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恐怖探究  作者: 篠田堅
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自由研究

投稿者:小学校教師Iさん

 自由研究って知ってますよね?

 小学生の低学年が夏休みの宿題の一環として自由に課題を選べるあの懐かしいモノですよ。

 子供の頃に私も作りました。私はヘチマの観察日記を選んでいました。最後に出来た実でヘチマたわしを作ったのも良い思い出でした。

 だけど中にはとんでもないモノを選んでくる子もいるんですよね……。他クラスの同級生は昆虫標本を選んできた子で面白がって“黒いアレ”を標本に入れてたって実際の出来事がありました。

 当然、担当の先生にはこっぴどく怒られたそうです。クラスの皆には一部は気持ち悪がれながらもウケていたそうですが……。


 このように、健全な昆虫標本も異物が一つでも混じると恐ろしい代物へと早変わりするように、私が小学校教師となってからこういった代物を受け取る側になるとは夢にも思いませんでした。

 これは実際に起こった話です。

 教任して四年目の9月上旬の日でした。夏休みが終わり、子供達から宿題を集める朝礼から始まったこの日。

 ドリルやプリントならばまとめられるのですが、自由研究は絵や工作といった様々な大小の物があるので集めるのも一苦労でした。

 なので段ボールを何箱か持って来てそこに入れますが、運ぶのが結構辛いんですよね。

 特に階段を上がる時は地獄な時間でした。


 職員室まで運んだあとは種類に分けて確認していき、モノを教科に分類して色々と賞に入るかどうかの検討を行う準備に取り掛かりました。

 「よくこんなに調べられたものだ」と私は正直に感心するモノがあれば、「お粗末なつくりだ」とまだ子供だから仕方ないと妥協するモノがありました。

 この時はまだまだやるべきことがあるので一通り見終わった所で私は残りの仕事を片付ける事に決めました。


 その次の日、朝早く出勤した私は授業の準備に取り掛かっていると、当時の学校の教頭先生Kさんが職員室へと慌てて入ってきました。

「皆さん、申し訳ありませんが少々お時間頂けませんか? 会議室に来てください」

 良く見ると、教頭先生の入って来たドアの傍には校長先生もいましたが、それより注目したのは校長先生と話している警察の方が居た事です。

 さっそく私達教師は緊急会議を開く事になりましたが、まだ説明されていない私達には何が何だかわかりませんでした。

 しばらくすると教頭先生と先ほどの警察の方が会議室へとやってきました。

「○○県警察の××です。お時間を取らしてしまい誠に申し訳ありませんが、事は急を急ぎます」

 この言葉に私を含め教師達がざわざわと騒ぎ始めましたが、教頭先生の「静粛に!」という声で皆静まり返りました。


 話し場が整った所で警察の方は「これから話す事は内密に処理する方向でおねがいします」と注意事を述べてから話を始めていきました。どうやら生徒達の耳には出来るだけ入れないようにする方針だったそうです。

「実は今回来られたのはここの学校のとある学生さんが持って来た自由研究の作品に驚く物があったからなのです」

 さっそく警察の方はあるモノを取り出して私達の目の前へと見せてきました。

 それは一冊のノートであり、表面には「しょくぶつずかん」と子供独特のたどたどしい字で題目が書かれていました。

「これは小学■年のB君が作った中には植物についての事を書いて花や葉の押し花を入れてある自由研究の宿題なのですが、問題はこの一ページにあります」

 

 警察の方はペラペラとノートをめくり出し、少し進んだ所で私達にそのページを見せるようにひっくり返してきました。

「ここにはその問題のモノがあったページです、申し訳ながら現物は既に私達の方で回収済みになってます」

 なるほど見せられたページには貼られていたであろう押し花が無くなって不自然なスペースが開いていました。

 そのページには『ケナフ』と名前が書いており、さらには採った場所や日時も細かに記しておりました。


 ですが、次の言葉で私達全員は驚愕の声を上げる事になったんです。


「このケナフについて書いていたページですが、貼ってあった葉に関して学校から連絡を受けて葉を鑑定に回した所、何と“大麻の葉”であることが判明したんです!」


 この時、子供は時としてとんでもない事をする時があるものだと私は認識しました。

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