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「・・・いっ、つぅ~。・・・って、死んだと思ったが生きてるな」
『ええええええええええっっっ!!?!?』
壁まで吹き飛ばされ、めり込んでいたはずの周一がすぐに体を起こした事に驚きを隠せない一同。
「円道さん。本当に人間な」
「そんなのどうでもいい」
「っ!?」
傍に駆け寄って来た美遊の問いを言い終わる前にそう答えた周一。普通に受け答えしてくれた言葉のはずなのに何故か威圧を感じてしまった美遊は思わず立ち止り、数歩後ろへ下がってしまう。まるで吹き飛ばした事よりも今の質問の方が怒らせる原因だったと考えさせられてしまうかのように。
「んで王様。どこまで話したんだっけか?」
「あ、ああ。・・・本当に大丈夫なのか?」
何事も無かったかのように立ちあがって王に話しかける周一に思わず戸惑うライネス王。
「別になんともない」
そう言った周一が部屋の中央辺りに戻ると美遊もまたゆっくりと気まずそうに周一の傍に戻る。そして場の空気が落ち着いた所で話し再開する。
・・・それにしてもさっきからスゲー睨んでくる奴がいるんだけど。
「それで?」
「うむ・・・。エンドー殿。今から[力]を見せて貰うことは出来るか?」
「ここで?ってか[力]って何の事だよ?」
「俺とお前、どちらがアイリスに相応しいかを決めるためだ!!」
その声は先程から俺を睨んでいる奴だった。ライネス王の少し前ぐらいの場所に立っていた15歳ぐらいのいかにも「俺が主人公だ」とイケメン主張をするようなRPGの勇者っぽい格好をした茶髪ストレートの男がなんか急に俺に叫んできた。
「美遊」
「・・・は、はい。なんですか?」
俺の呼びかけに少し遅れて反応する美遊。
「あいつ、誰?」
「・・・え゛っ!?」
美遊の凄い声と共にこの部屋の空気が一瞬固まった気がした。
「きさまぁ・・アルトだっ!!ア・ル・トォ!!アルト・リッターだっ!!今からお前を打ち負かす勇者の名だっ!(・・・人の名前も覚えられないのかこのクズはっ!)」
更に激昂したアルトは大声で周一に指を指して名乗った。
「あっそ。でも人を指でさすなよな。普通に失礼だぞ。んで王様」
「ええぇ・・・・・・」
あなたがそれを言うの?といった呆れた顔をしている美遊から声が漏れる。まるで俺が先にしているみたいな顔しやがって・・・。
「おい!!」とアルトの怒声を無視して話を進める。
「こいつの言ってる事はよく分からねーが、理解出来た部分からすると要するに俺はこいつと戦えばいいのか?」
周一はアルトを指さしながら答えた。周一は気付いていないが、その姿を美遊はじとぉ~とした目で見ていた。
「ああ。そう言う」
「こいつでは無い、アルトだっ!アルト様と呼べ!!」
「・・・事だ。構わぬか?・・・そしてアルトサマよ。アイリス姫にはその戦いを見て貰い、判断して貰うと言う事で構わぬか?」
王の言葉を遮るアルトに、王は疲れた様な声で言葉を続けた。何故かアルトの要望通りにアルト[サマ]と呼ぶ王。続けて言ったためアルトサマと言う名前の様に聞こえる。
わざとか?この王様・・・できる。
「はいっ!御厚意に感謝します」
「はぁ~。今の俺に拒否権なさそうだし。仕方ないか」
王に[サマ]付けされ、期待されていると心高ぶり、熱く返事をするアルト。そしてやる気なく渋々承諾する周一。
「うむ。あとはクリーク、任せてよいか?」
「はい。お任せ下さい」
クリークと呼ばれた白髭の老人、王に耳打ちをしていた大臣っぽい老人だ。なんか大臣って言うよりあれじゃあ秘書だな。まあ似た様なものか。
「それでは、場所を移して決闘を行って貰う。場所は訓練場。準備が整い次第開始する。訓練場付近警備の兵士達は整備を、その他は城内の警備に戻れ、将軍はアイリス様を訓練場へお連れしろ」
クリーク大臣の言葉に周りに居た兵士とライネス王の近場に居たごつい鎧を着ている兵士が移動をし始めた。王達や周りに居た兵士以外の連中、勇者召喚で呼ばれた勇者達も移動を始める。その中で、ライネスの王子が民俗衣装のアオザイの様な格好をした女性と手と手を交え、楽しそうに歩いて行くのが見えた。
(・・・あれっていいのか?)
この部屋に来てからずっと王子の傍に立っていたアオザイ姿の女性の右手の中指には美遊と同じであろう魔道具インテリングが嵌められていた。周一はその光景を見て少しだけ気になった。この世界の勇者は魔王を倒すために呼ばれ、勇者は大金と世界に帰るために戦う。でもあれは王子と勇者ってより恋人という雰囲気を出していた。あの女性は魔王と戦う気はあるのだろうかと思ってしまうぐらいにだ。
「円道さん。・・・さっきは、その・・・」
入り口で美遊が俺を呼び、何かを言いたいのか少し落ち込んでいる様な表情をしていた。
「ん?さっき?」
「わたし。円道さんの気に障る事言ったみたいで・・・」
ああ、あれか。
本当に人間なのか?という問い。その答えから美遊の反応が変わったのは解っていたのですぐに何について言っているのかがわかった。
「何の事か知らねーが気にすんな。・・・というか普通はブッ飛ばした事を謝らないか?」
「それは円道さんがっ!」
「いや、俺はクマさんパンツとしか言ってねーぞ。周りにばれたのはお前が言ったからだろ」
「っ!?うぅ~~~~!!でもっ!でもでもでもっ!!!元はと言えば円道さんが悪いんですからねっ!!・・・ううぅ、ふぅ~んだ!!」
そう。あくまで近い物を周一は言ったまで。見た事を100%そのまま発言した訳ではない。ただ美遊は誘導されて言わされたのだと気付き、自分のちょろさと恥ずかしさに顔を赤くしてプイッと顔を逸らした後、足早に部屋を出ていった。
「・・・言って同情されても、うざいだけだからな」
美遊の消えゆく背中を見ながら呟いた周一。
(・・・ってあれ?あいつ居ないと何処行けばいいか解んなくね?)
「おい美遊!ちょっと待て!・・・待ってくれないと俺迷子になっちゃうからね!!」
そう言って周一は美遊の後を追いかけた。