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恐怖探究  作者: 篠田堅
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私だけのもの

投稿者:飲食店経営Aさん

 俺は一度彼女と別れた経験がある。

 理由はウマが合わなかったとかそこらへんにある簡単な理由だ。

 彼女はいわゆる極度の世話焼きというモノで俺が彼女的に駄目なことをしたりすると優しい声と顔で直したがる。

 それが俺の行動の自由を拘束することにも繋がり、何度か注意したり反論したが、治すことはまったくなかった。

 一般的には気立てのいい娘さんという感じに見えていたかもしれないが、俺にとってはまさに水と油だった。性格も顔もなかなかの女だったが、このままではお互いのためにならないと感じた俺は時期を考えて別れ話を切り出した。


 当然、彼女は猛反対した。しまいには泣きだそうとするしまつだ。

 愛されているんだと心では思っていたんだが、その愛が俺にとっては辛かった。

 結局、決心が纏まらぬまま俺と彼女が別れられたのは三回目となった別れ話の一ヶ月後であった。

 何度も俺のマンションに招待し、良く話し合って決めた結果だ。最後まで彼女は諦めない様子だったが、俺の必死の説得によって了承を得てくれた。

 

 それからだった。俺は部屋で寝ているとうなされるようになった。

 俗に言う金縛りにもかかったこともあるし、何か自分の上に乗っかっているような感触が出てきたりもした。

 あまりにもおかしいので俺はビデオカメラを隠し撮りしてみたんだが、何度やってもおかしいものは映る事はなかった。

 幻覚なのかと考えれば病院に行ってみるが、先生からは至って健康であると診断される始末。

 ますます本格的にワケが分からなくなった。この状態になって俺は藁にもすがる思いで霊媒師が居ると噂される○○寺を訪れた。

 そこの住職は俺の眉唾ものな話を真剣に聞いてくれ、真摯に相談に乗ってくれた。

 あの時は本当に心が救われたね。


 二度目の訪問からの相談、住職は俺の部屋を一度見てもらうことになった。

 翌日、昼ごろに黒い大型車がマンション駐車場にやってきて住職がお弟子さんらしき人達と一緒に俺の部屋へと訪れてきた。

 けど異変はすぐに起きた。俺が玄関のドアを開けて住職を迎え入れようとした途端、住職はいきなり口を抑えたのだ。

「すみません、お手洗いお借りしてよろしいでしょうか?」

 苦しそうな顔をするものだから俺は慌てて住職をトイレへと案内してあげた。

 しばらく経ってから住職はトイレから出てきて「取り乱して申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げて謝罪してきた。

 これには「いえいえ! こちらこそとんでもない!」と慌てて頭を上げてもらうようにしてもらった。


 気を取りなおして住職とお弟子さん達は俺の部屋を調べ始めた。

 彼らがどんな風に感じているのか俺にはわからなかったが、不快感を感じているのは確かな表情をしていた。

 すると、壁を凝視し始めて恐る恐ると手を伸ばし始めた。そこには俺のお気に入りのミュージシャンのポスターが貼ってある位置だった。

 掌を軽く擦ったかと思いきや、住職は思いっきりそのポスターを剥がした。



『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』『私だけのもの』



 赤い字……多分色合からして口紅か何かだった。

 同じ言葉が小さくびっしりとポスターの裏の壁に書かれていたのだ。


「この部屋に住むのはお止しになった方がいい。とてつもない念が込められて良くないモノを引き寄せかねないでしょう」


 住職はそんな光景をじっくり見た後、静かに俺に諭すように言ってくれた。

 後ろではお弟子さん達が三人のうち一人は恐怖に耐えきれず部屋から飛び出してしまっていた。


 今は俺は別のマンションに移住している。

 彼女との連絡は未だ取れていない。

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