プロローグ
「かあさん、かあさーん待ってよ!僕を一人にしないでかあさーん!」
綺龍はガバッと起き上がった
「またあの時の夢か…」
小鳥のさえずりが聞こえてくる
綺龍の母、天音がさらわれてから十年の間魔族の侵略もなく平和の時が流れていた
「かあさん…」
「キーくんご飯だよ~」
呼ぶ声が聞こえる
いつもと同じ平和な朝
「綺龍早くしないと朝ご飯なくなるよ」
その一言で急いで着替えをすまし下に降りていく
「俺の朝飯まで食うなよ‼ 唯純」
「あらキーくん、おはよ。心配しなくてもキーくんの朝ご飯あるわよ」
唯純の母がラズベリートーストを出した
「そうだ今日、綺龍の誕生日だからパーティーやるからね」
朝からパーティーの話でみんな盛り上がっている
「そうだぞ。綺龍くん今日はみんなも呼んじゃおうかな
だからしっかりとした服装じゃないとな」
と冗談めかしく言うのは唯純の父さん、
「からかわないでくださいよ~ それに俺は寝坊助じゃない唯純」
(そう今日は俺の誕生日だそれと同時に母さんが居なくなってから十年か)
「そうだったキーくん、唯純買い物行ってきてくれる
今日のパーティーの材料買ってきてね」
「えぇーママが行けばいいじゃん」
「ダ~メ ママはやることあるからだからお願いね」
「ハイハイ行ってきますよ 綺龍!行くよ」
「おう、分かった」
買い物リストをもらって商店街に向かった
歩いていると武器屋のおじさんに呼び止められた。
「綺龍お前今日誕生日だろ今朝こいつが入ったからこれお前にプレゼントだ」
受け取った綺龍は驚いた、
「これ龍の爪じゃないかおじさんこれ貴重だし高いのにいいの?」
「いつも手伝いに来てくれるお礼もかねてだよ」
ニカッと笑って言う武器屋のおじさん
「綺龍~何してんの?おいてくよー」
と言いながら唯純は手招きをして持っていてくれた
「あ~疲れた買い物も終わったし…綺龍聞いてる」
綺龍に一瞬、ビジョンのようなものが見えた
「あ~うん悪いぼうっとしてた」
(何だ?今の疲れてんのかな?)
「ハァーまあいいよ。帰ろ…」
その時ドカンと町中に響く音がした
「魔族だ‼ 逃げるよ 唯純」
「え? あ‥うん」
綺龍は唯純の手を引っ張って家の方へと走った。
途中商店街を抜けてきたが店が崩れたり燃えていたり泣き叫ぶ人が居たりと平和だった日々が崩れ去っていった
家は大丈夫だろうか、おじさんとおばさんは無事だろうかという綺龍の思いが積もる中、
家が見えた
そこには黒い影が二つ見えおじさんとおばさんは
その影追い込まれていた
「パパ‼ ママ‼」
思わず唯純が叫ぶ
その声に黒いローブが振り向き
「居た 見つけた」
そう言った瞬間、唯純は黒いローブの腕の中にいた
「唯純‼」
そう叫ぶと綺龍は、がれきの木の棒で広いローブの男を殴った
しかしローブの男に当たった木の棒は粉々に折れ
「あん 邪魔だなお前」
そうローブの男が言い捨てると同時に綺龍は後ろのがれきの山の中へと吹き飛んでいた
「綺龍ー」「キーくん」「綺龍くん」
「三人が呼んでる... やば…意識が…」
「キ‥ヨ キリュ‥ヨ‥」
「う…ッう…ッくッ」
(ここはどこだ?暗くて何も見えない…俺は死んじまったのか)
「綺龍よ… 綺龍よ‼」
「誰だ、俺を呼んでいるのは」
「やっと私の声が届いたようだな」
赤く炎のような温かい光が綺龍を包みこんだ
そして目の前に赤く炎を纏ったドラゴンが現れた
「ドラゴン…お前が俺を呼んだのか?」
「そうだ我がお主を呼んだ」
「そうか…なぁ聞きたい事がある。俺は死んじまったのか?」
(そう俺は唯純達を助けられず死んだのか?)
「綺龍おぬしは死んではおらん」
それを聞いた綺龍は驚いた
「本当か?そうかまだ俺は生きている、まだ唯純達を助けられる」
「ほう綺龍お主、面白いのう。自分の命より他人を先に考えられるとは」
「あぁ…二度とあんな思いをしたくはないから…」
「そうか、なら魔族と戦うのだな」
どこからかもう一つ声が聞こえた
赤いドラゴンの横に黒い光とともに黒いドラゴンが現れた
黒のドラゴンが綺龍に問いかけた
「お主自分自身の能力と、それが覚醒し始めていることに気付いておるか?」
「俺の力…」
赤のドラゴンが続けた
「綺龍お主なぜ魔族がきたとすぐに分かった?」
「…そういえば買い物が終わってから唯純と休んでるとき、イメージが流れ込んできた
そのイメージが魔族が襲ってくるイメージだったそれで」
赤のドラゴンがさらに続けた
「それが能力の覚醒始まりだ 今我らがこの空間に呼べているのは
能力が完全に覚醒した証拠だ」
「じゃぁ 俺は唯純を助けられんだな」
「そうだお主は魔族と戦う力がある、お前の能力は我々を纏い戦う力だ」
黒のドラゴンが答えた
そして二匹のドラゴンは
「問おうお主は我らと共に戦う覚悟はあるか?」
綺龍は胸に熱く燃える思いを抱き
「唯純を助けられるならその能力を俺にくれ」
そう静かに答えた
そして二匹のドラゴンは答えた
「ならば行けお主の思うままに戦い生きろ」
(意識が…)
「綺龍ー」「キーくん」「綺龍くん」
「クックックアーハハハハ、何が綺龍だ、何回読んでも出てこれやしねーよ、
何故ならもうこの世に居ないからなー」
唯純を抱えたローブの男が笑う
「私たちの任務はこの少女を捕獲することだ、帰るぞ」
もう一人のローブの男が静かにいう
「あぁ分かったぜ、女おとなしくしてろよ」
「まて…唯純を返せ…」
「まさか‼」
唯純を抱えたローブの男は綺龍が飛ばされたがれきの方を振り向いた
そのがれきの中からは光が漏れ出ていた
「うおおおおおおお」
と言う声と共に綺龍をおおっていたがれきが吹き飛んだ
「唯純を返してもらうぞ」
「フフフアハハハハ、おもしれ。おもしれーじゃねーか」
ローブの男が唯純を抱えたまま走りだした
「しゃあー」
ローブの男がけりを入れるが綺龍はそれを軽くよけ唯純を取り返していた
「大丈夫唯純?けがとかない?」
「うん、うん大丈夫だよ。綺龍」
そしてゆっくりと唯純の両親のところへ行き、唯純を下ろしながら
「おばさん おじさん唯純を頼みます」
「綺龍くんはどうするんだんね?」
「俺はあいつらと戦います」
そのとき男の一人がローブを脱ぎ捨てた
そこには鬼と人の混ざり合った姿だった。
「くそおぉ‥ッチ、なめやがって、何があいつらと戦うだ。ふざけんな雑魚があー」
「カイロス、やめろ❕」
もう一人のローブの男が叫ぶが、カイロスは止まらなかった。
「ざけんなー」
カイロスは綺龍に殴りかかる。
綺龍はそれをかわしたが
間髪入れずに追撃をするカイロスに吹きとばされた
「ッく…強いなあいつ」
「綺龍よ今こそ力を使え」
「分かった」
「我と共に叫べ」
「あぁ」
「何してんだ、ブツブツ一人で言いやがって」
カイロスはそう叫ぶと綺龍に殴りかかった
しかしカイロスの拳は綺龍に届く前に赤い炎によって阻まれた
そして綺龍の後ろには赤いドラゴンが居た
「行くぞ綺龍我が名を叫べ」
「おう‼」
「我が元へ来たれそして我が力となりたまえファイヤドレーク」
綺龍の後ろに居たドラゴンが赤い光に包まれ綺龍を覆った
そして光が弾け綺龍とドラゴンが一つになっていた
「クロス 龍装【剛炎焔】」
その綺龍の姿に誰もが唖然としていた
「ヘッおもしれじゃねーか人間」
カイロスは綺龍にむけ緑の炎を放つが綺龍の放った炎にかき消された
「綺龍お主の持つ龍の爪を使え」
ファイヤドレークが綺龍に言う
「分かった」
綺龍が龍の爪を持つと、爪が綺龍の手の中へと消えた
そして綺龍のてに三本の爪が、現れたその爪は幻影のように透きとおっているが
その爪は美しくとてつもない存在感と力を放っていた
「それは龍鉤爪だ我らを纏わなくても使える技の一つだ 綺龍来るぞ」
ファイヤドレークの掛け声と同時にカイロスが襲い掛かってきた
綺龍のふるった龍鉤爪が、カイロスを切った
地面に倒れたカイロスは
「すまね アトラ」
と言いながら黒い炎のように消えって言った
「バカなヤツめ…ところでお前、綺龍と言ったか?」
アトラが静かに言った
「あぁそうだ」
「覚えておこう。私の名はアトラ、またお前とは会う気がする
その時は私がカイロスの敵をとる。だから誰にも殺されるなでは失礼する」
そう言いながら消えっていった
「綺龍ーやったね! あいつらに勝ったんだね」
唯純が走ってきた
龍装をときながら振り返るが、綺龍は気を失ってしまった
「綺龍しっかりして綺龍」
「唯純どうしたの?」
「綺龍が…綺龍が…」
泣いている娘を見て慌てて駆け寄った二人は、
唯純の膝の上で気を失っている綺龍を目の当たりにした
「大丈夫、キーくんは大丈夫だよ。だから一回家に戻りましょう」
そういうと綺龍をおぶって唯純と家にもどった