(( 12話分の)4 話 ) 魔法少女はSD にもなれる! 3等身への道!!
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魔法使えない少女? ミナこ!
(( 12話分の)4 話 ) 魔法少女はSD にもなれる! 3等身への道!!
Aパート・ミナこ。今度こそハンプって・ダンプる
ミナこは女児向けの玩具をベースとした研究が特に長けているが、意外に所謂オタク等、ファン・マニア向けに特化したフィギュアやカードゲーム、キャラグッズなどの玩具は、常に二番手と考えていた。
これは、純粋に魔法少女に憧れる女児への研究開発がミナこの最理想であり、いい年になって単にキャラクターに憧れるだけの行為には『コスプレなど、かなり近い良い傾向もあるが、やはり理想その物を現実の手に収めたい私にとっては、十分とはいえないのだ』と偉そうに否定している。
そんなある日、ミナこは薪島家の豪邸自室にて一人、豪華なベッドの上で寝転び、どッピンクでうさ耳デコなノートパソコンを広げると、玩具のショッピングサイトを足とその指先でマウスをいじりながら、更に両手でミナこ特注愛用の魔法のステッキを丁寧に磨いているという器用な事をしている時だった。
ミナこはマウスのスクロールを急に足親指で高速スクロールしイライラが募る様子が伺える。
「んんんんんんんんんんんっっっっっっっっっっっっっ…!!! でかでかでかであっっっっっっっっっ!!! なあああああああん種類あるんだああああああああ!!! このSD 共わあああああああああああああああああああああ!!!!!」
ミナこがスクロールしていたのは、人気キャラクターを可愛らしい 3等身で等身と同じ程の高さに頭を大きくしたミニフィギュア『ねんねんころりよ』についてだった。
ねんねんころりよは大人気で、均等なフィギュアの型と頭と髪のパーツが入れ替えられるため、バリエーションとしてもヒットをしていた。
「ぐうううううううううううううう…美少女は世界でアタシだけで十分だと言うのに、こんなにちっこくしたらみんなそりゃ可愛いわ!! …親元はアルカイック・スマイル社…薪島でも余裕だがぁ…うむう…」
ミナこは悪いクセで、つい企業回収、製造会社の職人社員買収などが頭を過るが、そんなことよりも自分だったら…というアイデアが頭に代わりに入り込んだ。
「お、おおっ、まてよ… SDのマンガ的な描写って、マンガ内では多くが当たり前のように変化してギャグ調に描いているけどさあ…それも一種の魔法であるわけで…んでもって、現実では着ぐるみで布生地体質じゃないと維持できないんでもって…」
ミナこの手先は自然とパソコン内の薪島重工・魔法科学身体班の連絡ウィンドウに変わっている瞬間から、ミナこの『魔法化第 456品目・SD 化魔法計画』は始まっていたのだった。
翌日から、早速薪島重工とミナこは『どうすれば現実でもカワイイ SDになれるのか』を魔法に出来る前提で調査が開始された。
だが、ミナこにとってはコレクションアイテム系は二番手。研究していたことも忘れそうになっていた。
祈里との魔法についての考察でもほぼ触れられることがなかった。
「でなあ、今『魔法プリンセス☆プリブリ!』のお菓子に、フランス三つ星シェフの協力を得た…」
「ミナこって、意外と女児向けに特化したのか、変身用のおもちゃ率が高くて、俗にいうオタク向け的なマニアックさが少なくない?」
「私は夢をかなえる魔法に相当する玩具以外には興味はないっっっっっ!!!」
「はあ…」
その数日後になる金曜日の夜、薪島家・地下自家用研究室にてミナこと複数の研究員が会議を行う。魔法製造は難航すると思いきや、魔法科学身体班は確実な解決策をミナこにもたらした。
「ミナこ様、 SDフィギュアにおける『身体の単調化と頭の巨大&増大化は、やはり血液・ヘモグロビンの頭部への集中沸騰』にあると我々は特定しました」
「あ、ああっ。そんな話もあったな確か」
所内は一気に沈黙が増すが、直ぐに別の研究員がフォローした。
「気を反らさないで下さいミナこ様! このSD 化は本当にすごい成果なのです! 早速魔法ネズミ『ワタガシ』達に与えてみましょう!」
魔法ネズミ・ワタガシとは、科学的に言うと薪島重工によって造られた、アダムとイブである最初の改良ハツカネズミの体毛のみから生命が誕生し、生まれた時からピンク色に女児向けのようなラメが入った、実験動物の名称を回避するためとしか思えない容姿と、地味にすごい動物の一部身体から誕生する増殖性を持つ、物質的かつ分子的なネズミであった。
世界的な権威のある生命科学機関・ネーチャンから『ノーベル賞級の大快挙』と公開を推薦されているが、薪島重工は『これは始祖卵子細胞、別名・プニプニ母星から我々が回収してきた魔法召喚動物である』と関係を否定し一般に非公開でい続けている。
薪島重工にはネーチャンが悔し涙を見せるぐらいに、とてつもない科学技術が魔法として組織内に非公開でゴロゴロしているのである。
(ちゅちゅっ…ちゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいんんん!!!!!)
(むくむくむくっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!)
「おおおおおおおおおっっっ!!?? 魔法科学の者共よ!! ここまでの完成度だったのか!!」
お注射されたワタガシは、見る見るうちに頭部が巨大化、体は単調化して、女子高生がカバンにつけるキーホルダーのぬいぐるみのような外見に早変わりした。
ワタガシはヨレヨレながらも動くことも可能であったが数十秒すると、頭が縮んで手足が伸び戻って、元の体型に戻った。
「如何でしょうミナこ様…」
「素晴らしきよ!! だがそこの調査書に書かれている『ストレス・怒り等で、こみ上げる力が身体にないと長持ちしない』とは、要するに怒り心頭にでもならないと、カワイイ SDにはなれないということだなっ!!」
「も、申し訳ございませんっ! 身体のエネルギー変動は機械のようには行かないので、現在調査中でありまして…」
「バーカモンっ!! カワイイ変化を起こすのに一々切れてたらギャグ漫画じゃありだったけど、可愛くないし血圧が爆発する…ああでもアタシは砂糖菓子身体な乙女だからいいか…まあいい。んー取り敢えずアタシにも施して頂けないかな?」
こうしてミナこは SD化魔法こと『ボビングヘッド・へもぐろいど』を新たに搭載したが、当の本人は欠陥魔法として改良サンプルが出来た際に早く投函出来るよう、一応取得をしていた。
だが、ミナこにとってコレクションアイテムからの発想であり、そして完成度の低い試作魔法であるため、施されてまもなく、すぐにミナこの記憶からは消え去っていた。
しかし、そんなミナこの油断は思わぬ所で晒してしまうことになる…。
Bパート・巨頭少女ミナこと覚醒魔法の祈里
「んもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ちょっとミナこ!! 流石にこれは許さないんだから!!!」
「ああんっ!!? 魔法少女に憧れる祈里君のために、折角キミの体操着をピチピチシュッシュなバレリーナダンサー仕様に改造したんだから、むしろありがたく思ってこれから精進しなさいよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「おいおい!? ミナこ様と早乙女が喧嘩か!!」
「誰か止めなさいよ!! あとガードマンさんを呼んで!!」
数日後、休憩時間にミナこと祈里がしょうもないが、かなり嫌な理由でいがみ合いを行っていた。
慌てて担任の丙先生とガードマンが止めに入り、丙先生はミナこを後ろからホールドする。
ミナこは魔法少女服で背中にジェットを背負って掴みにくいにもかかわらず、丙先生は斜め上から掴みかかった。
「こら薪島ミナこっっっ!! いい加減他人を魔法少女へ誘導するのは止めなさいっっッッッ!!!」
「ぐおおおおおおおおおっっっっっ!!! 祈里が…祈里が『最近映像で見たバレエダンサーがすごく素敵だった』っていったから、私は魔法少女としての融合なら提供してあげてもと…」
「それは…(ぐいっ!!)ぐぬぬう!!…あ、あなたどうせ一方的にしたんで…しょ…!!!」
丙先生がホールドすると、丙先生もガードマンからミナこを守るための身柄制御のため、ホールドされる。
万が一、ミナこに致命傷を犯してしまえば粛清や抹殺される覚悟だが、それでも丙先生はミナこを叱りつけたかった。
「そうよミナこ!! こんなんじゃあ、アタシはミナこに何も言えなくなるじゃないの!! 特にアンタの大好きな夢や憧れが!!!」
するとミナこはブチッっと心頭スイッチが入ったのか、身体が震えだし、遂に怒りと忘れ去られていた魔法を発揮してしまう。
「きっっっっっっっっっっさあああああああああああああまあああああああああああああああああああ!!!!!!! あらゆる魔法の原動力となる魔法を否定かああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
(むくむくむくっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!)
「何っ!? 前で掴むミナこが急激に重っ…!?きゃあああああああああああああああ!!!!!」
(ずずずずずずずずずずずずずずずずずずず!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!どおんっっっっっっっっっ!!!)
ミナこ以外の人達に現れたのは、頭が 5倍近くの縦5 メートル・横 3メートルに巨大化し、身体が 3分の2 程に縮んで単調化されたミナこの SD化の光景だった。
頭とその周囲の身体パーツだけ巨大化したためか、 SDフィギュアでは一緒に巨大化される飾り等がミナこの飾りは巨大化しておらず、頭の身体パーツに押しつぶされそうに縮こまっていた。
更にその巨頭巨体が後ろに転んだことで、丙先生はミナこの(特に頭)の下敷きとなっていた。
「ぐふうっっっっっっ!!!??? なっっっっっ何っっ!? 薪島ミナこの後頭部が私を襲うっっ!!!ぐぐじい…」
まだ気付いていないミナこは叫んでスッキリしたのか、身体を起こすと、身長全長は 6.5メートル。
更に結んだ左右のブラシ調なテール髪が天井の蛍光灯に直撃して破損したが、それにも気付いていなかった。
「ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。すこしはスッキリしたなー…んっ? 先生とか祈里とか、何腰抜かしてるのだ? 授業がもうすぐ始まるじゃないか。座ろうぞ」
(ズズ、ズドンっ!!!)
(キーーーーーーーーーーーーンコーーーーーーーーーーンカーーーーーーーーーンコーーーーーーーーン…)
生徒達は呆気にとられ、かついつものミナこの魔法なので、突っ込んでは命がないと黙り込んだ。
更に、ガードマンが祈里と丙先生を呼び出し、
「ミナこ様に特に気をつけて欲しいおふた方…。実はミナこ様はまだお気づきではありませんが、数日前に試作した魔法の影響で、 SD化しているのです。ですが、まさかあそこまで巨大化するとは思いませんでした。しかもミナこ様の怒りによる頭部へのヘモグロビンの上昇沸騰によって、更に巨大化する危機があるのです…」
「なっなんですって!!」
「ミナこらしいですね…自分の魔法を忘れることもあるなんて…」
「どうかこれ以上、怒らせないで下さい…。怒らせると、より巨大化する危機があります。自然に縮むのを待ってあげて下さい…」
こうして暫くの間、 SDという名の巨頭化ミナこと教室内の人々という非常にシュールな光景が始まった。
次の授業は丙先生ではない別の先生、フランス出身の古風な貴族風の紳士であるジェルマン先生の世界史授業だったが、ミナこの事情は事前に知らされており、生徒達も空気を読むが、やはり限界はある。
「…あれっ、あたしの指ってこんなブタのヒヅメみたいな関節のなさだっけ…ペンが持てんぞ…」
「み、ミナこの頭が邪魔で黒板が全く見えないっっっ!!…」
「俺もだよ祈里ちゃん…」
「…あー何だか今日は急激に肩がこるなあ…祈里ー、後で肩もんで…」
(ぐるんっっっ!!! ぶわっっっ!!!)
「(…ミナこの頭の風圧で教科書が飛んだ…)」
そして遂に、ミナこの巨頭化フォローにも限界が訪れる。
それは授業中の挙手に関してだった。
「えェー以上のように、 1904年にバルチック艦隊は日露戦争で破れましたぁ。では、どうすれば日本に対して、ロシアは勝利することが出来たでしょーかぁ。分かる方は挙っ手してくださいィ」
「えー本当もう、ジェルマン先生の授業はいっつも試験とは関係ない戦術考察ばっかだなあ…」
「誰か答えないと、ジェルマン先生黙ったままで授業終わっちゃうのは気まずいわよ…」
その時、あることに気付いた祈里はミナこの巨頭から必死に黒板を見ながら焦っていた。
「まずいっ!! この世界史の授業、9割型手を挙げるのはミナこじゃない!! 立っていた時あんなにふらついていたのに、今立ち上がったら…」
と思った瞬間、ミナこが短い手を挙げてズンッと席を立った。思わずぎょっとしてしまうジェルマン先生。
「おぉ、でェ、では、ミス・ミナこ・マキシマ…」
(ズズズンッッッッッ)
「はいっっっっっっっっ!!! ロシアには古代の東スラヴ人と呼ばれた西暦 1000年以前のスラヴ神話という信仰文化が中世・近代では衰退してしまったことに原因があると思いま…うっ…」
(フランッフランッ…ズズズズズッッッッッッ!!!)
「(あああああぶないっっっっっ!!! ミナこの頭がアタシの後ろに倒れようと…!!!」
すかさず祈里は重力魔法をそっと発動させ、ミナこの頭のふらつきを正面に押さえた。
だが、祈里は自分の体重分しか重さを支えきれないことが、ここで大きな負担となる。
「(うおおおおおっっっ…み、ミナこったら!! 頭を中心に体重まで重くなってるじゃないの!! まさか、このまま立ってる間はアタシが支えざるを得ないってことなの!!??)」
「えェーミス・ミナこ、近代海軍の海戦でのお話ですゥ。科学と国力の巨大統合化が今回の歴史ではぁ…」
「なっ、何を言うか!! 自国の歴史の根本を忘れ、近代の世界情勢と道具に頼りきってばかりでいたから、神話に基づくちからを得られなかったのであろう!!」
「おおお…落ち着いてェくださいィ、当時は信仰と具体性の少ない結果主義だったのですゥ…ですから…」
「むうっ!! さっきみたいに怒りたいが、過去の異国の歴史情勢だ。奴らも魔法や錬金術を研究し続けておればな!!」
こうして、残りの 30分はミナことジェルマン先生の議論で終わった。
しかし同時に祈里の魔力は限界に達しており、歩くのも意識がもうろうで困難になりつつあるため、椅子に座って休んでいた。
「さー世界史終わった終わった!! おお…トイレ行きたくなったな…よいしょっと! ああっ!!肩が今日はなんでこんなに凝るんだったくううううう!!!」
(ずさっ、どすどすどすどす…ゴンッッッッッッッ!!!!!!!!)
ミナこの頭部と教室の出入口の壁との音の調和が、教室中に響き渡ったことで、祈里はミナこが自分の身を持って知ったことに気付いた。
「(…あ、ミナこ、とうとう物理的に現状を知っちゃったのね…)」
時間は飛んでその日の放課後、窓には外からオレンジ色の夕日が照らされ、そこの新たに貼られた張り紙には【明日・重機による壁部破壊予定場所】と書かれ、壁部には黄色と黒の警告テープが、教室は机と椅子が全て端に押し込まれ、中央には教室全体の3 分の 1近くを占めるほどに更なる巨頭化を果たして動けなくなってしまった、ミナこの巨頭と短い胴体が横たわっていた。
横たわっているミナこには正気がなく、自分の今の現状に落ち込んでいるとしか言いようがなかった。
だが希望は側にいた。祈里が教室に入ってきたかと思うと、彼女は事務室から借りてきた布団を教室の床に敷いたのだった。
午前中に二度目の頭部巨大化で身動きが取れなくなって、 V組の生徒は全員別室で授業。窓辺側に寝転んで首を傾けることしか出来なくなったミナこの元に、祈里が回りこんで話しかける。
「ミナこー。アンタ用の特注・かけふとんは 1時間後に来るってさ。今日だけの我慢よ。…んーっ…まだ SD化の影響で頭痛がひどい?」
「…そりゃあ君の予想以上には…でっかくなった頭蓋骨が脳みそが、地球の重力に引かれて余計に血が戻らんよ…」
「賢くなった気はした?」
「しね」
「どっちの意味よ…。まあ気にしないで、一緒に1夜だけ側で寝てあげるから。次3回目にまた怒っちゃったら、次こそ頭が保てなくなるんでしょ! ガマンしないと死んじゃうからね!!」
「ううっ…祈里いいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっっっっっっっ!!! 今日は特にトイレに行けなくて用意してもらった時が一番苦痛だったよーーーーーーーーー!!!」
「よしよしってうわああ!! 涙超大粒なんだから危ないって!! ああっ!!口もデカイんだから、息たくさん吸ったら、アタシが吸い寄せられるって!!!」
そして夜中の学校。二人は教室に横に並んで添い寝しており、ミナこはすっかり寝込んで、祈里はミナこの方を振り向くと、窓が見えず一面ミナこのプラチナブロンドの後頭部しか見えないという、シュールな光景を見つめていた。
「…ひょっとすると、明日こそ必要になるかもしれないわね…ウチの白蛇に代々継がれている宝物のひとつである、おじいちゃん曰く『どうしても必要な時しか使ってはならん!!』と言われた重力増加の因石『鳴の物』を…」
祈里だけパジャマに着替えており、側に置いてある制服ポケットには、その小さくも禍々しい印象を感じさせる鳴の物のペンダントが入っていた。
遂に翌日、朝早くから鉄球の付いた壁を破壊する重機によって 2年V 組の壁は数回の振り子運動で完全に破壊され、すぐにキリンに似せて造られた、謎の大型クレーン車がやって来た。
ミナこは『魔法で解決できないなんて嫌だあああ!!』と皆になだめられながら、また巨頭化しないよう細心の注意が払われていたため、結局ホームルームや授業開始時間に重なってしまい、多くの生徒に恥ずかしい所を見られてしまうが、その頃にはミナこのパパこと奨一社長も V組教室に居たため、ミナこの気持ちは落ち着いていた。
「あっパパ…、パパまで小さく思えるほどに顔が広くなってしまったなんて…」
「こらミナこ! 顔が広いって物量的な意味じゃないのよ!!」
「祈里ちゃん、昨日はミナこと添い寝されていたとのことで、非常に感謝している。そしてミナこ、むしろ素晴らしいぞ! これは不思議の国のアリスやガリバー旅行記の世界そのものじゃないか!! 君は小人の世界に迷い込んだだけさ!!」
「うわあーすごいパパ!! なんだか元気が出てきたぞ!!」
「(…パパいると超単純なのね、ミナこって…)」
だが最大の問題はクレーン車で巨頭ミナこをどう運ぶか、そしてどうすれば元の等身に戻るかであった。
頭が一番重いが身体の一部であるミナこをどうやって釣り上げるのか。そう考えていた時、思わぬアイデアが社長から持ちだされる。
「いいかいミナこ。今から私がキリン型クレーン車・ジュラフィックパーク号から責任持って操縦するから、お前はこの特性軟質二股フックを一番安全と考えた、お前の鼻の穴に差し込まれても我慢して運ばれるんだ。
そして研究員の話しによれば、お前を最低 2時間、クレーン車で宙に浮かせることで血の気が引けて、元に戻るそうなんだ…いいね?」
「ぱ…パパの願いなら、私が小人の国から元に戻れるなら…!!グスン…」
一方で、祈里は鳴の物のペンダントを既に自分の制服内の首元に装備して待機していた。
「ミナこ自身、自分の鼻の強度なんてきっと分からないはずよ…私もこのペンダントを首につけての重力魔法がどうなるかは知らないのと同じだけど…でも! バカ友のため!!」
早速クレーン車による釣り上げが開始された。
(ウイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!! ガシャンッッッッッッッッ!!! ブンッッッッ!!!)
「ぐぬうううううううううううううううううううううううううううううほおおおおおおおおおおおおお!!!…」
特性鼻フック装着で教室から外へぐいっと引っぱり出されるミナこは、教室内では普通の顔だったが、外で引っ張りあげられた途端、鼻を中心に筋肉が引っ張りあげられ、見るも無残なぶさい顔へと変貌していたのは誰も話せず、心のなかで吹き出す者も多かった。
「つり上げは成功だミナこ!! さあ後は少しの辛抱だからな!!!」
「ば…ばばっばば!!! ばば!!!!!(わ、わかったわ!! パパ!!!!!)」
「お父さん、ミナこが何行ってるかは分からんが、必死なのはよーく伝わるぞ!!」
それから祈里は本来仮の別教室で授業を受ける予定だったが、無視してミナこの釣り上げられているクレーン車があるグラウンド近くまで木陰に隠れて忍び寄っていた。下から見上げると最早漁師に釣り上げられた獰猛で巨大なサメのような光景であったが、祈里の気にしていた不安はやがて、意外な形で現れることになる。
(どばっっっっっ!! じょぼじょぼじょぼじょぼじょぼ!!!!!!!!!!!)
「ばばばば!!!!!(鼻血があっ!!!!!)」
「これはまずいぞ!! ミナこ様の体内に急激にヘモグロビンが戻る故に、血管が漏れているッッッ!!!」
研究員も周りも大慌てだった。ただし、ミナこを知る人ならご存知のように、ミナこの血液はいちごミルク成分なので、巨大な血の痕跡が滴れるというよりは、むしろいちごの沼といった状態であったことが幸いであった。
「ば…ば…ば…」
だが、明らかにミナこの意識が消えかかっている。祈里はそのことにいち早く気付き、そして決心した。
「(行くわ…!!! 鳴の物に秘めりし神よ!! 私の重力に力を!!!)」
(ズドンンンンンッッッッッッッッッッッッ!!!!!……………)
すると、祈里はミナこの重心が軽くなりつつあることが目に見えるも、同時に何故か景色と意識が朦朧としだしていた。
と同時に、祈里にだけどこからとも無く、謎の少女と思わしき声が聞こえてきた。
「(遂に…早乙女甚と天平崎后の娘と出会えたか…)」
「(…!!? だ、誰よあなた!! そしてなぜ、私の名前しか知らない、生まれて直ぐに行方不明の私の両親の名を!!)」
「(運命がやはりお前と私を呼び起こしたのだろう…まもなく…まもなくだ、文明社会・国際社会・情報化社会と呼ばれし今は崩壊し、我々裏歴史と貴女によって、再び法魔の支配がもたらさせることを…!!!)」
「(そんなの許さない!!! 悪霊だったの!? なら後で成仏させるまでよ!!! うっ!? 頭が…)」
「(無駄だ…この鳴の物は使うと伝達するにすぎない…むっ、ニティアめ、何のようだ…)」
(フウウウウウウウウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!)
祈里が意識を取り戻すと、ミナこは重力で姿勢を正していたが、威力が強すぎてかクレーン車の高さを不自然に超えて、天へ浮き上がろうとしている、魔法か超能力のような光景が一瞬訪れてしまっていた。
グラウンドにいる研究員や社長はすぐに違和感を感じた。
「わああっ!? ミナこ様がクレーン車よりも上に上がっておられるッッッ!!???」
「なんだミナこ!? 私の知らぬ間に翼を噴射していたのか!?」
「まずいっっっっっ!! 静まれっっッッッッッッ!! 鎮静呪縛っっっっっっっ!!!」
(ピタッ、ぶううううううううううううううううんんんんんんんん!!! びしっ、ビーーーーーーーーーーン!!!)
「ばーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!!!」
強すぎる重力が消えたことで、ミナこは勢い良くクレーン車のワイヤーに叩きぶら下げられ、再び鼻血が出てしまっていた。
「ばっ…ばれっ? ばばばの血が、下に集まる感じがする…!!」
「おっ! さっきよりミナこの頭が縮んでいる!! よしっ、下ろすからな!!!」
だが、その勢いが良かったのか、それから数分でミナこの頭部は急速に縮こまり、それが確認されると地上に降ろされ、身体は元の等身に戻ったことで、こうして『ボビングヘッド・へもぐろいど』誤発生から実に 24時間後、遂に元のミナこに戻ったのである。
「やったわパパあーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「でかしたぞミナこよ!!! 所でさっき、翼で飛ぼうとしなかったかい?」
「えっ?知らないけどどうゆうことだ?…なに、クレーン車より上に…? そんなつもりは…」
「ミナこ!! 無事だったのね!!」
「祈里君か!! いやー危なかった!! あのまま失血死したら、リアル・ねんねんころりよになっていた所だったよ!」
「その時は私がアルカイック・スマイル社に記念納品してあげるわよ!!」
「鼻フックの顔しかオプションが無いのは勘弁願いたい所だがね!! ははははは!!!」
「なんだろうな、今回の魔法暴発は不思議と何でもない祈里からの手助け感をモーレツに感じたぞ? なぜだろうな!!」
「(よ、ようやくミナこが感触だけでも私の力と評価を…!? う、嬉しいっ!!)」
こうして一騒動が終わるも、祈里には強烈なほど今回の事件における鳴の物ペンダントの恐怖が募っていた。
家に帰るも、祖父に聞くに聞けないと思った祈里は、このペンダントの対処に自室で困っていると、再び声がこだました。
「(……それでもコレが貴女には必要だろう? 早乙女祈里よ…)」
「んもー、そんなに使う度プライバシー覗かれてばっかのペンダントじゃ困るわ! ちょっとこれでも聞いてて」
(すっ、ぱこっ、カチッ………どわああああああああああああああっっっっっっおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
「(…!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」
祈里は鳴の物をヘッドホンの左右の中に閉じ込めて、プレーヤーから爆音をダイレクトに送り込んだのだった。
「スパイダー☆リップスの新作『ノイジー・オブ・クローパンサー』は如何かな? ふふっ! 私は裏歴史や魔法の因縁には負けないわよ!! あ、じいちゃんご飯今作るねー」
祈里は鳴の物をほったらかして、リビングに行った。祖父は鳴の物の使用に関して気付いていたらしく、祈里に厳重な注意を持ちかけたが、開き直って気にしなくなっていた祈里は余り興味を示さないでいた。
「祈里!! 今回は仕方なかったのじゃろうが、今後は…」
「大丈夫だって! 鳴の物はアタシの部屋で静かに音楽鑑賞してる。あとあいつら、あの石そのものに宿ってるわけではなかったの。どうやら使う度にここが知り得るだけの…」
こうして今回は、ミナこよりも祈里に大きな進展が見込めた!!
がんばれ祈里!! 君はいずれ裏歴史・魔法か西暦・現在か、道を決めなくてはならない運命なんだよ!!
魔法使えない少女?ミナこ! 第四話・完
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