Episode:09
「あ、そしたらとりあえず、ここまで来ていただいたら……どうでしょう? シーモアたちに知らせるついでに、探してきます」
あたしがこう言うと先輩、少し困ったような表情になった。となりのタシュア先輩を気にしているみたいだ。
けど銀髪の先輩は、黙ったままだった。シルファ先輩がどうするか、面白がっているらしい。
しばらくして、やっとシルファ先輩が言った。
「そうしたら……頼んでもいいか? 細かいことは全部、私から説明するから」
「はい!」
いつも面倒をみてもらってばかりだから、先輩の役に立てるなんてすごく嬉しい。
このまま寮でロア先輩探して、そのあとみんなを集めればすぐだろう。それからもう一度詳細を詰めれば、けっこう早いうちに出発になりそうだ。
そんなことを考えながら、あたしはみんなを探しに出た。
ロア先輩はすぐに見つかった。今朝言っていたとおり、部屋で魔視鏡の改造をしていたのだ。
「あ、ルーフェ、ちょうどいいとこに。ちょっとそっちの石、取ってもらえる?」
「これですか? いったい何に……?」
「うん、ちょっと交信速度、上げられないかなってね」
下がらないといいけど……。
魔視鏡は、魔法の呪文の要領で行動パターンを幾つも書き込んだ石を、何種類も組み合わせて動かす。とうぜん石と書き込まれた手順が多ければ多いほど、出来ることは多くなる。
ただいろいろと石によって特徴があるし、手順も組み合わせを間違えると逆効果だ。だから、上げるつもりが下がった、なんてことも多かった。
そんなことを思いながら見ている間に、ロア先輩、手際よく組み上げてフタを閉める。
「さ、これで上手く行けば、やりやすくなるはず」
「そうですね。――って、いけない」
うっかり大事なことを、忘れるところだった。
「ロア先輩、エレニア先輩……どこにいるか、知りませんか?」
「エレニア? 今日は診療所の手伝いって言ってたけど……どうかしたの?」
不思議そうなロア先輩に、簡単に事情を説明する。
「なるほどね。でもルーフェなら大丈夫だよ。
じゃぁこっちも一段落したし、一緒に捜しに行ってあげようか?」
「あ、はい、助かります」
ほんと、ロア先輩は頼りになる。
2人で急いで部屋を出た。
「準備とか大丈夫? いろいろあるって、エレニアがよく言ってるけど」
「いちおう……慣れてますから」
太刀一つで戦場、なんていうことまであった。それに比べれば、準備をできるだけマシだ。