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この青い剣の力なのだろうか?青い剣を手にしてからこの世界の言葉を理解出来るようになった周一。
リアルを受け入れていたはずだったがここにきてのファンタジー。だがこれを利用しない手は無い。
「とりあえず、この世界の事について色々聞かせて貰ってもいいか?」
「その口の聞き方はなんだね!?」
王の傍にいた白髭の老人が怒りだす。格好からしてきっと大臣的な存在で王に対する忠誠心が強いのだろう。
「悪いな。俺、敬語ってすげぇ苦手なんだよ」
「そんなものは関係ないっ!場を弁えろといっ」
「それに、見繕った言葉ほど嘘にまみれてるもんだぜ?」
「貴様っ!!」
「よい。それがエンドー殿の誠意なのだろう。大目に見よう」
何かを言いたそうにする老人だったが、それに待ったをかけた王。老人はその声に頭を下げながら後ろへ下がって行った。
「・・・だが。それを許した所で真実を話して貰えるのかね?」
「話すかどうかは俺がここにいる奴ら全員を信用するかだな」
文句であろう声が複数聴こえたがそんな事はどうだっていい。
「あんた達だってそうだろ?信用も無い、まして出会って間もない相手にベラベラと自分の事を喋るのか?」
「・・・それはそうであろうな」
王の言葉に周りも同調し始め、静かになった。
「って事で。俺が聞きたいのはこの世界の一般常識。誰が知ってても問題ない話だ。その中でもあんたらが話したくない事があるなら話さなければいいだけだからな」
「・・・わかった。では、この世界の事と現状、そして勇者について話そう」
そして、ライネス王から聞いた話を簡単に纏めるとこうだ。
ここは地図で言うなら東西南北とその中心に一つずつ、ほぼ同じ間隔の距離で離れている大きな5つの島国を一纏めにした[エレメンタニア]と呼ばれる大国。そして、今いる場所はその中央の島[ライネス]と呼ばれる国だ。
現在エレメンタニアは25年前に封印された魔物の王、魔王ルシファーの封印が10年前に解けた事により、活発になった魔王の配下達のせいでこの国に甚大な被害を受けている。その魔王に対抗するために昔に行われていた勇者召喚の儀式を行い、異世界から勇者を呼ぶ事にした。異世界から来た人は必ず何かしらの異能の力を身につけて召喚される事が勇者召喚の魔法書に記されていた。なのでその異能の力を持った多くの勇者達の力を使って魔王からこの国を救って欲しいと言う事。出来る事ならすぐに何人でも呼びたいが1人ずつしか呼べないという制限があり、まして召喚をするための準備には早くても約30日かかるという。そして前回の召喚の儀式が行われたのは10日前。つまり、準備期間内に召喚の儀式も行わずに現れた周一は異例の存在と言う事だ。
話をしている最中に、青い剣をずっと手に持っているのは流石にしんどいので頭の中であのゲームみたいに出来たらいいなぁ~と考えていると、青い剣は粒状の光となって周一の体と一体化していった。突然剣が消えた事に周囲が驚くが、周一自身も驚いた。
「・・・つまり、その魔王を倒すのが勇者の役目って事かぁ?」
周一はありきたりなRPGの設定とこれまたありきたりな魔王の名前にすごく面倒くさいと言いたそうな顔になる。
・・・というか魔王の封印が15年で解けるとか早過ぎるだろ。
「ああ。それをエンドー殿にもお願いしたい。成し遂げれば報酬も勿論出そう。金銭や宝は勿論だが、それよりも召喚された勇者達にとって絶対とも呼べる報酬があるのだ」
「絶対とも呼べる報酬?」
絶対?権力的な何かか?
「元の世界に帰れる事だ」
「・・・は?」
王の言葉に隣に居る美遊の顔を見てみるが、俺を見た美遊は頷いた。どうやら本当の事らしい。
「それって魔王が勇者を帰れなくする呪いでもかけてるのか?」
「ええっと・・・」
「魔王がそれに必要なアイテムを持っているんだ」
突如、話に割り込んできた男の声。その声の方を見ると周りにいた奴らの中から15歳ぐらいのいかにも「俺が主人公だ」とイケメン主張をするような腰に2本の剣をぶら下げ、いかにもRPGの勇者っぽい格好をした茶髪ストレートの男がこちらに向かって歩いてきた。
「ア、アルト君?」
「誰?」
周一の近くまで近づいてきたアルトと呼ばれた男に右手で指をさして美遊に聞く。するとその指さした右手を音が軽く響くぐらいの威力の手で弾かれた。
ちょっと。ジンジンヒリヒリするんですけど。
「おいクズ。史上最強の才能を持つこの俺に指さすとは礼儀を知らないな」
「は?」
「アルト君っ!いきなりそんな事言うなんてっ」
いきなり俺の事をクズ呼ばわりしたアルトを怒ろうとする美遊・・・だったが。
「そのクズはミユさんのスカートを覗いていたんだ」
「・・・えっ?」
「俺は見ていたんだ。治癒魔法で治す時にこのクズがスカートの中をずっと見ていた事を。そんな奴をクズと呼んで何が悪いんだ?」
その言葉に周りや王達からの視線が周一に刺さる。
「えっと・・・円道さん?」
俺の方を見て聞いてくる美遊。
こいつ、見てくれはイケメン側だから男はともかく女は何を言ってもこいつの事を信じるだろうなー。
女は基本、外見で判断するし・・・ここは素直に認めておくか。
「ああ。可愛いクマさんパンツだったなぁ・・・」
見た事を詳細に伝え、遠い目をする。
「クマ、さん?これはネコにゃん・・・っっっ!!?!?」
ニヤリ。
つい言ってしまった美遊は顔を真っ赤にしてスカートを抑えながらしゃがんで丸くなった。周一は満足したように首を縦に振る。周りは男達はざわめき始め、そのざわめきに女達は引いていた。
だがその空気の中でアルトは王に叫んだ。
「ライネス王っ!やはり俺とアイリスをっ!。俺の才能に釣り合う人なんてアイリス以外あり得ないっ!。こんな不潔なクズをアイリスと一緒にするなんて危険過ぎます。どうか決断をっ!」
「ネコにゃん・・はっ!?ゴホンッ・・・だがな彼女の希望でもあるのでな。アルト。もう少し待ってはくれぬか?」
今、ネコにゃんって言ったぞ、あのスケベジジイ。
「そんな事言っていたらまたどこかで被害が出ますよっ!・・・そうだ。ならアイリスに決めて貰いましょう。このクズと決闘をして勝った方がアイリスと共に魔王討伐をするとっ!そうすればこのクズの力についても何か分かるかもしれませんし。ただし、それを見る事が出来ればですが」
「むむぅ・・・」
アルトの言葉に悩むライネス王。
さっきからクズクズと。まあ、あいつから言われ慣れてたから別に気にならないけど。それにしてもアイリスって誰だ?・・・さてと、こうゆう時は。
「なぁ美遊?こいつ何の話してんの?・・・おい美遊?おーい。みーゆ―?・・・ネコにゃんぱ」
「忘れろおおおおおおおおおぉっっ!!!!」
「んつぁああああああ!!?」
ネコと言うワードに反応した美遊の勢いのあるアッパーを喰らって軽く宙に浮き、尻もちをつく周一。
「・・・つぅううう、何すん」
「忘れたかな?ううん、まだ覚えてるよね。覚えてるなら忘れるまで・・・ねぇ?え~んどぉ~さぁ~ん?【風よ 大いなる力となりて かの者を吹き飛ばせ】」
美遊は笑顔のままゆっくりと周一に近付いて行き、早口で詠唱をし始めた。すると美遊の突き出した右手の先に魔法陣を出すと美遊の身体を纏い始めていた緑色のオーロラが次々に魔法陣へと吸い寄せられていった。
あれこれって、マジヤバくね?
「あー。うん、ゴメン。悪かった。もう忘れたからストッ・・」
「『ウィンドブラスト』!!」
「・・オオオオオオオオッ!!?」
そして魔法陣から出てきた竜巻の様な強風が周一に襲いかかり、周一は避ける暇もなく壁まで飛ばされてズドンとぶつかった音が部屋に響いた。その光景に王もアルトもそしてこの部屋に居た誰もが言葉を失った。
「もう忘れたって言う人は大概覚えてるんだよ?ね?みんな?」
容赦のない魔法を放った笑顔の美遊の問いかけに、騒然としていた一同が危機感を感じて素早く首を縦に振っていた。
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「よいしょ・・・っと」
周一が王と会話している頃。客間の様なとある部屋。その中で木製のベットを動かす金髪の少女。
「むぅ。こっちじゃないか」
ベットを動かした場所を確認するがお目当てのものは見つからない。
「じゃあ後は・・・やっぱこれだよねぇ・・・」
壁に触れている家具を小さな物から順に動かしていた少女。そして最後に残った自分の身長より高い家具。どう見てもベットより重そうなクローゼットの姿を目の前にして嫌そうに呟く。
「女の子がっ!こういうのをっ!1人で動かしてるとなぁ~」
だが他に選択肢が無いので仕方なく文句を言いながらもクローゼットが倒れないように、音をたてないように慎重にずらして壁から離していく。
「ふぅ・・・まぁ誰かに見られてる訳でもないし・・・ってあった!!」
そしてクローゼットを動かした壁の下には手は入れられそうな小さな横穴を見つける。
「あ~あ。魔法が使えればもっと楽に出れたのに。でもこれで・・・ありがとね、ミユ」
しばらくして、その部屋から少女の姿は消えていた。