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恐怖探究  作者: 篠田堅
21/44

餓鬼

投稿者:専業主婦Bさん

 今は結婚して夫とマイホームで住んでいるんですが、八年前くらいは家族とマンションで暮らしてました。

 両親は共働きでいつも私は夜遅くまで一人でマンションの部屋で過ごしていました。

 課題を終わらせるためにパソコンと睨み合っているのが常な私でしたが、ある日小腹が空いてきたので冷蔵庫から何か食べ物を取り出そうとしたんです。

 冷たい冷気を顔で受けつつ、何か良い物はないかと調べると、昨日の夕食の残り物があったのでそれを食べる事にしました。

 皿ごと取り出して冷蔵庫の扉を閉めようとした時、その隅にある物を発見したんです。

 

 きゅうりでした。けど普通のきゅうりじゃない。

 誰が付けたのかわからない“齧った痕”がくっきりと残っていたんです。


 「汚いなぁ」と初めは思い、そのきゅうりを取り出して生ごみの箱に捨てておきました。

 自分はこんなことはしないし、だとすると両親のどちらかがこんなモノを冷蔵庫の中へお粗末な形で残したということになります。

 まったくだらしないなぁとこの場には居ない両親に呆れつつ、私はパソコンの前へと戻っていきました。


 再び課題を進めていく内、今度は喉が渇いてきたんです。

 次に水道で水を飲みに行くべくキッチンへと私は向かいました。

 その時、良く耳を澄ませてみると何かが聞こえてくるのです。ピーッ! ピーッ! とアラートらしき音。

 キッチンに辿りつくとそれは解りました。冷蔵庫の閉め忘れの音でした。

 見ると冷蔵庫の片側の扉が半開きになっており、最初でちゃんと閉められてなかったんだろうと考え、そのまましっかりと扉を閉めておきました。

 このまま水道の前に立ち、かけられたコップを手に水を汲んで飲みます。

 

 ふと、何か後ろから気配を感じたんです。

 まるでトコトコと普通に歩いていくように静かな動きで私の後ろを何かが通った気がしたんです。

 思わず振り返りますが誰もいない。代わりに冷蔵庫の扉がまた少し開いてるんですよ。

 気配の正体はこれかと考え、立て付けが悪くなったのかな? と思いつつ私は冷蔵庫の扉を開け閉めしてみた。

 大きく開くから当然中の方も見えるワケで……。


 “卵や肉、別の野菜といった数々”が冷蔵庫内で散乱していたんですね。


 さすがにこれはおかしいと思った私は「まさか空き巣か!?」と警戒し、少々マンションの中を調べ回ったんです。いつでも警察に電話できるよう携帯電話を持ってです。

 こうして初めとして風呂場へと向かってみたんですが、人の気配なんてものはまったく感じられません。一応、自分の考え得る人が隠れられそうな場所も調べてみましたが誰も見つかりません。他の部屋も調べてみましたが同様でした。


 ですがこのマンションに何かいるのは間違いありません。私は父親の方に電話をかけながらキッチンの方へと戻っていきました。


 床には更に食い荒らされた“食べ物”がぶちまけられていました。


 いよいよ本格的に恐怖が襲ってきます。

 呼び出し音で父親が早く電話に出て来てくれないかと焦りつつ、その場でうろうろし始めました。

 その時でした。頭に何やら水滴が落ちてきたのは……。

 いきなりの水気が頭に現れたことで私の足は止まり、手を頭に運んで触ってみました。

 確かに水滴……これが何なのか正体を調べていると、また一滴、二滴……。

 私は天井をゆっくりと見てみました。


 骨と皮しかないようなミイラのような男が天井から私のことを“涎”を垂らして見つめていたんです。


 気が付くと、私は両親に心配そうな顔をされながら床に横たわっていました。

 それから両親交互に電話に何で出なかっただの、冷蔵庫の中を何で散らかしただのと追及されましたが、どうせ信じる筈もないと考えた私はこの未知の遭遇の経験を話してはいません。


 食い物をむさぼるようにして喰らう骨皮の人型。

 あれって地獄でいう『餓鬼』ってモンなんでしょうか?

 なんで私達のマンションに現れたのか私には知りません。


 ですが、今でも偶に両親と連絡を取る際、私が使う携帯電話越しから“変な物音”が聞こえることがあるんですよね……。

 両親自体に害はなさそうなのでほっといてはいますが、どうすればいいと貴方は思いますか?

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