王都へ 2
やって来ました、王都!
当然ながら、シューゼモルンの街よりも遥かに賑わっている大通りを抜け、私達は領主様の別邸へとやって来た。
王都にいる間は、この領主様の別邸で寝起きするらしい。
お父さんやお母さんと一緒に客室へと通された私は、部屋の広さは勿論、置かれた家具の高級さや、何処かの風景を描いた絵画、そして品良く生けられたお花と、またも高級品のようなその花瓶に、ぱかっと口を大きく開けながら、まるで魅入られたかのようにボーっと立ち尽くして眺めていた。
「キリカ、ほら、こちらへいらっしゃい」
そんな私の手を、お母さんがどこか恥ずかしそうに引いて、ソファへと座らせる。
すると、私達全員が座るのを待っていたかのようにメイドさんが近づいてきてお茶を入れ、ソファの前にあるテーブルへと、静かにカップを置いて行った。
「ありがとう。いただくよ」
3人分のカップを置いて、メイドさんが後ろに下がると同時に、お父さんがメイドさんにそう声をかけ、カップを手に取った。
次いでお母さんもカップを持ち、静かに口をつけたので、私もお茶を飲む事にする。
ゆっくりと味わいながらお茶を飲んで一息つくと、私はカップを置いて立ち上がり、
「ごちそうさま! それじゃお父さん、お母さん、行ってきます!」
と、胸の前で両手を握り、拳を作って元気に言い放った。
「え? 待ってキリカ、どこへ行くの?」
「え、どこへって、勿論ラグヴァロさんを探しに行くんだよ、お母さん? その為に王都に来たんだもん!」
「な、ま、待ちなさいキリカ。今日はもうすぐ陽も落ちるし、危険だ。ここにいなさい」
「え……。……うぅ、わかったよ、お父さん。ラグヴァロさん探しは、明日にする」
お父さんの制止に、私は窓の外をちらりと見て空の色が真っ赤に染まっているのを確認すると、残念そうに溜め息を吐いて頷いた。
「あ、あのねキリカ、明日も駄目よ? この王都には何をしに来たのか、わかっているでしょう?」
「え? 何をしにって……ラグヴァロさんを探しに来たんだよね?」
「……違うわキリカ。この王都へは、貴女の護衛を決める為に行われる、神殿騎士様の試合を見物に来たのよ?」
「え? ……護衛って………………あっ!?」
「……忘れてしまっていたのね……本来の目的……」
「はは。キリカ、試合は早速明日からあるからな。明日は予選、そして明後日が本選だ。ラグヴァロ殿を探すなら、それが終わってからな?」
「……はぁい……」
そう……そうだった。
王都へは、是非神殿騎士様の試合を見物に来て下さいっていう招待を受けたから、来たんだった。
王都でラグヴァロさんを探せると思ったら、私の中ではいつの間にかそれが目的になって、試合見物の事は綺麗さっぱり忘れちゃってたよ……。
いけない、いけない。
私の護衛になる為にって、わざわざ神殿騎士様達が試合してくれるんだもんね。
ちゃんと真面目に見物しないとだよね!
ラグヴァロさん探しは、試合が終わるまで、我慢しなくちゃ。