Episode:20
でも代わりに、シルファ先輩が答えてくれた。
「ナティエス、殿下じゃない。ルーフェイアはあの魔法を、砲弾に使ったんだ」
「――え?」
意味がわかんなくて、あたしもシーモアも考え込む。だって防御魔法を砲弾って……意味なさすぎだし。
悩んでるあたしたちに、シルファ先輩が言った。
「二人とも、ああいう種類の砲弾を硬い箱の中に入れて炸裂させたら、周りがどうなるか分かるか?」
「え? 周りって言われても……そういう箱の中でなら、別に被害とか、出ないですよね」
そうやって爆発させて、爆弾の処理することあるし。
「そうだな。
じゃぁ、箱の代わりに砲弾の外殻を、防御魔法で強化したらどうなる?」
「そんなことしたら、箱に入れるのといっしょで中だけで――あっ!」
思わずシーモアとあたし、顔を見合わせた。
――ルーフェイア、すごすぎ。
あのレア防御魔法って意外とむつかしくて、ちゃんとダメージ止められるくらいに使いこなせる人って、教官でもほとんどいないの。
それに使いこなせても、息止めてられる間くらいしか持たないし、範囲も小さい子がやっとくらい。しかも一回使っちゃうと、空間の属性バランスが大きく崩れるとかで、同じ場所じゃしばらくの間使えなくなっちゃう。
でも発動してる間は、その効果範囲内なら、ほとんど無敵っていい魔法だった。だから昔は、イザってときに盾や兜にかけたって言う。
そんな魔法を、砲弾の外殻にかけたら。
「中の火薬が爆発しても、砲弾自体が炸裂しなきゃ、不発といっしょってことか……」
「そういうことだ」
なぜか小さくなっちゃってるルーフェイアのこと、あたしたち肩叩いた。
「すごいじゃない、ルーフェイア。おかげでみんな助かったんだね」
「それは……周辺の魔力の条件、良かったし……砲弾も少なくて、早くから見えたから……」
褒めたのにルーフェイア、ますます小さくなっちゃってる。
「あと、先輩たち……殿下かばいながら防御フィールド、作ってたし……」
ほんとに彼女、自慢とか自信とかどっかに落としてきた感じ。これだけのことしたんだから、もっと堂々としてればいいのに。
これって言い換えたら、それだけのことをあの一瞬で見抜いて、それにあわせて行動したってこと。
あたしたち、ぜんぜん気づかなかったのに。
そして思った。ルーフェイアが少年兵あがりってことは聞いてたけど、それって……こういう場所だったんだ、って。
こんなことが、日常茶飯事の場所。それってあたしでもちょっと自信ないのに、ルーフェイアみたいなおとなしい子には、どれだけ辛かっただろう?
だったらちょっとくらい泣き虫でも、しょうがないのかも。