Episode:03
「呼んだのは、私ではありませんよ」
「え??」
イマド、確かに「タシュア先輩が」って言ってたのに。
でも怒られないところを見ると、タシュア先輩が全く無関係というわけでもないらしい。
首をかしげるあたしに、シルファ先輩が言葉をかけた。
「いや……呼んだのは私なんだが」
「えっ! あたし……タシュア先輩が、って」
「ですから、私は呼んでいませんよ」
イマドったら……。
きっと彼のことだから、シルファ先輩から話を聞きながら、タシュア先輩だけ頭に残ったんだろう。
けどさいしょからシルファ先輩だとわかってれば、あたしこんなに、どきどきしなくて済んだのに。
「えっと、じゃぁ、ほんとに……タシュア先輩じゃ、ないんですね?」
「ああ。私が呼んだ」
「やれやれ……また何か言われるとでも思ったのですか」
タシュア先輩の視線が冷たいけれど、とりあえずほっとした。シルファ先輩なら優しいし、ことあるごとに怒られなくて済む。
「それで、話ってなんですか?」
「仕事の依頼だ」
「?」
また混乱する。
シルファ先輩と違って、あたしは傭兵隊の受験資格さえ、満たしていない。だからあたしに、任務が回ってくるはずもなかった。
だいいち一般生のあたしが一緒に行ったりしたら、むしろ減点対象になるんじゃないだろうか?
話が飲み込めないあたしに困ったのか、シルファ先輩は助けを求めるみたいにタシュア先輩の方を見たけど、知らん顔をされた。
――意外とシルファ先輩にも、厳しいんだ。
自分のことは自分で、ってとこなんだろうか。
「すまない、言葉が足りなかったな……」
「足りない、というレベルではないでしょう」
申し訳ないけど、こればかりはタシュア先輩に同意したくなる。「説明は簡潔に」とはよく言われるけど、簡潔すぎるのも問題だ。
何よりシルファ先輩への依頼が、どうしてあたしと関係あるんだろう?
「その、なんだ、今回の任務で子供が必要なんだ」
「子供……確かにあたし、小さいですけど……」
なんか面と向かって言われると、ひどい言葉のような気がする。
でも、否定できないところが……。