((12話分の)10話)魔法少女のくせして!? ミナこの瞬間変身イバラ道!!
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魔法使えない少女? ミナこ!
((12話分の)10話)魔法少女のくせして!? ミナこの瞬間変身イバラ道!!
Aパート・ミナこ、今解き明かす瞬間変身拒否の理由
祈里は遂に直接的に、魔法こと裏歴史と関わりのある他者と出会ってしまった。
しかももう一人、想像を絶する魔法を持つ使者がまもなく訪れるというおまけ付きである。
そのおまけが実質本番と言える中で、祈里はシンと別れる直前のマホウジョバレーからの脱出直後に、シンから有力な情報を聞いていた。
「祈里ちゃんとやら、どうやらミナこ本人と主に学校で親友であり、そしてあの魔法という名の抑圧を阻止したいとするなら、俺からの頼みを一つ聞いて欲しいんだが…」
「…シンさん自身が、薪島とミナこにここ数日中に復讐するって話でしたよね…」
「ああ、薪島が古来から続く動力不明の魔法やオカルトを世界的に大否定し、業績を生むことで、そういった使う俺達でも分からない事が多い動力のない力を追い詰め、文化を否定する薪島を俺は許せねえ。奴らだって動力不明な、占いや予言や死後の世界には怯えているくせしてな。
1週間後に来日予定のあの方程ではないが、俺にも魔力がある以上、奴らに無謀でも知らしめられるよう、復讐を晴らしたいんだ。お上の法魔達から命の無駄とも言われそうだが、当たって砕けろだ!!
何をするかは1周間後のあの方は知られてないからお前に任せるが、俺は脱走を知られていて密告されたら困るんで、お前にも黙っておく」
「…だからって、は、犯罪とかはしないで下さいね! 私の重力魔法も悪用だけは避けてますから」
「偉いねえ、この現代社会のモラルを守っちゃってさあ。じゃあな。あの方は3日後に薪父市の港にやってくる。
この水晶の欠片を渡すから、現場でこれが反応したら側に居る少女に話しかけてくれよ」
「しょ、少女ですって!? あ、あもう!! 走って行っちゃった…」
シンは一体、薪島とミナこに何を復讐するのか。流石に魔法と科学を合わせたテロの可能性も否定出来ないと考えた祈里は、シンの密告も立場上出来ないため、ミナこと薪島に何とか浮かれてもらわないようにしてもらうことを考える。
だが時間もなく、1週間の内何時どこでどう復讐が起こるかも分からない。そんな中で、シンプルかつミナこ相手らしいヒントが祈里にミナこ邸侵入の2日後に学校にて思いついた。
「祈里君よぉ!! だからタクミステッキが少数受注限定で大切なのは、平安時代から続く数人しか職人がいない刀鍛冶の磨かれた鉄の鍛錬・鋭さと、その内部に仕込める魔法が更に限られていることがお分かり!?」
「だからミナこは自分の魔法鍛錬と副産物の儲けばっかりで、少しもみんなと魔法少女でやっていこうって意思がないじゃない! そんなことばかりだと、沢山の人に嫌われちゃうよ!!」
「それは嫌う奴が私より正義への努力が足りないからなのだよ!!!」
今日もミナこと祈里のいつ喧嘩が起きてもおかしくないような議論が午前中の休み時間に繰り広げられているが、少し違うのは、祈里がミナこの正義像を改めて反省してもらいたいという話題での流れであることだ。
しかし、ふとミナこに関して思ったことを祈里が口にする。
「…ねえちょっとミナこ、あんたってさ、いわゆる変身シーンが無くない?」
「…ん、それは祈里が鈍感なだけだ」
「はっ?」
「祈里はきっと、いつも私が今のように魔法少女形態になっているのは『いつの間にか』のはずだ。気がついたらでもいい、よくある魔法少女アニメのキラキラして一瞬の素っ裸に着衣完了がないことを言いたいのだろう?」
「ええはい」
祈里はミナこが見ぬ間に影で普通に着替えていることは、見たこと無いが分かりきっていたため、冷めた対応をする。
「それは速過ぎて祈里が気付かないだけだからと見受けられるっっっ!!!」
「何よそれえ!? いつの間にかじゃあ、魔法って呼べるのそれ!!(でも私とかも同じいつの間にか魔法なのだから、実は人のことは…)」
「ああ分かる、エンターテイメント性がないと。だがあんな変身シーンがクルクルこの現実世界で長くなってみろ、私は袋のネズミだ!!!」
「ええごもっともよ!!! それも解決してこそ魔法でしょって言いたいのっっ!!」
「くくくうっっっ…今日の祈里はエラく唇裂だな…むむむ」
「変身シーンが見えない、マジカルへんしーーーん!! みたいな掛け声とかも速すぎて聞こえない、こんなのどうやって魔法少女である説得力をみんなに分かってもらえるのよ!!」
「マジカルへんしーーーんは無いわーダサいわー」
「ああもうっっ!! なら緊急事態じゃない際は変身シーンをゆっくり見せてもいいじゃない」
するとミナこは急に深刻な顔をして、分厚いメモを取り出し、何やら必死に調べ始め、そして祈里に選択を問いた。
「ど、どれがいい? 『魔法瞬転☆フィラデルフィア☆アルファ』・『魔法転移☆アインシュタイン☆ベータ』・『生きた魔法少女アーマー☆デュラハン』・ま…」
「多いわっっっっっっっっっっ!!!」
こうして放課後、ミナこは祈里を含めた2年生生徒全員へ強制的に『普段は速すぎて見せられない変身シーン』を濃縮して特別に見せるとして、グラウンドに呼び寄せた。当然ミナこは庶民セーラー服だ。
すると現場は客席が用意され、しかも範囲周辺には立入禁止の警告テープがびっしりと張り巡らされており、変身中は客席からの退場は禁止とアナウンスされていた。そしてミナこの披露場所は客席から20メートルも離れている。 明らかに危険なのは見て取れる光景であろう。
「早乙女てめえ!! オマエが変身みたいって言うから!!」
「山田様、早乙女様は悪くございません」
「ひっ!? が、ガード!! すみませエん!!!」
「でも祈里ちゃん…ミナこちゃんって、1年生の頃に1度変身披露やったじゃない、ほら、体育館でやったら半球状の半壊部分が後日プラネタリウムドームになって、理系部しか喜ばなかった…おっと」
「もお千代美ちゃん、ガードの距離があってもそれは禁句だって…」
「1年の最初の頃みてえに、煙巻いて変身出てくりゃいいのになー」
「あの頃のミナこはまだ少なくとも、危険ではなかったよな。ヒーローショーの豪華版かハリウッド撮影みたいで。今や薪島重工の手で成功すれば世界中の注目の的だぜ」
「ううう…おかあちゃーん…死にたく…」
「今度はどこが崩壊して、新施設が出来るかな…」
様々な負のオーラが客席で潜め合う中、ミナこはガードから厳重にアタッシュケースに入れられた『3つの赤、青、黄色に別れたタクミステッキ』を確認し、本来のピンクのタクミステッキを地面へ突き刺すと、早速1つ目の赤いステッキを取り出し構える。
「さーあ!!… 今日は君達の為にとっくべつに変身シーンを通常の100万分の1に濃縮された、様々な改良型の変身パターンを見せてあげるからねっっっっ!!!」
そう言うミナこだが、彼女も明らかに震えて甘い冷や汗が爽やかな炭酸水となってにじみ出ている。
最初に取り出した赤色のタクミステッキは上下消防斧がついたツインタイプであり、回して使う両刃槍のようである。
「最初は『魔法瞬転☆フィラデルフィア☆アルファ』よ!!! 『ミナこ変身!!! み、はみんなのミ! な、は仲良くのナ!! こ、は更正のこーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』」
そう言うとミナこは、右手で赤ステッキを空中20メートル上に振り上げると、ステッキは円状に横回転し、円には魔法陣のようなデザインが浮かぶと、そこから下へUFOが人々をさらうような構図の光が、ミナこの下へ照らし出された。
(ぶんっっっ!!! クルクルクルクルクル!!!!! すっ、ピカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!)
(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ………)
「おおっ!! 力が、力があふれるううううううううううううううううううううううううううう!!!!!」
するとミナこの周囲から衣服が粒子になって消え去り、ミナこの素肌は光でシルエットになり、更に代わってあの見慣れた魔法少女装備が粒子状に現れ、彼女に結びついていくのが見えた。両刃赤ステッキをいちいち振り上げる以外は、すごく順調に思える光景である。
だが、周りがざわつき始めた。それは段々と悲鳴にボルテージが上がっていく。
「…え、なにちょっと? ミナこちゃん…あんなおでこからブーツが…? 左肩からスカートが半分…!? キャアアアアアアアア!!! ウワアアアああああああ!!!!!」
(ゴゴゴゴゴ……バキバキメリメリッッッ!!!!!)
「し、しまった!! みんなの反応からして、転送範囲の失敗バグが!!? ガードガードガード!!! 今すぐ薪島重工アメリカ第3支部・送り元の親機を止めろおおおおおおおお!!!」
ミナこの身体表面から次々と魔法少女装備がバラバラと出てくる光景はもはやホラーであった。更に照らされた地面からは、関係のない薪島重工マークの車やコンテナ、しまいにはよく分からないヨーロッパ建築風教会の十字架付き屋根のてっぺんがゆっくり地面から生えてきつつあった。
「ミナこ様!! 停止連絡を受けました!! 後はミナこ様がレッドタクミを…!!」
「赤タクミちゃーーーーん!!! カーーーーームバーーーック!!!!!」
(クルクルクルク…ピタッ、スーーーーーっっっっっ…ザクッッッ)
(シュウウウウウウウウウウンンン…ズズズズズ)
赤いタクミステッキは地面に突き刺さり、失敗転送した存在達は全て粒子が分裂して、霧のように霞んで消えて行った。
ざわつく会場を必死に落ち着かせようとするガードマンに、あのミナこも流石にシュワシュワ冷えた汗と高い鼓動を鳴らせながら残る2本のステッキを睨みつけていた。
ちなみにミナこは制服が帰ってこず、首から下が全て放たれた白い光に包まれたままの自主規制のような状態にいる。
「あ…後2本だ…相対性理論を元にした瞬間変身で、歪んだ時空に私がワープして間に未来の私が出てくるグリーンタクミと、人間に反逆経験があるけど優秀なマジックAI内蔵の専用魔法少女装備・デュラハンを天にかざじて呼ぶタクミイエローが…」
「やめてーーーーー!!! 服を着なさいよミナこおおおおおおおおおおお!!!」
祈里の叫びが響いたのか、あるいは次の2つも大きなミスの危機がある代物だからか、ミナこはこの日の変身を中止。
理由は『この地上が私の夢に追いついていない。ステッキが恥ずかしがり屋で素直に受け入れてくれない』という実にミナこらしい理由だった。
その夜のこと、祈里は自宅の自分の部屋で晩御飯を片付け後は休んでいたが、やはりミナこが今日のような本気魔法の調子では、シンや裏歴史の使者に完敗してしまうと心配になり、プリほからミナこに電話をかけた。
「なんだね祈里は!? 今ミナこのお部屋でレッドタクミの魔法成分を分解検証中で、一歩部品を間違えれば、この薪母市ごと北極へ飛んでしまうだろうが!!!」
「そんな超絶危険なもので変身なんてしないでよ!! 死を恐れなすぎイ!!! ミナこ、さてはアンタ、変身がずっと未完成のままなんでしょう!? 魔法なら失敗してもせめて学校の制服ぐらいは取り戻せるはず! でもアンタはずっとその日は白い変身途中のままで学校をふらついてたじゃないの!! プライド無いのお!?」
「今もだけど」
「裸族かあああああああああ!!!!!」
祈里の呆れ具合は頂点に達していた。だがミナこからは意外な答えが返って来る。
「今の検証、更にこの首から下全体を包む光なんだが、このレッドタクミ使用は3回目となるんだが、光が消えないままは初めてなんだ。しかも高エネルギーを放っていると!!」
「ってことは、それ以前は失敗したら本当の裸族になる危険があるんじゃいの!! もー最低…」
「だから一緒に緊急として、何せ私の大事な体だ!! 研究員なしで一人で慎重に特殊スポイラーを握って、この思わぬ副産物を自分のへ直接押し調べ…あっ! いや…ウッ!」
「やめてよやらしい声ー!!(でもこれは怪我の功名!? ミナこが裏歴史みたいな動力不明の能力限があれば…まさかどちらの真理も解き明かせるほどだったりしてえ!?)でもチャンスだよミナこ!! それが自在に操れたら、本当にスタイリッシュに成功する変身が出来るかもしれないじゃない!!」
「バカものが!! 物質の瞬間転移は今の科学、薪島の魔法でも難しい、だから私は多々の変身方法を増やしているのだから、成功は増やしてやってるのだ!!!」
こうして、ミナこは祈里のきっかけによって滞っていた瞬間変身魔法が大幅に向上し、そして大きな改良が僅か翌日に披露されることとなってしまう。
Bパート・ミナこ、命懸けと決断の魔法少女変身!!
翌日、その日の祈里はミナこよりも早く学校に登校し、更に始業時間のホームルームにも来なかったが、休みではないという連絡を丙先生から聞く祈里。ちなみに丙先生の様子は昨日の衝撃が強かったのか、ホームルーム中に『あんな…あんなの…どうやって把握して盗めって言うのよ!』という小声の発言を祈里は耳にしたが、祈里は裏歴史のことを考えれば相手にならないと警戒も不要と思っている時だった。
(すっ、もにゅもにゅもにゅ…)
「では、次の1時間は山里先生の授業だから、みんな用意を…お、おおおお!!?? おっ!? おっぱいをだ、誰よ!? 誰なのよもん出るのはあああああ!!!????」
「丙先生、どうしたの? なんか妙に胸が誰かに揉まれているみたいにゆれてるよ?」
「ち、ちちちちちちちが!? 見えないけど何かに押されてえええええええ!!???」
その時、ストッという着地音が丙先生の後ろで聞こえたかと思うと、足音は丙先生の正面まで移動し、そして先生の目の前には白い光と煙が立ち上ったかと思うと、それはあのミナこのようなシルエットに浮かんだかと思うと、それはジワジワと姿を表した。
(すうううううううううううううううううううううん…)
「ナタリー先生ほどでは無いなあ、丙よ…私の一夜漬けの成果でも見てるがいいよ!」
「うっ!? その声は薪島ミナこ…!! 魔法で悪事を働くなど!…」
(じわじわじわじわ……)
「!? ええっキャアアアアアアアアアアアアアアアア!!???!!! 理科室に帰ってええええええええ!!!!???」
ミナこのシルエットから現れたのはピンク色の骸骨が最初に現れ、それが徐々にミナこのいつもの肉体表面が粒子状に登場するというものだった。サッパリキラキラではなく、ギトギトしっとりの方が近い光景である。
「なんですか先生!! 次の授業は僕、山里の理科ですよ!? それを帰れと…? ってほわあああああああああああああああ!!!???」
「んー…表面化が1分しても完全にならない…これはまだ難しいな…」
「ミナこったらもー!! 透明人間とゾンビがあんたの結論ってことなのーーー!!??」
祈里の叫びが教室にこだまする中、ミナこの完全化には結局2分がかかった。
そして昼休み。ミナこも遅い変身した魔法少女装備を同じ時間で、元の制服に戻った。祈里はそれを用事で見ておらず、着替えただけと無意識に思っていたらしいが、実は先日のフィラデルフィアの技術もマクロに応用しており、地味に完全な変身に近付きつつあった。
(ヒュウウウウウウウウンン…)
「おー、見慣れたら遅いけど、ミナこが自然に元の制服に戻った!」
「なによ男子よ、今までは油断を見せたくないからだ。好きで透明や骸骨になりたいもんか!」
「(好きでなって、先生の乳もんでんじゃねえよ…)」
机を合わせてミナこと祈里は真面目に瞬間返信についてランチミーティングを行った。
二人が適当な雑談ではなく、祈里も本腰を入れ、ここまで本格的に会談することは滅多に無いことである。
「いやあみんなが驚き喜ぶ光景がメニー浮かんでいたよ! 準備もほとんどなく、私は改めて透明人間とゾンビに可能性をだな…」
「昨日の発見が予想外でも、今日の結果が予想外でどうすんのよ! で、なんとかなりそうなの? 完全な瞬間変身は?」
「あの昨日の瞬間転送系の変身用途魔法、どうやら私に時空に何やら混じったらしくてな、その粒子成分が分からんのだ。んー世の中何が起こるか分かんないねー。そのうち魔法科学部とNASUの共同研究にでも出向くかなと…」
「んじゃあ、ミナこにもわけ分かんない力が入っちゃったっての!?」
「にもオ?」
「いやその…ホラホラ!! 魔法ってやっぱ未知なる力が秘める設定多いじゃない!! さてさて…問題はおっそい変身よ!! 本末転倒じゃないのさっきのじゃあ…」
するとミナこは、あれはフェイクに過ぎないと言わんばかりの余裕っぷりで祈里に接し、更に手元を自在に白い光と体内が透けるレントゲン調のピンクとブルーの発光スケルトンを、自慢気に見せびらかした。
どうやら自分の意志で自由に量子・透明化出来るようになったらしい。
(ブワッッッ、キラキラキラ…)
「(い、一瞬綺麗かと思ったけど、光る深海魚と同類な気がしてきた…やだ骨以外に血管も派手に染まってるし…)」
「祈里よ、恐らく推測段階だが、科学舞台では量子・核分裂と呼ばれている発光体の半永久エネルギーに近いらしい。
つまり私は魔法道具にワザワザエネルギーを溜めたり、準備しなければならない手間が、大幅に無くなる大きな一歩なのだ!! 研究員からは未知故に多使用は危険とも言うがな。
だが一方で、先日の瞬間変身魔法試作も成功率が『私自信を通して』大幅に安定維持できる事でもあるのだ!!!」
「ちょっとちょっと!? 何さり気なく試作って認めてるのよ!! で、対策はどうするのよ…」
「だから焦りすぎだよ祈里、もう一つ対策は積んであるのに、私の変身姿や魔法強化をどうしてそこまでせがむ…」
(うううううううううううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっっっ!!!)
その時、校内や薪母市全体にサイレンが鳴り響き、同時にミナこを呼ぶ放送が聞こえてくる。
「【薪島ミナこ様!! 薪島重工本社の周辺で薪島社員を襲う、バブリーベアの仕事を脱走したインド人難民男と男が従える謎の怪獣達が出没しています!!】」
「久々の犯罪抑圧!!! 行くに決まってるぞ!!! 薪島へのテロリストだな!!! 魔法を徹底的に披露して過ちを思い知るがいい!!!」
「(か、怪獣!? ミナこが魔法に出会ってしまうーーーーーーー!!!!)」
「ガード達!! 今日の私に昨日のような魔法道具支給はしないでもよい、代わりに全てを説明した魔法コアへの転送装置に設置してくれ。今回は変身、魔法は瞬時瞬間、現場に起こしてみせよう!!! この私に秘められし、命名した新たな正体不明の力『マジカル・ホワイトホール』で!!!!! 早速箒ヘリを呼べ!!!」
「(でも空は次の機会なのねーーーー…)」
薪島本社は車でも西へ10分程、東京ドーム2個分のピンク色の大きな工場と本社、目印に薪のマークがビル天辺にある。
そこにあのシンが堂々と薪島の敷地庭で何人かの人質をしばり置きながら、辺りを威嚇していた。
外堀には警察とそれ以上の数の薪島のガードマンが車とヘリでシンと交渉している。
「薪島のバカ共よ!! 貴様達の活動のせいで、世界中の伝統的な産業が失われつつあるのを思い知れ!!!」
「伝統的な産業とはなんだ!? 我々に対する恨みとしてはあまりに抽象的だ!! 所詮は動力のない悪魔の証明、ロストテクノロジーだろう!!」
「テメえらの魔法は本当の魔法じゃねえ! 古代からの呪いや儀式、場合によっては宗教も含めることがある活動をお前達は魔法と名乗る産業のせいで、それらの伝統を踏みにじる結果を生み続けてきた。それを犠牲で思い知る機会をくれてやる!!」
「あのシンという男…どうもああまで迷うこと無く社員を人質に取ったのは、薪島内でベアとして仕事をしたからでしょう…どこかの貧しい国家からの産業スパイとテロリストでしょうか…?」
「アイツはインド人と登録してあった。だが無国籍の秘密結社にしてはあまりに唐突な復讐だ!」
「シンとやら、伝統の魔法とやらを我々は粛清した事は無い! まもなくミナこ様が直々に訪れる、覚悟するがいい!!」
「いいだろう、俺の魔法『ソウルイン』を貴様らは見ているはずだ、あの近くにある『西竹特撮倉庫』から悪霊の魂を宿した怪獣達を!!」
シンの周りには、複数の人間とほぼ同じ等身である、特撮倉庫から魂を吹き込まれて動き出した、怪獣の着包みが薪島の社員人質達を威圧し、時には攻撃していた。
(んぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!)
(ぐぎゃわああーーーーーーーーーーーーーー!!!)
「うわああああああああ!!!???」
「ふっ、テロリストめ、精密なロボットを作っただけにすぎない小細工で、自分を魔法と名乗るつもりか…」
(ごおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!!!!)
「ひっっ!!?? 火を吐くのはも、元々備わっていたのだろう?…」
そこにようやく、ミナこがヘリにぶら下がった箒で現場上空を飛行後、背中の翼ジェットで華麗に飛び降りた。
「ミナこだ、真上に火を放て!!!」
(ごおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!)
着包みの撮影細工にしては大き過ぎる火炎放射がミナこに下から迫る。
(すうっっっっっっっっっ…)
(ぎゃおっっっっっ!?)
「き、消えただと? そんな瞬時に今の科学では実現…」
(すとん!!)
シンの後ろで音がしたので、皆が振り向くと、ミナこのシルエットが浮かんでいる。
「ま・ほ・うよ!! この特撮を魔法と名乗る産業スパイめ!!!!!」
(ずおおおおおおおおおおおおん……)
ミナこのシルエットから頭蓋骨だけが浮かび上がる。
「うわっっっ!? ミナこめ!! 貴様はまさか死神としてこの世界に蔓延っていたのか!? はたまた死神ヤマ(インドの閻魔)の化身か!?」
「魔法少女を死神扱い!? 態々の遅い変身を死神扱いとか、マジカルムカつくんだけど!! なら第二形態を見てなさい!!! 私の中の粒子に入れし秘められしフィラデルフィアよ来たれ!!!『ホワイトホール・イン・フィラデルコア』!!!!!」
(すうううううううっっっっっ、ピカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!)
「変身っっっっっっっっっ!!! み、はみんなのミ! な、は仲良くのナ!! こ、はこいつらはマジカル許すまじのこ!!!」
ミナこは再びシルエット全身が白く輝きだしたかと思うと、中央に光る赤いサッカーボール級の丸が輝きだし、今までと違って急速な早さで、あの先日のフィラデルフィア変身がしかも正確かつお馴染みの魔法少女変身とほぼ同一級の理想的なテレポーテーション変身を僅か5秒で成し遂げた。完璧にいつも皆が、気がついたら返信しているあの魔法少女ミナこである。
「おおおおおっっっ!!! み、ミナこ様の量子風ホワイトホール内部に収納したフィラデルフィアコアが、うまく転送して完全なミナこ様に変身なされたぞ!!! …!?」
(ずうんっっ…)
「魔法少女ミナこ!! うっ!? か…体が重いっっっ!! そうか、て、転送側に魔法道具を置き過ぎて、体に負担がのしかかってる!!」
「動けないのかミナこ!! 悪霊を注ぎ込みし怪獣共よ! やってしまえ!!!」
(がああああああああああああああああおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!)
「うっっ!? 来るなあああああああああああああああ!!!!!」
(どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんんんん!!!)
その時だった、ミナこが大切に魔法少女装備のポッケに閉まっていた、あの本当のママから貰っていたペンダントのオーパーツが輝きだし、それがミナこのフィラデルコアと反応して周囲数メートルに赤く大きな衝撃波を巻き起こして、怪獣とシンを軽く横転させた。怪獣はバランスが悪いのか、中々起き上がろうとしない。
(ぎゃわおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんんんんんんんんん!!!)
「うわああっっ!? なっ、なんだ!? あ、あの輝くペンダントはまさか!? 裏歴史でもA級の魔力連動物か!!! 奴めどうやって!? ミナこ!! 薪島の人質を殺されたくなければ、そのペンダントを寄こせ!!!」
ミナこのポケットに光るペンダントは重みでポッケから、今にも落ちそうなほど生地を引っ張り垂らしている。
そしてシンは腰ポケットから銃を取り出し、人質社員にそれを突きつけた。
するとミナこはすっと軽くなったのか起き上がるが、顔は今まで薪島の社員やここにはいないが祈里でも見たこともないような、険しい表情がシンを睨みつけた。
「ペンダント…ペンダントがすごく重い…これが、ママのこれが余計な転送物分の重量をを吸収したとしか…!!! そしててめえ!!! ロストテクノロジーや古来の魔法的な力を尊重しておきながら、とっさに銃だと!! そんな矛盾は…そんな矛盾は…」
「なっ!? く、来るんじゃねえ!! 何をする気だあああああああああああああああああ!!!???」
ミナこは握りこぶしを重く作る、その中には明らかに重くなったペンダントが大事に握りしめられていた。
(すうううううっっっっっっ、にぎっっっっ!!!)
「魔法なんぞ使ってやんねええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっ!!!)
ミナこの翼ジェットが加速すると、一瞬でシンに接近。体当たりで彼を地面に叩きつけ仰向けにした。
そして量子転送側に置く魔法道具全ての重みと母への愛が、真上からの正拳へ込められる。
(どっごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!)
「うぎゅわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!………」
空手割りのような姿勢で込められた一撃は、シンの腹部へ数百キロ近い重し一撃を放った瞬間、ミナこは一瞬最近であったあの母親のことが頭に浮かんで雫が目に飛び出す。
「(ママ…まさかオーパーツはこの力があると最初から分かって…!? ろ、ロストテクノロジーは嘘じゃないってこと!?…)」
こうして裏歴史インド人・シンの襲撃はミナこ直々の粛清により鎮圧した。
シンは気絶し内出血で病院後に警察へしょっぴかれ、操っていた怪獣はシン気絶で停止。中身にガラス細工のような野球ボール級の球体が入っていた以外は空洞だったが、薪島はそれでもをロボットと断定し回収する。
そして帰りのホームルームに変身を解いてミナこは戻って席につくも、疲れきった様子で、右手拳はまだ軽くはなったがあのペンダントを握りしめていた。
「(シンさん、結局人質取ったり、ただの特撮着ぐるみを操ったりしたらしいけど、結局はその程度しか出来ないってことだったのね…裏歴史って、やっぱり想像以上にちゃっちいのかしら…)」
「おーい祈里よ…」
「ミナこ!! 無事だったのね!! 瞬時に変身できたけど大変だったとか…。力になりたかったけど、犯罪抑圧なんて危険で何も出来ないからごめん…」
「…祈里、失われた文化の力・ロストテクノロジーって信じられるか?」
「…へっ? 連絡では魔法の拳て正拳突きって…」
するとミナこの手に金色のペンダントがあることに気付く祈里はハッとした。
「ミナこ…その右手にあるのは…?」
「祈里、そうだこのペンダントだけど、預けたいんだ。神社に祭ってもいい」
「えっ!? どう見てもそれ大切なモノでしょ!?(ミナこがあのお母さんのオーパーツを!?)」
「…私に信用出来ないロストテクノロジーはいらない。だが捨てるのもアレなんで、預かって欲しいと。…頼むよ、これがあると私の意思が揺らぎそうでな…」
「…何があったか知らないけど、分かった。ウチの境内で収めておく」
仕方なく祈里はオーパーツペンダントを預かった。黄金の貴金属なのに手垢と汚れ、そしてミナこの甘い体液が強く香る。
ミナこにとっての魔法とは何なのだろうか、マンガ・アニメのベースなのか、科学を元にした信用ある動力のみなのだろうか、ロストテクノロジーとして動力不明の恐ろしい存在が実は恐れる本当の魔法のことなのか、祈里にはワケが分からなくなる中で、いよいよ近付く使者と自分の立場を元に一つの結論を浮かべる。
「(…薪島ミナこは自分自身の行い全てが魔法と思ってる。やっぱり独裁よ。シンに託された彼以上の人間を逸脱したと言われてる少女と…ミナこ、次は私と少女が完全に止めてみせるから…!!)」」
「…っとさーあ!! 帰ろ帰ろーーーっと!!! 今日は少年ジョンプに新人作家の魔法少女モノが!! 絶対打ち切りに負けんなよー! あそうだ、ジョンプ最新号を印刷所に転送装置を置いて入れてもらえば私は、一瞬で自分の光から取り出すことも…!! ムフフ!!!」
こうしてミナこは片方は気付かず、もう片方は気付かないふりをして、敵、味方に貰った両魔法を目撃してしまった。
がんばれミナこ!! 君が信じるのは、本当に己自身の信用という名の魔法だけなのかい!?
魔法使えない少女?ミナこ! 第十話・完
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