表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

転生しましたが、ひと騒動があった模様です

『シューゼモルンに住むトゥレイン夫妻の元へ、我が祝福を与えた存在を送り出した。同時に、彼の者には極秘事項の、ある使命を背負わせた。それを成すには多数の困難が試練となり立ち塞がろう。時には、無茶な行動に出ざるやを得ない場合もあるやもしれぬ。よって、守護神ゴーデンの名において申し渡す。彼の者の行動について、よほど目に余る行為である以外、これを罰する事を禁ずる。何者も、この禁を犯す事のないよう取り計らえ。彼の者の名は、キリカ。我が与えた名だ、そのように名づけよ』


……という神託が、私がお母さんのお腹に宿ったその日に、守護神ゴーデンを奉る神殿の大神官様の元に、降ったらしい。

大神官様は直ぐ様国王陛下に面会を求めてこれを知らせ、神殿と王城の重鎮達の間でとんでもない騒ぎになったらしい。

曰く、"守護神様の祝福を授かった神子様がご光臨なされる! ご誕生なされたらすぐに神殿にお迎えしその御身をお守りしながら、背負われた使命のお手伝いをしなければ!"という思いの元に大急ぎでその為の準備がなされ、大神官様と王弟殿下が直々に、シューゼモルンの街の両親の元へやって来たそうだ。

けれど、両親と、シューゼモルンの領主様である公爵様が、それらを頑張って防いでくれた。

両親は、自分達の子供は自分達の手で育てると言って神殿に渡す事を拒み、自分達の終の住処はシューゼモルンの街だと言って神殿に移る事を拒んだ。

そして領主様は、自分の領の民を守るのが領主の務めだ、この家族に権力を振るって無茶を強いるおつもりなら、全力をもって阻止させて戴きますと、両親と私を守ってくれた。

本来なら逆らえば罪に問われてもおかしくないそれらは、しかし懐が大きく、理解ある事で定評ある大神官様と王弟殿下両名によって、渋々ながらも受け入れられたらしい。

けれど代わりに、神殿と王城から護衛の騎士と教育係を出すとか、2ヶ月に1度高位の神官様が私のご機嫌伺いに来るとか、色々な事を提示されて、大変だったらしい。

それらは最終的に、1年に1度のご機嫌伺いと、シューゼモルンにある神殿から教育係を出す事で決着がついたらしかった。

突然大層なお役目が回ってきたシューゼモルンの神官様は最初、教育係として私に会うたびプルプルプルプルと、可哀想なくらい震えていた。

本当は神子なんて大それた存在じゃない事を知っている私としては、申し訳なさでいっぱいだ。

だって、ゴーデンさん……いや、ゴーデン様の祝福を与えられたのは本当だけど、使命なんて背負ってないし。

きっとゴーデン様は私の職業の内容、勇者さんを探しだして飼いながらその呪いを解く、という事の大変さを案じて、ささやかな手助けのつもりでそんな事を言ってくれたんだろう。

結果、大事になっちゃったけど。

……それにしても、神託の内容、言い方というか、口調というか、誇張されてないかなぁ?

本当にそのままの内容なんだろうか?

あの時会ったゴーデン様の態度や言葉からはとても結びつかない、神様らしい内容だ。

実は神託おろしたの、ゴーデン様じゃなくラクロ様だったりとかしたりして……。

それとも、やる気になればちゃんと守護神様らしく振る舞えるとか?

う~ん……まぁ、いいか。

いくら考えても答えなんて出ないよね。

真実は闇の中、じゃなくて、天上界の中だし。

私が考えるべき事は、他にある。

どうやって、勇者さん、ラグヴァロさんを探し出すか。

私が転生するこの国にいると、ゴーデン様は言っていた。

ならやっぱり、この国にいる犬という犬に片っ端から会っていくしかないだろうな。

下手な鉄砲も数打てば当たるよ、うん! 

まずはこのシューゼモルンの街にいる犬から会って行こう。

今の時間なら、犬の散歩に出てる人も多いはずだし!

公園や中央広場あたりが、目的地としては最適かな?

よし、行こう!


「おかあさ~ん、わたし、おさんぽにいってくる!」

「え、お散歩? 一人で? どこまで?」


作業をしているお母さんにトテトテと近づきながらそう言うと、お母さんは手を止めて私を振り返った。

柔らかくウェーブした金の髪がふわりと揺れ、アクアマリンのような蒼い瞳が私を映す。


「こうえん!」

「公園? 近くの? う~ん……一人で大丈夫?」

「うん、だいじょおぶ!」

「そう……? ……う~ん、私はまだ作業が途中だし……あそこなら今の時間は人もたくさんいるだろうから、大丈夫かしら……。……いいキリカ? 道は端っこを歩くのよ? あと、知らない人にはついていかないようにね?」

「はぁい! それじゃ、いってきます!」

「ええ、行ってらっしゃい。気をつけてね?」


心配そうにしながらも、そう言って手を振るお母さんに手を振り返して、私は家を出た。

目指すは公園。

目標は一匹でも多くの犬に出会うこと。

キリカ3歳、初めての一人でのお出かけ、頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ