表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

((12話分の)9話)魔法少女のウチを知る! ミナこの豪邸、潜入しちゃった!!

・連載公式サイト(http://minakonotmahou.jimdo.com/)

 連載詳細は公式サイトに随時掲載致しますので、何卒よろしくお願いいたします。

 魔法使えない少女? ミナこ!



((12話分の)9話)魔法少女のウチを知る! ミナこの豪邸、潜入しちゃった!!

挿絵(By みてみん)


Aパート・祈里、薪母市マホウジョバレー・ミナこ宅に潜入決行編



 前回、警戒しながらも信じていたミナこに魔法に関する警告鉄槌を影で食らっていたと勘違いしてしまった祈里は、深いショックを覚えた。

 更に数日は、ミナこにどういじられようが、新作魔法で砂糖水だらけにされようが、苦笑いで素っ気ないリアクションとなっていたのを自分でも痛感する程、祈里自身はミナこへの自身を失っている始末である。


 しかし、祖父・慈庵から『祈里にはワシしか肉親がいないのがいけなかったのじゃ。じゃから人間関係が苦手になってしもうたかもしれん。だったらもういっその事、保守的でいるのはヤメるのじゃ!! むしろ、ミナこちゃんに接近し彼女がどこまで裏歴史と数少ない魔法を知っているのか、探ってみるがええ!!』と薦められて、自身が戻りつつもあったのだ。


「そうよ…! 私自身がそもそも生まれた時から身についてきた魔法を崇拝せずに忌み嫌ってきた。なら魔法に関しては、何の戸惑いも味方である必要もないのなら、いっそミナこを…ミナこを程々に敵として見なして、行動するしかないんだわ!!…」

 祈里の決心はすぐに行動力にもみなぎり、祈里は早速、ミナこの薪島の組織に入り組まれた素性を明かすために、ミナこを白蛇神社に泊めたおかえしとして、こちらもお泊り返しをして欲しいと頼み、ミナこの実家へ潜入することにした。



「はい? いやあ私は招待券を渡している存在か、薪島の上級社員じゃないと中にはねえ~…」

「え、だってアンタを泊めてあげたじゃない!! つい5日前だし忘れてないっしょ!?」

「これが薪島の掟なのだ。庶民の祈里では入る予知がないのだ」

 そしてお馴染みの昼休み昼食時間の学校で、祈里は制服&庶民モードなミナこに相談するも、まず招待があっさり撃退され、いきなり終わりかけようとしていた。

 もちろん、祈里はただで引き下がる気はない。ミナこお泊り&鳴の物襲撃事件以降、祈里も神社の宝物ほうぶつであり魔力が出せるとされるものは、いくつか調査所持して、いつか使えるよう携帯しているのだ。


 そこで祈里は、バッグから宝物の一つである『脳裏石のうりせき』という3センチ程の透明な水晶で、太陽の光を水晶に当てて相手に反射させると、水晶の中に相手の行動心理が漢字数文字で表現されるという宝物を用意。

 それを重力魔法でこっそり、机を合わせて向き合って食べているミナこの後ろの椅子の背もたれへ、置いてあるかのように浮かばせて、吸収した光と水晶がミナこ後頭部へこっそり数秒照らさせることに成功すると、すぐさまそれを手元に帰らせ、水晶の光が消えない内に中身を確認する祈里。

「(…!? うたげですって?)」

 金持ちのミナこから察した祈里は、宴をイコールしてパーティと考えると、ミナこにそれを尋ねた。

 的中なら、実に金持ちへの侵入経路らしい内容である。


「ミナこ、アンタ近い内に薪島でパーティやるからとかなの?」

「ウチの薪島自宅のパーティは、365日・四六時中やってっけど」

「へっ? 特別な日にやるもんでしょ、パーティって…」

「ウチの薪島自宅周辺の通称『薪島・マホウジョバレー』はほぼ毎日、薪島関係者の誰かしらが魔法で世界的な偉業を成し遂げるのを祝うのよ。昨日は薪島重工・ブラジル・リオデジャネイロ支部・ナンバー7685番のカルロスって人が『チンパンジーに【魔法戦闘員・スペシャライズズ】を全話見て、リーダーは誰か当てる実験で見事チンパンジーがレッドを指差したことで、実験に成功した』って業績を讃えるパーティ。その翌日は…」

「んあああああ!!! もういいっっ!!! 分かったわよ!!! ま、またいつか私も誘えそうだったらよ、呼んでよねっ!!!(…なーんて、毎日どんちゃんやってんなら、関係者の家族装って紛れてしまえば…)」

 ミナこの自慢を他所に祈里は珍しく、影ながらの作戦をミナこの会話を参考に聞きながら、ミナこ豪邸のある薪島北部のマホウジョバレー高級住宅街に潜入するのか考えることにした。

「私の住まいは東京ドーム2個分の敷地に薪ノ山の全土も範囲で、そのうえそしてそれで…」

「(今日は貴重な話が聞けるけど、もはや金持ちお嬢様に過ぎないわねミナこ…)」



 その日の夜から、祈里の調査とミナこ邸ことマホウジョバレー周辺への侵入方法を研究した。

 祈里はミナこから貰えたプリほでは逆探知が怖いため、家の8年前のぼろっちいパソコンで何とか検索調査をするが、そこは薪島、やはり固い守りが待っていた。

「ヌーヌルマップにマホウジョバレーとかミナこ邸が非表示になってる!? 周辺はベルリンの壁の再来と言われるほどの強固な壁が!? 周辺はクマのバブリーベアが楽しくお仕事…? え、何これ? 色とりどりのベア達は警備や周囲掃除のお仕事を楽しく可愛く、朝から夕方まで実施!! とか、こんな所は魔法な抜け目なのね…」

 祈里は考えた結果、まずはミナこの親友という立場を利用して、別の以来から侵入条件を作ることにした。

「もしもしミナこー? バブリーベアって言う消火器型クマ変身セットあったじゃない。あの去年の運動会で生徒全員が、1日中あれ被って呼吸困難な運動会だったやつ。あれってウチの神社のだし物用に一つくれないかな?」

「おーいいよ。特別割引で90%OFFに、今なら無料で郵送してやろう。つかあの時はみながボンベでもかづがないからいけないのだ!!」

「助かった!!!」


 更に数日間の間、祈里は頼んだ翌日に届いたバブリーベアの消火器を使ってクマに変装して検問通過の際に使う物として、新たな宝物を実家の蔵から取り出して自宅部屋で解析していた。

 形の見た目は3重に編まれたただの細い1m程の紐だが、昔はこれを左右の耳の穴に先を入れていたのだと言う。

「やはりこれがいいわ、この『聖徳潮汐しょうとくちょうせき』これは聖徳太子のごとく、多方面からの聞こえてくる音を広範囲で摂取して、的確に送ってくれる術具。そして思いついたのが、あの割られた鳴の物はまだ魔力だけは残っていることが分かった。つまり重力魔法に使用しなければ、奴らに聞こえることもなく、道具に宿る魔法なら更に安全に強化をしてくれると!!!」

 これで重要な会話が聞けると考えた祈里は早速、聖徳潮汐と鳴の物を合体してイヤホン風にした『聖徳イヤホン』を使って、周辺の音を聞いてみることにした。


(すちゃ、キーーーーーーーーーーーーーーーン………)

(「親衛隊本日の当番、高畑と横田、帰ってまいりました!!」)

(「ママー!! 神社の下に大きな蛇がいるよー!」)

(「あーた!! 部屋でタバコを吸うなっていってんじゃないの!!!」)

(「ごろろっ、シャアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーッッッッッ」)

「え、や、やだもお!? 最後トイレ流した音じゃない!? 汚ったな!? でも優秀ね!! ウチのトイレの音じゃなかった程だから、相当精密に音を探り当てられるのね! これならミナこの真相も聞けそうかも…」

 祈里は本気だった。何せミナこは鳴の物を祀り保管しているほら穴をワザワザ服を残してまで裏歴史の魔法にマーキングを残す程である。こんなピンポイントな行為を他の誰がするだろうか。

 こうして残す所、後は祈里が学校でミナこを観察会話して、ミナこが自宅で忙しそうな様子を披露すれば、その数日間の内に潜入してミナこの正体を探るのである。



 そして、やはり4日程でミナこの尻尾を掴みに行く日がとうとうやってきた。

 きっかけは学校で、ミナこが新作の魔法実験後である昼休み中に投稿して来た時のことである。一人で昼飯を食べている祈里の元にミナこはやや焦った表情が隠せず、魔法少女形態で教室に入ってきた。

(ガラッッッ!! スタスタスタスタがちゃ!!)

「まったく…、なぜよりによって今日しか空けられないのだよ!?」

「あ、ミナこおはよ?」

「君は庶民的に過ごしていて羨ましい限りだ。お昼は食わんよ。午後の授業だけ受けたらすぐヘリ箒で帰らなくては…。自宅で開かれる『国際オーパーツ協会・OPPAオッパ』が、我が父のパーティにとうとう長官自らやってきた…このチャンスを…」

「ちょっとミナこ…?(うわっ!? オーパーツ!? つか協会があって、しかもギリギリな名前だったなんて知らなかった…。じいちゃんなら知ってそうだけど、きっと世界中の不都合な歴史物は裏歴史の道具が表沙汰に出た物で、そしてそれの取引に違いないわ…!!)」

(ピリリリン!!! 魔法変身ぷりーーーーっちちちちいちちちいいいい!!!)

「あはいもしもしィ! あ、あなたが…! はい…はい…はっ…!? え、本当に…本当に!!! 了解承知しましたわ!!! 今夜お会い致しましょう是非っっっ!!!」

(ぷりっ)

「(ええ私も今夜、貴方達と是非お会いしましょう!! 知らず知らずの内にね!!!)」



Bパート・祈里、ミナこの真相に驚愕編



 午後6時。薪母市北側の一等地であるマホウジョバレーでは、相変わらず賑やかで清楚な住宅街が立ち並ぶ中で、奥の薪ノ山麓にミナこの豪邸があった。

 だがこの豪邸、おそらくぱっと見だけでは何かの美術館かモニュメントかと多くの方が誤解するであろう。

 それもそのはず。ミナこの豪邸はヨーロッパ風の豪華な西洋建築趣味ではなく、正方形の白、黄色、ピンクの3色しかないコンクリートの建物ばかりが大小密集する現代建築風の住居であったのだ。窓も自動ドアも防弾ガラスで不揃いに張り付いており、たまにバルコニーが引き出しのようにそり立っている以外は、遠目だと入り口は山沿いなので更に判断し辛い。

 噂によると5、6年前に小学生のミナこのファンシーさ要望と、父奨一の現代アート趣味が悪い具合に合体した為とされており、薪島外で目撃経験のある人々は『イコライザーバーの家』と暗喩していた。


 そんな住居なので、ミナこに3時間遅れて午後6時に赤いバブリーベアになりすまして検問から、他のベア集団達と一緒に入った祈里は、ただでさえ視界は狭い故に苦労していた。ベア達は達の数はざっと200はあり、更に今回は視界確保に使えそうな術具は無かったため、ベア群衆に揉まれて動く際は、ほぼ聴力調査が頼みの綱だった。

(ぞろぞろぞろ…)

(はあっっっあっっはあっゃあっっっ………)

 外からだと可愛げのある色とりどりの熊の着ぐるみ行進だが、実際は密着し合っていると生々しい荒い老若男女の何らかの事情で入っている人間の息遣いが荒々しく聞こえていた。

(どんっ!!)

 すると集団移動中に、祈里のベアに他のベアがうっかり押されてフラついてしまう。

(「おいお前押すんじゃねえよ!! つか、仕事してた割に、中から臭ってこねえな?」)

(「なっ!? ご、ごめんなさい!! …私その、か、花壇の方を警備してたので…」)

(「おいおい君たち、また喧嘩でもしたらかつての同胞みたいに粛清が待ってるぞ…!」)

 思わずしゅんとする祈里とぶつかってしまった男はそのまま黙って、ベア達の向かう方向へ歩いていく。祈里は全く当て知らずの移動だったため、恐怖しながら10分程歩いた。


「(…あ、聞こえる聞こえる! もっと北の奥の方に明るい光の施設が見えて、そこでの会話かしら…)」

(「これは流石は薪島のパーティ会場だなっ!! ベーリング海の貴重なカニがにが山積みだ!!」)

(「おほほほ!! 遠洋漁業部門も魔法を手がけたのは、そちらのミナこ様による海産物達に対して人間を天界からの天使と思わせる成分の散布漁業だったとは、素晴らしゅうございますわ!!!」)

(「…はて? 薪島社長の奥さんはお見えにならないのかな?…)」

「(…どうもまだ、何も役立ちそうにないわね…)」


(ピピーーーーーーーッッッッッッ!!!)

「全員停止!! 後は入り口のミントミスト(霧状の噴射)をくぐって、宿場に入れっっっっっ!!!」

「え!? あ、何人か入ろうとしてないベアが!? あ、ちょっと待ってええええうわあああ!!??」

 目の前に現れたピンクスーツのガードマンの合図で、ベア達はぞろぞろと正方形型の巨大なピンク色の倉庫に入っていく。だが一部は入ろうとせず、それぞれ何処かへ分散するように歩いて離れた。祈里はとりあえず分散しようとしたが、反応が遅れて倉庫へ入る組に紛れ込んでしまう。

(ドドドドドドドドドーーーーーーーーーッッッッッッッ!!! ドサドサドサドサッッッ!!!!!!!)

「なっっ!? むぎゅうっ!!! このす、すし詰め間は…まるで奴隷じゃないの!?」

 倉庫にあったのはひたすらベッドと廊下ばかりであった。ただし衛生的には劣悪ではないのが幸いであった。

 倉庫自体はベア達が不思議と悲壮ではなく、寝ている者、見えるかどうか分からないがスマートフォンでネットをベア越しに見ているもの、崩しそうになりながらもデカイ手先で器用にシワを使って駒を挟んでチェスをする者など、実は個々人が思い思いのクマ生活をしている光景で、祈里は途方にくれていると、隣のベアが語りかけた。


「おい、あんただよアンタ。ここに今日来たとこだろ?」

「え、わ、私は!…」

 声は渋くも若々しく、声だけは取り敢えずイケメンのようなかっこよさがあった。

「その多い被してあるバブリー毛並みがどう見ても、新品だぜ。汚れてもいねえしな。通報なんかしないさ。日常社会に限界が来たか、薪島に反する活動をしてここにでも来たばかりなのかい?」

「…あなたが何者か知らないので、理由だけ説明しますと、魔法少女を追ってきました…」

「…奇遇だね。俺も2週間前から潜んで追っている」

「えっっっ!?」

 祈里は驚いた。話を聞くと、どうもここのバブリーベア達は夢の国のクマと言う設定になることで、この薪島の敷地で一生働かせてもらえて住まわせてもらえる代わりに、脱いだり辞めることは基本禁止と言う設定での上で暮らしていたのだった。

 大多数が貧乏か追われ者からしいが、中には俗に言う産業スパイも紛れているとのこと。

 それが祈里が偶然出会った味方となったベアこと、名前は仮称で『シン』と名乗った。

「…い、一応あなたを信じたいと思います。こんな状態ですし…」

「お前さんも魔法少女さんに会うために、今日忍び込んで運が良かったな。薪島ミナこは今日、すごく大事なお得意さんと会う。あの魔法少女で正義も悪も猛威を振るうミナこが深々礼をする人物…」

「そうです! その真相が私も知りたいのです!! 是非力を貸してください!! 私も出来ることは協力しますから!!」

「話の気が早いねえ…んじゃあついてこい。あんた、あの魔法少女嬢に何か恨みでもあんのかい? 薪島と科学魔法展開のせいで、事業を潰されたとかさ」

「そ、そうです! か、カニとかの遠洋漁業部門のせいで実家の水産会社がナマコが採れないと…」

「ナマコ…?」


 早速二人は出入りは自由な倉庫を抜け出す。

 だが、夜は側の専用チューブの付いた浣腸式トイレか、専門の仕事が明確な使用人ベア以外は基本外出禁止となっており、二人は夜道の影側をこっそり歩んで様子を伺った。

 警備している人間はぱっと見だと見当たらないが、彼曰くこの社内敷地ではグローバルな会社流に、ほぼ皆が私服で優雅に過ごしているからとのことである。

 それ故に誰が警備員で誰がただの社員か、そして薪島一族を警備しているか知るのに彼は時間を要したのだと言う。

「スパイ映画みたいでベタかもしれんが、周囲の街灯やスポットライトを回避しながら山のある北側へ進むんだ」

「…待ってください(何か聞こえる!?…ガードの声?)」

(「…通信番号1884、応答せよ。近頃茂みを潜って脱走を試みようとするベアがいる。厳重に様子を伺えよ」)

「…シンさん、ここから見えない恐らく私服警備員が茂みを警戒しています」

「なんだと? どうしてそれが分かる?」

「…私には、信じてもらうのは自由ですが、テレパシー状に遠くの声を聞ける能力があるんです」

「そうか、まあ確かにここ数日で限界が来たベア共が脱走を図って消えた奴は出てきつつある。ならこっちだ、遠回りだが庭園側から掃除残業のフリをして移動するぞ」


 そうして、祈里とシンはモソモソと庭を移動する。ただし、素のままでは仕事をしているように見えないため、途中で用務室から祈里は吸引機、シンは何故かチェーンソーを彼曰くとっさの際は相手も警戒するだろ? というかなり豪快な理由で腕先のシワで所持し、移動中祈里に薪島と時々見かける敷地内でのミナこについて語ってくれた。


「薪島もその一族も基本はバカだぜ。ここの領地もかなり闇を期待して来たのかもしれんが、技術屋が産業スパイするのはもっと厳重な薪島本社や各支社。ここは薪島家の一族を知るためのみみたいなもんで、周辺物も普通の豪遊セレブと何ら変わらん。本社よりは容易に入れるんだがな」

「そんなもんなんですか…確かに遠くではお祝いの会話しか聞こえませんし…」

「だが、一族に恨みのあるお前に耳よりな情報があるとすれば、あの世界一の魔法少女・薪島ミナこの素性だ。みんな特に産業スパイは魔法名義の技術ばかりに目がいってるが、実際ただのテスターパフォーマーと見下されているミナこがここ数年で出て来てから劇的に世界規模の会社が変わったのは、あまりに不自然じゃあないか?」

「そ、そう言えばそうですね…(身近にいる以上、ミナこの不自然さが自然になっていたのだわ…全く)」

「もうそろそろ見えるだろ、この敷地で初見の人間はまず気付かない役目の建物…あのピンクと白と黄色のコンクリートでボコボコ出来た建物。あれが薪島家の本家だ。そしてミナこはそこで会談を行っている。そのあいつの素性だよ」


 二人の目の前凡そ100m先にスポットライトで複数照らされた建物の中で、一つだけ異色異彩を放つ家らしくない建物が見えると、シンはそこで止まって祈里に言い聞かせた。

「俺も今日がいい機会だから、これから薪島邸の重要機密を探る。この着ぐるみの解除方法も教えてやる。お前の目的は? もしかすると、その会談中らしいミナこを襲撃するのか?」

「しゅ、襲撃ってその…素性が気になるだけでスキャンダルがあったらばら撒こう程度です! 親友を殺したりなんて…ハッ!?」

「もしかしてファンか? あいつのファンなんて、一種のマニアしかいないだろうに。まあいい、ミナこについてだが、なぜここまで彗星の如く浸透したのかだ。…奴には真のブレイン(首脳)がいるはずだ。あの父親社長は公には娘が生まれた詳細、そして最初の妻を公開していないということは、あいつは薪島血統外の何かとしか思えない…」


 そう語ったその時、茂みから一人のベアが現れた。しかも右片手は人間の手が出ており、銃を握っている。

「そこまでだ! 私はフィフティー。お前達2人は時間外労働登録をされていないはずだぞ!? 表面に薪島印の烙印が無いっっっ! どうしてここにいる?」

「お前も物騒なモンもってよお、株主総会で雄叫びあげたのに、今じゃ薪島のベア配下リーダーかい。そしてこの刃に立ち向かうってのかい?」

(ギュウウイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンンンンン!!!!!)

「ひっっ!? 貴様!!」

「こういう日が来ると思って、庭掃除用具を確認しておいて良かったぜ。騒ぐと斬るぞ。互いに分厚いの着てんだ。こっちの方が貫通は早いと思うぜ」

「シンさん! 急がないと追っ手とか…」

「祈里、お前だけ先に自分の用事へ行ってこいよ! そのベアは余程の突き破り以外脱ぐには、雑草除草剤とかの酸性薬品がよく聞くぜ」

「すみません!!」

 祈里は急いでその場を後にドテドテ走り去った。

「だが貴様も観念しろよ、今日は引き分けても明日にでも上層部へ報告してやるからな!!」

「いいんだぜ? だが、お前もその銃は内通者にでも密輸してもらったんだろ? 薪島をわかっちゃあいない。薪島のガード等はみなそういった無骨な拳銃は使用禁止だ。全員『にゃっミットサミット!! のピンキー光線銃・500ボルト級』しか持っていない原則なんだがなあ」

「お、己ええええええええええええええ!!!!!」


 そして祈里は庭の出口付近に何とか逃げ逃れ、除草剤を探そうとするも中々見つからず、一方で私服の人間も見える開いた道も近い為、より慎重になりながら茂みをミナこ邸まで進んでいく。

 だが益々近付くことに望み薄になっていく為、祈里のペースも遅くなって行く中、祈里は作戦方針を変更した。

「(あ、つか私まだ吸引機持ってんじゃん。…いっそのこと、ミナこの話だけでも聞く為にこの吸引機を使って体にまぶせば…)」

(ブイイイイイイイイイイイイイイインンンン!!! バサバサバサ…)

 祈里のベア着ぐるみは赤い目立つ表面を茶色い枯葉で覆い隠し、上手くギリースーツ状になって、ミナこ邸を裏から侵入することに成功し、更に見た目もリアルなクマを感じさせる。

 そして裏口手前の茂みで術具による盗聴を始めると、すぐに聞こえて来たのはミナこと謎の女性の声、更に意外な展開が待ち望んでいた。


「…以上が報告です、ミナこ様。国際オーパーツ機関OPPAの…」

「ここはあなたと私ミナこしかいません。もうたまりに溜まったオーパーツや過去の歴史の調査話は聞いたから、重役かぶりはいいんだよママ」

「(ええええっっっっっっっ!!?? ミナこのママあ!? なんでそんな警戒しながら?)」

「本当ねミナこ…何年ぶりかしら…あなたの精密なルートスケジューリングのお陰で、奨一に会うことなく、こうしてこの薪島の領地で出会えることが出来た…。立派になったわね」

「うううっっっっっっうわああああああああああああああんママああああああああ!!!」

「ちょっとちょっと!! 泣いたら警備に警戒されちゃうでしょう?」

「(ま、マジだ…。つかあのミナこが大泣きとか何!? そんなに恋しかったわけ!? どんな事情が…)」

「それにしても綺麗なお外のお庭ね…あら、ミナこ下にクマを飼っているのね。寂しそうだから呼んであげましょう」

「(へっ? あたし!?)」


 そしてすぐに裏口から現れた母親の姿はまた驚愕だった。

 とてもミナこの母とは思えない、薄桃色な素肌に黒いロングヘアーで黒い高級ワンピース、そして顔は化粧もしていないのに素朴で綺麗、また人種はアジア系ともヨーロッパ系ともどちらとも言えない中立的な顔立ちだった。

「まあ随分毛深い茶色なのね…こっちへいらっしゃいな」

「(お、おう…つか出る時どうしようコレ…)」


 そして意外な手段で会合室にいるミナこの目の前にノシノシやって来た祈里。

 服従演技だが祈里は取りあえず、ミナこに甘えるペットのフリをして足元に頬をスリスリしてみたが、そこは前回風呂場でみた屈強な足元。硬くて痛かった。

(ゴリゴリっ…)

「(しかもミナこったら、ガン無視かい…。まあ私も正体ガン無視だけどね…)」

「ミナこ…パパはまだ私を認めようとしないの?」

「うん…。ママの出生の立場はこの社会に反するって…」

「(え!? ままままままままさかまままままままママさんは、う、裏歴史!?)」

「私のせいよね…結構して20年、そして死に至る病が20年経ってもまだ死なないのですもの。世間一般では余命結婚詐欺と思われても仕方ないわ…」

「でもママは悔しくないの!? このままずっと裏で薪島のお金を使って、ずっとヨーロッパの片田舎で過ごし続けるなんて!! 私は例え秋葉原だとしてもいや!!」

「やっぱりママは魔女か何かなんだわ…。記憶があることからの原因不明の病弱な病。そして、210歳以上の覚えていない遠い実年齢の記憶…」

「(っ!? もしかしてママさん!? 裏歴史かつ魔法的な肉体でもその存在を意識していない!? よ。よく知らないけど、不老不死系とかかしら!?)」

 祈里は戸惑った。ミナこは裏歴史を調査していたのではなく、身近に存在はしたが、気づいていないままで対処していた為である。

 そしてとどめの一言が現れた。

「ミナこ、ママね、もうすぐあなた達の記憶も消えそうな気がするのよ。だから最後にあなたに会いたかった」

「な、何言ってんのよママ!! そんな抽象的なことが大嫌いだから、私は自ら魔法を証明する為に魔法少女になってるの!! そして何百年と生きてきたママも魔法に関しては証明できないでいるロストテクノロジーじゃない!! でもママも熟年者ターゲットに魔法奥さんでも何でもやっちゃって、そんな肉体でも楽しさを証明すれば良いのよ!! なんならオーパーツ系美女でもなんでも…」

「それはミナこ、あなたにしか出来ない素晴らしいことなのよ。例え秘められていても最後まで分からずに終わることもこの世には沢山あって、また私は記憶を失ったら、何処かへ向かって、そしてまた誰かと出会い、年齢との逸脱が発覚する。前の夫も高齢でそれを知り、そして亡くなっていったはず…。いつかはミナこの魔法で分かるといいわね…あら、もうこんな時間」


 時間は夜の11時。

 ミナこは思いっきり抵抗するかと思いきや、ずっと黙って俯いたままだった。

実にらしくない。しかし、ミナこには母親を幸せに出来るような魔法は携えてはいなかった。

 援護してくれるガードマンが迎えに上がると、そっと母親は立ち上がって帰る支度をする。

「今日はお会いした記念に一つ、大切なオーパーツだと知覚した、古い品をお渡しします。これを大切に持っていてくださいね」

「き、今日は実に楽しい会合だった。ま、また魔法に関する古代の異物が分かれば来て頂きたい…」

 そのついでにミナこに母親がOPPA長官として渡したのは、金色の小さなセミとロケットを足した様な奇妙なペンダントだった。

「ミナこ様…実母上様を実在するオーパーツ機関名で呼び出すのは、そろそろ限界を感じます。奨一社長様がミナこ様のスケジュールを気にされたら大変です」

「ママは実在するオーパーツ機関よりもよっぽど役に立つ過去と遺物の過去を教えてくれる。私の研究と混ぜないと機能しないからそう思えるのだ。時代の生き証人は違うってね」

 そして部屋を後にし、ミナこに配属された特別配置された親衛隊に車で送られるミナこの母。

 ミナこは終わった部屋で一人静かに泣いていた。それをクマとして祈里は代わりに鼻元で拭ってあげた。

「(ミナこ…ミナこだったらダメじゃないの!! こんなしみったれた真相なんて持ってちゃ!! あ、アンタらしくないじゃない…ホント、どうしてあんな清楚素朴な女の人から、こんな甘くて熱くて脂ぎった少女が生まれたのか…あ、父親の血が濃いとか…)」

「…っ、…っ…? あ、お前みたいなクマ飼ってたっけ?」

「(そのボケこそよ!!! さらばっっっっっっっ!!!)」

 そういった瞬間、祈里は転がるように部屋から飛び出し、裏口から脱出した。


 すると裏口には、見知らぬ男が除草剤を持って待っていた。

「!?っっっ!! きゃあ!! ご、ごめんなさ…」

「俺だよまぬけっ。こんな装飾的な薪島の社員がいるかい」

 よく男を見ると、顔の濃いインド人で無精髭とやや伸び気味の髪を垂らし、服装は民族服と洋服が混じったような姿の明らかに場違いな姿が立っている。だがしっかりイケメンだ。

 彼こそがシンで、祈里の移動する様子をフィフティーベアと取っ組みながらも見ていたのだという。

「あなたがあのシンさん…? あ、除草剤感謝します! これで帰り際に漁師に打たれる心配も無いですね」

 祈里も除草剤を使い、バブリーベアの繊維全身をドロドロに溶かすと中の祈里は意外にも巫女服の衣装で現れた。本人曰く、万が一中身がばれた際はミナこの親友と一発で分かり得る姿を選んだ為という。

「その神々しい日本の女性奇術師の衣装は万が一見つかった際に…? ミナこが親友と言ったのは、まさか本当にあの薪島ミナこの親友なのかあんた!?」

「…もう今更ですけど、はい、そうなんです。私はあの子の真相が気になって…ほ、本来はあいつの寝室とかもっとプライベートも知りたかったんですけど、さっき会合中を目撃出来たんでまあ満足してます…それに生きて帰るのが優先ですし…」

「普通はあんな得体の知れない少女なんぞ知りたくはないはずだ。…感じ取った程度だが、あんた、同じ裏歴史だろ…?」

「!?」

「丁度いい、安全な帰り道と一緒に教えてやる。今度この街に我々の対ミナこ・薪島へ鉄槌を下す強力な法魔がここへ来る。協力してくれるかな、同じ魔法少女ちゃんよ…?」



 翌日、祈里は祖父へはミナこの家へお泊まりに行っていたとある意味真実を前持って話していたので、怒られはしなかったが寝不足な様子での明け方帰宅だった為、心配が隠せない中で、祈里はミナこへの複雑な思いを秘めて学校へ向かう。

 学校の私服ミナこはその日も何気ない魔法とオタばなしで盛り上がったが、ふとミナこが悟ったような内容を祈里に話しかける。

「…なー祈里の家って、確か両親いないんだっけ?」

「両方私が産まれてすぐに行方不明ね」

「いやあさあ、マンガやアニメってよく両親の描写ないがしろにされるのが当たり前だけど、本当にそれで良いのかなって」

「それもそうねー。ミナこはあの社長こと校長でしょ?」

「パパの場合は、いつも薪島重工のCMの最後にジャグジーに入ったパパの周辺に美女が5人はいるでしょ。あれが全部ママと超待遇豪遊補充っぷりよ!」

「それって肉親って呼べないかと…。本当の両親は1対1だよ…」

「…うっ、そうやってまた祈里は固定的な価値観に捕らわれて…」

「なら魔法で解決出来る日を待ってるわよーんだ! (そしてもう彼女が来日すれば、ミナこは苦しまないで済むかも…)」

「よーし!!!!! そうとなったらますます魔法会得特訓だーー!!!」



 こうして、祈里のお泊まり返しは思わぬ出会いと真相と出会い終わった。

 がんばれミナこ!! そして純白なあの母親がもし裏歴史なら、ミナこの血筋は…!?



 魔法使えない少女?ミナこ! 第九話・完


最後までご閲覧をありがとうございました。

ご意見・ご感想・修正点要望がありましたら、ご連絡下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ