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ちょっと不思議な鉄道旅

ちょっと不思議な鉄道旅 都市の路線

作者: 白波

 軽快な発車ベルのあと、扉が閉まる音が車内に響く。

 それから数秒。大都市から旅発つ私を乗せた列車は大都市の駅をゆっくりと出る。


 駅の周りを囲むように立つ高層ビルやそれらを分け隔てるように通る幅の広い道路、そこを往来するたくさんの人や車。その少し上を通る思い思いの乗り物に乗った魔法使いたち。反対側は高速鉄道が通る高架橋の壁が通路に立つ人々の間から見える。

 その風景の中にはこの都市での暮らしが確かにあって、往来する人や車には確かな目的地があるのだろう。


 ある程度まで速度が上がるのとほぼ同時に列車は速度を落とし始め、まもなく次の駅に到着しますというアナウンスが車内に流れる。


 建物が遠くなったと思えば、すぐに駅のホームが現れ、そのホーム上には列車を待つたくさんの人の姿がある。この路線には快速や特急は走っていないため、ホーム上でこちらを見て待つ人々はほぼ間違いなくこの列車に乗り込んでくるのだろう。


 勢いよくホームに侵入した列車は速度を落としながらホームの端に向けて進んでいくが、その最中に人の姿が途切れることはない。車内ではその駅で降りるであろう人々が席を立ったり、人の波をかき分けて扉付近に向けて移動をし始める。そんな中、速度を落とし続けていた列車はホームいっぱいに停車する。そのタイミングでちょうど反対側もこちら以上に人を詰め込んだ列車が到着し、ホームは降りる人と乗る人が入り乱れ、小さな混乱が起こる。


「ご乗車ありがとうございました……」


 そんな状況ではあるのだが、私が乗り込んだ列車も扉を開き、それと同時にアナウンスが流れ、車内に詰め込まれていた人のうち何人かが一斉に扉の外へ向けて移動し始める。それが終わると、今度はホームで待っていた人たちがこれでもかというほど列車に乗り込んでくる。


 たくさんの人々を押し込んだ列車は扉を閉め、次の駅に向けて走り出す。


 運よく始発駅で席を確保できていた私の隣に座るサラリーマン風の男性はコクリコクリと首を縦に動かし居眠りを始めた。せっかくの旅なのだから、隣に座った人とおしゃべりをしてみたいなどと考えていた私であるが、疲れて眠っている人を起こすほど優先された目的ではない。


 結局、そのサラリーマン風の男性は数駅先で飛び起きて、焦って降りていく。


 そんな彼は人ごみをかき分けて降りられたのかと心配になるのだが、駅を離れるとき、ホーム上の人ごみに紛れ、階段に向かう彼の姿を見つけて私はなぜかほっとする。

 そのころには私の横にはまた別の男性が座っていて、スマホを操作していた。


 次こそは話しかけようと行きこんでみるものの、大都市の車内でそれはどうかと思いとどまる。


 結果的に私の横に座る人は何度も入れ替わったか、結局話しかけるという目的はかなわず、電車に乗り込む人も徐々に徐々に減っていく。


「まぁいっか」


 旅人っぽく一期一会の出会いをしてみたいなどと思ったが、そんなものは意図的にするものではないだろう。


 考えを改めた私は流れていく大都市の車窓を眺めながら、息を吐く。


 適当に郊外に出たらいったん列車を下りてみるのもいいかもしれない。どうせ、目的地などはっきりとしていないのだ。

 この路線の先にあるのは魔法大学校なのだが、そこへ行くとも限らない。もしかしたら、私の気まぐれ次第では途中で乗り換えてほかのところへ行く可能性だってある。何が言いたいかといえば、この旅のすべては私の気まぐれと電車の都合で決まるということだ。


 そんなことを考えている私を乗せた列車はビルの間を縫うようにして走り抜けていった。

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