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恐怖探究  作者: 篠田堅
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時計

投稿者:美容師Hさん

 私はアンティーク系を集めるのが趣味で給料の使い道がほとんどこれに費やされます。

 前は思い切って鏡台を買ってしまいました。一目見た時、これこそ運命の出会いだと本気で思う程素晴らしい代物でした。

 おかげで一カ月ほどおかずの数が減ってしまいましたが……。


 ある日、私は病気とも言える趣味に従い、休日にお得意先であるアンティーク店へと窺いました。

 新入荷品はないかと店内を回る内、とある古ぼけた掛け振り子時計が目に入りました。

 年代的な木材を台にし、針が指す時刻盤は真鍮製といった感じで中央には作られた年をメッキ文字で書いたものでした。

 ちょうど部屋には抜けているスペースを感じる壁があったので、私は即座に購入を決断しました。あまり高くなかったのでお財布にも優しくて大助かりでした。


 さっそく帰って来た私は包装された時計を取り出し、手頃な壁にかけて説明書を呼びながら振り子を作動させて時を刻むようにしました。

 まず“つまみ”を捻って針を現在の時間に合わせ、元から家にあった時計の秒針が0になった瞬間を狙い、振り子を作動して時を刻み始めさせるのです。

 原理としてはさほど難しくも無いので調整はすぐに終わりました。

 コチコチと振り子独特の音が部屋に伝えていきます。その音は私にとって癒しになり、しばらく聞き浸っていました。

 ですが、ここから私の奇妙な体験が始まったのです。


 一人でいると何だか視線を感じたり、誰もいない筈なのに隣から物音が聞こえてきたりと気味悪い現象が頻繁に起こったんです。

 探してみようとしても誰もおらず、見つけてみようとしても何も見つからない。

 そんな日が何度も起こり、いよいよさすがにこれはまずいと感じた私は伝手のある友達の友達に頼む事になりました。

 その人(Tさん)は友達いわく霊感というモノを持っているらしく、彼も不思議な体験を何度もした経験があるそうなんです。

 なのでこういう現象にはいくらか詳しいとのことでした。


 さっそく紹介してくれた友人のNとTさんを私は家に招きました。

 Nは私のコレクションを見て「すごいっ!」と興奮していましたが、Tさんの方は何かを探し回るように私の家をキョロキョロと見歩き始めました。

 そんな真剣な表情のTさんに私とNは後ろを静かにしてついていきます。

 自室、リビング、階段、トイレ、ようやく全ての部屋を見終わる所になった時でした。


「Hさん、近頃に何か変わった事をした覚えないですか?」


 近頃といえば、私は時計を買ったことをTさんに正直に話しました。

 すると「やっぱり……」とTさんは何か確信めいた呟きをして早足で私の部屋へと向かって行きました。

 部屋につくと、私はまず例の時計を指差してTさんに伝えました。


「ここか、色々と“すごい”から詳しく場所を特定し難かったよ」


 何がすごいのか? 私はTさんに恐る恐る聞いてみました。


「この家には“すさまじいほどの数の霊が居座っているようなんです”。どうやら近くに霊道があるそうで、古い物にはそこを通る『彼等』を引き寄せる力を持つ物が稀に出てくるんですよ」


 Tさんは「ちょっと借ります」と私の机の椅子を持って来て壁に掛けた時計に手をかけると、静かに壁から外しました。

 黒い“シミ”がありました。前までは無かった筈の黒いシミが時計の後ろの壁に浮かび上がっていました。

 まるで時計が出血を起こしたかのように下へと垂れ流れように出来ていたんです。


 私達はTさんの助言で部屋の四隅に盛り塩を置いてちょっとした清めをすることになりました。それから部屋には不思議な現象が起きた事は一度もありません。

 あの時計はTさんの伝手でとある神社でお焚き上げでのお祓いをされることになりました。

 現在、時計があった壁には新しく買ったアンティークの絵による額縁で隠すようにして飾っています。

 あの時計がどのようにして出来たのか、今では知る事は能わずと言った所でしょう。

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