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恐怖探究  作者: 篠田堅
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ヘルメット

投稿者:大学院生Oさん

 僕の通学手段は大学2年になるまで自転車で夏だろうが冬だろうが関係なしに漕いで大学へと通っていた。

 そんな僕がバイク通学へと変更したのが親の進めによって中古自動車店に行き、少々高めな原付バイクを買った日からだった。

 自転車通学が捨てがたかったのは毎日のいい運動になるし、ガソリン代をかけないで済むといった思惑があったのだが、両親から頑なに進められるものだから実質仕方なくという判断で買うことになった。

 遠慮気味ではあったが、そんな僕にとってもバイクの乗り心地は案外快適なモノであり、今では移動手段に欠かせないモノと変化した。


 買ってから2か月後、僕の帰宅時間は大学のゼミの都合によって大抵が午後7時以降なので、真夜中の道路を走ることになっていた。

 僕の住む所は田舎と都市化が混ぜ合わせたような場所が多く、断然に通学の道のりに脇で畑や田んぼが見れる機会が多かった。

 なので一部の道になると自動車はぱったりと通らなくなり、スピード出しまくりにしてしまう事も一度や二度ではなかった。

 いつものようにバイクを走らせ、ライトで照らした道と夜目を頼りに道路を走らせていると、視界が狭くなった。

 プラスチックのガードが黒い壁で上から一部覆われていて前が見えづらい。自分の髪の毛がかかってしまったのが原因だ。

 僕はバイクを道路の邪魔にならないようにして一旦停止し、ヘルメットを脱いで髪をめくり直す。

 自分が使うヘルメットは全方位ガード式なので、結構な重さがある。なので脱ぐ時も一苦労をした。

 めくり直したらその状態のまま上からヘルメットをかぶって固定すると良くやる手直しだ。


 再びバイクを走らせ、家へと向かおうとするも髪はまたしても下りてきてしまったのか、ガードの視界が黒く覆われてしまった。

 髪による顔への不快感に襲われながらも、今止めては後ろから来ている後方車に迷惑がかかるのは分かり切っていたので、仕方なしに僕はそのままの状態で走ることにした。

 やがて、信号にまで来たところでちょうど赤信号となったのを機に僕はヘルメットの中の髪を直そうとした。

 だが、手をかけようとした瞬間、突如として真後ろから車のクラクションが鳴らされてきたのだ。

 これには僕もびっくりして手を一瞬止めてしまった。

 その次には車の窓から運転手の人が出てきて僕にこう言ってきた。


「おい、“ヘルメットを脱いでいると”危ないからちゃんとかぶれ!」


 何を言っているのかわからなかった。ヘルメット? ちゃんとかぶっているのに……。

 それには自分には当てはまらない。きっと別の人に言っているのか間違えてしまったのだろうと考えた僕は信号が青になったところでバイクを発進させた。


 またしばらく進んでいると、またしてもクラクションが鳴らされた。これで二回目だ。


「ヘルメットをかぶれって言ってるだろ!」


 もはや怒号そのものな言葉が後ろから聞こえてきた。

 さすがに無視できなかったので僕はブレーキをかけて止まることを合図してその場でゆっくりとバイクを止めた。

 道路の脇に一時停止し、文句を言ってきた運転手へと僕は責め寄った。


「さっきから何なんですか! 変な言いがかりは止めてくださいよ!」


 わけもわからないで怒られたので僕も若干いらいらしていた。

 文句を言ってきた運転手に逆に文句を言い始めた。

 しかし、運転手はなぜか呆けた顔をして僕を見ていた。

 すると突然僕に向かった頭を下げて謝罪してきた。


「あ、悪かったね。“長い髪が風でバサバサと揺れている”ように見えたからヘルメットをかぶっていないと錯覚したんだ。本当にすみませんでした」


 僕の髪はそんなに長くはない。

 運転手は錯覚だったと言ったとはいえ、ヘルメットの上から長い髪が揺れるようなモノがあったと見間違える。そんなことがありえるモノなのか?


 ひょっとすると、運転中に僕の頭の上に“何か”が寄りついていたとしたら……。

 バイクは今でも安全に乗っている。

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