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((12話分の)5話 )魔法少女VS声優グループ! 意地をかけたアドリブ対決!!(前半)

・連載公式サイト(http://minakonotmahou.jimdo.com/)

 連載詳細は公式サイトに随時掲載致しますので、何卒よろしくお願いいたします。

(※今回は前半となります。後半もお楽しみに!)

(※誠に申し訳ございませんが、一部の説明描写文を修正致しました)

 魔法使えない少女? ミナこ!



((12話分の)5話 )魔法少女VS声優グループ! 意地をかけたアドリブ対決!!(前半)

挿絵(By みてみん)


Aパート ミナこの魔法少女アニメ・介入計画



 この日本では今、空前の魔法少女ブームである。


 一つは女児向けアニメにおいて、長く続いてきた変身ヒロイン、魔法少女と呼ばれる分類が四半世紀近くにも渡ってジャンルとして続いてきた事により、親から子へ、子から孫へと上手く世代交代が女子層とオタク層に継続出来たことで、様々な二次元表現業界がのろしを挙げ出したこと。


 男児向けのカッコイイ系も当然あるが、女児を上手く採り入れられなかったどころか、逆に女児向けアニメを親に内緒でこっそり見て興奮する少年が増したことも一理あるだろう。

 お陰で、特撮戦隊ヒーローの最新作にてついに最近は、そんなこっそり少年層もゲットしようと、5人戦隊が女性3人、しかもリーダーレッドも女性、敵幹部も女性がかなりの割合を占めし、男性はイケメン以外は皆雑魚兵のみという、シリーズ最強の迷走まで引き起こしてしまう。


『正義と世界平和はカワイイによって起こされる!!』という75年に大ブームを産んだ魔法少女アニメ【魔女っ子末っ子ひ孫っ子!!!】で決め台詞として使われた、最早説明不要な程の代名詞があるくらいだ。


 もう一つは、薪島重工•魔法少女ミナこによる。


 以上が文部経済産業省による、メディアコンテンツ白書からの【マジカル☆じゃぱん! 計画】からの抜粋である。

そして、ミナこの業績が一言で全て片付く程、ミナこの存在は魔法少女文化にとって、歴史以上、最早握っているそのものと言えよう。

 また、薪島重工は魔法少女のマンガ•アニメ•ゲーム等の制作する傾向が強い組織は【魔法の支援金】として、大きな支援を行っていることも、ていうかそれが政府は公式的にはしたくないであろう大多数の理由だ。

 これからお話しするのは、そんな彼女の正義とも悪とも見受けられる一例である。



「諸君ら、薪島重工•魔法少女管理営業部の者達よ。今月の回収する女児向け、魔法少女題材等、値する版権作品についての目星は立てておろうかな?…」

 今月初めも薪島重工•超強都•薪母市本部•大会議室の一室では、ミナこの挨拶がこだまする。

巨大なドーナツ型の円形会議机には、部屋中央奥に魔法少女形態のミナこ、重役達はコワモテながらピンク色のスーツやピンク色の防護服にうさ耳と、ふざけているとしか思えないメンツだが、これが薪島重工では正装であり、魔法に特務する物達の外世界の常識を狂わせる為のユニフォームなのである。

「ミナこ様、先月申し立てた回収するアニメ作品とまだ未回収ではありますが、そのアニメ製作会社の件についてを報告致します…」

「ふふっ! クリス君よ、会社その物の回収はその会社の自由競争を潰しやすいから、基本は見守る前提と言ったではないか…」

「ミナこ様直々のお言葉!! 申し訳ございません…何と言う懐の広さでしょう! さて、先月ターゲットにし、つい4日前に話をつけてきたアニメ作品【ベンチャーガールズ 世界よ、これが日本の魔法少女だ!!】を2ヶ月前から製作放送する、アニメ会社•ヤボウピクチャーズとメインスポンサーで大手玩具会社•バタイユとの3社交渉の結果、ベンチャーガールズの版権を見事入手致しました!!」

(おおお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっ!!!!)


 だが、ミナこの対応は先を見据えながらやや冷ややかでいた。

「んーっ……。実を言うとだな、私はその弁当、いや、ベンチャーとやらを視聴確認しとらんのだ。何せ自分の魔法開発とアニメは季刊毎に平均100本! その内魔法少女ものだと60本近くはあるのだぞ!! んでもって、魔法少女が後付けなのが気に入らんのだ!!

 大体貴様らも知っているだろう、今まで回収した作品によってはいくら資金を与えた所で、ネタ切れと言ってドロップアウトする作品、中には人気は落ちても我々からの資金はあるからと、他のスポンサーが降りても懲りずに何百話と続ける、あえて資金以外放置した腐った賞味期限切れまで存在している。どちらでもないんだな!?」

「まあまあミナこ様落ち着いてください…。確かに今作の回収は我々から申し出たものです。しかし、我々管理営業部の調査によると今作は所謂オタク層からの人気と支持がここ数週で急速に伸びており、我々が苦手とするビッグブラザー•大きなお友達へのミナこ様の思想普及には今、正にもってこいなのです!」

そう上層部の一人が説明すると、ミナこに版権回収したベンチャーガールズの概要書類を提出した。

 以下がその書類を内容である。



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●第53回・魔法少女作品回収要件について


株式会社 薪島重工  

魔法少女管理営業部・マジカルリーダー クリス・アンデルグリム


我が社、そして日本の魔法少女文化向上の為、第53回目となるアニメ作品版権の検討いたし、下記のとおり立案いたしましたので提出いたします。


●記.


・アニメ作品名.ベンチャーガールズ 世界よ、これが日本の魔法少女だ!!


・制作会社.株式会社 ヤボウピクチャーズ


・スポンサー(交渉後).株式会社 薪島重工(95%) 株式会社 バタイユ(3.4%) 株式会社 がんもどき製菓(1.6%)



●概要.ベンチャーガールズ 世界よ、これが日本の魔法少女だ!! について


この書類が提出される時期の2ヶ月半前から放送がスタートし、現在は第10話まで制作放送。

魔法少女ものと言うよりは、戦隊ヒーロー5人色と魔法少女的なヒロイン要素を足したものですが、なんといっても特徴は、声優界で人気のある5人の声優大御所『ソフィアーファイズ』が5人のメインヒロインを演じているという非常に単純かつ安直な理由で投資するビッグブラザーこと、大きなお友達に人気がございます。


しかし見過ごせないのが、その単純な人気構図であり、どうやら今作の監督かつヤボウピクチャーズの白熊南極しろくま・なんきょく監督の人脈と信頼による大御所全員集合として、大きな注目が集まっていることが分かりました。


また今作は朝の女児向け前提ではありますが、高い年齢層からの人気の影響で試聴する子供も増えており、中には「あたちもベンチャーガールズみたいにおトイレがまんするのー!」と児童のトイレ教育、肛門筋の強化にも役立っております。


以下にベンチャーガールズのあらすじと、登場ヒロインを紹介いたしますので、是非ご確認下さい。



●あらすじ.


地球、しかもご都合よく日本へ宇宙から人類の愛を奪うために襲来した宇宙人集団『カッパ・ド・ギア』が、日々日本で平穏な生活を送る人々に潜みながら、悪行をこなし続けていた!


それに対向するため、本場魔法研究の栄えるハンガリーから日本に定住するマーガリン博士は、古代から伝わる5つのマテリアル(赤、青、黄、緑、ピンク)のドラゴン5匹の唯一残る尿石を使用し、人材は5人の日本人少女をオーディションで選別した。

こうして彼女らは、魔法使い見習い・ベンチャーガールズとして、若い早期から永久雇用をほぼ保証する仕事に勤めることになる!!


魔法が持てるようになる変身を持つも、変身する度にスーツの食い込みと副作用で尿意を催すヒロイン達、ベンガ―レッド(伊月マナ いづき・まな)ベンガ―ブルー(淀崎愛星 よどざき・あいせい)ベンガ―イエロー(沢庵里江子 たくあん・りえこ)ベンガ―グリーン(緑色摩陀羅 りょくしょく・まだら)ベンガ―ピンク(百種すね(ももたね・すね)はそれを乗り越えながら、今日もトイレに近い戦闘現場での活躍に務めるのだった!!!



●主役声優・キャラクター紹介.



・栗宮理沙(くりみや りさ・ベンガ―レッド・主役ヒロイン)

19歳。幼女ボイスに定評のある人気声優だが、レッドは高身長・大人っぽいのに

監督のナンセンスで配役。声がミスマッチという評判を我慢して演技している。


=ベンガ―レッド(伊月マナ いづきまな)

魔法少女隊・ベンチャーガールズでリーダーを務める10歳。

しかし見た目と身長が高く、30歳説が根強い。

メンバーの中では変身中の尿意が最も耐えやすい性質を持つ。


・中田英利(なかた えり・ベンガ―ブルー)

=演技の巧さに定評がある人気声優だが、演じる度にキャラにドはまりして

最低1周間は抜けない。しかもベンガ―ブルーは、悲劇役が多いので、仕事にも支障が出ている。


=ベンガ―ブルー(淀崎愛星 よどざき・あいせい)

24時間365日、この世界の死生観について考えている真面目だが暗い子。

変身中の尿意が最も早く、トイレが近い戦闘場所でないと変身すら拒む。

演じる中田は態々便意を2日我慢して演じているというこだわりっぷり。


・積善院ミナ(しゃくぜんいん みな・ベンガ―イエロー)

=23歳。5人の中では平均的な人気声優だが、貧乏で借金を背負っているため、

油断すると収録スタジオに借金取りが乱入してくることもある故に、

収録し直しが多い。その為常に背後を気にしながら、最新の注意で仕事に励む

魔法少女ミナこと名前が似てるので、薪島家の隠し子説がある。


=ベンガ―イエロー(沢庵里江子 たくあん・りえこ)

カレーの福神漬けが大好きな元気っ子。しかも無着色の黄茶色でないといけないこだわりっぷり。

ちなみにらっきょは否定派。なにが嫌なのだろうか。

変身中の尿意は福神漬けを食べ続ければ回避できる特殊能力で戦闘を維持する。


・喜久吉あゆみ(きくよし あゆみ・ベンガ―グリーン)

=自称18歳だが、声優界では別名でモノクロアニメの頃から同じ容姿を見かけた

という噂が多数あり、更に顔以外の皮膚にものすごいシワが寄っているため、

相当の苦労をして現役維持をしていると伺える。


=ベンガ―グリーン(緑色摩陀羅 りょくしょく・まだら)

植物を育て、それがバラであろうと、サボテンであろうと全て収穫し食べるエコなおとなしい子。

変身中の尿意が最も我慢できる体質だが、植物であれば雑草すら踏むのを拒むため、

草原では戦えない。


・我賀物彰(わがもの あきら・ベンガ―ピンク)

=おっさんで49歳。若いころは美少年で声が女性も出来る七色と

好評だったが、現在は容姿はおっさんで声だけ七色のままと超ミスマッチになってしまう。

だがその声も油断をすると地声のハスキーに変わってしまう。


=ベンガ―ピンク(百種すね ももたね すね)

最年少8歳の少女。常にオムツを履いている。

前世の玩具会社の社長だった記憶がそのままらしく、常に株価を気にする。

最近あごひげとすね毛が生えるのが悩みらしい。


・監督しろくま (白熊南極・しろくまなんきょく)

アニメ会社・ヤボウピクチャーズの監督。55歳で後頭部が薄い中年太りでメガネちょび髭のおっさん。

非常に暑がりらしく、藍色のスク水に似たタンクトップと半ズボンを履いている。


監督センスが無いが続けている崖っぷち監督だが、ベンチャーガールズはミナこ率いる薪島重工にだけは盗られたくないとスポンサーにも反対を持ちかけたが結局回収される。

その後は出演者と団結して、ミナこを如何にベンチャーガールズから立ち退いでもらうかを散策している様子が伺えるため、注意が必要。



以上



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 ミナこは一通り速読で確認すると、納得した表情で書類を机に置いた。

「…確かに良くやった、そして良く見つけたよ、上層部の君たちは…。だがなあ!!!」

「!?」

 会議室のミナこ以外の一同は驚きを隠せないでいた。

「…気が付かなかったのか!? これは! この作品のキモの人気はなあ!! 純粋な人気じゃなくって、ネタ!! 声優界でネタ的な意味で人気の大御所なんだよ!!! だから売上にはそれほど響かんし真面目に視聴されにくいッッッ!!! このオタク学勉強不足うううううううううううううううううううう!!!!!」

 会議室はどよんだ。そんなどう見ても落ちるか頓挫であろう計画の空気の中で、ミナこは決断を下さす。

「…女児向け特化の私でも気付く程とは情けない…まあでも、純粋な人気の高いメンバーも中にはちゃんといるっ! いやまて!! それどころか俄然やる気が出てきたぞ―!! ようし!! クリス、このアニメの脚本は現在何話まで出来てるっっっ!!??」

「えー…16話まで出来ております…」

「17話だ、17話から私を出せ…それもこの手の戦隊ヒロインではお馴染みの、最強助っ人ハイカラーとして!!!」



Bパート ベンチャーガールズ・第17話・敵か味方か!? ベンガ―・プラチナブロンド登場!!



 都内にひっそり存在するベンチャーガールズのアフレコ現場は荒れに荒れていた。

いつも和気あいあい、楽しく過ごしている収録待合室がその日、第17話の収録では殺伐とした空気となっているのには、ここにスポンサー主である魔法少女が訪れるためであった。

 5人のネタ大御所声優の中から代表として、栗宮が白熊監督に話を持ちかける。


「監督っ!! いいんですか!? このまま魔法使えない少女と陰で呼ばれる、あの女をそのまま通してしまうなんて!!」

「あ~栗宮君、今日もセクスィ~な見た目にそぐわないロリボイスで素敵だねえ…。ああ、そうそう、その通りだよ。だが相手は超特大資本の持ち主。会社の個性は認めてもらって回収回避はされたが、作品その物は9割近くを握りしめておる…。

 となると、もう我々の作品制作における個性は半殺しにされたも同然と言える。

 分かっているだろう、アニメの各話数のあらすじ、展開、脚本、絵コンテに至るまで、全て大元スポンサーが確認し、特に薪島重工は気に入らない箇所をワザワザ専門の製作進行やアニメーターを呼んで修正する程だ。もうわしらに残されたのは…なあ、年の近い我画物よお…」


 すると、ピンクのセーターを着たむしろアイドルグループのマネージャーのような印象の濃い男がカッコ良く追言及するが、口調はカマ調、声は得意の裏声幼女ボイスであった。

「わかる、分かるぞ監督う!! そう!! アフレコまで来たからには、最後の手段はただ一つ!! 収録を納品ギリギリに行って、アドリブを行なうまでだよなあ、みんなあ!!」

 更に、側で待機していた残り3人が反応する。


 ブルー役こと中田は憂鬱そうな表情で、聖書を読んでいる途中から顔を上げ、イエロー役の積善院は分厚い手帳で、金額計算に励む最中驚くように首を向き、グリーン役の喜久吉は両腕の物凄いシワを気にせず、お肌の手入れをしている途中で振り向いた。

 この奇妙な監督含む6人の光景は、声優通でなくとも奇妙としか言いようがない集団で、薪島の営業部はリサーチ不足にも程がある内容であった。


「……あ、アドリブですかあ……以前のロボットアニメのヒロイン役では酸欠になるほどしましたが、今は心も体も役作りの為に身が透き通るような思いなので難しい……ああ主よ!!」

「んっ、あたしはだいじょーぶだよ!! 更に借金取りが現場に来れば、ヤバイぐらいリアリティショーになっちゃうねっ!!!」

「んもお、積善院ちゃんったら!! 昔の収録はテープが貴重で一発本番だったんだから、今は幸せなのよー?」

 3人が取り敢えず同意したことを確認すると、早速監督を中心に5人のネタ大御所声優が集まって、薪島の関係者がいない中で作戦を説明した。


「よいかみんな、今回17話は本来今日収録だが、スポンサーには嘘をつきずらして4日半後の納品3時間前にしてもらったから、所謂裏収録になる。今日はアテレコで新登場するベンガー•プラチナブロンドこと、魔法使えない少女のミナこを遠回しに否定する演技を入れてもらいたい。

 今はいないが、あの傲慢な魔法少女の悪どさはみんなテレビなどで知っているだろう?

そしてミナこの収録こと、4日半後の放送納品3時間前には台本通り声を当てるが、それは薪島•ミナこ用の収録用ダミーとなるのだ。

 それを今日収録のアテレコにミナこの声のみを抜き足して納品っ!! 放送してからしか分からぬからな。

 そして今日のアテレコでは、遠回しに聞き返さないと分かりにくいような、否定的な演技をすることによって、視聴者からプラチナブロンドの印象を悪くし、次以降登場しにくくするのだ!! 絶対遅刻は厳禁だぞ!!」

 5人は全員合わせてアンバランスな返答を行なう。

「了解しました!…!!! スポンサー、魔法使えない少女のミナこに負けるなー!! おーーーーー!…!!!」



 こうして、遂にギリギリで納品3時間前の収録本番が訪れた。

 時間には、当然ミナこが余裕で駆けつけており、作戦決行する6人は緊張しながら本番に移ろうとしていた。

 ミナこは声だけの収録でもしっかり魔法少女形態で、これから反れまくることも知らずに、台本を収録開始ギリギリまで凝視している。

「…白熊監督とやら、プロのくせして収録が納品ギリギリとは、プロの名に恥じることではないのかね? 私の新登場するキャラクター表現に全力を注いでいたとは聞いてはいるが…」

「…はっ、ミナこ様には誠に申し訳ございません…。アニメ製作とはこの様に常日頃、忙しい環境でして、返す言葉もありません…(がはは!! 返す言葉は4日半前に収録済じゃからな!!)本日は上手く演じれるよう、お祈り致しております」

「うむうむ、お互い素晴らしい魔法少女文化を構築する仲だ、私も全力を二次元に注ごうではないか、行くぞお!!!」


 そして主役5人の役以外は本番の収録が始まった。

 5人はダミーの収録と言うこともあってか、少し気が抜けてはいたが、それでも声を出しながら、先駆けたアテレコ収録版シーンと脳内で比較しながらしめしめと収録を続けていく。


「さいほ…いや、本番収録開始しまーす」

(どやどやどやどや…)

音響監督の合図を元に、大勢の声を収録する人達が収録室へと入っていった。


 17話はミナこ演じる新魔法少女キャラクター『マキシー•マキシビッチ•ナコ』こと、ベンガー•プラチナブロンドが博士に招待されて来日し、それを狙うカッパ•ド•ギアから、スーパーのお惣菜の蓋型怪人•フタ•インザ•スカイと空港にて戦闘を行ない、プラチナブロンドが大活躍する展開である。

「始めまして!! 私が伊月マナことベンガーレッド!! あなたがニューシーランド公国から博士に託されてやってきたナコね!」

「そうよ! 日本の魔法少女文化に憧れてだけじゃないわ!! 正義があたしを呼んでいるからよ!!」


 栗宮はすり替える収録済みのアフレコ版を思い出し、吹きそうになる。

「始めまして!! 私が伊月マナことベンガーレッド!! あなたが母国ニューシーランド公国で命乞いをする怪人総勢40名近くを笑いながら天へ浄化する魔法に定評のある、エクソシスト•ナコね!!」



 続いて、ブルーこと淀崎の空港エントランスでの大幅な変更アフレコの箇所が近づく。

「…ナコさん、まさかあの人が人間に化けた怪人だと言うのですか?…あれはどう見てもマジメな航空警察官の人だと思いますよォ…」

「それは優秀な怪人だからよ、みて見なさい、ほら、目の前のキャビンアテンダントさんの下半身を覗いて触ろうとしているでしょ? あなた達、日本で本当にカッパ•ド•ギアの怪人達を見破ってきたってわけ!?」

「あっ、男の人が奥へ走り出しました…!」


「…ナコさん、まさかあの航空警察官の男の人の隣にいる航空警察犬が化けた怪人だと言うのですか? …あれはどう見ても側の男の航空警察官の手信号を元に、キャビンアテンダントさんの下でマジメに周辺の匂いをかいでいるようにしか見えないのですが…」

「それは優秀な怪人だからよ、みて見なさい、ほら、目の前のキャビンアテンダントさんの下半身を覗いて触ろうとしているでしょ? あなた達、日本で本当にカッパ•ド•ギアの怪人達を見破ってきたってわけ!?」

「あっ、男の人と警察犬が奥へ走って行きました…無線で荷物検査に向かうと叫んでいます…」

 このシーンは本来、男の正体が怪人であり、警察犬が男を怪しんでいていることで、追いかけるシーンであっているのだが、男が怪人に変わる瞬間シーンがカットされいきなり登場へと、収録後修正されるので、実質ナコの推理は警察犬と男を無駄に疑っただけで、意味をなさなくなってしまう。



 更にイエローこと積善院のセリフにもそれが響いていた。

「ナコさん! 怪人が外の航空機が飛び交う領地の中で周囲の航空機を破壊できるという、人質的威嚇をしていると言う連絡が、博士と協力している航空警備の方から連絡が入ったよ!!」

「なんてことなの!! ついあなた達の説教に夢中で、見破れなかったせいだわ!! こうしては要られませんっっ!!! ベンチャーガールズの5人の皆さん、私もプラチナブロンドに変身して、皆さんと共に戦いますわ!! さあ早く!!!」

「流石海外でトップの魔法少女の方ね!! 尊敬しちゃいますう!!」


「ナコさん! キャビンアテンダントの側の警察犬を疑った博士にも聞こえる通信のせいで、ついさっき誤って警察犬を緊急捜査してたら、怪人が航空機が飛び交う領地の中で周囲の航空機を破壊できるという、人質的威嚇を始めてたって連絡が、博士と協力している航空警備の方から入ったよ!!」

「なんてことなの!! ついあなた達の説教に夢中で、見破れなかったせいだわ!! こうしては要られませんっっ!!! ベンチャーガールズの5人の皆さん、私もプラチナブロンドに変身して、皆さんと共に戦いますわ!! さあ早く!!!」

「え、ちょっと、人のせいにしないでくれます?」



 そこから怪人との戦闘となる後半に入ると、喜久吉ことグリーンのセリフとミナこことプラチナブロンドの会話にて、如何にプラチナブロンドがクズであるか伺える流れが待ち構えていた。

「ベンチャーマジーーーーーッック!!! ベンガー•プラチナブロンドーーーっっっ!!! 悪い奴、取り分け偽善者は許さないんだから!!! 参上っっっっっ!!!」

「ナコさん!! ちょうど良い時に変身してくださいました。さあ!! 早くトドメを!! 私達五人のコンパクトの5連反射の最後にナコさんのコンパクトが反射すれば、威力は百万倍ですわーーー!!!」

「分かったわ!! アドバイスありがとう!!! 日本の魔法少女もまだまだ捨てたもんじゃないわね!!! プラチナブロンド•コーーーーーンパクトVっっっっっ!!!!! 射出っっっ!!!!!」


「ぐぎゃああああああああ!!! 俺の得意の上蓋が、長時間レンジに入れた時のようにベコベコになっていくう〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっ……」

「ベンチャーマジーーーーーッック!!! ベンガー•プラチナブロンドーーーっっっ!!! 悪い奴、取り分け偽善者は許さないんだから!!! 参上っっっっっ!!!」

「ナコさん!? ちょっと、何一人だけ私達が苦労して怪人を追い詰めた最後になって、今更変身してるんです!? もう仕方ないですね…。ほら、最後に弱っている怪人にトドメをさしますから、五人のコンパクトの5連反射の最後にでもあなたも持つコンパクトでせめて威力を上げて照射してくださいます? 」

 なんとこちらの描写でもカットが行われ、6人が怪人の現場に駆けつけた際に、変身描写は5人のレギュラーのみが映り、5人が怪人と戦い何とか怪人に止めを刺す際にて、ようやくナコがベンガー•プラチナブロンドに変身するという、カット移動が収録後になされた。



 そして、最後が我賀物が演じるベンガー•ピンクとの交流であり、本来助けてもらった感謝の描写のはずが、大きくそれる結果となって閉めようとしていた。

「5人の日本の魔法少女こと、ベンチャー•ガールズの皆さんありがとう!! とどめは私が決めちゃったけど、それもみんなのチャージングのお陰なんだからね!!!」

「うぶわー!! マコちゃーん、ありがとぶるわあー!!! やっぱり魔法の本場の人はすごい実力なんですねえー。今日のナコさんの活躍は全て計算尽くしで完璧でしたわあ〜!!!」

「悪いけど、みんな甘いのよ!! これが世界に認められた魔法少女の力なのよ!!! でも今日は謙虚に頑張るみんなの努力がとても拝めた一日だったわ。じゃあね!! 私は博士の自宅に帰るわ!!! 御機嫌ようね!!!」


「5人の日本の魔法少女こと、ベンチャー•ガールズの皆さんありがとう!! とどめは私が決めちゃったけど、それもみんなのチャージングのお陰なんだからね!!!」

「んもうーでもおー、怪人に止めを刺すナコお、さり気無くニヤつきながら高い魔力をより注ぎ込んでえー怪人の苦しむ姿を堪能してたの、ちゃあああんと見えてたんだからねえ!!!

それとあなたあ、一日中的外れなことばかりだったじゃなあい。ホントに世界的な魔法少女なのお、正直?」

「悪いけど、みんな甘いのよ!! これが世界に認められた魔法少女の力なのよ!!! でも今日は謙虚に頑張るみんなの努力がとても拝めた一日だったわ。じゃあね!! 私は博士の自宅に帰るわ!!! 御機嫌ようね!!!」

「【こうして、ベンチャーガールズ達は新たに、6人目の厳しくも心強い仲間であるナコことベンガー•プラチナブロンドが仲間に加わった! 頑張れベンチャーガールズ!! 6人の魔法でマジ力まじりょくは666戦闘数値でスーパーヘル•アンド•デス☆マジックだ!!! 次回へ続く…】」

そしてナレーションが響いて、ベンチャーガールズの第17話収録が終わった。



 以上が、第17話におけるアフレコの修正箇所となった。

 出来上がった音声データは即座に監督と声優五人であらかじめ撮った、修正用のアドリブ音声データとの編集を行い、そして音声をすり替えた完成音声はすぐさま、確認再生されることもなく、テレビ局へ納品されて行った。納品テープは翌日の朝に放送される。


 収録終了し、薪島の関係者がミナこを含め、全て退出した後、監督と声優5人達は大笑いして近くの居酒屋で打ち上げパーティを行った。

「だいーいせーいこーじゃーーーーーーいいいいいいっっっっっ!!!!! カンパーーーーーーーイッッッッッッ!!!!!」

 監督の乾杯コール後に、レッド、ブルー、イエローグリーン、ピンク役の声優が順にコメントを話した。なお、仕事現場ではないからか、ピンク役の我賀物は地声のおっさんにちゃっかり戻っている。

「ププぷうー!! 見ましたあ!? あのミナこの何も知らずに熱演していたバカっぷりを!!!」

「…けど大丈夫でしょうか…。テレビ放送版もミナこの事だから、しっかりチェックし、更に変更箇所に関して激怒して、訴訟でも起こされたりなんかしたら…」

「大丈夫よー!! この件、後がないのを分かっててやってるんだからねっっ!!! 例え世界的な大企業でも、超金持ちのミナこでも、放送後のみんなの記憶は変えられるはずがないんだから!!! ああっ!? 奥のおっさん、まさか取立てナンバー42番の…!?」

「そうですわ、私達は一から製作に携わっているさなかに、このような盗人猛々しい事態に巻き込まれた被害者でもありますの。ですから、ちゃんと作品として成立しながらも、せめてものメッセージをと託したのが、今回のアドリブ作戦。声優歴よん…ゲフンゲフン、声優歴数年の履歴においても、後悔はありませんわ」

「そうだとも喜久吉姉さんよ! ガハハ!! 演劇だったら良い意味でも悪い意味でもアドリブは止められねえんだ。薪島の奴らに後で怒られても『収録中の聞こえなかったアドリブを聞かなんだあんた達が悪りい』っていやあいいのさ!!!」


 こうして2日後朝の放送日。ミナこは当然しっかりリアルタイムで閲覧しており、薪島家のリビングで父と豪華な朝食と共に、自分の登場作品を見る爽やかな光景である。

「ほほお! 今まで私を通して回収してきたが、今回のアニメはミナこ自身がチームを手がけて回収した記念すべき作品なのか!! もーパパ、今朝より早く知っていたら、収録現場へ国際ニューススタッフと共に駆けつけ応援できたと言うのになあ…」

「もーパパ! あたしだって14歳よ!! 一人で社内チームを統括や、回収したアニメ版権の管理ぐらい出来るわよっっっ!!!」

 だが、それは程なくして地獄絵図へと変わるのは言うまでもない。


「ぐのわああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!! なっっっっっっっっっ!!!!! なんだこの聞き覚えのない味方のセリフと台本とシーンのカット達はああああああああああ!!!!!!!! おぼげええええええええええええええ!!!!!!!」

「ああっ、ミナこの口から入れたてが!!? だが流石は糖分大多数の体だ!! 見苦しくない色白さ!! …そんな床の確認はクマ共に任せて後でよい、どういうことなんだミナこ!? このアニメ17話はミナこが全て管理確認しているのではないのか?」

「…そのはずよ、今までも回収した他のアニメでゲスト介入したことはあるけど、こんな…こんな内容がすり替わったようなことは…すり替わった…!! ハッッッッ!!!!!」

「…どうやらそのようだなミナこ。本番にて予定から狂わされるのは、いつの時代の退場的な権力崩壊にも起こり続けたことだ。それが魔法少女にあってはならんな…」

「納品ギリギリ収録も…映像素材が急に遅れているという連絡も…おのれえええええええええええええええ!!! そんな卑怯者共にはシリーズ打ち切りという不幸印象による仕事消滅という禁忌魔法を…!!!」

「ならミナこ、お前もここは演技でお返ししてやるのが正しいエンターテイメントとしての駆け引きではないか?」

「パパ…分かったわ。でもごめんなさい、今は昨日から魔法開発部でスタートした新作魔法のマジック•3Dプリントに忙しいの。次回からのベンガー•プラチナブロンドの登場は未定だし、ああ!!なんて私は忙しき哀れな少女なのおおおおおーーーー」

 そう後半はミュージカルのように叫びながら、ミナこはリビングの窓を突き破ってジェット飛行で薪島家から飛び出して行った。

「ははは、元気でパパは嬉しいけど、ガラスの破片に白とピンクの液体が混ざっていて心配だぞミナこー」



 ちなみにこのベンチャーガールズ第17話の放送は、ミナこに散々『見ないと粛清よ?』と言われてきた祈里も自宅にてリアルタイムで視聴していた。

「…これ、ベンチャー達5人の被害者ヅラが嫌らしくて、女児向けとしてどうかと思うけど、来日した新魔法少女も返答全てが感じ悪いじゃない。ミナこったら、別の人が脚本してキャラクターを演じても、生身の個性がダイレクト伝心してるのねー…」

 結局、その日の視聴率はベンチャーガールズ史上最低、互いの憎しみばかりが反映される意味での、夢の反面教師コラボが実現したのであった。



 頑張れミナこ!! 次回は後半!! ミナこのベンチャーガールズ最終回介入は本気だ!!

 アニメ史に残る大演技が声優達を恐れおののかせるぞ!!!



 魔法使えない少女?ミナこ! 第五話・完


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