サークル
投稿者:Rさん
これは俺の友達のSから聞いた話だ。
Sは友人からある日、サークルの旅行で一緒について来て欲しいとお願いをされた。
なんでも人数合わせのためだとか揃わないと旅行の進行がうまくいかなくなるだのと善意は見られない理由だったが、ちょうど暇していたSはその旅行に参加する事に決めた。
場所は栃木県の□□山という所で友人を含めたサークルメンバーが挙ってテントを張っていた。キャンプというモノだ。
周りは青々と生い茂った密林に囲まれており、自然を楽しむのならうってつけの場所。
Sは友人と同じく参加してきたサークルメンバーを見て見た。男女若老と様々な人が友人を含め計七人とキャンプ場に集まっていた。
ここでふとSは友人に訪ねた。
「お前、何のサークルに入ってるんだ?」
正直言うと、Sは友人の入っているサークルについて一切知らなかった。
おまけに向こうからは教えてくれもしていない。
今こそ思い切って聞いてみる事にした。
「簡単に言えばサバイバルって感じかな?」
友人は素っ気ない声でSの質問に答えてきた。
じゃあ今回の旅行はサバイバルゲームをするつもりなのか? と次に聞くと、
「いや……」
どこかしどろもどろとした口調で小さく返事した後、何も言わなくなった。
この時はきっと秘密にしておきたいことなんだなとSは考え、あえてこれ以上は聞かなかった。
サークルメンバーとはSは仲良く話し合った。どこから来たのだ趣味は何かと談笑していた。
やがて夜が来ると皆テントに入って就寝の体勢を取っていった。Sもキャンプで動かして疲れた身体を休めるべく、寝袋にくるまってぐっすりと眠ろうと決めていた。
数十分くらい経った頃だろうか? 今まで聞こえていた虫の声や小動物の声も風も何もかも聞こえない状態になっていた。
静まり返った空間にぽつんと一人でいるみたいな感じだったが、隣でもぞもぞと寝袋に入って動いている友人がいるかげで怖さなんかはまったく感じなかった。
しばらくした後、砂利を踏みしめる音が遠くからテント越しに聞こえてきた。
Sは誰かがトイレのために外に出てきたんだろうと思って眠りかけた頭の状態になりながら足音を聞いていた。
近くで聞こえて遠くへと離れていく。近くで聞こえて遠くへと離れていく。
そうしていると、次にギギギ、バサバサと激しそうな音がしばらく聞こえてすぐ聞こえなくなってしまうという現象が起きるのだ。
そんな音が何度も聞こえてきた。
こうして五回目に差しかかる足音が聞こえてしばらくした後、今まで横になっていた友人がゆっくりと起き上がった。
同じようにトイレかな? と思いつつ、Sは寝袋に入ったまま離れていく友人のテント内での足音を聞いていた。
しばらくすると、ファスナーを開ける音がジジジと小さくこの場に響いた。
テントから出ていこうとする友人の物音を静かに聞いていたSは
「……じゃあな」
そう小さい声で呟いた友人の声を聞いた。
何の意味があったのかはレム睡眠に入りかかっていたSに思考回路などあるはずなく、そのまま眠りについてしまった。
翌朝、朝日がテント越しで目に沁みてくる中、えらく外が騒がしい。
もうサークルメンバーが集合しているのかと思い、目をこすりながらSは寝袋から出ようとした。
その時、テントが勝手に開けられたのだ。そこへ入って来たのは予想だにしない人物だった。
“警察官”だったのだ。
「おい、ここに一人いるぞ!」
興奮した声で入って来た警察官は外にいる誰かを呼んでいた。
いきなりの来訪者にSは一瞬呆けたが、すぐに意識を取り戻して「何があったんですか?」と尋ねてみた。
すると、警察官はどこか驚いた顔をしながらこう言った。
「君、ここの集団の仲間じゃないのか?」
Sは答えた。
「仲間といえばそうなりますが……」
何が言いたいのかSは分からぬまま、警察官と言葉を交わした。
その内、「とにかくここから出てきなさい!」と命令されるような形で言われた。
これにSは何か悪い事をしていたのか? と恐る恐ると疑問に感じながらテントから出てきた。他にも警察官がキャンプ場一面に配置されてる姿も見えた。
この時、Sは目の前にある光景を見て顔を真っ青に変えた。
昨日まで仲良く遊んでいたあのサークルメンバー達が“テントの上にある木の枝で全員首を吊って死んでいた”のだ。
たまらずその場でSは嘔吐したらしい。
後に詳しいことを警察から話してもらったんだけど、あのサークル……実は友人がその日の前日に話したサバイバルのサークルなんかじゃなく、ネットで色々な場所から集まってきた赤の他人同士で行う“自殺サークル”だったんだと。
Sの友人も首を吊って死んでいた。どうやら生前に相当な悩みを抱え込んでいたらしい。Sはあの日の前日、夜に聞いた友人の最後の声が未だに忘れられないそうだ。




