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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
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1-10

 森の中を歩く周一と美遊。森の中には人が安全に歩けるように手入れがされている道があり、美遊が言うにはここは街の人が木材や薬草類などの簡単な材料を採取する森だそうだ。凹凸の激しい道や草木の多い所を進む事が余り無いため、この白いリボンを着けたネズミは周一の頭に乗って心地よい揺れと風を堪能していた。


「それで。円道さんが使ってた魔法はここに来る前から使えたんですか?」

「あー・・・どう説明したらいいんだろうな」


 美遊の質問に悩む周一。

 あいつらの事を隠す必要は無いのだがここまで問い詰められると逆に気になる点が出てくる。


「・・・というか。異世界の勇者ってのはいきなり魔法使えたらヤバいのか?」

「いえ。ヤバくは無いですよ。魔法を使える世界から来たって人は結構いますし。杖の様な道具が無いと使えないって言う人も中にはいましたけど」

「って事は魔法の無い世界から来たって言ってる俺は、何かしらの理由が無ければここでは魔法が使えないって事か?」

「そうなんですよ。ちなみに勇者がここで魔法を使う方法は二つあります」


 お、なんか勝手に説明してくれそう。

 二つあるという事なので内容次第では自分の事についても上手く説明できるかもしれないと思う周一。


「一つ目は円道さんには絶対当てはまらない事ですが、この世界に居る4属性、[火]、[水]、[風]、[土]の妖精。あの子達はみんな精霊って言ってますけどねwその精霊達から加護を受ける事で魔法が使えるようになります。ただ4属性の加護を受ければ全部使えると言う事ではないんです」

「と言うと?」

「属性には相性があるんです。この世界の人達もなんですが、精霊に加護を受けれるか受けれないかで使える魔法属性が決まるんです。まあぶっちゃけ、あの子達しだいで決まっちゃうって事なんですけどね」

「気まぐれかよ!?」


 なんとも酷い判定方法だ。


「そうでもないみたいです。ちゃんと本人達なりの合格ラインみたいなのがあるそうですよ」

「・・・んまぁ、とにかくその加護を受ければ魔法を使えると」

「そうなりますね。あっ、ちなみに私は4属性全部使えますよっ!」

「・・・ああ。凄いな」


 エッヘン!と文字が見えそうな、小さい子が自慢してるようにしか見えない態度を見せる美遊。

 その身長なりでそんな態度とったらもう本当に胸の大きいだけの子供にしか見えないからな。と可哀そうな目をしながら応答する周一。


「・・・はっ!?~~~~っ!!?わっ、私の事はいいんですよっっ!!」


 周一の可哀そうな人を見る様な目を見た美遊は顔を真っ赤にさせて怒った。


「いや、何も言ってねーよ」

「ぶぅ~~~~っ!!」


 更に頬を膨らませて周一を睨む美遊。

 何?そのお前が誘導して言わせたんだっみたいな反応。すっごい理不尽。


「わかった。俺が悪かったよ」


 不本意だったが非を認めた事で美遊の頬に溜まった空気が抜けていく。


「それでもう一つは?」


 頬の空気が抜けた所でもう一つの方法を聞く。


「・・・それはさっきも言いましたけど[自分の世界で魔法が使える]事です。これは元々マナの使い方。ここではゲームで言う魔力やMPの事をマナって言うんですけど。その使い方を知っている場合は問題無く使えるみたいです。ただその場合は勇者としての能力が[自分の世界で使っていた魔法]って事になってしまうらしいです。まあここではその勇者しか使えないオリジナルの魔法ってことになるので充分、能力として扱われますけどね。能力の名称は[ユニークマジック]。魔法を使える世界から来た勇者は全員この能力になりますね。魔法の無い世界から来た勇者の場合はさっきのアルト君みたいな特殊能力になりますよ」


 つまり、この世界に来る前から魔法を使えた勇者はユニークマジックと言う名称の能力に強制的になって、魔法が使えない勇者は無敵の体を手に入れたアルトの様に何かしらの能力が手に入ると言う事らしい。

 話から察するに俺の能力はユニークマジックの勇者だろう。と、俺の魔法を見たこの世界の常識を知っている奴らはそう思うだろう。だがそれは魔法を使える世界から来た勇者の話だ。


「それで。本来、方法から考えると円道さんの能力はユニークマジックって事になるんですけど。円道さんは魔法の無い世界から来たんですよね?」


 俺の世界では魔法が無かったという事と伝えたのは今のところ美遊だけだ。アルトの戦いの時は能力や魔法が使えるかどうかはまだギリギリ疑いの段階だった。だが今や俺の発言によって俺の存在は美遊にとってこの世界のことわりから外れている事になる。俺に探りを入れるのも無理は無い。


「ああ。だからそのユニークマジックじゃ無いな」

「そうなると・・・円道さんは勇者としての能力、ユニークマジックでは無い能力を手に入れてるって事になるんですけど。特殊能力の場合はこの世界に来た初日の夢を見る事で解るんですが・・・円道さん、眠っている間に何か夢を見ましたか?」

「夢?そんなのは見て無いな」

「ううううう~~~~っ!わっっからないっっ!!!」


 すると美遊は足を止め、原因を突き止められない事に唸り始めた。


「そーだな・・・って。おっ、街だな。あー早く着替えてぇー」


 大きい森ではあったが街まで手入れがされている道を一直線に歩いていたためか、話しているうちに街の傍まで来ていたようだ。


「あっ、円道さん」

「ん?どうした」


 周一を引き留め、美遊は左手を出すと突然黒いマントが出てくる。


「これを着てください。さすがにその恰好で街を歩くのは目立ち過ぎます」

「・・・これ、今どっから出した?」


 さすがに周一も驚くしかない。森に入る前、箒が消えた時には魔法で箒を出したし消したりでもしているのだろうと勝手に魔法少女らしいと解釈していたため驚かなかったが、今度は目の前でマントが突然出てきてしまった。箒だけならまだしも他のが出たら魔法少女では無く手品師だ。


「あー。そう言えば私の能力言って無かったですね。私の能力は触れた物を自由に出したり消したり出来る能力です。私が片手で持ち上げられない物や生物は対象外ですが、他は何でも消せて、私の出したい時に出せるんです」


 何そのどっかの異世界ラノベであった[何でもアイテム化して見えない無限アイテムボックスへ]みたいな能力だなと思う周一。


「なにそれずるい」

「ずるいって言われても・・・」


 美遊は苦笑いを返す。


「まあとにかく。服を買うまではそれを着てくださいね」

「わーったよ」


 ボロボロの服に黒マントも結構目立つと思うがまあいいか。

 周一は言われた通りにマントを羽織ると、裾の長さが膝辺りまで来ていた。


「これ・・・結構でかくね?」

「それは可愛かったこの格好のセットだった物ですよ。そのマントは私には似合わなかったのでローブのままですけど。一応、使う時があるかもしれないって事でとっておいたんです」


 ネコミミの魔女っ子帽子を魅せる様に答える美遊。

 私には似合わなかった?マントが使う時が来るかもしれない?・・・あー。

 周一は何かを察して美遊に近付き、ポンと美遊の肩に手を置いた。


「え?」


 その美遊の反応に周一は無言で、憐れみを込めた笑顔で、うんうんと頷いてから、美遊を背に街へと向かっていった。


「なっ!?何なんですかその顔!?何その「俺は解ってるからな」みたいな反応っ!!?ちょっと円道さんっ!!ちがっ・・・じゃない!・・・・・・聞いてるんですかっ!!!ちょっ・・・・・・」


 後ろで美遊はきっと言い訳を叫び続けているのだろうと、周一は振り返らずに遠くの景色を見ていた。

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