Episode:01 依頼
◇Rufeir
「おい、ルーフェイア。さっきタシュア先輩たちがお前のこと、探してたぜ?」
授業が終わって教材を片付けていると、そうイマドから声をかけられた。
「あたしを……先輩が?」
ちょっとありえない話に、少し怖いような感覚を覚える。
「ほんとに……?」
「こんなことでウソついたって、しゃぁねぇだろ。つか伝言忘れた時の方が、怖いっての」
それは確かにそうだ。
けれどあたしが先輩を探しに行くならともかく、その反対があるなんて。
「食堂で待ってるってたから、早く行ったほうがいいぜ?」
「……そうだね。そうする」
急いで机の上を片付けて、あたしは立ちあがった。教材がけっこう重い。
「ルーフェイア、それ置いていきな。あたしが部屋に届けとくから」
見かねたんだろう、シーモアがそう言ってくれた。
「ありがと。えっと、じゃぁ頼んでいい?」
「構わないさ。さ、早くいきな」
シーモアの好意に甘えて、手ぶらで教室を出る。
いつもと同じ光景。
中央部のホールへ続く渡り廊下を、他の生徒とすれ違いながら渡る。中には話しかけてくる生徒もいた。
「やぁ、ルーフェイア。どこ行くんだい?」
「食堂までです」
誰だろう? 上級生なのは間違いないけど、名前まで分からない。
タシュア先輩なら全生徒を覚えているから、きっとわかるんだろうけど……。
「じゃぁさ、俺も一緒に行くからなにか食べないか?」
「ありがとうございます。でも今、タシュア先輩に……呼ばれてて」
とたんにその先輩の顔が引き攣った。
「た、タシュアってあの、タシュアかい……?!」
「えっと……タシュアって先輩、そんなにたくさん……いるんですか?」
あたしにはあのタシュア先輩以外、心当たりはない。
どうやらこの先輩もそうらしかった。
「悪いことは言わないから、止めた方がいいんじゃないか、行くの。いったい何をされることか……」
「でも、あの、タシュア先輩……いい人ですよ?」
この一言で、今度は先輩が石化した。口をぱくぱくさせたまま、何も言えなくなる。
――どうしてだろう?
あたしがこう言うと、ほとんどの人が石化する。
ともかくこれ以上タシュア先輩を待たせて怒られるのも嫌なので、おいとますることにした。
「あの、名前は存じませんが先輩、失礼……しますね?」
「あ、ああ……」