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恐怖探究  作者: 篠田堅
32/44

写真

投稿者:会社員Iさん

 妻から昔聞いた話だ。

 妻は高校二年生の夏休みに家族でキャンプへ行く事になった。

 本当は海に行きたかった妻ではあったが、都会とは違った澄んだ空気や普段は見れない瑞々しい風景にしだいに心をウキウキとさせた彼女は楽しむようになった。

 家族でやったバーベキューは手間が大変ではあったがとても美味しかったし、森林探検は初めての発見があってとても楽しかったと言っていた。


 キャンプは一泊二日を以て家族団欒で楽しみ、大満足のまま妻とその両親は家へ帰って来た翌日、さっそくお義母さんはキャンプで撮った写真を現像しに写真屋へ行ったそうだ。

 数日後、出来上がった写真を取りに行き、さっそく家族全員であの日の思い出となる写真をテーブルの上に広げて見ていた。

 数枚はブレで写りが悪い代物が出てきたが、ほとんどは綺麗な一枚の絵として完成したモノが封筒の中に入っていた。

 それら数枚を楽しみながら見ていると、お義父さんが一番初めに“その写真”に気付いた。


 写真は集団キャンプ場の中でテントを張り終えた瞬間を取ったモノだった。

 左からお義母さん、妻、お義父さんと仲良く横に並んで笑顔をカメラへと向けた姿だった。

 そんな写真の左隅……誰だか知らない手が写真の写っていない外からニョキッと手首から先が写っていたのだ。

 どこからどう見ても人間の手である。キャンプ場には他にも利用者がいたので偶々手だけが写って撮れてしまったんだろうと妻達は納得した。

 少し恰好が悪い写真ではあるが、これくらいの違和感ならアルバムに仕舞うくらい別に何の問題もないとして、そのままお義母さんがアルバムにしまったらしい。


 そんな出来事が起きたキャンプから数年、お義母さんは首の痛みを訴えるようになった。

 肩こりが酷いからとかこの頃疲れが溜まっているから妻やお義父さんもお義母さんに少しは休んだ方がいいと言い、安静にさせることにした。

 だが、お義母さんの体調は一進一退と可も無く不可もない状態が続いていった。

 病院で調べてもらっても、単なる疲労やストレスによる影響だとありふれた診断結果が出るだけだった。


 一年後、お義母さんは突如倒れた。脳動脈瘤破裂による蜘蛛膜下出血が原因だったそうだ。

 一刻を争う状況に入った義母さんで手術後、集中治療室で入院していたが、治療のかいなく五日後に亡くなったそうだ。

 早すぎるお義母さんの死に妻とお義父さんは涙を流した。


 それから約一ヶ月後、葬式も済んで妻がお義母さんの部屋の整理をしていた時、本棚からアルバムを見つけたそうだ。

 ページを一枚一枚めくっていくごとに蘇って来るお義母さんとの記憶に妻は目頭を熱くさせながら時間を忘れてアルバムを見続けていたらしい。

 ようやく最後のページ、家族全員で最後に行ったキャンプの写真があるページに入った。

 微笑を浮かべながら妻はペラペラとページをめくっていくと、あるページで目が止まり、血の気が失せた。


 あの写真があるページだった。見ると同時に当時最後に見た瞬間の記憶が蘇った。


 左隅に写った手があの頃と違って腕まで長く伸びて写った状態になっていたからだ。

 錯覚じゃない、記憶違いでもない……確かにこの写真はこんなんじゃなかった。

 妻は大いに混乱したらしい。だが一番に恐れたのが……。


 その手の先が写真の中のお義母さんの首にがっしりと“掴みかかっていた”事なんだそうです。



 写真は随分昔に寺に奉納し、お焚き上げ済みとのことです。

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