Episode:11
「アヴァンか〜。あたしもう、2ヶ月くらい行ってないなぁ〜♪」
「え、そんなに行ってるの?」
そういえばミルって寮生活じゃないから、休みの日にどうしているのか、あたしたちそれほど知らなかった。
けど「もう」2ヶ月くらいなんて彼女、よほどアヴァンに縁があるんだろう。この点だけは心強い。
――他が心配だけど。
そうこうするうち、あたしたち女子寮の2階まで来た。さすがになんとなく気圧されたんだろう、ナティエスが黙る。
もっともミルは相変わらずだ。
「ねぇねぇ、それで“くらいあんと”って〜?」
「もう、それをこれから、シルファ先輩に訊くんじゃない」
こんなことを平気で言っちゃうんだから、ミルの神経ってどうなってるんだろう?
半分呆れながら、シルファ先輩の部屋の近くまで行く。
――あれ?
遠目に、ほんの少しドアが開いているのがわかった。
もしかしてあたしたちが入りやすいように、開けておいてくれたんだろうか?
と、かすかに話し声が聞こえた。
――さて、私は行きますね。
――タシュア……。
――私がいると余計なことを言うでしょうし、それにエレニアはいづらいでしょうからね。私の意見よりも、全員で意見を出し合ってよく考えなさい。
先輩たち……。
「どしたの?」
立ち止まってしまったあたしに、みんなが声をかけてきた。
「あ、ごめん。
あのね、えっと、みんな武器、もってる? いちおう先輩に、見てもらったほうが……」
「言われてみればそうだね。じゃぁ先に部屋へ戻って、取ってこようか」
シーモアたちが納得して、いったんここから離れた。
――よかった。
とっさだったけど、いい言い訳だったと思う。
2人で話しているところにみんなで押しかけたら、迷惑なことこのうえなしだ。
そしてあたしは、先輩の部屋へと向かった。先に行って、すぐミルたちが来るのを、伝えておこうと思ったのだ。
ほんの少し開いたドアに、手をかけかける。
――あ。
「シルファ」
タシュア先輩が、ダガーを手渡す。
「持っていきなさい。それなりの物ですから、役に立ちますよ」
たったそれだけだけど、どれだけシルファ先輩のことを思ってるかすごく伝わってきた。
涙がこぼれそうになる。
絶対この任務、成功させないと……。
そうして立ち尽くしていると、不意にドアが開いた。
「ルーフェイア、こんなところで何をしているのですか」
いつもと同じ声と表情。
でも……。
「先輩」
「なんです」
どうしても、言わずにはいられなかった。
「きっと、きっとみんなで、戻ってきますから」
「失敗するなどとは、思っていませんよ」
これは、シルファ先輩への信頼だろうか?
あたしが意味を計りかねている間に、銀髪の先輩は立ち去った。