勇者(偽)パーティ
04/09 割り込み投稿です
「ふーん、キミが今回の『勇者』かあ。ボクが想像してたのとなんか違うなあ。確かに強いリソースは感じられるけど、ボンヤリしてるっていうかなんていうか、ひょろっちいし、キミ、ほんとに『勇者』かい?」
開口一番文句をつけてきたこいつはシャント・ティッツァという名前らしい。
俊敏そうなスマートな体をノースリーブのベストとピッタリしたパンツに包んでいる。
両の拳に装備した手甲から推測するに、こいつは徒手格闘を得意とする前衛職か。
ショートカットにした柔らかそうな銀髪。
アーモンド型の大きな釣り目の中のは縦に細い金色の瞳孔。
そして頭の上でピコピコと動く二つのネコミミ。
そう、ネコミミだ。
さすが『魔王』も『神』も『勇者』も存在するファンタジー世界。
獣人もテンプレというわけか。
更にボクっ子でチッパイ。
あれか、この世界でも萌えって概念はあんのか?
「シャントさぁん!そんな失礼なこと言っちゃダメですよぉ!!『神』に選ばれた『勇者』様ですよぉ!!もっと敬わないとぉ!!!」
そういってシャントを叱ったのはジノ・フィリアという女性だ。
もっとも語尾がユルすぎてイマイチ怒りを感じられないが。
背中まで伸ばしたふわふわした栗色の髪、潤んだような光を湛えた緑の瞳。
垂れ目がちな大きな両目と右目の下の泣きボクロが彼女に幼さと色気の両方を与えている。
彼女がその身に纏うのは禁欲的な黒い修道服。
その服装が示すように、彼女は治癒魔法を習得した神官であるらしい。
しかし、こいつは胸部は主張が激し過ぎるせいで正式な修道服もコスプレ衣装にしか見えんな。
「『巫女』が言うには今代の『勇者』は不死身らしいですわね。一つワタクシの魔法実験にお付き合いいただけませんこと?」
ルビーみたいな赤い目で俺の顔を見上げながらそう声をかけてきたのは、魔術師のルリアーノ・ガストレス。
せいぜい俺の胸までしかない身長の、金髪ツインテールロリという、これまた色々盛り過ぎだな。
風の噂では合法ロリらしいが、俺にはロリ属性はないのでどうでもいい。
こいつが着ているゆったりとしたローブのところどころには宝石で作った護符が飾られている。
この護符は防御の即効魔術が封印された高級品らしい。
大きな魔術を使う際の触媒にでもなるのだとか。
しかし、不死身の『勇者』相手に試す魔法とか、危険な匂いしかしないな。
「あらーよく見たら結構カワイイ顔してるじゃない♪ちょっとお姉さんと一杯付き合いなさいよ♥」
背後から伸びたしなやかな両手が、俺を抱きしめるようにして胸の前で組まれた。
身長差を感じてコンプレックスを刺激するので俺のつむじに顎を乗せるのはやめてもらいたい。
いや、俺の身長は平均的だけど、男としては子供扱いされているようであまり面白くない。
この、チャらい口調で誘ってくるのこいつの名前は確か・・・
「ハンナよ。ハンナ・ニューエラ。よろしくね♪」
俺の顔に頬をすりつけるのは止めろ。
紅い長髪が顔にかかってウザイし。
嫌がる俺の顔を見て、ハンナの黒い瞳が面白そうに細められる。
「いかがデスか?『勇者』様。『神』が選んだパーティーメンバーは。どなたも実力は超一流のお墨付きデス」
感情を感じさせない声で俺に確認してきたのは、銀色の目をした真っ白な肌を持つ少女だった。
その声に加え、無表情なその顔と、一本の毛も生えてない禿頭が彼女の人形じみた雰囲気を更に助長している。
彼女は『神』の意思を現世に伝えるために存在する、数多の『巫女』の中の一人である。
名前はシィリィ。
通常では『神』の付属物たる巫女に名前はないらしいが、これから一緒に過ごすには不便なので俺が勝手に名付けた。
それにしても、『神』のお墨付きとは、これまた贅沢なメンバーだな。
俺が討伐しなきゃならない『魔王』ってやつは、それだけ手強いってことなんだろうな。
集められたメンバーの目が、これまで一言も声を出さない俺に集まる。
「俺はゲンタ。ゲンタ・カミナリモン。どうやら今代の『勇者』らしい。そう『神』が言ってたからな。なにはともあれ、これから長い付き合いになると思うが、よろしく頼む」
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これが仲間たちが初めて出会った瞬間。
全員がどこか(偽)モノだった、俺たちの旅の始まりだった。
とりあえずメインパーティ勢揃い