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真っ暗な闇の中を、正面に見える白い光を頼りに真っ直ぐに進む。

何故、ここにいるのかわからない。

気づいたらここにたった一人でいて、正面の光以外、五感を刺激するものは何ひとつなかった。

心細さに泣きそうになりながら、震える体を叱咤して、光のほうへとひたすら歩いて行く。

あそこまで行けば、きっと訳のわからないこの状況の何かがわかると、確証もない希望を抱きながら。


★  ☆  ★  ☆  ★


「やぁやぁいらっしゃい! & 50回目の人生お疲れ様~~!!」

「………………え?」


光の元には、ひとつの扉があった。

少し迷ったあと、意を決してノックをしてから、扉を開いた。

すると、パァン!というクラッカーの破裂音がして、今の言葉が聞こえてきた。

けれどその言葉の意味がわからず、私はその場に呆然と立ち尽くす。

そんな私の様子を見て、部屋の中にいた青年がつまらなそうな表情をして、こちらに近づいて来た。


「なんだよ~、ノリ悪いなぁ。ありがとう、とか、感慨深いなぁ、とか、なんかないわけ?」

「え……えっ?」

「はいはい、もういいから、入って入って。話進めるよ~」


青年はそう言うと私の手を掴み、部屋の中へと引っ張っていき、革張りのソファに座らせた。

そして自身も向かいのソファに座ると、私の目を見て口を開く。


「それじゃ改めて。ようこそ俺の部屋へ。そして今度も人生お疲れ様! 君は次で51回目の転生になるから、そろそろ今までの世界を卒業して、今度は違う世界に転生しようか」

「え……?」

「どこがいい? 今までの世界と同じような科学の発達した世界? それともガラリと変えてファンタジーな世界? あ、今流行りの乙女ゲームの世界でもいいよ?」

「え? え? あ……あの、えっと……?」


ちょ、ちょっと……とりあえず、ちょっと待って欲しい。

何を言われているのか、全然意味がわからない。

51回目の転生?

今までの世界を卒業?

違う世界?

こ、この人、何を言っているんだろう?

私は混乱する頭を抑え、目の前に座る青年を凝視する。

青年は輝くような金色の髪に金色の瞳をした、まるで物語に出てくる王子様のような美形だ。

私のような地味な人間とは、一生関わりを持ちそうにない。

……なのに、私はどうして、そんな人とこんな見知らぬ場所で意味のわからない話をしているんだろう?

……駄目だ、現状がとても理解できない。


「う~ん、やっぱり君のような人には、ファンタジー世界がいいかなぁ? ねえどう思う?」

「えっ? い、いえ、あの」

「うん、やっぱり君もいいと思うよね? よし、じゃあファンタジー世界で決定ね!」

「へっ!? あ、あああああの!?」

「大丈夫大丈夫! 初めての異世界って事で、ちゃんと恩恵という名の特典付けるから! そうだなぁ、転生先はメイトニアルで……職業を最初から固定しようか。君が一番幸せに生きられる職業をつけてあげるよ! メイトニアルなら、成長してもしその職業が気に入らなければ、副業って事で他の職業につけるから安心してね!」

「え? えっ? え!?」


まるで意味がわからず混乱して疑問に満ちた単語を繰り返し発するだけの私に少しも構うことなく、青年は勝手に決め、話を進めてしまう。

ど、どうしよう、訳がわからないままなんか決まってっちゃってる……!!


「さ~て、それじゃいくよ! この子に最適な職業、固定付与、っと!」


青年がそう言いながら私に向かって指を振ると、私の体を淡い光が包んだ。

光は七色に明滅し、やがて消えると、私の前に透明な長方形の何かが現れた。

そこには一行の文字が描かれている。


「しょ、職業……勇者ラグヴァロの、飼い主……??」

「へえ! ついに現れたんだ、勇者の飼い主! やったじゃない、君、運がいいなぁ!」

「え? あ、あの……これ、って、一体」

「さ、じゃあ最後に、名前だね! 幾つか候補出すから、好きなの選んでよ」


私の言葉なんてやっぱりまるっと無視をして、青年は次の事柄を決めにかかった。


「名は体を表すっていうから、君にぴったりなのをつけてあげる。どれがいい?」


そう言って青年がパチンと指を鳴らすと、青年の横に文字が現れる。

仕方なく、私はそこに視線を走らせた。

そこにはこう書かれていた。


1、なんかオドオドしてるから、オードリー。

2、なんかオロオロしてるから、ロロ。

3、なんかビクビクしてるから、ビクトリア。


「……………………」


読み終わった瞬間、ついに私の目から涙が一滴、こぼれ落ちた。

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