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恐怖探究  作者: 篠田堅
19/44

投稿者:Eさん

 子供の頃、公園のある神社の中で俺は良く遊んでいた。

 中でもかくれんぼが俺のお気に入りで大の得意な遊びだった。

 最大五人でかくれんぼをして俺が隠れる側になったら二時間はずっと見つからないくらいに隠れるのが上手かった。

 だけど何度も限られた外の範囲でやっていると探す側の視野は広くなる。

 回数を重ねるごとに俺は見つかる頻度も多くなってきた。


 当時は負けず嫌いだったから勝つために考えを張り巡らした。

 結果、普段は通らない神社の裏の林をかくれんぼのステージにしようと友達に提案した。

 けど神社の裏の林は関係者以外立ち入り禁止にしていて一般人はおろか子供は入ってはいけない決まりがあった。

 さらなる刺激を求める俺達はその決まりを無視し、大人達に内緒で裏の林を使うことにした。

 

 すり鉢状にへこんだ地面を草木が覆い、杉の木々が立ち並ぶ林。

 まさに格好の隠れ家になりえる場所だった。その中でも更に奥にある存在がかくれんぼとして醍醐味となる。

 いつ作られたのかは知らないが、今はキノコ栽培のために使っている洞窟。

 最深部までは約20~30メートルほど距離があるそこは暗闇が味方して隠れ場所にこれ以上ないほどにピッタリな場所だった。


 俺は友達の一人と途中で出会い、一緒にその中で隠れることになった。

 鬼が数を数える声がやや遠くから聞こえる中、俺達は洞窟の奥へと進んだ。

 入り口からの光が壁を写し、奥へ進むほど暗闇は深くなる。

 入り口付近の空気は乾いており、進むにつれてひんやりと冷たい空気が肌に触れ始めた。

 最深部は通路の部分と違い、広く作られていてその洞窟の壁にキノコ栽培用の原木が立てかけられていた。


 やがて、鬼になった友達の数える声が終わり、いよいよ始まりとなる。

 俺は暗闇の中、友達と互いに離れないように体を密着させながら原木が立てかけられていない壁の場所に静かに腰を降ろして鬼が来るのを息をひそめて待つことにした。

 友達もわかってくれたのか、俺と同じ方に隠れるようにしてくれた。

 しばらくして五分くらいだったか? 入り口の方から茂みをかき分けてくる音が聞こえ始める。

 鬼が来た! なるべく物音を立てないよう友達と体を軽く叩いた意思疎通をしてこの難所を乗り越えることにした。

 ずっと暗闇にいたので夜目が利き出していた俺達は洞窟の周りのシルエットぐらいは見えるようになっていた。

 足音はゆっくりと近づいてくる。どうやら慎重に探ろうとしているらしい。

 俺はそう思っていた。


 だんだん足音が近づいてくるのと同時、友達が後ろから肩をちょんちょんと指で叩いてくる。

 友達が何か伝えたいのだろうと考えたが、今はそれどころじゃないと声を出さずに無視していた。

 すると、今度は背中をポンポンと軽く叩いてくる。しつこい、いいかげんにしろと思って俺はその手を後ろを向かないまま掴んだ。

 思いっきり掴んだことによってか、友達は驚いて手を止めた。

 俺が怒っていることに気が付いたのだろう。友達の手は俺の手からゆっくりと離れ、今度からは何もしなかった。

 

 入り口から誰かが入ってくるのを隠れながら様子をうかがう。

 しばらくこちら側とは正反対の壁の方を調べたりしていたが、何もないと考えたんだろう。

 洞窟からは一分も経たない内に出ていった。そんな様子を俺はほくそ笑んでいた。

 

 数分後、そろそろ洞窟で隠れるのも退屈になってきた俺は友達に「そろそろ行こう」と呼びかけ、洞窟から一緒に出てきた。

 慎重に入り口から顔を出して辺りを見回し、鬼が近くにいないことを確認してから俺達は静かに洞窟へと離れていくことにする。

 先導して友達と一緒に次の隠れ場所を探そうとした時だった。


「お前、背中どうしたの?」


 友達が怪訝な顔をして俺の事を見てそう言ってきた。

 背中? 言われたとおり、背中部分を触ってみると何だか湿っぽい。

 その場で上着の脱いで俺は確認してみると、


 土で汚れた“手の痕”がしっかりとその背中に何個もあった。


 そういえば何度も俺の背中を叩いてたっけ。俺は「お前が汚れた手で叩くからこうなったんだろ」と文句を言うようにして責めた。

 すると、友達はこう言った。

 

「俺、洞窟じゃお前から離れた方に隠れてたぜ?」


 では、洞窟の中で俺が体を密着させてた相手は誰だったんだろうか?

 そういえば、とっさにあの腕を掴んだ時の感触……妙に“湿っぽかった”気がする。

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