Episode:62 完了
◇Rufeir
「よ。どだったんだ?」
「あ、イマド」
あの大騒動から1週間ほどして、あたしたちはようやく、学院へと戻ってきた。
ちなみにいきなりテロで始まった建国祭のほうは、殿下の誘拐事件に絡んで首謀者が捕らえられた――ただし重体――こともあって、警備は強化したもののそのまま続行された。
さすがに伝統ある国なだけあって、雅やかな式典のオンパレードだった。
――殿下、どうしてるかな?
救出後どうしたわけか殿下のあたしたちへの対応は完全に変わって、警備を兼ねながら、あちこち連れて行ってくれたりした。
別れぎわに来年の建国祭にもみんなで来るよう、ずいぶん説得されたし。
けど肝心の学院の方は、授業のレポートがたまっていたりと、楽しんできたツケが回ってきている。
――みんなで手分けしてやれば、早いかな?
ただそうすると、どういうわけかあたしの分が多くなる。
「数学と物理、まとめといてやったぜ」
「ほんと? ありがと」
何事も手回しのいいイマドが、ノートを差し出した。開いてみると確かに、休んでいた間の授業が、わかりやすくまとめてある。
でもざっと最後まで見てみて、敵地で包囲された気分になった。
「こんなに、進んじゃったの……」
追いつけるかどうか自信がない。
「教えてやるって。それよりなんか、アヴァンじゃ大変だったらしいな?」
「ううん、たいしたこと、ないの。ちょっと誘拐されただけ」
言った途端、イマドが呆れ顔になる。
「おまえなぁ、誘拐をンな簡単に言うなって」
「え? でも、たいしたこと、なかったし……」
閉じ込められたうちにも入らないような誘拐なんて、物の数にも入らないだろう。それよりもあたしとしては、爆弾テロのほうが許せなかった。
「もう、あんなこと……ないと、いいんだけど」
「ホントだな」
そこへシーモアたちが来た。
「イマド、話してるとこ悪いね。ルーフェイア、ほらこれ」
「へぇ、似合ってるな」
彼女が差し出したの、例のみんなでドレスを着た時の写影だ。
「シーモアも別人みたいだな。っててめぇ、危ねぇな、殴るなよ!」
「自分の言葉に責任くらい、持つんだね」
なんだかちょっと腹が立つ。
イマドもイマドだけど、シーモアもシーモアだ。何も殴ったり、しなくていいのに……。
「これ、シルファ先輩か? よくあの先輩が、こんなもん着たな〜」
たいして痛くもなかったみたいで、また写影を手にしたイマドが感心する。
でも中央に写るシルファ先輩、ほんとにどこかの令嬢みたいだ。
――そうだ。
いいことを思いつく。