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恐怖探究  作者: 篠田堅
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画鋲

投稿者:大学生Nさん

 私の大学生初期に住んでいた所は家賃が低くて有名な看板が若干錆付いた安アパートで一階の部屋でした。

 狭くてぼろいのも安い理由の一つですが、一番は線路が近くに轢かれていてたびたび電車が通り際の騒音が悩みの種でした。

 狭い部屋を上手く使って家具を置いた私の部屋は私なりに飾って少しでも寂しい雰囲気を払しょくする努力をしていたものです。


 ある日、私はバイトから帰って来た時の事でした。

 いつものように夜9時までバイトをして自転車で帰って来て玄関の鍵を開けて入りました。

 疲れた身体を鞭打つようにして歩いてバックをベッドへと放り投げ、風呂場へと向かおうとした時でした。

「痛いっ!」

 突如として足裏に鋭い痛みが走り、全身がビクッと跳ね上がりました。

 慌てて床に座り込み、痛みを感じた足裏を見てみると、なんと画鋲が刺さっていたんです。

 ついてないなぁと悪態を付きながら痛みに耐えつつ、画鋲を抜いた私はそれをまず良く見てみました。

 形は小学校や中学校で良く見たことのある平たい持ち部分をした金色の画鋲でした。

 私の部屋ではそんな形状の画鋲は使っていません。もっとしっかりした持ち手をした画鋲を使っていましたが、最初の頃は偶々どこかから持って来てしまい、部屋に落として紛れ込んできたんだろうと考えてさほど気にしませんでした。


 ですが次の日、その次の日も画鋲は見つかりました。踏んでしまう時もあれば運よく見つけて拾う時が幾度もありました。

 さすがに三日連続となると、私も何だか不気味になってきました。お隣の大家さんに誰か留守中に自分の部屋を訪れたりした人間はいないか尋ねてみますが、「いいや、誰も来ていないよ?」と返されました。

 それから一週間目となりました。画鋲は無くなるばかりか微妙に数が多くなってきていました。


 言いようのない恐怖に限界を感じた私は前に私の家に来た事もある友達のTに助けを求めることにしました。

 画鋲は連日と見つかります。ならば一日の間に必ずどこからか現れる筈なので、私が家を留守にしている間に友人に居留守を頼んでその瞬間を見つけてもらうように頼んだのです。

 交換条件としてバイトのシフトを今度交換してもらうことで了承してくれたTに感謝し、私は早速行動に移しました。

 私が家を出ている間、Tは部屋には誰もいないように静かに潜んでもらい、何か連絡があれば携帯で電話してくれるように頼みました。


 デパートで長い時間が過ぎ、もうすぐ午後四時になる頃でした。

 雑誌を呼んでいると唐突に携帯が鳴りだしたのです。Tからでした。

 さっそく私は電話を取って「もしもし?」と答えました。

「N、聞こえてる? 今すぐこのアパート解約して別の所行った方がいいよ」

 Tはヒソヒソと震えるのを抑えた声で第一番にそう行ってきました。

 「何かわかったの?」と聞いてみた所、次にはTはハッキリと言ってきました。


「ついさっきふすまの中に隠れながら少し戸を開けて見てたらさ、ここの大家が鍵開けて入って来て笑いながら“口から画鋲吐き出して”アンタの部屋にばら撒いていったんだよっ!」

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