Episode:16
「あ、あたしも〜」
なにが「あたしも」かは分からないけれど、ミルもバッグから武器を引っ張り出した。
「それ、ふつうの小銃じゃない……よね?」
「あれ、ルーフェ知らない? これね、かなりの数連射できるヤツなんだ。試作品、ちょっともらってきちゃった〜。
あ、でもね、いつもの小銃も持ってるよ♪」
「………」
ミルって……本当にわからない。
なんだか頭痛を覚えながら、あたし今度は後ろへ振り向いた。
「ナティエスは?」
「あたしは、砥いどいたもの。でもいちおう、見といたほうがいいかな?」
彼女も武器を取り出した。あまり見かけない、諸刃の手のひらサイズの刃物だ。
たしかあたしの太刀と同じで、東方でよく使われてたもので、苦無って言ったと思う。こういった隠密行動にはシーモアの武器と並んで、かなり有効だろう。
「ほんとは毒塗っとくんだけど、まだいいだろうし」
ナティエスも見かけによらず凄いところがある。そういえば、彼女これで、スリの名人だとも聞いたし……。
もしかして芸が無いの、あたしだけなんだろうか?
――ちょっと、ショックかも。
なんとなく落ちこんでいると、エレニア先輩があたしたちに声をかけた。
「はいはい。じゃぁみんなここで武器の手入れをして、そのあと食事にしましょうね。
――先輩、これでよろしいですか?」
「ああ、すまない」
リーダーのシルファ先輩が短く答えて、夕方の行動が決まる。
「あ、じゃぁさ、みんなで食べにいこ? あたしね、いいお店知ってるから〜♪」
「……ねぇミル、もしかしてあたしお金、あてに……してる?」
ミルのはしゃぎぶりにイヤなものを感じて、問いただしてみる。
「そりゃもちろん。だってルーフェイア、お金持ちじゃない♪ あたしたちが高級レストランでちょっと食べたって、どうってことないでしょ〜」
「それは……そう、だけど……」
けど、なんか毎回おごらされてる気がする。
「はいじゃぁきまり〜♪ さ、どっこにしようかな〜♪♪」
当然だけど、ナティエスもシーモアも止めてくれない。それどころか彼女たち、一緒になって地図を見てる。
「エレニア先輩、止めてください!」
「あら、いいじゃない。どうせ学院からも経費が出るんだし。それに自由に外へ出られるの、きっと今日だけよ?」
「そういう問題じゃ……」
確かに警護が始まれば、自由な時間なんて殆どなくなるけど、だからって……。
それにいくら経費が出ると言ったって、そんな高いところで食べたら全額はムリだ。そのとき誰が差額を払うのか、あんまり考えたくなかった。
「――シルファ先輩!」
最後の頼みの綱で、黒髪の先輩の方へ振り返る。
「私は、食べられればあとは、気にしないが」
「先輩……」
結局その日は、許可がでたこともあって、町の下見と称してみんなで外へ食べに出た。