Episode:65
「何をひがんでいるのですか? 困った人ですね。
――よく似合っています。綺麗ですよ」
「え?」
今確か、「綺麗」と……?
騒がしい後輩たちを除けば、そんなことを言われたのは初めてだった。
驚いてタシュアの顔を見る。
その顔に、優しい微笑みが浮かんでいた。
急に胸が熱くなる。
「……ありがとう……」
なんだかタシュアの顔を見ていられなくて、下を向いた。
どちらも黙ったまま、時間だけが過ぎる。
「あ〜、シルファ先輩いたいたぁ♪」
「ミルドレッド、場所をわきまえてもう少し静かになさい」
静寂を破った嬌声に、間髪入れずにタシュアの叱責が飛んだ。
――もっとも、ミルに効くとは思えないが。
あの子を止められるものが、この世に存在するとは思えない。
見ればルーフェイアをはじめ、シーモア、ナティエス、ミルの4人組が、仲良く入ってきたところだった。
「すみません……」
「ルーフェイア、あなたが謝ることではないでしょう?」
「え、すみま……あ……」
何故かミルの代わりに謝ったルーフェイアに、今度もタシュアが容赦なく突っ込む。
この子達に、さっきのタシュアなど想像もできないだろう。
「ルーフェイア、黙ってたほうがいいんじゃないか? どうせ墓穴掘るだけだろうしね。
――シルファ先輩、これを届けにきたんです」
4人の中ではリーダー格のシーモアが、私に写影を差し出した。
「あ」
「おや」
つい2人で、そんなことを言ってしまう。なにしろたった今、取り合いをしていたのと同じものだ。
「あれ、いらなかったですか?」
「え、あ、いや、その……」
何も知らない後輩に、うまく言い繕えない。
「もらっておいたらどうです? せっかく後輩たちが持ってきてくれたのですから」
「ああ……」
タシュアに言われて、しぶしぶ写影を受け取った。
だが――周囲に写る後輩たちの、嬉しそうな微笑み。
「そういえば、お礼をしないといけないんだったな」
「あ、ケーキ……作って、頂けるんですか?」
最初の約束をちゃんと覚えていたのだろう。ルーフェイアが嬉しそうな声をあげる。
「なになに〜? シルファ先輩のケーキ??」
「え、ほんとなの? うわぁ、ルーフェイアいいなぁ」
「うーん、食べてみたいね」
他の後輩たちも騒ぎ始めた。
それを見て、思いつく。
「そうしたら……今度の休みに、腕によりをかけて作ろう。みんなで好きなだけ、食べるといい」
可愛い下級生たちの顔が、ぱっと輝いた。
「それって、お腹いっぱい食べていいってやつですか?」
「ああ。たくさん作るから、手伝ってくれないか?」
4人が顔を見合わせる。
「やったぁ!!」
図書館中に、歓声が響き渡った。
Fin
◇お知らせ◇
明日10/18より、第9作の連載に移ります。
いつもどおり“夜8時過ぎ”の更新です。
第1話は「小説家になろうで検索」「筆者サイト」等で、よろしくお願いします
◇あとがき◇
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