Episode:18
「シーモア、その辺にした方がいいよ。このお嬢さんたち口で言うわりには、”庶民の”あたしたちと同じにしか、喋れないみたいだもの。
適当にしてあげないと、きっとショックで心臓麻痺おこしちゃう」
学院の生徒なんてみんな、数か国語喋ってあたりまえなんだけど。あたしだって、3つや4つは喋るし。ルーフェイアなんてもっとすごくて、出来ない言葉の方が少ないの。
「あなたたち、なんの権利があって――」
「権利? んなもの、あんたたちだってないだろうに」
シーモアってば険悪〜♪
けどこの面白いイベントも、何かがぶつかるみたいな音が、遮っちゃったの。
「なんだ?」
シーモアと一緒に、窓から外を覗いてみて。
「事故……?」
見えたのは、学校の塀に突っ込んでる車だった。かなりの勢いだったみたいで、前のあたりがひしゃげてる。
話が聞こえたみたいで、殿下も他の女子も、窓へ寄ってみんなで野次馬。
「でもなんだって、こんな場所に?」
そこへ、ルーフェイアの鋭い声が響いた。
「――ダメっ、下がって! 伏せて!」
「どうしたっ!」
教室の外で待機してた先輩たちが飛び込んできて、一瞬で状況掴んだみたいで、殿下を引き倒して覆いかぶさる。
そしてルーフェイアの動きは、もっとすごかった。呪文を唱えながら、お嬢さんたち突き飛ばす勢いで前へ出る。
「――エレメンタル・ブレス!」
誰でも知ってる、でもホントに使える人は少ないレア呪文。ほんの短い間だけど、いろんなダメージをシャットアウトしてくれる。
けど、どうしてこんな呪文?
そのとき、窓ガラスが割れたの。飛び込んできたのは、どう見たって砲弾が二つ。それがごろっと、床に落ちて転がる。
気がついたお嬢さんたちが、一斉にパニック起こして悲鳴あげて。
でも。
「――不発?」
そうじゃなかったら今ごろ、大惨事になってるはず。
「今のうちに!」
ルーフェイアの警告。ただ今度はお嬢さんたちも分かったみたいで、教室の外へ我先に逃げ出して。
「シーモア、ナティエス、殿下を頼む!」
「あ、はい!」
シルファ先輩に言われて、あたしたち慌てて殿下と一緒に部屋を出る。
「先輩、あそこです」
「そうらしいな。報告して人を回してもらおう」
ルーフェイアとシルファ先輩の会話が、背中から聞こえた。
ってよく見たら、殿下青ざめちゃってるし。