プロローグ
思いついたので初投稿。
残酷描写は念のため。
ただBL要素もGL要素も出てくる可能性があるので苦手な方はご遠慮下さい。
風を切って刃が迫る。
血に汚れたまま手入れのされていないその刃に切れ味など無いも同然だが、鋼鉄の塊であるそれを恐るべき力で振るえば充分に致死の一撃へとなり得る。
だが、その刃が肉に食い込むことも、骨を叩き潰すこともなかった。
正確には、肉には触れた。そして、折れた。
刃が。
まるで固めた砂糖菓子のようにあっけなく。
触れた肉には一筋の傷も残さずに。
予想外の光景に刃を振るったモノは思わず動きを止めた。
そしてその次の瞬間には頭蓋に鉄の塊をめり込ませそのリソースを散らすこととなる。
----------------------------------------------------------------
俺は目の前に迫る刃を感動もなく見つめる。
普通ならこんな風に武器を向けられることも、それを本気で振るわれることも、ましてやそれを無感動に見つめることもないだろう。
だが慣れた。
そりゃ最初は怖かった。
滅茶苦茶怖かった。
だたそれも何回も何十回も何百回も何千回も繰り返せば嫌でも慣れる。
だって、避ける必要もない、当たったとしても痛くも痒くもない、そんなものを怖がり続けろっていう方が無理ってもんだ。
そんなことをぼんやり考えているうちにオークが振るう剣が俺の脳天に振り下ろされた。
そして軽い衝撃と共にその剣が折れ砕ける。
その音は『剣が折れる』という現象から想像するようなものではなく、言うなれば”バシャン”とでも言うような響き。
例えるならパンパンに詰まった水風船が勢い良く割れるような。
俺は右手を振り上げ、呆気にとられるオークの脳天にお返しとばかりに握ったメイスを振り下ろす。
メイスは素晴らしい武器だ。
刃をもつ武器はただ当てればいいわけじゃない。
刃筋だっけか?切り方?当て方?
とにかくそんなのを考えて扱わなけりゃ上手く切ることができないし、下手すりゃ逆に刃が欠けてしまう。
それに比べてメイス、ってか鈍器は振って当てればそれなりにダメージを与えられる。
多少欠けても気にせず使える。
俺は某狩りゲーでハンマーに切れ味があることに対して違和感を感じるタイプだ。
そんな他愛もないことを考えながら振ったメイスは狙い通りにオークの頭蓋へ向かう。
本当ならメイスにも正しい振り方とか構えとかがあって修練を積まなけりゃ武器として扱うのは難しいんだろうけど、俺が超圧縮されたリソースを使って強化した腕力で振るえば全ての攻撃が避けられない速度と一撃必殺の威力を得る。
通常の何十倍という密度のリソースで作られた特別製のメイスはいとも容易くオークの頭蓋を砕き、次の瞬間にはコアを失ったその体は真っ赤な原リソースと化して霧散した。
こっちのやつらは死体を残さない。
ただ真っ赤な塵のように霧散して世界に還元される。
「はぁ・・・報われねえなあ・・・」
もう見慣れたとは言え、それを受け入れられるかどうかはまた別の話。
ため息をつきながら俺は仲間の下へと足を進めた。
そうそう、言い忘れたが、俺はいわゆるこの世界では『勇者』と呼ばれる存在らしい。
『神様』がそう言ってた。
もっとも、『神様』も『勇者』も、その称号の後ろに(偽)って文字が隠れてるってことは誰にも言えないけどな。
ゆっくり更新予定