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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
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1-8

「それにあいつの能力が本当なら試せるしな」


 アルトが絶対勝利する条件を受けた周一。だが周一には別の考えがあった。アルト本人がどんな事をされても傷一つ付かない能力だと言っていた。なら、自分に宿っている力がどの程度のものかを人に試せるチャンスでもある。アルトが嘘言っていたならそれはあいつの自業自得になる。


「(なあ、確かあの時言ってたよな?お前は魔法が使えるのかって)」


 周一は自身の心の中で誰かに話しかける。


「(・・・居るのは解ってるんだ。返事ぐらいしてくれたっていいだろ?)」

 

 【・・・ああ。確かに言った。そんな事を聞かなくても使い方はあの時に知っているはずだ】


 その心の問いかけに応答する謎の男の声。周一は心の外、現実では美遊やアルトに話を合わせながら会話を続ける。


「(知っているって言われてもなぁ・・・お前に言われてあれが魔法だって事知ったし、あの時はなんとなく出来るって思ったら出来ちまったやつだし・・・。んでアレ以外に、俺が使えそうな魔法とか無いの?)」

 【そんなものは知らん。何を出すか、どう扱うかは全てお前次第だ】

「(無責任だなー。俺の力になってくれるんじゃなかったのか?)」

 【なると言った。だから現にお前と共にいる】


 どうにも、聴き方が悪かったみたいだ。


「(そんじゃ、質問を変える。どうすればお前 ()の力を使える?)」


 周一が聴きたかった内容としては先程と同じだが、今度は自分自身の力ではなく、心に話しかけて応答してきた者についてを聴く事にした。


 【・・・名の由来、そしてその名を理解しろ。そうすればお前が言っていた[なんとなく]で自然と使えるはずだ】

「(うわっテキトー・・・確か、お前達って名前通りだと[早さ]と[翼]だったか?)」

 【それで問題無い。だが、それだけでは無い。私はお前に何を見せた?】


 見せた?あの時の事か?

 周一は自分が居た世界で起こった出来事を思い出す。


「(見えないほど早く移動したり、瓦礫とか魔法の玉みたいなのが途中で早くなったり遅くなったり・・・ああ、そういう事か)」

 【そうだ。そして後はお前次第。私を一度でも超えた力。感覚はお前が一番解っているはずだ】


 あの時の感覚・・・俺は何故?魔法を・・・力を使えるとあの時確信していたんだ?

 ・・・解らない。

 でも、あの時の感覚をなんとなくだが俺は覚えている。やはり、俺は魔法が使える。


「(んーそうなると、後はあいつの能力的に一応、時間が欲しいな。なあ、お前達の力は今みたいに話せる状態じゃないと使えないのか?)」


 周一は魔法が使えると確信する前からすでに使う魔法は考えていた。そしてアルトの条件に勝利するために絶対に必要なのは時間だった。それもなるべく・・・。なのでアルトとの心の外での会話を時間に関する条件変更へとするため、会話を誘導する。


 【いつでも使える。私達の意思は関係ない】

「(そうか。ありがとな、答えてくれて。あー、でも一応言っとくな。[クイック]、[ウィング]。お前達の力、ありがたく使わせて貰うぜ)」

 【ふっ、勝手にし 【いいよぉ~♪】・・・お、おいっ!】


 クイックと呼ばれる男の声を遮る、能天気な女性の声。


「(ん?もしかしてこの声がウィングか?)」

 【そうだよ~♪はじめましてだね~♪】


 なんとも能天気な挨拶。ただ、[絶対兵器アブソリュートウエポン]ってのはクイックみたいに固い感じに話す奴だけだと思っていたので、そうじゃないのが解っただけでも少し気が楽になった。


「(ああ。ってかさっきの話し聴いてたのか?)」

 【ん~ん、起きたばっかりだからねぇ~。クイックが君に話し出した頃からかなぁ?】

「【(ほぼ最初っからじゃねーかっ!)】」

 【えへへっ】


 周一のツッコミをまるで「いっけね」みたいな風に笑ってごまかすウィング。あれ?俺とクイックの声が重なってたような?


 【でも君、変わってるね】

「(どこが?)」

 【私達を道具として扱わないなんてさ】

 【・・・だな】


 嬉しそうに答えるウィングとテレを隠しながら答えるクイック。


「(・・・普通だろ?・・・んじゃ、試してみますかね~)」


 そう言った後、心の中での会話を止めて現実へ集中する。演技・・をするのも忘れずに。





「・・・可能性は0じゃない。出来るはずだ・・・絶対に・・・」


 周一は焦る表情をアルトに見せるように小声で呟く。


「だが万が一と言う事もあるかもしれない。10秒を過ぎたら美遊さんにい・ち・お・う・解毒魔法をして貰わないとな」

「モウ・・・えっ?誰か呼んだ?」


(解毒魔法?ああ。そういえばあいつらと話すための時間稼ぎに毒とかなんとか、テキトーに話し合わせてたっけな。それで勝手に俺が毒を扱う能力とでも勘違いしてるんだろうな。俺としてはそこの所はどうでもよかったんだが、まあそのお陰で時間も稼げたし・・・おっと、まだ俯いていた方が良さそうだな)


 嫌味を込めて言っているであろうアルトに対して、まだ演技を続ける周一。


「くくっ、聞いて無いか。ではクラーク大臣。エンドーが攻撃を当てたらカウントダウンをお願いします」

「解りました。では王。この方法でよろしいのですな」

「ああ。両者が了承したのだ。もう私からは何も言うまい」


 大臣が確認をとると王も了承する。我に返った美遊は立ち上がって辺りを見渡し、明らかに周一の状況が不利な事理解し、「こうなるから言ったのに」と呆れる様な言葉を言いつつも心配そうに見る。そしていつの間にか周一の左の掌から左肩に上っていたあのネズミも心配しているかの様に見つめていた。・・・そんなに近いとほのかにあの臭いがするのだが。


「クラーク大臣。エンドーにもしかしたら何かしらの事前の準備があるかもしれない。だが何も動きがないまま1分が過ぎようものなら無条件で俺の勝ちにして貰おう。そしてその場合でも俺様がアイリスのパートナーとして選んで貰おう」


 アルトが更に条件を付け加える。

 周一は俯きながら目線を美遊の方を向ける。そして周一を見ていた美遊に口元をニヤ付かせ、「大丈夫だ」と美遊に聞こえる程度の小声で伝えた。それに少し驚いた美遊。


「姫の事は私には決められない話なのですが・・・」

「ふっ・・・まあいいだろうっ」

「ではエンドー殿もよろしいですな。返事は無いようですが始めさせて頂きます・・・では勝負・・・始めっ!」

「さあいつでも来いっ!!エンドー!!!」


 顔を上げるとそこには上機嫌になり過ぎているのか、少し興奮している様に見えるアルトが居た。

 初めてこいつを見る光景がこれなら完全にドMにしか見えないだろう。


「・・・さてとっ」


 右手で左肩に乗ったネズミを頭の上に移動させた。


「んん?どうしたぁ?」


 余裕があるようにみせているんだろと考えているであろうアルトを横目に、周一はアルトの向かいに立つために移動を始めた。


「条件は・・・体に当てるのと、剣や能力的なものを使われても10秒間お前がそこに立っていればお前の勝ちだったか?」


 そして条件の確認をしながらアルトの目の前に立った後、本当にこれでいいかと確認をとる様にアルトの顔を見る。


「ああ、出来るものならな!」


 自信たっぷりに答えるアルト。

 周囲を見ると王が居るテラスの下、クラーク大臣がしっかりと開始から指で時間を・・・


「って指かよっ!?」

「どうした?隙を狙うならもう少し捻ったらどうだ?」

「いや、何でもねーよ」

「?」


 クラーク大臣は指で時間を数えていたのだ。

 なにこの世界。大型でも小型でも、時計的な物って無いの!?


「はぁ~。んじゃ、美遊」


 美遊に呼びかけ、美遊が呼ばれた事に気付いたのを見て続けて答える。


「お前の魔法、アレンジさせてもらうな」

「はあ?」

「・・・え?あ、は、はい?」


 アルトと美遊の理解出来ないと言う声。その声が聞こえた周りの者達も徐々にざわめく。


「あー、アルトの後ろに居る奴ら~。死にたくないならそこから退いとけよ~」

「エンドーっ!貴様何を言っているっ!」

「出来るだけ遠くな~」


 アルトの声を無視して注意を促す。アルトの後方で見ていた者達が巻き込まれたらヤバいと思ったのか周一の言われた通りに早々と移動をし始める。周一がそのように促した理由は自分の意思で、まして心で会話していたあの二人の力を使った魔法を使うのは初めてなので余計な被害を出さないためでもある。だが一番は、加減の仕方が解らないからとりあえず思いっきり出してみようと思ったからだ。そして大臣の指もそろそろ40秒ぐらいだろう。


「ああその辺ぐらいで多分大丈夫だとおもーぞー・・・よしっ、いいみたいだな。アルト。動くなよ?」


 周一はアルトの胸に向けて右手を突き出す。


(美遊の使ったあの魔法は風で集めた空気を固めて飛ばす風魔法だろう。翼を使うためには空気や風が必要。つまりは[翼]に関連付ける事が出来る。そしてそれに[早さ]を加えるように・・・)

「は?何をするつもっ!?」


 突如として周一の右手の先に風が集まり出し、その風が圧縮されて固まっていくかのような白い球状の塊が出来あがっていく。


(・・・この感覚、あの時と似ている)


 そう、この‶使える‴と確信できる感覚。


「風、魔法?・・・でも緑色じゃないっ!?なんなのっ!?」


 美遊が思わず口をこぼす。王達は身を乗り出して注目し、大臣は58秒の所で思わず数える指を止める。


「言ったろ?お前の魔法をアレンジするって」

「だって属性がっ!!それに詠唱も無しにっ!?」

「ん?やっぱ魔法って詠唱がいるのか?ま、使えれば有っても無くても関係ないだろ」


 思わず周一に近付いてきた美遊と話している間も周一の右手先にある白い球体に纏う風の勢いと大きさがどんどん増していく。

 その未知の魔法に周囲は興味と驚きが混ざり合い唾を飲み込みながら注視し、そしてその魔法を目の前にしているアルトは一瞬恐怖を感じたが自分の能力を信じる事を決め、唾を飲み込み、自身の体に力を込める。



「んじゃ、もう一度言っておくぜ。う ご く な よ」

「くっ!?」


 その言葉に最強の能力を持ってしても、アルトに死の恐怖を感じさせた。そして球体の大きさがアルトの身体に触れる前に周一は再び口を開く。


「『クイック・エアブラスト』!!」


 そしてその魔法名と共に白い球体が周一の右手から放たれた。当然、球体はすぐさま放たれた先であるアルトの胸に一瞬で直撃する。

 そしてドゴォッ!!とゆう破壊音と凄まじい衝撃、突風、砂煙が起こり、訓練場を包み込む。


「っ!?・・これじゃあ何も見えないっ!!【風よ 舞い上がれ】『ウィンド』っ!!」


 衝撃で起こった突風に飛ばされないようにネコミミ帽子を右手で、スカートを無意識に左手で抑えていた美遊はすぐに状況を把握出来る様にするため、突風が収まった後にすぐさまスカートを抑えていた左手を離して前に突き出し、砂煙を晴らすための風を起こす魔法を唱える。美遊の呪文の声が周りにも聞こえたのか、同様に同じ魔法使える者達も唱える。すると砂煙が勢いよく吹き飛ばされ数秒もしない内に辺りの視界ははっきりする。そして更にその数秒後、ザッバーン!!と水に大きな物が落ちる音が遠くで聞こえた。


「・・・な、何が起こっ!?」


 王は想定外の出来事に困惑していた。訓練場の一部の兵士勇者たちは周一が起こした突風により吹き飛ばされ、尻もちをついた者や何かにしがみ付く者の姿があった。王達はあのアオザイの女性が水の壁のようなものを張って守っていたため害は無かった。


「んぅ~ぺっぺっ・・・もぉ~、口の中に砂が・・・ってあれ?2人は・・・っ!?」


 美遊は先程の砂煙の中で呪文を唱えたため、目を瞑りながら口に入った砂を唾と一緒に吐いて周一達が立っていた所を見るとそこに2人の姿は無かった。それよりも、アルトが立っていた後ろ側の地面、そして城壁がまたも何かに大きくえぐられたかのような状態。そしてそのえぐられた城壁からは城の外にある城下町や海が目に見える光景があった。もし先程周一がアルトの後ろに居た人達に注意を促して移動させてなかったら確実に巻き込まれていた事だろう。そのお陰か、移動していた人達は城内で軽く吹き飛ばされた程度で済んでいた。


「・・・嘘、でしょ・・・」


 周囲の者達も想定外の出来事に困惑し、吹き飛ばされなかった勇者達はその光景に驚きつつも、いち早く吹き飛ばされた者達の無事を確認していく。


「ああ・・・俺も驚いたぜ」

「円道さん!?何処っ、何処に居るんですかっ!?」


 何処からか聴こえてきた周一の声に辺りを見渡すがやはり何処にも居ない。


「ここだ」

「へっ?」


 美遊は声のする方を見ると確かにそこに周一は居た。太陽の光で顔が少しテラついていた周一が仰向けで地面に倒れていた。


「・・・なっ、なっ!?」


 顔を赤くなり始めた美遊に追い打ちをかけるかのように周一は喋り出す。


「砂煙が晴れてネコさんが見れたと思ったら、まさか追加で液体が顔にかかるなんてな」

「にゃっ!?・・・にゃあぁっ!?」

「なんという偶然っ!」


 状況を理解できた美遊は更に赤くなる。そしてキリッとした顔の周一から止めの一言。

 もちろん言う一言はアレしかない。


「ありがとうございますっ!!!」

「バカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」


 そしてスカートを両手で抑えながら美遊は思いっきり周一を蹴った。


 

 我々の業界ではごっ!!・・・・・・・・・です・・・。

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