いるよー
投稿者:大学生Eさん
心霊スポットの危険度の測り方ってどうするものか知っていますか?
ネット上で掲載されてるような『ヤバい』とか『危険』と記されるような所は大体が安全だとも言われています。なぜなら『ヤツ等』に襲われずに無事に帰って来て情報をこうして掲載できるのですから逆に証明してる事になるからです。
それならどんな所が本当に危険か? 実はコレ、わからないんです。なんせ証明する人が『居なくなる』から情報なんてまったく入って来ないんだそうです。
だからネットとかはあえて知名度や危険度を激底辺にしたり乗せないようにして感心を持たないよう情報操作してるって噂ですよ。
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俺には一歳年下の弟がいて、夏休みに地元で有名な心霊スポットに俺の友達と弟を含めて肝試しに行く事になった。
間瀬トンネルという新潟県の弥彦山スカイラインから少しはずれた間瀬峠の廃道にある今は使われていないトンネルだった。
そこには夜になると母子の幽霊がトンネルの中でひっそりと現れるという。
俺と弟と友達は全部で五人、岩室側の入り口で一旦集合してどうやってトンネルに入るか話し合っていた。
最終的に決まったのは二人一組残り一人でトンネルを往復して集合場所まで戻って来るという方法になった。
じゃんけんをしてグループを決める時、誰が一人になってトンネルを入ることになるかで騒いだが、決まったのは俺・友人C、友人B・弟、友人Aという配列だ。
友人Aは「うわーこえー」と棒読みで怖がるふりをしていた。俺達全員まるっきり遊び感覚でいた。
入口から歩き始めて五分程度でトンネルは現れた。
懐中電灯で照らすと一面が草木で生い茂って不気味な雰囲気が漂う。
最初に行く事になったのは弟のグループだった。
俺は弟に「ちびんなよ(笑)」とからかってみたが「やらねぇよ馬鹿」と笑いながら軽く叩かれてから二人を見送った。
トンネルの中へと入っていく二人の懐中電灯の光を遠くで見つめていると「うわ、こん中水浸しだぞ!」と友人Bの驚く声が聞こえてきた。
そういえばこのトンネルは雨が降ると水がたまりやすい構造になっていることでも有名なことを俺は思い出した。
「大丈夫かー」と聞こえるように言うと「なんとか行けるかも」と挑む意思を示した弟の声が聞こえてきた。
残りの俺達は二人がトンネルをちゃんと抜けれるか心配しつつ、二人の帰還を待つことにした。
しばらく待つ事数十分、俺達三人は友人Bと弟を待ち続けたが一向に戻って来る様子がない。
トンネルは歩いていけば一分も経たない内に向こう側の出口へと出れる筈だ。往復となってもそんなに時間はかからない。
トンネルの中を懐中電灯で照らしながら俺達三人は試しに「おーい、いるかー?」と大声で言った。トンネルなので声は反響して奥深く暗闇へと吸い込まれるような感じだった。
「いるよー」
声が聞こえてきた。これで安心した俺達は時間がかかり過ぎたせいもあってこのまま待つのもなんだから残り三人でトンネルに入っていくことにした。中は石造りもあってかヒンヤリと冷たい空気で充満していた。
しばらく歩くとさっそく友人Bが言ってた通り、トンネルの中は水浸しの状態だった。ぎりぎり靴底が沈むかどうかの深さだった。
ぬるかみに気を付けながら俺達は進むと、奥からバシャバシャと水が弾く音が聞こえてきた。一瞬身構えたが、懐中電灯を照らしてみたら前から友人Bと弟が現れた。
けど様子がおかしい。二人は懐中電灯を付けないまま手を繋いでこのトンネルを歩いて来ていたのだ。しかも顔はどこか怯える表情をしている。
「うわ、驚かせんなよ」
いきなり現れるものだから友人Aは笑いながら二人にごねた。
でも二人は何も言い返さない。俺は弟の方を良く見てみた。
今にも泣き出しそうな顔をしていた。
二人は俺達を通り過ぎ、そのままトンネルの入り口へと戻っていった。
あまりにもおかしい行動に俺達は怪訝に感じながら二人の後を追ってトンネル入り口まで走っていった。
だけど更に友人Bは突発的な行動に走った。弟の手を引っ張りながら全速力で走りだしたのだ。
これにはさすがの俺達も様子がおかしいと感じた。慌てて二人を止めるために同じように走った。
二人を捕まえたのは陸上部に所属していた友人Aだった。やっと止まった二人は友人Aになにやら追求されながら、その場に力が抜けるように座り込んだ。
俺はなんでこんなことしたのかって友人Bに聞いたけど、友人Bは身体が震えて声が出せない状態だった。
ならばと今度は弟に聞く事にした。もはや顔は涙と鼻水でぐしゅぐしゅになりかけていたが、話は聞く事に成功した。
「実はね、Yさん(友人Bの事)が皆を驚かしてやろうってトンネルの中で明かりを消して待ち伏せすることにしてたの」
どうやら二人は中々帰って来ないのでおかしいと思った俺達を暗闇から驚かす算段をしていたと言うのだ。
だけどそれで二人がこんな風になるのかはまだ分からなかった。そんな事するくらいの度胸があるなら逆に暗闇が怖くなったなんてことはありえないのだから。
次に弟は言った。
「最後兄ちゃんが「おーい、いるかー?」って言ってきたじゃん。あの時、俺達どっちも“返事なんてしてないのに”「いるよー」って声がトンネル奥から聞こえてきたんだ」
俺達三人は弟の話を聞くや、さっきまで居たトンネルへの道を振り返った。
その後、背筋が凍る思いをしたまま一目散にここへ来る際乗って来た車へと急いだ。
この経験以来、俺達は心霊スポットへ面白半分で行く事は禁止している。




