ろうと思います」

「そうですわね、ワタクシも色々気になる事がありますのよね」

「召喚の方も行いたいですね」

「あら、召喚? 私も立ち会いしたいわね」


 召喚の立ち合いもしたいと言うなら皆さんを魔王領に連れていくには良い機会ですわね。


「マウナさん、皆さまを魔王領に呼ぶには良い機会だと思いますわ」

「そうですね、分かりましたそれでは明日は皆さんを魔王領に招待したします」

「ま、魔王領、は、はじめて行きますね」


 これで明日の事は決まりましたわね、そして今日はこれからは明日の準備に当てることとしましょう。


「今日これからは自由としましょう、明日はこの熊の干物亭に集合でよろしいかしら?」

「ええ、いいわよ」

「わ、わたしもそれでいいです」

「わかりました」


 皆さんそれでいいようですわね、ナルリアちゃんも頷いておりますし。

 ワタクシはナルリアちゃんの装備を買いに行かねばなりませんわね。


「皆さまはどうされます? ワタクシはナルリアちゃんの装備を買いに行こうと思いますわ」

「わ、わたしは一度孤児院に戻って手伝いをしようかと思います」

「お姉さんはマナカちゃんについていこうかしら? 装備をメンテナンスしたいしね」

「私は一度ギルドに行き三日ほど街から出る事を伝えておこうと思います、その後も少しやっておきたいことがありますので別行動しますね」

「了解ですわ、それでは皆様お店を出ましょうか」


 ワタクシ達は各々行動を開始しました。



次回は6/19更新予定

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