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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
16/109

2-2

店の試着室で着替え始めた周一。美遊の手によってお亡くなりになったトランクスの代えは店にあった黒色でシンプルな物をカルドに持って来て貰った。

 カルドが言うにはこれも後で今はテルフィアが持っている俺の金袋から徴収するとの事だ。


『いやぁ~んますたぁー。私が居るのに、だい・たんっ』


 簀巻きを解き放った全裸の周一を見て、画面の中で謎の反応を見せる銀髪ゴスロリ少女のイリス。


「お前はいつも見てただろ。ってか覗いてただろ」

『まぁね~』


 演技を止め、開き直る様に答えるイリス。周一はトランクスを履き終わり、服に手に取るとある事に気付く。


「ん・・・これって、あの時のか?」

『ん~?ちょっと似てるね~」


 それは周一がいた元の世界。この世界に来る前に着ていたあの姿の服装に似ていた。黒いシャツとズボン、赤のロングコートと何処かのキャラクターをにおわせる感じがするがあの時の細かい装飾やグローブは無いため似ていると感じる程度だった。


『でもますたー」

「ん?」

『ますたーの目の色はあの時から変わったままだよ』

「・・・マジか」


 試着室にある頭から腰辺りまで見える鏡で自分の姿を見ると、確かに瞳の色が黒から赤に変わっていた。目の色なんて自分の顔を見る機会が無かったため知りもしなかった。カラーコンタクトなんて物を付けた覚えも無いのでこれもあの時から変わっていたと考えるのが妥当だろう。


『まぁでもいいんじゃない、念願の中二病だよっ!やったねますたーっ!』

「念願でもねーし、赤い目=中二病って考えは患者に失礼だろ」

『ピロリン♪ますたーは≪呪われし深淵の魔眼≫を手に入れた』

「メッセージウィンドウ出すな。低レベルな名前も付けんな」


 着替え終わり、周一は客間に戻ってくると何かを会話している最中だった。


「じゃあその薬でネズミになってたんだね」

「うん・・・まさかネズミになるとは思って無かったけど・・・ルーちゃんに相談して用意して貰った物だったから。効果を聞かなかった私も悪いんだけど・・・」

「まぁ・・・あの方ならやりかねないわね」


 何の内容かはイマイチだったがネズミと言うワードからアイリスのネズミになった経緯でも話していたのだろう。


「あっ、着替え終わったんだね。良く似合ってるよ」

「ああ、ありがとな」

「とーぜんっ!私のセンスを舐めないで欲しーですっ!」

「お、おう」

「うん。さすがテルフィアだね」

「えへへ~それほどでも~」


 アイリスの褒め言葉にお礼を言う。威張るテルフィアにも褒めるアイリス。

 天使かっ!?


「それじゃあ、お話と行きましょうか」


 リアンが進行を務めるかの如く話を切り出す。その言葉に女性陣はテーブル傍にある椅子に座り、カルドは壁に背中を預けて腕を組む。立ちながら聞く様だ。周一とイリスは彼女達に向かいあう形で床に胡座で座った。


「まずは自己紹介ね。私はリアン・クラージ。カルド、夫の妻であなたが来ていた夫の店の隣、プリンセスナイトの店主。あと、私達家族はギルド[レヴォル]のメンバーね。これについては後で話すわ」


 リアンが淡々と自己紹介をした後、カルドに目線を送るが「リアンがしたから俺は別にいいだろ」とカルドは言って紹介を省いた。


「娘のテルフィアです。おとーさんとおかーさんのサポートをしてますっ」


 テルフィアは手を上げて元気よく紹介を軽く済ませた。

 その後3人は美遊をじっと見る。その反応に「えっ?私もするの?」と戸惑った美遊は仕方なく控えめに手を上げて発言した。


「私はミユ・イトウ。伊藤美遊って言った方が伝わるかも知れないけど異世界から召喚された勇者です。変態さんには紹介したけどそっちの子にはまだしてなかったからね。私もギルド[レヴォル]のメンバーです・・・これでいいですか」


 声のトーンでイヤイヤしましたと感じ取れる紹介だった。


「ミユ・・・えと、次は私だね。私はアイリス・トリガー。このエレメンタニアでは英雄姫って呼ばれてます。ただ、魔王を封印した英雄の娘ってだけで呼ばれてるんだけどね。あと・・・レヴォルのギルドマスターをやらされてます・・・」

「はぁ。やっています。でしょ」

「はい・・・やっています」


 チラッとリアン達を見て仕方なくといった風に自分がギルドマスターだと言うとリアンに一部訂正され、言い直させられた。


「・・・じゃあ俺の番だな。俺はえんど・・・ああこっちじゃ、シュウイチ・エンドウ、だったな。召喚された勇者かどうかは解らないが、魔法の無い世界から来た異世界人だ」

「・・・嘘じゃないんですよね?」


 まだ疑っている美遊は再度確認するかのように質問する。「だったら俺の相棒に聞いてくれ」と周一は呆れながら、周一の隣に浮いているウィンドウ画面に映る銀髪少女、イリスに顔を向ける。


『ますたーは遊び以外じゃ嘘はつかないよ。それに私が証人だしっ!』


 胸を叩いてPON☆と文字と効果音を出すイリス。


「むー・・・私的にはあなたの存在も結構怪しいんだけど。私の世界にはあなたみたいなのいなかったし。近い物でも・・・MMDだっけかな」

『えむえむでぃー?あー、あの初期の産物の事?ふっっる~~いっ!』


 美遊の無知ぶりを見て茶化した言い方をするイリス。言われた美遊はイラっとした顔をした。

 こいつ、俺を疑った美遊を見てちょっと怒ったな。


「イリス。いいからお前も紹介しろよ」

『はーいっ!了解だよますたーっ!・・・コホン、私はイリス。 MCSTマクストシステムのOMCだよ。ますたーの健康状態を管理してサポートする、まあ話せる道具みたいな考えをしてくれればいいよ」


 イリスの紹介に全員イリスの存在をイマイチ理解出来なかったが、本人の紹介通りなんだろうと納得していく。

 まあ確かに、俺のいた世界の住人じゃなきゃ理解出来ないだろうな。


「・・・じゃあ紹介も済んだ事だし、何から話していこっか?」

「そうね・・・まずはレヴォルの事を説明した方が彼もこの世界の事を理解しやすいんじゃないかしら?ミユちゃんもそうだったしね」

「まあ、そうですね。その方がいいと思います」


 リアンの提案に美遊が賛同し、残りもそれがいいといった風に頷く。


「と。言う事なんだけどシュウイチ君、いいかしら?」

「俺達は構わないけど確認していいか?」

「何かしら?」


 リアンの確認に周一とイリスは顔を合わせてから承諾するが、その前にリアンに確認をとる。


「そのレヴォル。ギルドってのは俺達の知識だと、何かの目的のために作られる団体や組織。って感じなんだがそれで間違い無いか?」

「そうね。それで間違って無いわよ。各国にある表向きのギルドは冒険者や商人達のための場よ」


 周一の質問に答えるリアン。だが一部気になる点があった。


『表向き?』

「って事は裏があるのか?」

「その裏が私達レヴォルよ」


 何と。レヴォルは裏ギルドだった。


『って事は・・・みんな悪い人っ!?』

「ちがうちがうっ!私達は国を守るためのっ」

『そうやってすぐ否定する人はあやしーんっ・・・ますたー?』


 すぐに否定したアイリスを疑うイリスに手を出して口を止めさせる周一。


「裏だから悪い奴とは限らねーだろ。アニメでもドラマでも極秘任務をこなす裏組織とかあったろ?あんな感じだ」

『あー。だったら納得』

「極秘任務って、そこまでのギルドじゃないんだけどなー・・・」

「でも秘密はあるよね」


 イリスを納得させる周一の説明に苦笑いするアイリス。だが、否定はしない美遊に『やっぱりっ!』と反応するイリス。


「あなた達がレヴォルに賛同して秘密を守ってくれるなら話してもいい事よ。それに1人はさっき自分でバラしちゃったし・・・当の本人達の自覚が余り無いのがねぇ」

「私は自覚ありますよっ!悪いのはルーちゃんですよっ!」

「そっちじゃないわよ、ギルドマスター」

「あっ」

「『あー』」


 リアンの視線と指摘にさっきの自己紹介で自分が裏ギルド[レヴォル]のギルドマスターと言った事を思い出したアイリス。

 裏と言うからには公には言えない事をしているギルドと言う事になる。ましてそのトップがこの世界で英雄姫と呼称されてる人物だ。平然と隠さなければならない事を口にしてしまっている。確かに自覚が無いと下は困るな。


「はうっ!?・・・だって、だって、みんながレヴォルって言うから、私も言わなきゃいけないとおもっ・・・てっ・・・ミユぅぅぅ~~~~~」


 おい泣いちゃったぞ英雄姫。メンタルよわっ!

 アイリスは美遊に泣き付いた。美遊は泣き付くアイリスを仕方なくあやす。


「まあレヴォルの目的。さっきアイリスが言いかけたけど、国を守る事よ」


 ああ、そのまま続けるのね。

 周一とイリスは泣いているアイリスを横目にリアンとの話を再開する。


『でも、国を守るんだったら別に裏とか秘密とか、隠さなくてもいいんじゃないの?』


 イリスの意見は当然の疑問だ。国を守る。一般的に正義の行動と思われる事、悪を行っている訳でないのなら隠す必要は何処にも無い。


「他の国ならね。でもライネス。この国の人達に正体がバレるとマズイのよ」

「その言い方だとこの国が他の国と敵対してるって聞こえちゃうんだが」

「ええ・・・その通りよ」


 リアンは入れ直したお茶を一口含み、肯定した。


「円道さん」

「ん?」


 美遊の呼びかけに反応し、そちらを向く。


「ライネス王が勇者達に依頼している事、聞いてませんでしたよね」

「ん・・・ああ、聞いて無いな」

「はぁ。えっとですね」


 美遊は呆れる様にため息を吐いて、話を続ける。


「ライネス王の依頼は、[勇者よ。6つの宝珠のうち、4ヶ国、火・水・風・土。そして魔王。それぞれの国の妖精王と魔王から宝珠を手に入れて持ってくる事。4ヶ国も魔王も宝珠を渡す気は無いであろうから手段は問わない。何としても5つの宝珠を手に入れろ]、です」

「宝珠?」

「まあ本人達が言うには妖精じゃなくて精霊らしいんだけどね・・・その子達が守ってる宝珠の事なの。あの子達の力が宿ってて、国中にその力を与えてるの」


 美遊の依頼内容の事について補足するようにリアンが説明する。


『なんか聞いた事あるような気がする』

「ああ、俺もだ」

「いや、聞いて無いでしょ」


 2人の発言にツッコミを入れる美遊。

 だが王の依頼の事ではない。ゲームの内容でそんな話があった気がしたのだ。


『ねえ・・・もしかしてそのク・・・宝珠が無くなるとその国からその力が弱くなるみたいな話なのかな?』

「ええ、よくわかったわね」


 ツッコミを無視したイリスの問いかけにリアンが肯定する。


「『やっぱり』」


 2人の言葉に他は「やっぱり?」と首を傾げた。


「いやこっちの話しだ」

『そうそう』


 これは言っても仕様が無い。伝わるのはゲームをプレイした事のある奴ぐらいだ。


「つまりは、ライネス王が他の国の生命線にも等しい宝を奪おうとしているからそれに対抗する組織としてのギルドって事か。そりゃ確かにライネスの連中にバレたらヤバいわな」

『私だったらスパイを送り込むねっ!』

「ええ。そしてレヴォルの情報がライネスに流れるとこちらが不利になる事は間違いないわ。だから裏。秘密なのよ」


 これでレヴォルの目的がだいたい解った。だがもう一つ。重要な点がある。


「そんじゃ、そのライネス王は何で宝珠を手に入れようとしてんだ?」

「それはライネスの勇者である美遊から聞くといいわ」


 リアンはそう言い、ライネス王の目的を美遊に話させる。


「はい・・・アイリス、もういい?」

「・・グスッ・・・うん、ゴメンねミユ」


 アイリスをあやし終わった美遊は話をするためにアイリスを離れさせる。アイリスはすっかり泣き切ったみたいで少し目が赤くなっているが平常運行が出来るまでは回復できたみたいだ。


「円道さんは勇者が呼ばれる理由は聞きましたよね」

「ああ、魔王を倒すためだろ?」

「はい。でも本当の目的は勇者に宝珠を持って来させるのが目的なんです。今まで何度もレヴォルが宝珠の防衛をしてましたが、その相手は必ずライネスの勇者なんです」


 美遊の表情が話を進める事に暗くなってゆく。


「でもそれが魔王を倒すために必要なら、一時的にでも宝珠を貸して協力すれば良いんじゃないか?」

「・・・そもそも勇者がライネス王に協力する理由を円道さんは覚えてますか?」

「えーと・・・確か魔王を倒して、報酬に金と元の世界に帰れる事だったか?」

「はい・・・その帰る事に問題があるんですよ。結論から言って魔王を倒したとしても元の世界には帰れません」

「『は?』」


 魔王を倒しても帰れない?それが本当なら元の世界に帰ろうとしてる奴にとってはとんでもない詐欺だ。


「それだけじゃなくて、魔王を倒さなくても勇者はある条件を満たした人だけ、元の世界に帰る事が出来ます」

「その条件ってのは?」

「召喚者。ライネス王の願いを承諾し、達成する事」

「つまりはさっきの宝珠を5つ集めるってやつか」

「ええ。そして、既に水の国オーシスの宝珠はライネス王の手にあるわ。メディーチという勇者が献上したそうよ。それがどういう事か、理解出来るかしら?」


 リアンの問いかけに周一とイリスは首を傾げ、イリスは先程美遊が言っていたライネス王の依頼内容を文章にしたウィンドウを周一の前に出して再度確認する。美遊以外はその映っている文字に戸惑っていた。そんな中で周一はある一点に注目した。


「・・・なぁ美遊。この冒頭の「勇者よ」って所。ここおかしくないか?確か勇者召喚は1人ずつなんだろ?だったら名前で呼ばれ・・・そう言う事か」


 イリスの機転で美遊の前にも同じウィンドウを出し、周一の指摘した部分の文字を赤く表示する。そして確認するように問いかけていくと周一はその異和感に勘付いた。美遊も的を射ているといった表情をしていた。


『あれ?それって、その勇者1人1人に同じお願いをしてるって事だよね?って事は既に1つ手に入れて献上したその人以外が宝珠を1つでも献上した時点で、その人も他の人も。誰ひとり帰れなくなるって事?と言うかそもそも、その人以外に帰れるチャンスが無いって事?』

「ええ。そう言う事になるわね」


 それが事実なら勇者の帰るという目的を根元から崩される事になる。


「メディーチさんが献上した後は宝珠の数が4つになってるから。そこから召喚された人はまだ可能性はあるけどね・・・」

『帰れなくなった勇者は可能性のある勇者にとっては邪魔者って事なんだね。真相を知ってればだけど』


 美遊は口には出さず、ただ頭をコクンと縦に1回振った。その顔を見たアイリスは心配するように美遊を見つめていた。

 あの反応からして言葉にはしたくないだろう。それを口にすれば美遊もその悲劇の仲間入りを認めてしまう事になる。


「真相を知らない奴らは無駄な努力しちゃうんだろうな」

『でも知ったら知ったで面倒な事になりそうなんだよ』

「確かにな。他に勇者で知ってる奴は?」


 その問いに美遊は首をゆっくりと横に振った。


「でも・・・ライネス王が嘘をついてるようには見えなかった・・・だからどうしていいか私には解らなくて・・・」


 美遊の声に辛さが混じり始める。

 美遊の雰囲気からしてライネス王の真の目的は解らない。だが魔王を倒すために宝珠を集めたいと言う事は嘘には見えないって事か。今までの話が真実なら可能性としては色々あるが、まずは話の裏付けをしておきたい。

 

「嘘かどうかって、まずその帰れる情報は誰から手に入れたんだ?」

「アイリスとブリズの女王様。それと・・・」


 その名前を聞いてアイリスを見ると頷く反応をした。


「魔王」

「・・・そっか魔おぅ、『魔王っ!?』」


 2人の驚きに確認を取るために美遊以外を見るが全員が首を縦に振った。


「あ、ああ~・・・そっか。そりゃ当事者だもんな。知ってて当然か。・・・というか魔王にその事聞けてる時点で俺達としてはすごい事なんだけどぉ!?」


 周一の言葉に激しく首を縦に振るイリス。

 魔王ってラスボスポジションだよ?その辺の村や街に居る情報をくれるキャラじゃないんだよ?だって魔王だよ魔王。魔物の王様だよ?ってかなんでみんな当たり前のように首を縦に振ってんの?


「それはそのうち解るよ」

「そうね」

「だな」


 テルフィアがそう言うとその親2人も納得するように答えた。


 ・・・何が?


「まあ、私達からの話はとりあえずこんな所かしらね。それじゃあ次はあなたの事について聞かせて貰おうかしら」


 美遊に気を使っての事か、リアンは話を周一達に振る。


「・・・ああ。そうだな。んじゃっ」

『待って!!』


 周一が話そうとするとイリスが大声で遮る。


「どした?イリス」

『ますたー、一応秘密の話って事みたいだったから念のためさっき起動してみたけど・・・これ見て』


 イリスが俺に見せるために目の前にウィンドウ画面を表示する。そこには複数の白い点と赤い点が3つ映っている。


「これって確か、生体感知か?・・・っ!?イリス、マジなやつか?」


 周一は画面を見ると顔が少し引きつらせながらイリスに聞いた。


『ますたー』

「・・・そうだよな」


 イリスの顔を見た周一はその画面に映った内容をすぐに信じた。


「悪い、話は別の場所で。それこそ安全な場所で頼むわ。俺のは内容によっては結構マズイし・・・って大分手遅れかもしれないけどな」

「それはどういう事かしら」

「シュウイチさんも気付いてたんですね」

「アイリス?」


 周一の言葉にアイリスが共感するように答える。『私が気付いたんだよっ!』とアピールするイリスを横目に状況を解っていない4人に簡潔に説明する。


「ボチボチ囲まれ始めてんだよ、この店。兵士か勇者かは知らんが少なくともライネス王の配下だろうよ」

「「「なっ!?」」」


 驚く家族3人。美遊は冷静に「本当?」とアイリスに確認を取る。そしてそれに頷くアイリス。


「たぶんメディーチさんの仕業、かな?」

「あっ・・・やっぱり見られちゃってたんだ・・・」


 アイリスの言葉に美遊は何かを思い出し、周一を視線を送りながら言う。


「何その俺が原因みたいな目」

「可能性としては私かもしれないけど。もしかしたらシュウイチさんが飛んでる所を見られちゃってたかもしれないって事」


 アイリスも思い当たる点を口にした。


「うそっ!?シューイチさん飛べるのっ!!?」


 それに大声で反応するテルフィア。『そんなに珍しいの?』とイリスが周りに聞くと周一以外から肯定する返答をしてきた。


「まあ、その話は後でいいわ。それよりも乗り込まれたら面倒だわ。移動しましょう」


 リアンはそう言い、その指示と共にリアンとカルド、テルフィア、美遊も何かの準備をするためか移動を始め、奥にある部屋に入っていく。


「シュウイチさんも、早く!」


 アイリスは立ち上がり、座っていた周一に手を差し伸べる。


「・・・ああ」

「シュウイチさん?」


 腑に落ちない顔をしながらアイリスの手を取る周一。その顔に思わずアイリスはもう一度名前を呼ぶ。


「なぁ、アイリス。変な事言うかもしれないけど今この家にいるのって俺達だけだよな?」

「えっ?・・・そう、ですね。私達以外の気配は店の外だけですね」


 小声で話した周一の問いにアイリスは目を瞑り、気配を探った。そして周一の言った通りだと小声で肯定する。


「イリス」

『・・・いいの、ますたー?」

「アイリスは大丈夫だ」

『うん。わかった』

「?」


 周一は渋るイリスに何かの許可をする。


「アイリス、これ見て」


 イリスはそう言い、先程の生体感知のウィンドウ画面をアイリスの前に出した。


「これは?」

『生体感知。アイリスで言うなら気配ってのを地図に出してる感じかな』

「へぇ~、イリスちゃんって凄いねっ」

『イリスでいいよ。それにアイリスの方がすご・・・じゃなくって!これに映っている白い点が人ね』


 呼び名を訂正して貰えるように言い、画面の説明をし始めるイリス。

 何処に視線を送ってたかは言わないで置いてやるからそのアングルの画像データは後で見せて貰おう。


「うんうん・・・それで、この赤い点は?」

『解らない』


 赤い点について、イリスは解らないと答えた。


「えっ?それって?」

「人以外の生命体がいる」

「それって他の生き物じゃないの?ほら、虫とか」

『この生体感知は指定種を除外する事が出来るの。今除外してるのは人以外の全て。そして人は白で表示されるように設定してるから人だけなら白しか表示されないはずなの』


 イリスの説明にアイリスは何かに気付いたのかはっとした。


「そっ。俺達の他に人であって人では無い何かが居るって事だ。外に2つ、美遊に重なってるのが1つ。さっきの手遅れってのは今まで話してた事について保障できないって事。だから今後その何かに聞かれる心配があるからこの事が解るまであっちに居る奴らには内緒で頼む」


 周一のその言葉にアイリスは無言で頷いた。

 あっち、カルド達が向かっていった部屋の方だ。今は少し離れた距離に2人ずつ分かれ、ここから見て左側に赤い点が表示されていた。


「よしっ。んじゃ付いて行けばいいんだな?」

「あっ、う、うん。でも・・・」


 そのまま奥の部屋に向かう周一の背中でイリスはアイリスに向けて『内緒だよっ!』とプラカードの様なウィンドウ画面を表示する。


「え?」


 アイリスはその画面に映った文字の意味を理解出来なかったが、状況を把握出来るまでは周一の言う通りにしようと心に決め、周一の後を追った。

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