Episode:22 変化
◇Rufeir
学校での騒ぎ以降、さすがに屋敷の外へは出ずに、すませることになった。
――最初からこうしてくれればよかったのに。
でもおかげで、格段に警護が楽になってた。
屋敷の内外はもともと、常駐の警備の人や、雇われた学院の先輩たちが固めてくれてる。だからあたしたちは、同室と隣室とに別れて、殿下の相手をする程度で済んだ。
「ルーフェイア〜、殿下呼んでたよ〜♪」
「え、また……?」
ただこの殿下の相手、なぜかあたしばっかり、やるはめになってしまっている。
「しょうがないじゃん、ご指名だもん♪」
「その言い方、やめて……」
――すごく、嫌な響きなんだけど。
もっともミルになんか、通用するわけがない。
「え〜、どうして〜? このまま行ったら玉の輿だもん、サイコーじゃない♪
ルーフェイア、いいな〜♪♪」
とんでもないことを、面白そうに言ってのける。なんだか目眩がしてきて、無視してシルファ先輩に、呼ばれたことを言いに行った。
殿下に呼ばれたときは、シルファ先輩と二人で付くことになっている。
本当は最初、殿下はあたし一人だけを最初呼んだのだけど、それだとやっぱり心配だ。何かあったときに、守りきれないかもしれない。
同じように「一人だけは危険」とシルファ先輩も言ってくれて、あたしからもう一度お願いして、どうにか殿下は折れてくれた。
ただ屋敷からは出ないから、最初にくらべれば気楽だった。
シルファ先輩と二人、ドアごしに声をかける。
「あの……何か、ご用ですか?」
許可が出て中へ入ると、なんだか殿下、本を幾つも広げてるとこだった。
「ああ、来たか。
いまローム文明についてまとめていたんだが、君なら詳しいことを知ってると思ったのでな」
この数日であたしが歴史――特に戦史関係――にやたら強いことは、殿下に知れてしまっていた。
なにしろうちの家、4000年は続いている。その上殆どの動乱に何かの形で関わってるわけだから、イヤでも歴史に強くなるしかない。
「その、時代にも、よりますけど……。ですけど、ひととおりなら」
「こんな資料が出てきたんだ。どう思う?」
いろいろ、珍しい資料を見せてもらえるのは、嬉しいけど。
歴史があんまり好きじゃないらしいシルファ先輩は、とっくに部屋の隅だ。どこの棚から出したのか分からないけど、いつもどおり古いお菓子の本を読んでる。
あたしは、殿下が見つけた資料を覗き込んだ。
「ローム末期みたいですね。橋がかかった直後……え! これもしかして、ロームから逃れてきた人たちが、書いたものじゃないんですか?!」
「やっぱりそうか。読んでみるか?」
「いいんですか?」
驚いて尋ねると、殿下が資料を差し出した。