((12話分の)7話) 魔法少女も腐女子はあり!? ミナこの魔法腐少女計画!!
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魔法使えない少女? ミナこ!
((12話分の)7話) 魔法少女も腐女子はあり!? ミナこの魔法腐少女計画!!
Aパート ミナこ、腐女子に接触編
ミナこや祈里の通う茶ノヶ崎中学は、薪島重工が経営する私立であり、薪島家や会社の繋がりばかりではなく、一般の市民からも多数入学している1000名程度の少数陣営私立中学である。
世界的な会社の中学校の為、校内環境は最新で授業日もタダどころか、優秀生徒には特別資金も手当てされる程で、倍率も非常に高い人気校であった。
また変わった入学確認の入試として、ミナこが入学した2年前から一般的な普通科試験に必ず『オタク学・マンガ科・アニメ科・ゲーム科・専門試験』が存在しており、更にはまだ準備中だが、薪島重工へのエスカレーター式・特殊専門学級の『魔法学科』も設立予定となっている。(設立予定なのは、ミナこが唯一の魔法少女であるのに、襲名される危機を感じて門を閉じていると言う噂もあったりする。懐の狭い正義の味方である)
その為、この中学はサブカルチャーに理解が無いと、まず入学も不可能であり、更には薪島の魔法方針や薪島ミナこの威圧感など、耐えねばならないことは山積みである。
祈里が入ったのは学費を負担したく無い事と、特別資金目当てだったが、まさか校内で1番恐れ崇められている、ミナこ本人の友達にまでなるとは思いもしなかったという。
今回は、そんなミナこのクラスに点在するその他の生徒から絡むある日のことである。
茶ノヶ崎中学一のマニアでもあるミナこだが、彼女にも空洞的な分野は幾つか存在する。
その結果、学内の生徒には、時々そんな空欄を埋めるような個性の学生が存在していることもあった。
「ねー今週のジョンプ読んだあ!? 軟式魔法バスケットボール部マンガの『フライ・ミッドスラッシュ』の約紙クンと飯島クンのカ・ラ・ミ!! やっばかったよねー!!!」
「もー野菊崎ちゃんったらー! まーたカップリングの話題〜? 最近教室でも普通に話題を出しすぎだよお!!」
2年生の中でも1、2位を争う程のBL好きで定評のある2年V組の『野菊崎・真琴』は、自分で人気少年・青年マンガの人気男性キャラクターの同人誌活動をする程濃厚な女の子。そんな彼女に突っ込んでいたのは、1番の親友で普通のオタク性質である『畑中・サンスクリット・アンビシャス』で、普通の女の子なのに明らかな名前負けである。
容姿はミナこ曰く『野菊崎は地味なくせして、派手な似合わない衣装をよく着る輩。相方で仲の良い畑中は、美人素質はあるのに努力しないので、もっさい服装に保護された野犬プードル系』とのこと。
彼女二人は席が少し離れているが、野菊崎は祈里の席の右隣で、休憩時間にはよく畑中と喋っている。ある日、そんな二人の光景に庶民形態ミナこは珍しく祈里と話している最中に興味を示す。
「はたちゃんは分かってないのよー! 約紙クンの不幸力が何時も試合敗因の原因となるけど諦めないことをさりげなく分かっている飯島クンが、約紙を慰める為に抱きつく『攻めの魔法』をーーーーーー!!!」
「…? 野菊崎ちゃんよ、攻めの魔法とは何よ? ロープレのコマンド魔法か何かかしら?」
「(まずいっ!? 珍しくミナこ様が話しかけてきたっっっ!!! いつもは無関心なのに…!? あ、あれか! 魔法か!?)あ、あはははは!!…ミナこちゃん、少年ジョンプで最近始まって人気急上昇中の軟式バスケマンガのフライ・ミッドスラッシュってマンガ知ってる? 男子選手生徒が特殊能力で戦うバスケの…」
「…ん、あーそんなのなんだあれ。単に魔法使うだけなら、海岸に打ち上げられた魚の死骸の数ぐらいあるし。なーんだそうか」
「ま、まあそんな程度なの! ご、ごめんね無関心だったら!…(ほっ、飯島クンの特殊能力・攻め特化がまさかオス同士の絡みにも発動して、相手を誘わせるだなんて設定描写を説明したら、健全なミナこはあたしを除籍級の処分をするんじゃないかな…)」
一瞬で興味を失ったミナこは自席に戻るが、野菊崎と畑中の会話から聞こえる『攻めと受け』『カップリング』のキーワードがやたらと引っかかるので、思わず祈里に聞いてみると、祈里も正直生半可な知識しかないので、非常にギクシャクした会話が始まった。
「祈里ちゃんよ、野菊崎らが話している攻めと受けやら、カップリングとやら、何か分かる?」
「えっ? んー、所謂女の子がマンガの異性を好きになる奴でしょ? えーと…」
「え、それただのファンじゃん。あとなんか○○クンと××クンがーとか、何か男同士の話題っぽかった」
「攻めと受けで男同士…。対局する男同士なら、項羽と劉邦、弁慶と牛若丸、秀吉と信長みたいな?」
「んな堅苦しい歴史の男同士じゃなくて、少年ジョンプとか言ってた」
「えーっ…あたし、少年誌は普通に読んでるだけで、そんなディープなファン層知らないよー…」
「カップリングとか言ってたから…あああああっっっ!! マスマス分からんっっっ!!!」
「男同士、カップリング…、あ、あれじゃない!? ジョンプのバトル漫画でありがちな『味方同士で合体変身して一つになって戦うやつ!!』」
「お、それだ!!! フィーチャリング!!! って音楽の用語みたいな奴でしょ」
その謎の歓喜を側で聞いてて額然とする野菊崎と畑中がいた。
二人は小声でミナこと祈里の純粋さに呆れる。
「嘘でしょ…つかフィーチャリングって、主演するとか意味違うし…」
「うん…ボーイズラブってここでは無開拓見たいだね…」
「ねえねえ、それならさあ、いっそあの2人に教えた方が私ら堂々と過ごせない!?」
「ええええっっっっっ!? 危険だよォ…。特にミナこさんが拒絶反応引き起こしたら…」
「そうかなあ、曲がりなりにも私らオタク学も含めて合格して入った身だし、入試で腐女子の意味問題で確かあったし、同性の愛って分かるよきっと!! んーと、そうだな、ここでの会話でワザと分かりやすく話して悟ってもらう?」
「…まあ、それならいいかな…。腐女子のキーワードから話せば、気付いて貰えるかも…」
早速、野菊崎と畑中の2人は会話実験を行う。
「所で畑中ちゃん、基礎中の基礎、腐女子、やおい、BL、攻め受け等の女性的オタク趣味嗜好の真髄は何かを分かって?」
「そ、それはそのぉ…男同士だから…?」
「ああああんんまいっっっっっっ甘いぞ!! そんな浮かれたものではないっ!! 人によりけりでも真髄は古き例えだと、熟練された腐女子では、鉛筆と消しゴムからでも男性擬人化して人間関係を妄想できるように、禁じ手的な男性同士の愛を如何にして結び付けるか、完成された男女という洗練さはない、女性のような妖美さもない、硬派な男性同士であるが故の愛には険しいきっかけがつきもの!! だから良い意味で普通のキャラクター同士の恋愛から派生したジャンルが確立されたのだあっ!!!…」
「ああんもおっ!! 野菊崎ちゃん! 熱狂し過ぎだし、堂々と解説しすぎいいいい…」
「うるしゃいうるしゃーーいん!! だってガチなアタシはやっぱりスパイみたいな暗躍的な会話での腐女子トークなんてむりだったもん!! スパイと諜報部長官…あ、スパイが敵スパイが同士出くわして、かけおちても…いいっ…」
「…はっ、ミナこ。あたし腐女子とかさっきから向こうで言ってた意味が分かった!」
「…えらく自身がこもってる? もー次の授業始まるし、腐った女だのやよいだのビーラブだの攻守だの、やはり歴史における黒魔術でも勉強してるのではないか? ああいった傾向はオカルト寄りで、あまり具体性のある魔法としての研究価値はあまりなくてな…」
「そうじゃなくって! ミナこはお父さんとお母さんとの男女の間に生まれたじゃない、でも男と男同士だと仲が結ばれても子供が生まれない、つまり世間的に恋愛として見なされにくい、分かる?」
「…え、あたしは魔法関係からの出身だから、そんな個々人の生物的な解釈は値しない…。私はキラキラしたものから現れ使命を託された…」
「(…ミナこのやつ、相変わらず出生はあやふやね…まさか本当に薪島の…)んまあとにかく、人間この世は2種類の性の人間しか無いじゃない、ミナこも魔法少年ってジャンルは認めないでしょ」
「単に普及の努力足りないのだよ!! 第一キュートさは無理があり無理難題に値する!!! なんだ野菊崎はけしからんな!! 腐った女子で魔法少年が好みだとお!? 実はゾンビか!!!」
「落ち着きなさいよ!! そう魔法少年が受け入れられにくい、それと同じ認識でいいわよ。さっきからのキーワードは皆そう言う用語だったみたい。あの二人はね、そんな感じの難しい恋愛キャラネタに謹んでるってわけ。
…ふうっ、やっと分かったわ。でもこの薪島の取り巻く環境では難しそう、だからミナこ、分かって上げる必要があるよ!! どうかなこの際、魔法開発の一環としてさ、彼女らに接近するのも…?」
祈里の純粋な意見はミナこに届いているようであった。ミナこは納得したような表情で立ち上がる。
「…その時期かもしれんね、魔法少女のプロたるもの、ここは拡大的な和解も必要なのだ…!!」
そしてミナこは野菊崎と畑中に再び向かい、そしてその姿はいつの間に着替えたのか、魔法少女形態でいた。
「野菊崎、君を『魔法腐少女・マコと』として認定しよう!!!!!」
「え…」
「そして、共に魔法の開拓を歩むのだ!! まずはその、鉛筆と消しゴムで攻め受け魔法の確立から始めようか…!!」
「(いやあああああああああああああああああああああ!!!!! この学校は環境目当てだけでそんな関係には…!!! 恥ずかしおかしき狂わしきいいいいいいいい!!!)」
野菊崎が苦笑いしながら、ミナこの顔を直視出来ないほどビビっている中で、畑中と祈里は呆然と見つめていた。
「(野菊崎ちゃん、ご愁傷様…。だからあれほど腐女子トークは謹んだほうがって言ったのに…)」
「(ミナこに汚れていると疑われて退学よりはマシだよ、のぎちゃん…。これで何十人目かのミナこによる魔法少女入隊だけど、のぎちゃんの腐女子力ならきっと、9割近くの入隊者みたいに放棄せず、ちゃんと成し遂げられるって信じてるから…)」
Bパート ミナこは腐女子に至らず、故に腐女子系魔法少女を創造編
こうしてミナこによる野菊崎の新ジャンル・腐女子系魔法少女の創造計画が早速放課後から教室にてスタートした。
まずミナこは野菊崎から腐女子とは何たるかを教わり直し、次にミナこが魔法開発部を呼び寄せて装飾、完成後は人々のために試験的に正義の活動を行うというスタンスで開始された。
早速放課後、内心嫌ながらもミナこにもやっぱり腐女子の真髄を熱弁してしまった野菊崎は、理解したと思われるミナこによってプランが進められる。
「まず衣装だぞぉ野菊崎。君から腐女子等女性的嗜好の内容についてはよーく分かった。だから君は魔法少女になったら、主に困っている同じ腐女子の人々を助けるのに長けるようになるだろう」
「いやその、腐女子限定で困ってる時って、どうゆうシチュエーションなんですか…」
「それは君の経験と足で確かめてみろ!! さ、この用意された物を着るんだ。衣装は私ミナこと似た国際標準安全に特化した魔法装備だが、所々君様に施してある」
野菊崎用に用意された魔法少女服は、ミナこと同じようなフリフリ女児服にスカイブルーを基調とした上着は防弾チョッキだが、特に違う点はジェットパックが無いことだが、代わりにミナこのガードマンが厳重に閉じたアタッシュケースから、何やら怪しげな存在を用意し出した。
「空を飛ぶには君は主に維持と練習が足りんからね。でも私のタクミステッキみたいな護身武器は必要だ。そこで野菊崎には試作魔法装備を貸し出してやる…フフフ」
「そ、そんな厳重なものなんて…」
そう思っていると、ケースから現れたのは片手で握る全長70センチ程のUの字型磁石『ヤマナシ×オチナシ』だった。
片方ずつ赤と青に別れた普通の大きな磁石のようだが、よく見ると先端に赤に攻め、青に受けと書いていることで、野菊崎は即座にこの道具の意味を痛感した。
「み、ミナこさんっ、も、ももももしかしてこの道具、攻めと受けを発生させてくっつける武器とかそうゆうのですかぁ!?」
「実に惜しいぞ野菊崎君っ!! そのU字型はまず分離して攻め受け狙うターゲット2つに発射して動きを捉えたら、発射すると相対の攻め受けエネルギーを吸収。次にまたU字型にくっつけると攻め受けは一つの力となって、やってくる敵に強力なエネルギーを放つのだ!! 対象物は人でも物でもバランスが強弱あるが何でもあり!! 終わったら電磁魔力スイッチを止めると効果は終わる他、魔法少女の際は背中に逆U字型でくっつければ、高速移動も可能だぞ!!」
「な、なるほどです!! これなら(巷のホモいペア男子を活用…でもどうゆう形の力になるんだろう?)困っている腐女子や人達を助けられそうです!!」
「それはよかったな!! 私はその試作魔法の使い道がはっきり出来なかったからな。これで自主的に正義を行えば評価してやるぞ!! 頑張って私みたいなプロの魔法少女を目指すのだな!!!」
「は、はいっっっ!!! 準備が整い次第、活動しますぅ!!!」
野菊崎は大喜びだった。何せ腐女子力をパワーとして戦えるのである。これで両親からも腐女子活動していても怒られる筋合いはない。
野菊崎は薪島重工に送ってもらった後、自宅にて装備し早速パトロールに出かけることとする。
ミナこからお古として貰った『不幸探知魔弾・ふこたま』という20センチの水晶球体型液晶GPSの困り人サーチで、直接被害にあっている人達を特定し助けるためである。
「…でもお古ってどうゆうこと? ミナこが人助けって逆に余り聞かない…ま、まさかね、ひ、人助けしないからって?」
薪島重工が厳重に家まで送ったため、両親も当然知り驚いていた。
「真琴ぉ、ご、ご飯までには帰るのよー…」
「は、はーいっ! 人助けがサーチ出来たら、薪島重工が報酬くれるって言ってたし!!」
野菊崎は早速電磁魔法の力で低空高速移動すると、早速困っている人をサーチし接近した。
様子をうかがうと、どうやら公園の近くにて原付きに乗った男におばあさんがバッグをひったくられて、既に犯人は遠くの道路へ走り去りかけていた。
「あああひったくりじゃあ…」
「おばあちゃん大丈夫!? あの正面の人影が原付きバイクで逃げた人ね!! ふこたまでマーキングしてるんだから逃げられないし許さないんだから!! 早速力を放つために攻め受けエネルギーを…」
最初でもあるため野菊崎は迷っており、取り敢えず物でもオッケーなので適当に側にあった公園の木と土にめがけて、発射した。
(ピカアアアアアアアアアアアアアンンンンン!!!!!」
「ゴゴゴゴゴ…バシュバシュ!!! ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!)
(へにゃあっ、もりもりっっっ!!!)
「ってええええええええええええええええええっっっっっっっっっ!!?? なんか木が垂れ下がってしなびちゃったし、付近の土も盛り上がっちゃった!? ハッ!?でもこれは木と土が見つめ合ってやおってるようにも見える構図!! っておいおいそんなの後々!! ヤマナシ×オチナシの先端が光って溜まってるってことは、放てるのね!! よーし、おばあちゃん待ってて! 今バッグ取り戻すから!! 待てええええええええええええ!!!」
「うぎゃあああああああなんじゃあ!? あの娘さんはあ!! 元気な樹木が枯れよったぞお? あああ悪魔じゃあ!!!」
おばあさんがビビって逃げ出したのも知らずに、野菊崎は高速移動しながら、ひったくった原付に追い付き、そして素早く横に平行走行しながら構えた。
「観念しなさい、ひったくり!! 止まって返さないとブッパなつわよおおお!!!」
「なんでえ!? そんな磁石で俺とタメはろうってかあ!!???」
「仕方ないわね!! ミナこさんの薪島重工の魔法だから安全に吹き飛ばせるはず…! いけえええええええええええ!!!!!!『ツリー&マウント』!!!!!!!」
(きいいいいいいいいいいいいいいいいいいんんん、ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!)
野菊崎は目を覚ますと病院のベッドで寝込んでいた。服装は魔法少女時のまま。
そして側には薪島重工のガードマン。そして辺りには『薪島重工魔法病院』と書かれていた。
「野菊崎様、打撲と気絶だけとはご無事で何よりです! ご説明が遅れてしまい申し訳ございません、あのヤマナシ×オチナシは相性が良い上に、更に物質や精神的な威力が強すぎると見受けられる物を吸い寄せると、放つエネルギーが…」
「ぎゃあああああああああああ!!! わ、私、木一本分と土多量を物量分にぶっぱなしたってことですかあ!!?? ひいいいいいい!!!!! いやああああ!!!」
「ご安心を野菊崎様、ひったくりされたバッグは無事持ち主へお返ししました。おばあさんは『ああ良かった、さっき見た悪魔の少女は幻じゃったか…』と喜ばれておりまして…」
「いやいやいや!! あのひったくり犯は!? ゼロ距離放ってしまったあの!!!」
「…」
「そんな無表情で見つめないでええええええええええ!!!!????」
結局まともな回答を得られぬまま、野菊崎は翌日からも魔法腐少女・マコとを再開した。
だが、ミナこがしつこく魔法少女とは何かを伝授してきたり、勉強に身が入らないとして、しばらく自分の部屋に放置することになってしまう。
「野菊崎!! 魔法少女であるもの、腐女子と魔法少女の積み重なってきた歴史をどうすれば中和できるかだな…」
「…ミナこ先生…やっぱり私には魔法少女は無理です…ふ、普通の女の子に戻ります…」
「んー君もダメだったか…クラスの中でも特に濃厚なオタ属性だから期待はしたんだがなあ…でも戻っても腐女子だろ、普通じゃないじゃないか」
「…」
「したい時にでもいいから、もうしばらく続けてご覧なさい」
「(マジの先生かアンタ!!)」
このまま野菊崎も魔法少女から降りることになるだろうと自覚しつつあったある日だった。
それはあの畑中が個人的に、別の中学校の友達2人と隣の都市である薪父市にあるアニメショップ・アニメイトリクスにて買い物をしている最中にトラブルが起きて、自宅で寝そべっている野菊崎に連絡をかけたことだった。
「え、畑中ちゃんなにい!!?? 買い物中にカップリングをかけて他の中学の友人二人が喧嘩してるから、止めに入ってだってえ!? まいったなあ…」
「お願いっっっ!! …野菊崎は正義のしかも腐女子特化の魔法少女でしょお…野菊崎ならうまく止められるかと思って、…でも気をつけて、言い争っている二人、お互い柔道で県内トップクラスで対戦時はライバル同士だから、万が一カップリング意見を懸けて、店内で試合なんか始めたら…」
「ひいいいいこわっっっ!! …なんちゅう友達よ!? 彼氏いたら締め潰しちゃいそうね…わ、分かった!!分かったわよ!! 対策考えてこれからそっちに変身して向かうからね!! …ハア、どーしよ…」
野菊崎は部屋の隅に専用収納ボックスで置かれた、すこし埃被った魔法少女装備を見つめる。
「…問題は撃ち放つ魔法よ。また自分まで吹き飛んで薪島に助けられても詳細不明、しかも畑中まで巻き込まれて私の視界からいなくなったら…落ち着いて、行き過ぎない攻め受けを考えて吸収すれば…!!」
そう言って取り敢えず魔法少女に装備変身した野菊崎。そのまま外に出て、吸収するカップリング考えていると、ふと脳裏にミナこが学校で語っていた、ヤマナシ×オチナシの補足について思い出す。
「そうだ野菊崎よ、君に渡した電磁魔法のヤマナシ×オチナシだが、それは何も攻め受けエネルギーを威力的に弾き飛ばすだけのシロモノじゃない、精神直電モードにスイッチすれば、周りに危害を加えること無く敵を鎮圧も可能なのだよ」
「そうなんですか…あ、それならもうしばらくは魔法腐少女でも良いかなって思えました、ハイ!」
「…ああ、そう言えばミナこがそんなことも…ならよおし、いっちょ腐女子界のヒロインとして立ち上がってみますか!!」
そして野菊崎が現場の薪父市のアニメイトリクスに変身済みでたどり着くと、入り口からでも騒ぎ声が聞こえていた。
「○○きゅんは☓☓とじゃないとだめんだよお!!」
「だから○○は☓☓とはどう見ても攻め×攻めでダメだっつてんだよ!!」
想像以上に危うさを感じて野菊崎はヤマナシ×オチナシを分離装備してまず傍観する。
店内には本やグッズがところ狭しとある中で、少し広い場所にがっしりした体格気味で姫系コスを着ている女性と、相手の身長が2メートルはあるかといえる程の身長のゴスロリ衣装の女性が、互いの襟元をつかみ合って、今にもどちらかが一本投げ飛ばしそうな鬼気迫る状態にいた。姫系でも身長は1.8メートルはあるので、その中にぽつんと小さく畑中がいるのである。
店員や周りが止めようにも、威圧的な女性二人にたじろいでおり、取りあえず野菊崎はこっそり回り込み入って、畑中にヒソヒソ話を伺った。
「普段は仲がいいのよ…でも今日は始めてアニメショップに一緒に誘ったら、普段の道場でのカップリング論争が勃発しちゃって…」
「それって柔道の割合多過ぎて危険と思わなかったわけえ!? プロレスリング論争よ!! はてさてどうするかな…。あんな屈伸な攻め受けを争う二人…」
とりあえず野菊崎はその辺に散らばる道具『本と本棚』を吸収して、精神直電モードにしてこっそり飛ばしたが、結果は全く反応が無かった。
(ビリイイイイイイインンンンンンン!!! バチ)
「くっっ!? 静電気が!!」
「ほら見ろ! イーリヤット君の攻め電撃がアンタを拒んだのよ!!」
「なんですってえええええええ!!! 投げられたいんかああああああああああ!!!」
「(何よこれえ…本と本棚の精神じゃあ、全然響かない普通の関係だからってことお?…)」
そこで野菊崎は一旦外に飛び出し、腐女子二人を内面からノックアウトできるカップリングを急いで探すと、ある意味かなり効果が期待できる代物を公園で見つけてしまう。
「オラ山西!! 俺に焼きそばパン買ってこいって言ってんだろ」
「分かったよ秋里君…でももう僕をからかわないで…お願い…」
高校生男子のいじめ現場を目撃した野菊崎は、不謹慎だが彼らの負のエネルギーが力になれると考え、吸収後は警察にいじめ現場を通報する代償として、ヤマナシ×オチナシでいじめ関係を吸収する。
「(ごめんなさいね…吸収したらすぐ、ちゃんと通報して山西さんは助けるからね…!!)」
「…ったく何時まで襟首掴んでんだよ! いくらしたゴシックだと思ってんだ!?」
「アンタこそ似合わねえんだよ!! お前みたいなデカイゴスロリがいるか!!!」
「二人共っっっっっっ!!! 醜いのは不恰好な服だけにしなさいっ大人しくしなさいっっっっっ!!! 喰らえええええ!!! 『服従関係@直電』ををををおをを!!!!」
(キイイイイイイイイイイイイイイイン…バチバチバチバチバチバチバチバチ!!!!!!!!!!)
「んぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!」
「はうわああああああああああああああああ!!!!!!!」
そしてアニメショップの外から静かにビームが店内に直進し、つかみ合う女性二人を包み込むと、二人はその場に倒れた。
「は、畑中ちゃん、大丈夫!? お店の皆さんも…!?」
「けんか周辺のものが崩れただけみたい…。それより倒れた二人は…」
すると倒れた二人は無機質に立ち上がると、途端に奇妙で落ち着いた行動に出る。
「うううううーーーーっっ、ご、ごめんなさああいっっっっ…!!! 貴女に姫系の癖してなんて貴女セルフのカップリングをバカにして…」
「おほほほほほほほほほっっっっ!!!! ご理解いただけたようね!! さあ黒豚ゴスちゃんよ!! ちょうど良い具合にチョーカーが首輪になるから、私の犬とおなり…」
(のっしのっしのっし…ガラッ、ピーンポーン)
そう言って柔道女子トップで大きい姫系とゴスロリの2人は、ゴスが四つん這いで這い歩き、姫はそれを引き連れてアニメショップを出てしまい、慌てて畑中は後を追いかけ出した。
「ええええええっっっっっ!? ちょっと二人ともどこへーーーーーー!!??? って、野菊崎ちゃん!? 一体2人に何をしたっていうの!?」
「あ、い、いいいいやああああそ、そのおおおおお……解決策の吸収排出に問題があったみたいでしてハイ…警察呼んであげたけど、いじめっ子といじめられっ子のパシリを強力そうなカップリングとして吸収して、あの喧嘩2人に体内浸透でぶっかけたらこんな結果に…」
「ってことは、これからあの2人は大人しくなってくれるのねええええ!!! ありがとう野菊崎ちゃーーーーん!!!!! 例え上下関係があってもこれで2人は大人しくなってくれるのね!!!」
「え、これで円満解決エンドってこと!? …にしても何て光景…不思議の国から縮図を間違えて具現化したみたいな光景が…」
こうして、2度目の腐女子大暴れ事件は解決したどころか、2人を服従関係として納得させてしまうという解決策で、見事野菊崎は魔法腐少女らしいサブカル的な解決策で難を乗り越えた。
その後、野菊崎はミナこに魔法少女認定された魔法少女弟子としては、珍しく不定期持続する数少ない存在として維持するようになる。
だが、それ故にミナこの提供するトレーニングメニューや魔法開発に携わることになってしまい、学校に出てくる頻度が著しく低下することも少なくなかった。
「おはよう。あれ、畑中ちゃん今日は1人なの?」
「祈里ちゃんおはよう!! ああ野菊崎ちゃんは昨日ミナこさんに薪島魔法開発部に誘われて、帰ってきたら、身体中の水分が砂糖状になってしまってたってショックを受けて、今日は寝込んでるって連絡が入ったの」
「(あのスイート&スウェットが…ご愁傷様です、野菊崎ちゃん…)」
こうしてこの薪母市に新たな魔法少女が誕生した!!
頑張れ、魔法腐少女の野菊崎マコと!! 目指すはポストミナこだ!!!
魔法使えない少女?ミナこ! 第七話・完
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