1-7
「キ、キサマァ!!何処まで俺様を馬鹿にすれば気が済むんだっ!!」
アルトが身体の震えが止まらないほどに怒り叫ぶ。我慢の限界寸前と言ったところだ。
「・・・その姫様には会った時にでも同じのを見せればいいだろ?このまま待ち惚けてお開きとかあんたらが納得しないだろうしさ。特にあいつとかな」
「いや、しかし・・・」
この場を任されている大臣に確認をとる周一。大臣はどう答えていいかと戸惑い、確認を取るかのように王の居る方へと顔を見上げる。
「言い分は理解出来る。だが本気か?流石にそれでは侮辱が過ぎると思うが?」
王の言葉も最もだろう。誰が見てもアルトを馬鹿にしてるようにしか見えない状況だ。だが周一はゆっくりと王の方を見上げ、ニヤリと笑いながら口を開く。
「侮辱・・・何処が?」
「っ!?」
王が周一の顔を見た瞬間に恐怖した。王だけではない、周一の顔を見た者全員が恐怖した。この場に居る者達は周一以外、アルトの持つ異能の力を、史上最強の力を知っている。だから周一どんな力があろうとに万が一にも勝ち目が無いと思っていた。だが王に対する周一の言動とニヤリと笑った顔。まるでアルトがどんな事をしてきても絶対に勝てると言っている様な雰囲気だった。強力な、アルトの力を凌駕するほどの強力な力を持っているぞと言っているかのように。
「何処が・・・だとぉ・・・」
そう言いながらアルトは腰にある2本の剣を鞘から抜き始め、ゆっくりと一歩、また一歩と周一の方へと近づいて行く。
「調子に乗るなああああああああああ!!」
「待てっ!!アルト殿!!」
そして戦闘開始の合図も無しに、大臣の声すら聞こえなくなったアルトが凄い勢いで周一に襲いかかる。
「いいって・・・おっと」
周一は王の制止を断り、次々と襲い来るアルトの2本の剣を右、左、軽く後ろに飛んだりと最小限の動きで避け続ける。剣に心得のある者なら誰にでも解るぐらいに動きが単調だった。
「このっ!!ふんっ!!避けるなあああああああああ!!!」
(いや何言ってんのこいつ。避けなきゃ死ぬ・・・ってかこいつ解ってんのか?これは力を見るための模擬戦のはずだろ?)
周一はそう思ったが口に出さなかった。
「っと・・・んじゃ、俺がこいつを侮辱してるとして。こいつがした事は侮辱じゃないのか?」
そしてアルトの剣を避けながら話の続きをし始める周一。
その言葉に一拍の間があった後、徐々に周囲がざわめき出した。周一の言葉の印象が強すぎて誰もが忘れていたのだ。アルトが周一に対して行った行為を。
「キサマァ!余裕振るのも大概にしっ!!?」
そして一瞬だった。アルトだけではない、この場に居た全員が一瞬時間が止まったかのように感じた。アルトが2本の剣を同時に横に振って周一の胴を真っ二つに斬ろうと大きく振り上げて構えた瞬間、その一瞬の隙で周一はアルトの目の前に踏み込んだ。その動きに圧倒されたアルトは振ろうとしていた剣どころか動かしていた足も、体中の筋肉すら止めてしまう。
「俺はこいつに武器を選ばせ、こいつは俺に使わせるための武器を選んだ。そもそも侮辱なんて言葉が何処に存在するんだ?」
そう言いながら周一はゆっくりと右手に持っていた折れた木剣のささくれ部分を、アルトの左目の前に添える。そのささくれはあと約5ミリ程で刺さる位置で止めていた。
「・・・なっ!?」
状況がようやく理解出来たのか、アルトは咄嗟に目を瞑った。正確にはアルトの防衛本能がそうさせた。そうすれば自分が傷つく事、死ぬ事は絶対に無いと確信していたからだ。
「ど、どうした?殺れないのかっ!?この臆びょぼっ!!?」
周一はため息を吐いて、止まっていたアルトの体を「五月蠅い」と言って蹴飛ばした。そして蹴飛ばされたアルトの倒れる音と落とした剣の音が訓練場に鳴り響く。
「はい終わり。そんで、何処かにあった?侮辱が?」
「ぐっ・・・まだだぁあああああ!!」
王の方を見て聞き直す周一。起き上がったアルトは王を見ている周一を見て無視されていると思い、すぐさま剣を拾って周一に飛びかかろうとする。
「待てっ!!」
「『ウォータープリズン』!!」
王の声を無視するアルトの身体を突如として水の球体が覆う。大きさは身体を覆う程ではなく剣の間合いすら覆いきる程の水球が出来あがっていた。辺りを見ると、歩いてここまで近づいて来る美遊の身体からだけ微かに青いオーラの様なものが見えた。どうやら美遊の唱えた魔法がアルトの動きを封じた様だ。アルトは水球の中で身体や剣を動かすがどうやら水の中は特殊な構造にでもなっているのか抜け出す事が出来ないようだ。幸い、アルトの頭だけは水球の外なので死ぬことは無いだろう。
「・・ぐっ!?クソッ!!美遊さん!!邪魔をしないでください!!」
「・・・話をどうぞ、王様」
冷静な美遊はアルトの声を無視し、王へと声をかけた。王は美遊に軽く頷き、周一の方を見た。
「うむ・・・だがしかしエンドー殿。その言い分を含めたとしても共に侮辱をしていたとしか考えられぬのだが」
「はぁ・・・あんたらがどう考えてるかなんて知らないけどさ。俺は侮辱してるつもりは無い。しいて言えば俺はこいつに俺の力量を測らせたんだよ」
「それは・・・」
「それは一体どういう意味だっ!?」
王の言葉が霞むほどにアルトの声が場内に響く。身動きが取れなくなったおかげか、アルトは話を聞く事が出来る程度には理性を取り戻したようだ。
「戦う前に言っただろ。過大評価して貰ったって」
アルトの方を向いて周一は答えた。
「何を言っているっ!?」
「なんだ、違うのか?」
「当たり前だっ!!」
怒りを抑えきれないアルトは周一の遠回しな言い方を理解出来るはずが無かった。
「そんな武器を渡した相手を過大評価する奴が何処に居る!!」
「お前」
「ふざけるなっ!!」
即答した周一にさらに激昂し始めるアルト。
「んじゃ、お前は何のつもりでこれを渡したんだ?」
周一は折れた木剣をアルトに見せながら言う。
「そんなもの決まっている!貴様を無様に負かすためだっ!!」
「ま、そうだろうな。そうすればお前の勝利は絶対的なものになるしな」
アルトの答えとそんな事は最初っから解っていたと言う周一。また、2人の意見に周囲の者達の中にも頷く者がいた。
「だから過大評価をしてくれたと言っているんだ」
「何故そうな!!」
「解らないのかよ・・・理解力ねーなぁ」
周一は呆れてため息を吐く。
「はぁー。んじゃお前が恥ずかしい思いをするだろうけど言うぞ。つまりな。逆に言えばお前はこれくらいしないと絶対に俺に勝てないって言ってるようなもんなんだよ」
誰も考えつかないような回答に周囲もざわめき出す。
「・・・誰もわからねーのかよ。あのな。普通は誰かと戦う時ってのは相手の力量を知っているか。知らないか。この2択で戦況は変わる。それぐらいはお前達の方が解るだろ?お前達の身に着けてる装備は飾りじゃないんだろうからな」
ざわめきが少し止み、誰もが思わず周一の話に耳を傾け始める。
「当たり前だ!それがなんだと言うんだ!?」
アルトも理由が知りたいのか怒りを顔に出しながらも周一に聞き返す。
「そうだな。それが当たり前だ。・・・んじゃ力量が解らない、全く知らない相手と戦う時。その相手に勝つためにはどうする?」
ざわめきも止み、周囲がその問いについて考え出す。すると一番に美遊が答えを出した。
「・・・自分の得意な、相手より優位な状況を作る・・・ですか?円道さん?」
美遊の答えに周囲が当然だと言っているかのようにまたも頷き始める。
「ああ。美遊の言う通り、それが正解だろうな。ゲームだろうが戦いだろうが相手より優位な状況になれば勝利に繋がる。まあこれは相手を知ってる場合でも言える事だろうけどな」
「・・・だ、だから何だと言うんだっ!?」
アルトの顔が曇りだすも口調は変わらない。まるで理解をしたくないかの様だった。
「お前、もう解ってんだろ」
「・・・は?」
アルトの顔を見た周一はそう断言した。
「んじゃ逆の話だ。もし、自分が相手より劣位の状況で。それでも相手に勝ってしまったら。その個々に対しての周りの評価はどうなる?」
「あっ・・・」
今の周一の説明で美遊は理解した。周一が言った[評価]と言うその意味を。仕掛けた者にとっては想定外の結果で最悪の結末である事。そしてそれが仕掛けられた者にとってはそれが想定内だったと言う事も。もしもこの戦いで周一が負けていたとしても、周一の評価はそれ程下がらない。むしろ不正をしたアルトの方が実力の評価ではなく、人としての評価が大きく下がるだろう。例えどんな状況になってもこの場に置いて周一の評価が悪くなる事は絶対に無い。これは実戦では無く、模擬戦。あくまで周一の能力を見るための戦いであってアルトの強さを魅せる戦いでは無い。その事を周一は全て解っていながらアルトの優位な状況、不正を受け入れていたのだ。だが普通の人にはそんな事は出来ない。そんな事は相手の力量と比べて天地の差があってこそ初めて出来る事だ。まして史上最強とも言われた異能の力を持ったアルトを相手に。それを成し遂げてしまった周一に恐怖を感じてしまう美遊。
「ははっ。何を言って・・る」
「ああ、体は理解してるけど頭が理解を拒否してる感じか。んじゃ、言葉にした方がいいか?」
「や・・・めろ」
激昂していた時とは打って変わってアルトは恐怖に満ちた顔になっていた。不正を仕掛けた本人でもここまで言われてしまえば理解出来てしまう事だろう。
「お前はここま」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
アルトは絶叫し、そのまま動かなくなった。
「・・・美遊。魔法解いてやれ」
「はい・・・」
美遊は水の魔法を解くとアルトは足から落ちたにも関わらず着地する事無く気を失ったかのようにうつ伏せに倒れた。
「自分でやっといてこれかよ。ったく」
折れた木剣をポイ捨て、悪態をつきながらもアルトに近付いてアルトの体を蹴って仰向けにすると、しゃがんでから右手で「おーい」と言いながら頬を軽く叩き始めた。その姿に美遊が引いていた事を周一は知らない。
「負けてないっ!!」
「うおっ!?」
まるで自分の中の葛藤と戦っていたかのように急に目を覚まし、叫んだアルトに少し驚いた周一。
「っ!・・・俺様は負けてない」
アルトは傍に居た周一に気付き、再度そう宣言した。
「はいはい。お前が負けを認めたくないヒーロー的な存在になりたいってのはよぉーくわかった。だからお前がこれなら絶対負けないって言う条件を出せよ。誰が見てもお前の勝ちだって思える条件をよ」
「っ・・・また、同じ事をやれと言うのか?」
アルトは身体を起こしてそう言った。言葉は濁したが、また不正をしろと言っているのか、と。
「いや。今度は俺が条件を出しているんだ。それでお前が勝てば、俺は調子に乗った馬鹿ってレッテルが付くし、お前は自分の出した条件次第では周りの評価を今より良くも悪くも出来る」
「っ!?」
今のアルトにとってはそれは救いの言葉に聞こえた。先程の戦いはアルトが勝つためだけに行った不正。だが今度は周一はその不正を受け入れるという前提があっての条件付きの勝負の申し込み。確かにこれなら周一の言った通りの結果になるだろう。つまりアルトは自分の強さを周一にも周りにも証明する事が出来て、尚且つ自分の勝利を手にする事が出来る条件を出せばいいと言う事になる。そうすれば先程の不正を無くす事は出来ないが、印象を薄くする事は出来る。
「それじゃあ円道さんがっ!?」
「いいんだよ。じゃねーとこいつの頭と体、両方納得しないだろ。あと周りも。ってことで王様。こいつの出す条件でもう一回戦うけどいいか?」
美遊が止めようとするが周一は軽く流し、王の方を見上げ、そのまま王に許可をとる。
「うむ・・・。アルト殿の気持ちを考慮すると、この場を収めるにはそれしかないであろうな。アルト殿。エンドー殿にあの青い剣、もしくは異能の力を使わせる事の条件を含めた戦いの方法を考案出来るのであれば再戦を許可しよう」
王は少し考え、そして結論をアルト次第で決める事を決めた。
(ってか、なんでこの王様は俺が異能の力ってやつを使える前提なんだよ・・・)
(・・・異能の力。そうだっ、まだ俺にはこれがあるっ!)
アルトの頭に王の言葉が過ぎると口元をニヤ付かせた。
「どーなっても知らないですよぉー」
「はいはい。だってよ、どーすんの?」
呆れる美遊と軽くあしらう周一はアルトの方を見て再び答えを待つ。
「・・・いいんだな。本当に」
アルトが立ちあがりながら確認をとる。まるで勝利を確信したかのように。
「そうしないと終わらなそうだからな」
「わかった」
アルトは地面に落としていた2本の剣を拾って腰の鞘に納める。そして剣を腰から外し、周一に見せる様に地面に置く。
アルトの不可解な行動に場内は静まる。
「ん?」
「・・・一発勝負だ」
「具体的には?」
アルトの勝負内容に周一が詳しい説明を求めると、続けざまにアルトは上半身が裸になる様に服を脱ぎ、服を剣の傍へ落とすと歩き出し訓練場の中央辺りに立った。
「俺様の異能の力、この世界で手に入れた力は絶対無敵の体だ。斬撃・打撃・魔法、どれを受けても俺様の体には傷一つ付かない。だからエンドー!貴様には俺様の体を全力で、一度だけ攻撃しろっ!王の条件通り、あの青い剣でも異能よる攻撃でも何でもいい。それによって俺様の体が傷をつけられずに、この場に俺様立っている事が出来た場合が俺様の勝ちだっ!文句は無いなっ!!」
アルトは大声で決着の方法を周囲に聞こえるように言い、最後に周一に確認をとる。負けと言う言葉を使いたくないのだろうか、アルトは自分の勝利条件だけを伝える。これならアルトは自分の異能の力が最強だと証明が出来て、周一自身にも自分に勝てないと思い示す事が出来ると思うアルト。
「そんなっ!?そんなのアルト君が絶対勝つに決まってるじゃない!」
「だからあの自信だった訳か。確かにお前にとって理想の条件だな。んじゃ、それで」
「ええっ!!?」
アルトの能力を知っていれば誰もが断る条件。必ず負ける条件のはずなのにあっさり了承した周一に驚きを隠せない美遊。
「アルト君の異能の力を聞いたでしょっ!?何であっさりOKしちゃってるの!?」
美遊は驚きのあまり、先程までの目上に対する喋り方をしていなかった。
「別に問題無いだろ?そもそもやる前にも言ったがこの場での勝ち負けなんてどうでもいいんだよ。それにあいつの能力が本当なら試せるしな」
「試せるって・・・まさかっ!?」
美遊は周一の試すと言う言葉からきっと異能の力を使うのだろうと察した。この勝負の条件、あの青い剣剣か異能の力を使う事。青い剣の重さは半端では無かったがアルトの無敵の身体に傷一つ付けられないだろう。つまりは周一は異能の力でアルトに挑まなければいけないと言う事になる。
「あと、そんなに何度も驚いてると数値が下がるぞ?」
「なんのっ!?」
「身長」
「しん、ちょう?・・・いやぁああああああああああああああっ!!!」
「チュッ!!?」
「おっと、あぶね」
「・・・チュ~」
耳を両手で塞いでその場にしゃがんだ美遊。アングル次第ではパンツが見える事間違い無いだろう。しかし、見た目でなんとなく出てきたワードだったがまさか魔法が強制解除されてしまう程に嫌だったのか。と言っても、勿論そんな事で身長に影響が出る事は無いと思うが・・・。
ネズミが宙から落ちそうになるが周一の左手で救出されホッとするネズミ。
そして「モウ、ワタシ、オドロカナイ」とか繰り返し呟いてる美遊はしばらく放っておこう。
(さてと。一応、保険として手は打っておくか)
「あーそうだ。そのお前の条件に一つだけ加えさせてくれ」
周一はアルトと対峙するために訓練場の中央に向かって歩きながらアルトに条件追加の提案をする。
「なんだ?条件に変えるつもりはないぞ」
「いや、大した事じゃない。お前の身体はその・・・あれだ。毒とかの汚染も効かないのか?」
周一はアルトと向かいあって立ち止まり、何かを思い付いた様にをアルトに聞く。
「勿論だ。ダンジョンでポイズンスライムやアシッドスライムに触れて服は溶けたが体は全くの無傷だったからな」
「へぇ。ならお前にとっても問題ないはずだ」
ダンジョンだなんて、ますますファンタジーらしいと言える。
「・・・言ってみろ」
どうやら条件を聞く気になったようだ。
「俺がお前の体に攻撃を当ててから3分の制限時間が欲しい」
「何故だ?それに意味はあるのか?」
「俺がもしもお前の能力にも勝る異能の力を持っていて、それが麻痺毒のような行動不能を狙ったとするだろ。でもその場合、こっちとしては攻撃を当ててすぐに条件を満たさなければ負けだなんて言われたら納得できないし、王様の要望である俺の異能の力とやらが結局解らないまま終わる事になる。それだとお前も勝った気はしないだろ?」
「それで制限時間か?」
「ああ。それに解散した後に効果が出てもお前のためにならないだろ?」
周囲の反応も「確かに」「筋は通っているな」とざわめく声が聞こえる。もし戦いの後、1人になった時に毒の効果が出てしまえばその対応が遅れてしまう。死に関わるかどうかに関わらず、アルトにとっては損になる事には違い無い。
アルトは少し考え、答えを出す。
「駄目だ」
「何故だ?絶対の自信があるならそんくらい」
「駄目だ。もし、俺の力が突破されるされないにしても、だ。長過ぎる。もっと短くしろ」
「なら仕方ない。2分。これなら」
「即効性の猛毒ガスなら5秒とかからないだろう?息を長く止めらていれない相手なら尚更有効だろうな」
「くっ・・・」
ニヤリと笑うアルトに悔しがる周一。周囲もまた「確かに」「アルトの言う通りだ」「あいつの有利な条件に変えようとしてたみたいだな」とざわめく。
「なら1分」
「10秒だ」
「くっ・・・30秒」
「10秒、これ以外は受け付けない」
「・・・わかった。10秒でいい」
「ふっ。いいだろう。どうやら墓穴を掘ったみたいだな。お前の異能の力は[汚染]。ただ、即効性では無い。もしも俺様の体内に毒が入れば多分効くだろうな。まあ、まだ試した事も無いが試すつもりも無い。そんな事で死にたくないからな」
「・・・可能性は0じゃない。出来るはずだ・・・絶対に・・・」
アルトの言葉を聞いていない周一の小さく呟く声をアルトは聞き逃さなかった。更に勝利への自信が強くなる。
周一の提案は、結果的にますますアルトに優位な条件になり、周一を苦しめる物となってしまった。
「だが万が一と言う事もあるかもしれない。10秒を過ぎたら美遊さんにい・ち・お・う・解毒魔法をして貰わないとな」
「モウ・・・えっ?誰か呼んだ?」
俯く周一を見て嫌味を込めてで言う。美遊は反応して自我を取り戻したがだが、周一には届いていないようだった。
「くくっ、聞いて無いか。ではクラーク大臣。エンドーが攻撃を当てたらカウントダウンをお願いします」
「解りました。では王。この方法でよろしいのですな」
「ああ。両者が了承したのだ。もう私からは何も言うまい」
大臣が確認をとると王も了承する。自業自得と、アルトの目からは俯く周一を誰もがそう見てると思っていた。
「クラーク大臣。エンドーにもしかしたら何かしらの事前の準備があるかもしれない。だが何も動きがないまま1分が過ぎようものなら無条件で俺の勝ちにして貰おう。そしてその場合でも俺様がアイリスのパートナーとして選んで貰おう」
周りの空気にさらに上機嫌になったアルトは勢いに任せ、ただでさえ有利な条件に更に自分に有利な条件と要求を付け加える。
「姫の事は私には決められない話なのですが・・・」
「ふっ・・・まあいいだろうっ」
大臣はアルトの要求を勝手に決めるわけにもいけないので当事者不在を理由に上手くはぐらかす。アルトは自分がこの戦いに勝利する事によってアイリス姫のパートナーになれる事を確信しているかのような自信に満ちた顔になっていた。
「ではエンドー殿もよろしいですな。返事は無いようですが始めさせて頂きます・・・では勝負・・・始めっ!」
そして、クラーク大臣が戦闘開始の掛け声を上げた。