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灼熱の犬飼さん ~おおかみむすめの高校生活~(龍焔の機械神)  作者: いちにちごう
灼熱の犬飼さん1 ~おおかみむすめの高校生活+鬼ムスメ~(東京湾物語1・龍焔の機械神)
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灼熱の犬飼さん はじまり

「きゃあっ」

「ヒトミちゃん!?」


 園児が叫び、保育士がその名を呼ぶ。


 保育園の園外散歩の列が海沿いの道路を歩いている時、砂浜に繋がる傾斜した崖の造成中の工事現場に差し掛かった。そこには休憩中なのか一台のクローラークレーンが駐車されていて園児の中でも男の子達がその重機の威容にきゃっきゃと喜んでいたのだが、車体の背後で黒い人影が蠢いたかと思った次の瞬間、クローラークレーンーを包み込むように爆発的な閃光が発生した。


 園児と引率の保育士の悲鳴。それが収まるのに比例して光も収縮する。そしてそこには


「かいじん!」


 園児の一人が叫ぶ。2メートルは越えるだろう鉄の壁が立っていた。


 戦車と呼ばれる陸上戦闘車両が後部を下にして持ち上がったような胴体。車体下面が正面となり、背部に砲塔を背負う形。その胴を、短く太い殆ど足しかない脚部が支えていた。


 転輪の部分からは左右に腕が生え、胴体上面となった正面装甲部分には醜悪な造形の頭部が乗っている。


 そそり立つ壁のようにそれはそこにいた。履帯クローラー式車両を触媒として具現化する鋼鉄の怪物。通称、鉄車怪人だ。


 鉄車怪人は長い腕を伸ばすと手前にいた園児の一人を巨大な左手で掴んだ。怪人出現と同時にその場に蹲り動けなくなった園児達と保育士から、一番手前にいたヒトミが捕らえられてしまったのだ。


「たすけてーっ!」

「ヒトミちゃん!」


 悲鳴を上げる園児を掴みながら鉄車怪人が象のように太く短い足を動かして移動する。道路が地響きで揺れる。


 しかして、しばらく移動するとその場で再び止まってしまった。軽く頭部を動かし辺りを監視するような仕草をする。それは何かを探しているようでもあり、もしくは何かを待っているようにも見える。


「陸保と水保にはもう通報したのか!」

「とっくにやってる!」


 だが周りにいる人間達にとってはその謎の間は絶好の機会。休憩時間で現場を離れていた作業員達が騒ぎを聞きつけて戻ってきて、他の園児と保育士の保護と怪人対処機関への通報を行った。


「どうしたどうした?」

「うわっ、怪人だ!」

「久しぶりに出たな」


 更に騒動を知った近隣の住民が集まってきた。この国にとっては怪人出現は火事などの災害に近いので、野次馬も必然的に集う。とりあえず怪人専門の駆逐隊がやってくるまでは状況を見守るしかないので、遠巻きに見るだけだが。


 何しろ相手は戦車砲の直撃を食らってようやく止まるような相手。大の大人が何人束になってかかっても敵うような存在ではないのだ。


 そんな怪人を見ている人々の後ろに、二つのスポーツバッグを担いだ女の子が立っていた。


(……どうしたものか)


 パーカーにロングパンツ、頭にはフードを被ってる。猫耳付きのデザインらしく耳の部分がぴょんっと立つ。フードの裾からは綺麗な金髪が胸にかけて零れていた。顔には大きめのデザインの黒いサングラス。


 それだけならどこにでもいる普通――いやちょっと派手な女子だが、彼女は冬でもないのに手を薄手の手袋で覆っていた。足もスニーカーの中はしっかりと靴下。唯一露出している口元は夏でもないのに日焼け直後のように真っ赤である。皮膚に火傷でも負っているのかそれとも日に弱い肌質なのか、極力肌を露出しないように務めた服装。


(見捨てるのは全く構わんが、あの『かいじん』と呼ばれるものがどれほどの強さなのか知りたいのもあるしな)


 ちょい派手女子の彼女はそんな風に思いながら動静を伺っていた。彼女も何か思うところあるようだが、己の中の何かの矜持に従って思うように動けない様子。


 そんな彼女の隣を――


「――うぉおおおおりゃぁああっ!」


 銀色の閃光が駆け抜けた。


「!?」


 銀色の何かはちょい派手女子と住民の間をすり抜けるように駆けると、鉄車怪人に向かって全速力で飛び出していった。セーラーとスカートの裾がなびく。それはこの近くにある高等学校の女子用制服。なびくスカートの上で銀色のふさふさした物が激しく揺れていた。尻尾だ。銀色の尻尾。そして銀色は尻尾だけじゃなかった。腕も脚も、そして長い髪も。その風に流れる銀髪の向こうにある顔は、口の部分が少し出っ張っていてそこも銀色になっていた。


「……狼人おおかみびと


 自分の間近に一陣の風だけを残して突っ込んでいった正体を知ってちょい派手女子が思わず呟いた。


(まさかこんな形で遭遇するとは――)


「ヨーコちゃん!?」


 ちょい派手女子の心の中の当惑を住民の声が遮った。狼人の少女、犬飼陽子いぬかいようこはこんな容姿であるから知っている近隣住民も多い。


「ヨーコちゃん危ない!」

「お前でも無理だ戻れ!」

「とりゃぁあああ!」


 危険だから戻れという警告を無視するように陽子が再び雄叫びを上げる。そしてそのまま普段やっている走り高跳びの要領で飛び上がりながら捻りを加え、怪人の左腕に思いっきり右足の蹴りを見舞った。


「いたぁああっぁあっ」


 しかし相手は鋼鉄の塊。蹴った陽子の方がダメージを負ってしまったらしく着地と共に悲鳴を上げる。


 だが、狼人という普通の人間以上の身体能力を持つ彼女の全力キックは、怪人をほんの少しだけ振動させることができた。その揺れで掴んでいるタイミングがずらされたのか、怪人の左手からヒトミの体がすり抜けて地面に落ちた。


「いたい!」


 1メートル程度の落下をしたヒトミが声を上げる。しかし子供の柔らかい体からか怪我をした様子は無い。


「今!」


 陽子は目の前に落ちてきたヒトミを両手で抱くとそのまま一気に立ち上がり逃げの姿勢にかかるが


「きゃっ!?」


 走り出そうとして右足が軸になった時、陽子の体に激痛が走る。全力の蹴りを鉄製の相手に放った代償として右足首にヒビが入っていた。バランスを崩した陽子はそのまま横向きに倒れ込む。


「いたた……失敗した、まだ回復してなかったか――!?」


 陽子が殺気を感じて後ろに振り向くと、そこでは怪人がお返しとばかりに大きな腕を振り上げている処だった。


「くっ!」


 陽子は園児をかばう様に抱きしめると、相手に背を向けて地面に伏せた。


 あのパンチを食らったら狼人の体でもただではすまないだろう。しかしせめて腕の中の彼女には被害が及ばないようにと体に力を込める。


 直後、金属と金属が激突する音が轟いた。


「――そこの狼女、小娘を連れて早く逃げろ」


 重厚な音に続いて、低い女の声が上から聞こえる。


「ふぇ……?」


 一向に訪れない背中を叩く衝撃を不思議がって見上げてみると、先ほどのちょい派手女子が陽子達を庇うように立っていた。両腕で先ほど持っていたスポーツバッグのひとつを掲げ、怪人の一撃を食い止めていた。


「……キミは?」

「はやく!」


 状況が分からないように訊ねる陽子に焦れるようにちょい派手女子が声を荒げる。


「う、うん!」


 その一喝で状況を悟ったのか陽子は左腕だけで園児を抱えると、左足一本で飛び出した。そして倒れこみそうになると空けておいた右手で地面を支えて何とか凌ぎ、そのままの勢いで住民の中に飛び込んだ。


「うわっと!」


 いきなり足下に転がってきた銀色の塊に皆が一瞬飛び退く。


「ヨーコちゃんだめでしょこんな無茶しちゃ!」

「ごめんなさい……でも、見てられなくて……それとあのは!?」


 住民の一人に素直に怒られながらも陽子は園児を抱えたまま上半身だけ起こして、自分を助けてくれた彼女の方に顔を向ける。


(……さて、どうしたものか)


 相手の腕の一撃をスポーツバッグで受け止めたままの姿勢でちょい派手の彼女は止まっていた。ちょい派手女子の方は全力で相手の腕の力に応戦しているのだが、これだけの体格差と重量差があるのに力が拮抗している事実に疑問を感じていた。なにか意図的に力を抜いているような気がする。


 しかし相手が覆いかぶさるように圧力をかけてくるので、自ら退くこともできない。体勢を立て直すには相手がほんの少しでも違う動きを見せてくれなければ――と、思っていると


『付近の住民の皆さん! 離れてください!』


 海上の方から最大限にボリュームを上げたスピーカーの声がした直後、バチン! という何万本という輪ゴムを一気に引き伸ばして離したような音が聞こえた。


「!」


 その場に居た全員が音のした方を見ると、怪人の右肩に正月に突く餅のような大きな白いぐねぐねとしたものが付着していた。


鳥黐とりもちか」


 そのぐねぐねの正体を理解したちょい派手女子が、相手の姿勢が変化したのに乗じて一旦離れる。右肩に直撃を食らった怪人はその勢いを殺しきれず90度ほど回転していた。


『水上保安庁が状況に入ります! 離れてください!』


 再び住民への避難勧告。海上の方から一艇の小型艇が近づいてきていた。モーターボートを少しだけ大きくしたような小柄な艇体に単装砲塔が載っている。砲塔上のキューポラからはダークブルーの制服に身を包んだ女性が上半身から上を覗かせていた。そしてその艇はスピードを落とすことも無く全速力で砂浜に突っ込んでくる。


 そのまま擱座して固定砲台となって精密射撃による制圧を行うのかと思ったら、全く勢いの衰えぬまま砂浜を走ってきた。取りも直さず造成中だった斜めの崖を駆け上がり怪人がいる沿岸道路に艇体を乗り上げる。艇体、いや車体の下には二本の履帯――キャタピラ。海水を滴らせて陽光にきらめく車体側面に刻印された水上保安庁の五文字が頼もしく映る。


 怪人が出現した場合、陸を守る陸上保安庁と湾内を守る水上保安庁の二組織に通報が入れられるが、今回は海上巡回中の水保所属の水陸両用戦車の方が早かったようだ。


 車上の砲塔が回転し怪人へと砲口を向ける。そしてそのまま発砲。今度は怪人の足下でバチン! という音がした。片足の動きを封じられた怪人の動きが鈍る。その後も動きの鈍った相手へとトリモチの弾を何発か命中させた。


「次、本番! 徹甲弾装填!」


 相手にある程度のダメージを与えた戦車の上に陣取る女性――この戦車を預かる戦車長が車内の砲手に指示を出す。


「外さないでよ」

『わかってます!』


 車長が車内の砲手に声をかける。揺れる海上からのトリモチ弾による遠距離射撃を成功させた射撃の腕は頼りにしているが、付近には住民もいるし民家も近い。徹甲弾による狙撃が外れたらどれだけの被害がでるか。念には念だ。


『付近の皆さん、これから水上保安庁の対怪人車両が制圧射撃に入ります! 爆発被害圏外に早急に退避を!』


 車長が取り出したマイクに怒鳴りつける。集まった住民も元からそれは分かっているので最初の時点で爆発圏外で見守っていたが、それでも身を守る姿勢を取る。車長が改めて確認すると怪人の周りには誰もいない。


「……おおかみの、おねえちゃん……」


 陽子に抱かれたままの園児が震える声で囁いた。声だけではなく体もカタカタと震えている。今になって恐怖が増長されて大きく襲ってきたらしい。助けを懇願する瞳で陽子の顔を見上げる。


 普通の人間からしたら狼人の陽子は、見た目は怪人と同じようなものだが、邪気の無い子供にとっては自分を助けてくれたヒーロー以外の何ものでもない。掴んだ陽子の制服の裾を離そうとしない。


「怖い? でも大丈夫、もうすぐ水保のお姉ちゃんたちがやっつけてくれる」


 発砲準備をしているらしい水陸両用戦車の方へと陽子が顔を向ける。


「お嬢ちゃん、お名前は? ボクの名前はヨーコ!」


 陽子はそう言いながら精一杯の微笑みを作りながら腕の中の彼女のことを見つめた。陽子が笑うと口から犬歯が飛び出して中々怖いが、助けてもらった安心感からか園児には全く恐怖が湧かなかった。


「……ひとみ」


 そう言って陽子の服を掴む手に力を込めた。


「じゃあヒトミちゃん、もう直ぐ終わるからがんばろう!」


 陽子はそういってヒトミのことをぎゅっと抱きしめた。


『弾種、徹甲、装填完了!』

っ!」


 射撃準備完了を受け、車長が身を晒したまま射撃指示を出す。本来なら徹甲弾や榴弾発砲時は車内に入るのが常識だが、相手は戦車ではなく怪人であり、周りに与える被害の状況確認も含めてキューポラから体を出したまま発砲する戦車長も多い。


 その一人である彼女が一応腕で顔を覆った瞬間、水陸両用戦車の主砲から砲弾が放たれた。それは願い違わず怪人の胸部にヒットする。


 本来なら数千メートルの距離で敵戦車の装甲を撃ち抜くために用いられる徹甲弾をこれだけの至近距離で食らったのである。怪人の強靭な体組織も被弾した部分から崩れ一気に連鎖崩壊が始まり、一瞬でそれが頂点となった本体が崩壊爆発を起こす。


「うはっ!」


 十分な距離を置いているとはいえ、爆発は爆発である。怪人爆発の場合ほとんどの爆炎が垂直に上がるのだが、それに伴う爆風だけは満遍なく周囲を襲う。園児を抱えている陽子は腕の中の彼女には絶対に被害が及ばないようにと更に腕に力を込めた。


「げほげほ……どうなった?」


 住民の一人がむせながら言う。猛烈に吹き上がった煙が晴れてくると、怪人がいた場所は丸く抉れ、その中心には黒い全身タイツに覆面の男がうつ伏せで倒れていた。タイツも覆面も所々破れている。


 鉄車怪人は戦車砲クラスの直撃を受けると連鎖崩壊を起こし爆発四散するのだが、一体いかなるテクノロジーなのか中身であった人間はこのように残される。彼こそ鉄車帝国が滅んでもなお活動を続ける鉄車帝国兵士の一人だ。


『状況終了を確認、これより回収作業に入ります』


 戦車長が再びマイクを使い、対怪人の駆逐戦が終わったのを報告する。それを聞いた回りの住民から歓声と安堵の声が広がった。


「いや~、よかったよかった。もうだいじょうぶだからねヒトミちゃ……って、はっ!?」


 水陸両用戦車が元怪人の兵士の方へ向けてゆっくりと近づいて行くのを見て、胸を撫で下ろした後に陽子が腕の中を見ると、ヒトミが顔を真っ赤にして目を回していた。


「よーこちゃん……あつい」

「うはっ、ごめん!?」


 陽子は慌てて腕を解くと、自分の腿の上にヒトミの頭を乗せるようにして寝かせた。


 陽子は狼人であるのだから全身毛だらけである。しかもヒトミを助けるために全力で動いて体熱も上がっており、そんな彼女に抱きしめられていたらのぼせるぐらい熱いのは当然といえる。


「ヒトミちゃーん!」


 そんなゆでだこ状態のヒトミへ手を団扇代わりにして微弱な風を送っていると、作業員の方で匿ってもらっていた保育士と他の園児たちがやって来た。


「ヒトミちゃんの保護者のひとですか」


 陽子はそう言いながらヒトミのことを横抱きにしつつ立ち上がった。


「はい! うちの園のヒトミちゃんです!」


 保育士はそう言いながら陽子の腕からヒトミの体を受け取った。大事そうに抱きしめる。


「――きゃっ! こらっ、だれだ尻尾さわってるのは!」


 陽子は保育士について来た園児たちに当然の如く囲まれたのだが、陽子の背後にいた園児の誰かが銀毛の尻尾に触れたらしい。


「えー、ふさふさしててきもちいいのにー」

「だからダメだって! もうエッチ!」


 基本的に動物は、自分の尻尾が他者に触れられるのが得意なものはいない。陽子とて同様である。


「あの、脚を怪我してたみたいですけど、その、立って大丈夫なんですか?」


 園児たちを「こら、おいたしないの!」と嗜めながら、保育士が陽子の脚の負傷を尋ねた。


「はい、一応ボク変身型狼人間ライカンスロープの血も入ってるんで傷の治りは早いんですよ」


 痛めたはずの右足でとんとんと地面を叩いてみせる。やせ我慢でやっているようには見えないので、本当にもう完治しているらしい。


「はぁ、それはなによりです……? でも怪我してまでヒトミちゃんを助けてくれてありがとうございました」


 狼人の体の構造など良く知らない保育士は少し疑問に思いつつも、自分の危険を省みず園児の一人を助けてくれたお礼を改めて言った。


「いえ、今回はボクの判断ミスでヒトミちゃんにも大怪我させるところでした。あの時あの猫耳パーカーの娘が助けてくれなかったら……って、そういえば」


 陽子は余りにも色々なことがありすぎて、自分とヒトミを助けてくれたちょい派手女子のことを今まですっかり忘れていた。


「あの、怪人の攻撃を受け止めてくれた女の子知りません?」

「あ……そういえば」


 陽子が保育士に尋ねるが、保育士も水保の戦車が現れてからは他の園児たちを守ることに精一杯ですっかりその存在は忘れていた。


「あの爆発に巻き込まれて吹っ飛んじゃった……ってことはないよねぇ」


 怪人の中身である鉄車帝国兵の回収が行われている爆発跡に陽子が顔を向ける。怪人の側に誰かいたのなら、戦車はトリモチ弾以外の発砲はしないはず。


「まぁ怪人の一撃を受け止めちゃうくらいの怪力なんだから心配しなくてもだいじょうぶだよね……って、こら! 尻尾さわっちゃダメっていってるでしょスケベ!」


(……)


 そんな風に園児たちにじゃれ付かれている陽子を、建物の影から一人の女の子が見つめていた。


(少しで過ぎたまねをしてしまったか……しかしあの狼人に死なれても困るしな)


 戦車到着と同時にいち早く身を隠していたちょい派手の彼女はそう沈思すると、再び二つのスポーツバッグを担いで街路の方へと消えていった。


「――でも、もう一度会いたいな。助けてくれたお礼、ボク言ってないし」


 尻尾を掴んで離そうとしない園児の一人の頭を鷲掴みでぐりぐりしながら、陽子が言う。


「……」


 しかして、陽子のその想いは数日の後に果たされることになる。

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