第二話
「さて、このままこうしていても仕方ないから、何か方法を探そう。」
笹木が落ち着くのを待って、俺がそう切り出すと笹木も頷いた。
「他に誰か残ってないか探してみない?先生だったら誰かいるかも。」
「そうだな。まずは二階の職員室に行ってみよう。」
調理室の窓はやはり開かず、割ってみようと椅子を叩きつけてもみたがガラスはしなやかに椅子を弾き返して無傷だった。
携帯電話の電波は圏外で、外に誰かがいる気配は無い。
現実にこうもホラーの鉄板ルールが適用されると、ホラー映画やゲームの世界はあながち御都合主義という訳でもなかったんだなと少し感心する。
荷物にはなるが何か役立つかもしれないし、二人分の鞄を持って調理室のドアへと近付いた。
なるべく息を押し殺し、ほんの少しの隙間を開けて廊下の様子を窺う。
何かがいるようには見えない。
それは笹木も同じようで、小さく頷いた。
少しずつドアを開き、静かに廊下へと歩きだした。
幸いなのは調理室を出たすぐ先に二階への階段がある事だ。
辺りを警戒しながら笹木の手を握って階段を上る。
「…私、まだこの学校の配置とか良く分かってないんだよね…。」
「まぁ実質、笹木はこの学校に二日もいないからな。職員室はこの間逆だよ。一番遠いところだ。」
校舎二階の端から端へと移動しなくては職員室へは辿りつけない。
「何も、出ないといいね…。」
笹木の言葉に頷いて、ゆっくりと歩き出した。
日が長くなってきたとはいえ、外はもう暗くなってきている。
試してみたが電気は点かない。
月明かりで何も見えないわけではないので、携帯電話の出番は無いようだ。
「さっき見たのってさ…。」
そっと切り出した俺を笹木が見る。
「ずっと昔の幽霊なのかな。なんか、着物着てたし。」
「そう、かもね。でも、あんなのは初めて見たよ。」
俺の手を握る力が強くなった。
「いつもは本当に普通の人みたいな幽霊ばっかりで…。テレビで良く見るような白い着物の人とかなんて全然いないんだよ。」
「でも、さっきのはそういう、何ていうか…フィクションのに近いよな。」
「うん。この学校にいるの、いつも見てるのとは違う。それに…。」
一息溜息を吐いて、笹木は目を伏せる。
「みんな、恐い。」
しん、と静まり返る廊下に、二人分の足音だけが小さく反響する。
「…ちゃんと、一緒に帰ろう。」
もしかしたら、言った自分にしか聞こえていないのではないかと思うくらい、小さな独り言。
それでも、笹木は俺を見て笑った。
「うん!帰ろう。」
そうして、ようやく俺たちは目標としていた職員室へと到着した。
こっそり盗み見るように、少しだけ開けたドアの隙間から職員室の中を窺うと、電気は点いておらず、人がいる気配はしなかった。
なるべく音は立てないようにしてドアを開けて中へ入る。
やはり、教師達はいないようだ。
「…誰も、いないね。」
「当てが外れたな。」
職員室の中は暗く、少し肌寒い。
辺りをぐるりと見渡してみると、机の上のスタンドライトが点いている席があった。
あの場所は確か菅野の席だ。
「ちょっと見てくる。ここで待ってて。」
笹木にそう言って、菅野の席へと近付いた。
菅野の机の上には、プリントや教材が山積みにされていて、特に変わった様子はない。
プリントは今日行われた数学の小テストの答案で、一番上に置かれていた石塚の点数が露わになっていた。
「…あいつ馬鹿だなー…。」
ギリギリ二桁という点数に、保健体育と古典(それも、男女の恋愛に関した話のみ)だけが得意という石塚のキャラクターが表れていて、思わず笑ってしまう。
少し気が緩んだ事で一気に疲労感が起こり、いかに自分が緊張していたかが分かった。
「何もない、か。」
そろそろ笹木のところへ戻ろうと机から視線をずらした時、電話の前に置かれたメモ書きが目に入ったので、何と無くそれを手に取った。
かかし
マレビト
「何だこれ。」
二つの単語が、紙に穴が開くほど強い筆跡で書かれている。
かかし、とは畑で良く見る害獣が害鳥から農作物を守る為に立てる案山子の事だろうか。
マレビト、は何処かで聞いた事があるような気がするが、意味はわからない。
「木村君?何かあった?」
何処でマレビトと言う言葉を聞いたのか思い出していると、入り口の前から笹木が不安そうな声で呼んだので、俺はそのメモ書きをズボンのポケットに入れてその場を離れた。
プルルルル…
笹木の元へ戻る途中、突然職員室の電話が一斉に鳴り始める。
突然の大きな音に俺たちはビクリと身体を震わせて、互いに見合った。
俺は小さく頷くと、近くの席に置かれた電話に近付き、そっと受話器を持ち上げる。
笹木は表情を強張らせて俺の様子を見ていた。
「…もしもし?」
受話器を耳に当てて尋ねてみるが、何も聞こえない。
「もしもし?」
もう一度尋ねてみると、受話器の向こうからごく小さな音が聞こえているような気がする。
ただ、それを聞き取る事が出来なくて、俺は受話音量を上げてみたが、聞こえてきたのは風の音のような雑音だった。
何も聞こえないと目で訴えようと笹木を見ると、笹木は目を見開いて俺の足元を凝視していた。
「…き、木村…君…。」
笹木が俺の名前を呼ぶ。
その視線を追ってゆっくりと自分の足元に目を向けた。
『まあだだよ』
雑音しか聞こえなかった受話器から、はっきりと、子供の声が聞こえた。
そして、その声が聞こえたと同時に、机の下から俺を見上げる、着物を着た子供と目が合った。
「木村君!」
目の前が真っ暗になり遠くなる意識の中、聞こえたのは笹木の叫び声。
そして、
『もういいよ』
どうやら俺は気を失っていたらしい。
目を覚ました時、一番最初に目に入ったのは冷たい無機質な床だった。
倒れた時にぶつけたのだろうか、あちこち痛い身体を起こして周囲を見渡す。
宙釣りになった受話器に、気を失う直前の出来事が脳裏を過ぎった。
机の下にはもう何もいない。
電話も繋がっていない。
「笹木?」
笹木も、いない。
「笹木!笹木!!」
何度も周囲を見渡して、笹木の名前を叫ぶ。
俺が気を失っている間に何処かへ逃げたのか。
それとも、あの子供の幽霊に…?
「…探さないと…!」
急いで入り口へ向かい、ドアに手を掛ける。
その時、右足が何かを踏んだ気がして、立ち止まり足を引いて見ると、そこには三日月のネックレスが落ちていた。
それは笹木が大切そうに身に付けていたネックレスだ。
やはり、笹木に何かあったのだろうか。
不安が一気に押し寄せる。
その場にしゃがみ込んで、ネックレスに手を伸ばした。
辺りに鳴り響く錫杖の音。
笹木が今にも倒れそうに頭を揺らして暗闇の中に佇む。
良く見れば、その周りを囲うように、顔を布で隠した僧侶達が暗闇の中に紛れて念仏を唱えていた。
「マレビト。」
僧侶達の中から黒い能面を被った男が現れ、笹木を指す。
「…マレビト…。」
笹木が小さな声で繰り返した。
「マレビト、産土神の子となりて村を護る。」
低く籠った声が周りの念仏と交じり合い、反響する。耳を澄まさないと良く聞き取れない。
しかし、最後の一言だけやけにはっきりと聞こえた。
「儀式を行なう。」
その一言を残し、能面の男、僧侶達が姿を消した。
「儀式を…。村を、護る…。」
残された笹木がうわ言を呟きながら覚束無い足取りで歩き出すと、周りの景色が徐々に見慣れたものへと変わっていった。
笹木がゆっくりとある一室へと入っていく。
『理科室』
入り口のプレートには、その文字が書かれていた。
「…笹木?」
意識が一瞬で戻ってくる感覚。
気が付けばネックレスを拾った時の体勢のまま、俺は笹木の名前を呼んでいた。
今の記憶は笹木の記憶なのか。
まるで、後ろから笹木を眺めていたかのような映像。
あれが本当にあった事なのだとしたら、笹木は今理科室にいることになるのだろうか。
「理科室…。」
ネックレスを握り締め、ゆっくりと立ち上がる。
月明かりがぼんやりと廊下を照らしていた。
理科室は職員室のちょうど真下、一階にある。
階段を下ればすぐという近さだけれど、夜の学校において何かが起こる定番の場所といえば理科室だろう。
それを考えただけで怖くて中々足が進まない。
先程までは笹木がいたから一人じゃなかったし、女子の前で怖がるのは嫌だと意地を張ることで恐怖を紛らわしていた。
しかし今は一人で、意地を張る相手もいない。
恐怖に素直な反応を示すようになってしまった身体を叱咤しながら、なんとか階段を下りた。
階段から廊下へ出る前に辺りを確認すると、理科室とは反対方向の少し先に生徒玄関が見えた。
「…そうだ。玄関が開くかもう一度確認しに行こう。」
決断は早かった。
恐怖から逃げ腰になり、足早に玄関へと近付く。
どうせ開かないだろうと半ば諦めながらドアに手を掛け、左へと引いた。
「あ、開いた…。」
先程はビクともしなかったドアは、いとも簡単に開かれた。開いた隙間から生温い風が滑り込み頬を撫でる。
「今ならここから出れる…!」
ここから逃げ出して、誰か助けを呼んで来よう。
「そうだ、それから笹木を探しにいけば…。」
目の前に現れた逃げ道に、俺の心は完全に惹かれていた。
「一人で探しに行くより絶対安全な筈だし、また玄関が閉じたら、今度こそ出れないかもしれないし。」
笹木を学校に一人残して逃げ出す事を正当化するための独り言を繰り返しては、それは駄目だと心が騒ぐ。
こんなにも自分の中で迷っているのは、もしこのまま一人逃げ出せば、取り返しのつかない事になるかもしれないと勘が騒ぐからだ。
「…大丈夫だ、すぐ、すぐに誰か呼んでくれば大丈夫だ…!」
自分に言い聞かせるように頭を振り、心が騒つくのを無視して俺は玄関のドアを開いて外へ出た。
「そっちじゃない。」
突然、背後から聞こえたのは子供の声。
慌てて振り返ると着物を着た女の子が玄関の隙間から俺を見ていた。
女の子が俺を見つめたままゆっくりと手を上げて指を差す。その方向にあるのは理科室だ。
女の子が指差した方向から視線を戻すと、女の子は既に消えていた。
「…一人で逃げるなってことか?」
俺は自嘲気味に呟き、それから両頬を思い切り叩いて気合を入れる。
「ちゃんと、一緒に帰ろうって約束したもんな。」
心細い思いをしているかもしれない女の子を一人残して逃げたら、男じゃない。
笹木を探す為、俺はもう一度校内へと足を踏み入れた。
周囲を確認して、理科室へと歩き出す。
理科室が近付くにつれて、気温が下がっていくような気がした。
見慣れた理科室と書かれたプレートを確認し、ドアへと手を掛ける。
「大丈夫、怖くない。大丈夫。」
自分へ暗示するように言い聞かせ、手に力を込めた。
開いたドアから見えたのは薄暗い見慣れた理科室の風景。
「笹木?」
呼び掛けても中から反応は無く、少し躊躇ったが、机の影に隠れているかもしれないと理科室の中へと足を踏み入れた。
「亞弥美先生!一緒に遊ぼう!」
理科室に入った途端、目の前の景色が変わった。
理科室特有である実験用の大きな机は無く、薬品棚も備品の数々も、窓にカーテンすら無い。
床は畳で、まるで古い日本家屋のような部屋へと変わっている。
その中で、先程俺を引き止めた女の子や、職員室で気を失う前に見た子供が、楽しそうに笑いながら俺の横を走り抜けた。
そのまま、一人の女性の元へと駆け寄っていく。
「亞弥美先生、かくれんぼしようよ!先生鬼ね!」
「あらあら、先生見つけるの得意よ?ちゃんと上手に隠れられるかしら?」
「出来るよー!」
亞弥美先生、と呼ばれた女性が柔らかく笑う。
長い黒髪が静かに揺れた。
「じゃあ亞弥美先生!ちゃんと数えてね!」
子供達が部屋から走り去ると、亞弥美は謳うように数を数え始める。
「…にーじゅう、にーじゅういち…」
「亞弥美先生、少し良いか。」
数えている途中で、笹木のネックレスに触れた時に見た黒い能面を被った男が部屋へ入り、亞弥美を呼んだ。
「どうしましたか?斎主様。」
「壱哉の事で手伝って欲しい事がある。一緒に来てはもらえないか?」
「壱哉様の…?」
亞弥美は少し不安そうな表情を浮かべ、斎主の後ろについて部屋を出ていった。
何故だろうか。
胸が凄く騒ついて、今すぐ亞弥美の腕を掴んで止めたくなった。
「木村君!」
突然名前を呼ばれ、我に返る。
「…笹木?」
気が付けば笹木が俺の目の前に立ち、不安そうな眼差しで俺を見上げていた。
「良かった…帰ってきた…。」
「帰って、きた?」
そう言われて辺りを見回すと、いつの間にか見慣れた理科室の中へと風景が変わっていた。
亞弥美も、子供達も、斎主もいない。
「…一体何が…。」
「私は、気が付いたら理科室で倒れてて…。それで起き上がって辺りを見たら、入り口のところに木村君が立ってたの。」
未だに頭がぼんやりとする俺に、笹木が状況を説明してくれた。
理科室の入り口に立っていた俺は、何を呼び掛けても反応が無く、ただずっと「亞弥美」の名前を呼び続けていたらしい。
「…幽霊に、取り憑かれたのかと…。」
笹木はうっすらと目に涙を浮かべている。
「ごめん、心配掛けた。俺は大丈夫。笹木の方は大丈夫なのか?気付いたら、いなくなってただろ。」
俺の問い掛けに、笹木は表情を曇らせた。
「…ごめんなさい。職員室からのこと、覚えていないの…。私、何で理科室にいたんだろう…。」
何も覚えていないという笹木の様子に少し不安を覚えたけれど、俺は笑って、笹木の頭をそっと撫でた。
「大丈夫。今こうやって二人とも無事に会えたんだ。大丈夫だ。」
今は、笹木を不安にさせないことが先決だと思う。
能面の斎主や、彼らが笹木に言っていた『儀式』については、触れない方が良い気がした。
「さ、帰ろう。」
理科室から出ようと笹木の手を握る。
「でも、まだここから出れる方法見つけてないよ。」
「さっき玄関のドアが開いたんだ。行ってみよう。」
「え?本当に!?」
戸惑う笹木の手を引いて玄関へと向かってみると、玄関のドアは開いていて、その前にはいつの間にか落とした二人の鞄が置かれていた。
「本当だ!ドア、開いてる…!」
笹木が嬉しそうに声を上げる。
その横で、俺は誰かが親切に置いてくれたように見える鞄に少しの不審感を抱いたが、笹木が先導して俺の手を引くので、鞄を拾って二人でドアから外へと出た。
涼しい風が吹く。
鞄を担ぎ、校門を越えてから校舎を振り返る。
何も変わらない、いつも通りの校舎。
しかし、二階にある、どこかの教室だろうか。
黒髪の女性の姿が見えたような気がした。
「…儀式を…かみかし…。」
隣にいる笹木が、何かを小さく呟いている。
「笹木、大丈夫か?」
俺が手を揺らしてその顔を覗き込むと、笹木は小さく笑った。
「…大丈夫。ごめんね。」
力の無い笹木の手を引いて、校舎に背を向けて足早に歩き出す。
これ以上ここにいては駄目だと思った。
二人とも、無言のまま家路を急いだ。
「本当に、ごめんね。」
無事、家の前に着いた。
笹木が家の中に入るまで見送ろうと門の前で待っていたら、笹木が玄関の前で振り返る。
悲しそうな表情で頭を下げた。
「気にしなくていいよ。ゆっくり休んで。」
「…うん、ありがとう…。」
どこか朧げな様子で家の中へと入っていくのを見送って、俺も自宅へと帰る。
帰りの遅さを咎める母親の声を背中に聞きながら、俺は重い身体を引き摺るように二階の自室へと上がった。
部屋に入るなりベッドに仰向けで倒れ込む。
今日は色んなことがありすぎた。
「疲れたな…。」
体勢を変えようと寝転がると、小さく金属の擦れる音が聞こえた。
見ると、職員室で拾った笹木のネックレスがズボンのポケットからはみ出している。
御守りとも呼べる笹木の宝物だ。
もしかしたら失くしたと思って落ち込んでいるかもしれない。
「部屋にいるかな?」
どっこらしょい、と年増のような声を出して起き上がると、笹木の部屋側の窓を開ける。
笹木の部屋は明かりが点いていた。
「笹木、いる?」
手を伸ばして部屋の窓を軽く叩くと、笹木が窓から顔を覗かせた。
俺の顔を見て、少し驚いた後窓を開けた。
「木村君、どうしたの?」
「これ、渡すの忘れてた。」
伸ばした手でネックレスを差し出すと、笹木は慌てて首元に手を当てる。
ネックレスが無いことに今気付いたらしい。
「ありがとう!」
嬉しそうに笑ってネックレスを受け取り、そのまま首に掛ける。
笹木は少し元気になったようで、先程別れた時よりもずっと表情が明るい。
「笹木さ、明日学校来る?」
しかし、ふと気になったことを思わず口にしてしまい、笹木の表情が一瞬で暗くなった。
「あ!いや…その、ごめん。」
しまった、と思いすぐに謝ると、笹木は首を横に振った。
「大丈夫、謝らないで。学校…は、行きたいけど…。」
笹木は迷いがあるようで、言い淀む。
「俺は、学校行かない方が良いと思う。」
「え?ど、どうして?」
俺の言葉に、笹木が戸惑い目を丸くした。
「どう言ったらいいかわからないんだけど…。今日見た幽霊に、笹木が凄く引き寄せられてる気がするんだ。影響を受けてる、というか…。このままだと、笹木の身に何か良くないことが起こる気がする。だから、あの幽霊たちがいなくなるまで、笹木は学校行かない方が良いと思うんだ。」
迷いながら言葉を繋ぐ。
笹木は真剣な眼差しで俺の話を聞いてくれた。
「ありがとう、木村君。私ね、迷ってるの。学校行きたいけど、あそこは怖いから近付きたくないんだ…。」
首元で光る三日月のネックレスに触れながら、笹木は小さく笑う。
「でも、お父さんが戻ってきたらきっと学校に行けるようになるよ。」
「除霊師、だっけ?」
「うん、今はマレーシアで悪魔祓いの勉強してるらしいんだ。」
「除霊師が悪魔祓いの勉強って…。霊も悪魔も退治出来たら最強だな。」
俺が感嘆の声を漏らすと、二人顔を見合わせて声を上げて笑う。
「笹木の親父さんが除霊してくれたらさ、また一緒に学校行こう。」
「うん!」
昨日、満月の夜に話した時のように、笹木は笑った。