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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
17/109

2-3

 カルド達が入っていった店の反対側にある客間の扉、少し進んだ通路の左側の扉に周一とアイリスが遅れて入るとそこは・・・ただの寝室だった。

 ベットが2つに押入れ、それと壁には家族写真の入った額縁が飾られていた。


「あのさぁ・・・言うのもあれなんだけど、こうゆー時って定番なのは抜け道が用意されてるって状況なんじゃないのか?」

『どーみてもただの寝室だよね・・・まさかっ!?ベットの下に地下の抜け道がっ!?』

「ねえよ。そんなもん」


 2人の話に押入れを漁っていたカルドが否定する。『ないのぉ~・・・』としょんぼりするイリス。気持ちは解る。だってこうゆー状況だもんな。期待するよな、普通。


「地下には無いんだけどね。ミユ、お願い」

「『?』」


 アイリスの頼みに美遊は「わかった」と言い、家族写真の入った額縁を外す。外した額縁をテルフィアに預け、今度は胸元の服の中から何かを取りだした。見た目は六角形の星の様なペンダントだ。テルフィアは外された額縁を押入れを漁っているカルドに渡す。


「あれは?」

「レヴォルの証。通行証みたいな物かな」


 アイリスは美遊のペンダントについて説明する。その説明の後、美遊は額縁のあった場所の壁、正確にはペンダントと同じ模様が彫られている部分にそのペンダントを当てると突如として壁に大きな黒い光の魔法陣が現れる。


「はい、こっちは準備出来ましたよ」

「おうっ。こっちもだ。リアン、テルフィアもいいか?」

「ええ」

「もちろんっ!」


 美遊が黒い光の魔法陣を出し終えたと同時に、リアンとテルフィアが周一達の後ろに来ていた。どうやら2人はこの部屋の反対側の部屋にいた様だ。カルド達も何かの準備を終え、3人を見るとカルドはかなり重そうな赤い鎧に大斧と見た目かなりごつい戦士に。対してリアンは青いローブに杖と魔法使いの格好に。テルフィアはお腹と太ももを出している軽装の服に腰にポーチと拳銃を二丁備えていた。


「シュウイチ。お前、剣は使えるか?」

「ん?ああ、武器だったら何でも」

「そうか、ならこれを渡しておく」


 そう言ってカルドはベルト付きの鞘に入ったショートソード程の長さの剣を周一に手渡した。

 周一はそれを右手で受け取り、剣が左側に来るように腰にそのベルト巻き付ける。


「・・・なぁ、今更なんだけど、これって何かと戦う準備かなんかか?」

「「「「・・・・・・」」」」


 えっ。何そのみんなして「この流れで解らないの?」ってみたいな顔?わからねーよ。説明されて無いし。


「・・・いや、説明して貰って無いからね。俺、この世界初心者だよ?」

「あ、うん。そうだね。それじゃあ・・・・・・えいやーっっ!!」

「うおっちょっ!?」


 アイリスは周一の後ろに回り込み、可愛い声と共に周一を突き飛ばした。

 周一はイリスと共にそのまま壁の魔法陣にぶつかる勢いで突き飛ばされ、目を瞑って覚悟する。しかし、壁にぶつかる事無くクシャっと土や草の上に「フベッ」と言って倒れた。


「・・・は?」

『・・・外だね、ますたー』

「外だな」


 立ち上がり辺りを見渡すと、そこは紛れもない外だった。青い空に白い雲。心地良い風に地面の草は音を奏でている。それは何も無い広大な草原だった。ただ、強いて言えば異質な点がある。光の柱の様な物が1つ、この草原で唯一目立つ現象があった。


「ごめんなさい。説明するよりも体験してもらった方が早いから」


 倒れている周一の後ろからアイリス、そしてカルド達と次々に現れる。最後に美遊が出てくると先程通り抜けてきた魔法陣が消えた。


「それにしてもフベッって・・・ップププ」


 美遊は笑っていたが俺はそんな事を気にする程の子供ではないため無視しておく。


「・・・それで。こんな簡単に外に出れるなら準備とかいらなくないか」

「そうね。ここが安全ならね」

「そう言うこった」


 周一の発言にリアンとカルドは否定する。


「ここ、ダンジョンですから」

「『は?』」


 テルフィアがまるで補足するかのように言った。


「『はああああああああああああああああああああああ!!!???』」


 流石に驚かざるおえない。


「寝室にダンジョンがある世界なんて聞いたことねーよっ!!つーか空あるしっ!?こんな草原、マッピング必要無いしっ!?」

『そうだよ!ダンジョンって不思議なんだよ!?ちゃんと洞窟とか大樹とか塔とかにしてよ!!ちゃんとあからさまに怪しい宝箱も用意してよ!!』


 イリスがウィンドウ画面を次々に出してその詳細とも言えるゲームのスクリーンショット画面を出して行く。


「そう言われても・・・」

「ここではこれが常識なの。と言ってもこの入り方は裏口。ちゃんとした入口は別にあるの」


 美遊が言うには正規のルートで入る場所がしっかりと各国によって設けられているとの事。そして先程使った魔法陣の通路は転移の魔法陣。あの寝室とこの場所を繋げていたと言う事らしい。さらに、加えて転移してきたこの場所は名称としてライネスのダンジョン第5層と言う場所らしい。


「何そのチート」

『ずっこい。下手したら最下層まで行けちゃう魔法陣がありそう』

「あはは・・・」


 アイリスが空笑いしている中、ジト目で美遊を見つめる2人はゲームが大好きである。

 数々のゲームに手を出している2人にとってはゲーム性を無くしてしまうようなバグやチートは制作スタッフ達に失礼だと思って毛嫌いしている。ちなみに黙認しているバグやチートは勿論思う存分使っている。


「そういうものなんだからしょうがないでしょっ」


 2人の視線に美遊は呆れる様に言う。


「まぁ、掛け軸の裏とか鍛冶屋さんちのかまどとか、そうゆー場所じゃなくてよかった」

『そうだねー。それだったらますたーは今頃瞬殺だね』


 おいおい、怖い事言うなよ。俺だってどうにか生き延びるための努力はするぞ。階段に逃げまくって最下層目指して・・・・・・宝ゲットぉおおおおおおっ!!って、運が良ければね。

 2人の会話にアイリス達は疑問を浮かべた表情をするが、美遊は言っている事が解っているのか「私達の世界であったゲームの話よ」とざっくりとした説明をしていた。


「それで、これからどうすんだ?」

「うん。まずは第9層まで行って、そこでさっきと同じ転移の魔法陣を使って風の国【ブリズ】まで転移するの。レヴォルの会議はだいたいブリズで行うから、そこで現状報告する感じかな。出来たらシュウイチさんの話もねっ」

「へぇ~」


 アイリスは端的にこれからの行動を説明した。その喋り方はリーダーらしい何かを感じ取れるカリスマ性を感じられた。裏とはいえギルドマスター。英雄姫だから選ばれたと言う訳ではなさそうだ。


「なら、とっとと行くか」

「そうだよ。早く行こ・・・っとそうだった。シューイチさん」

「ん?」


 テルフィアに呼ばれ、そちらを向くとテルフィアは短パンのポケットから何かを取りだし、硬貨を数枚袋から取り出した後に周一に差し出す。


「はいこれ、お財布。ちなみにこれはその剣の代金ね」

「・・・ちゃっかりしてんな。まあいっ・・!?」


 ライネス王から貰った硬貨が入った袋をテルフィアがずっと持っていた事を思い出し、掌を出して袋を受け取ると最初の頃の大きさとは見違えた姿になり果てていた。


「えっと・・・これっていくらある?」


 袋から掌の上に残り少ない硬貨を出してテルフィアにみせる。


「25ベルだねっ」


 25ベル。まるで数える必要もないと言っているかの様に即答するテルフィア。金貨銀貨も入っていたはず袋から出てきたのはこの鉄の硬貨2枚と銅貨5枚とたったのこれだけだった。うん。これは俺でも、いや誰でもわかる。


「ちなみに、これで何か買える?」

「そりゃあ・・・パンぐらいなら10個は買えるんじゃないのか?」

「そう、ですね。・・・安いのなら」


 周一の言葉にカルドと美遊が答える。美遊は目を逸らしてから聞きたく無い補足を小さく呟いていたが、残念ながらはっきり聞こえてしまった。


「ぱ・・・」

『パン10個、しかも安いの・・・つまり日本だと残金約1000円ぐらいっ!?』


 ガバッと風を切る様な音を立てて周一とイリスは同時にカルドとテルフィアを見る。と同時にカルドとテルフィアは目線が合わないようにすごい速さで顔を逸らせた。


「さっ、さぁそれじゃっ。みんなレッツゴーですよー!」

「お、おうっ!テルフィア、元気がいいなっ。ほ、ほらお前達もテルフィアにつづけよっ!」

「「あーーーっはっはっはっはっ!!」」


 そしてテルフィアとカルドは周一に背を向ける様に振り返り、まるでその話題に触れさせないようにするため大声を上げながら歩き始めた。


「『・・・・・・』」


 無言で残った硬貨7枚を強く握りしめる周一と画面の中で手と膝をついているイリス。


「えっと、私達もいこ・・・っか」

「そうね。私は値段を知ってたから薄々はわかっていたけど店としてはありがたいから」

「・・・なんと言うか、いくら変態でもこの仕打ちは不思議と可哀そうに思えてくるんですけど」


 そう言い、絶望している周一とイリスを横目にカルドとテルフィアを追う3人。

 何?何で?誰も優しい言葉の1つもかけてくれない訳?酷くない?ねぇ酷くない?


『ますたー・・・』

「・・・なんだ」


 イリスの呼びかけに小さく反応する。


『ここはダンジョンで、みんなあーやって武器を持ってるって事はさぁあああ!?』

「そうだな」

『もうここで出てくるモンスターからお金をむしり取るしかないよっ!!』

「ああっ、わーってるよ!!俺ももうそれしかないと思ってたところだよ!!ちくしょうおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」


 周一は吹っ切れ、泣き叫びながら先に行った薄情者達の後を走って追いかけて行った。

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