灼熱の犬飼さん2 その3 03 ~赤と赤で色が被ってるな~
時間は進んでその日の夕方直前、高等学校放課後。
「ふむ、時間だな」
16時きっかりに鬼越は体育館裏に現れた。授業中と変わらぬ制服姿に、スポーツバッグが一つ。
このスポーツバッグは爆槌が入っていたほどではないが、それなりに大きな――というよりも長いものが入ってる様子。中身の長さは1メートルは余裕で越えているだろう。普段はこのバッグも中身も寮に置いてあるので、昼休みの間に一旦戻って取ってきていた。
果し合いを申し込まれたのだ。最大限の礼意もって答えなければ失礼だと、戦いの種族である鬼越はそう思ってこれを用意してきた。ちなみに授業道具の入った鞄は陽子に持って帰ってもらっている。
「ようこそ、赤鬼さん」
「?」
上の方から誰何が聞こえたので、見上げてみると体育館の湾曲した屋根の突端に誰か立っていた。
赤と白のフリルドレスに身を包んだ女だった。良く見ると手足は真っ赤なロンググローブとロングブーツで覆われている。長い髪も真っ赤に染まっていた。とりあえず物凄く学校機関に似合わない格好であるのは確かだ。更には手にバールのような物を持っている。その彼女の後ろにはカカシのようなものが立っているのも見えた。さっぱりわけの分からない組み合わせだ。
鬼越は里から出る際に学んだ知識の一つに、あんな格好で町中を練り歩く催し物があったのを思い出した。
「確かハロウィーンは秋ごろの開催ではなかったか?」
「うるさいわね、私たちは一年中トリックオアトリートよ!」
鬼越の言葉に好きでこんな格好してるんじゃないという怒りも込めて叫ぶと、彼女はそのまま宙に飛び出した。後ろのカカシのようなものも飛んでくる。
しかし彼女は急落することもなく、まるで風で出来た床に支えられているかのように、鬼越の前へとふわりと降り立った。カカシのようなものも問題なく着地。
「赤と赤で色が被ってるな」
彼女の全身を間近で見た、赤鬼である鬼越女史の第一声がそれであった。




